著者
片岡 香子
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

火山性の決壊洪水は、噴火が直接的に及ぶ範囲を超えてより下流域にインパクトを与えることがあり、甚大な災害を及ぼす可能性が非常に高い現象である。本研究では、カルデラ湖決壊に起因する過去の大規模な洪水について、堆積学的・地形学的アプローチと古水文学的解析からの復元を試み、その実体を明らかにし、今後の火山土砂災害の予測・対策・軽減に貢献できる基礎的、具体的データの構築を目指す。
著者
小川 宏 森 知高 菅家 礼子
出版者
福島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、福島県内小学校で実施している10分間の運動プログラムが、小学生の体力や運動能力、学力に与える影響について調査した。また研究中の22年3月に東日本大震災があったため、震災前後の小学生体力の変化についても調査した。その結果、震災後は屋外活動が制限されたため、震災前よりも持久力やボール投げなどの能力は低下していたが、握力や柔軟性など、屋内で鍛えられる運動能力は向上していたことが明らかになった。
著者
堀 照夫 久田 研次
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

軽量で、高強度の導電性繊維およびプラスチックの製造を目的に、超臨界二酸化炭素流体の特徴を生かし、無電解めっきの核となる触媒の付与を検討した。超臨界二酸化炭素に比較的良く溶解する有機金属錯体の中から適切なものを数種選び、最初にこれらの錯体の単独での溶解性、2種類を混合した時の溶解性と相互作用について調べた。繊維・高分子としては高強度・高弾性で耐熱性の高いものを対象とした。アラミド繊維およびこのフィルムはジヘキサフロロアセチルアセテネートパラジウムなどを用い、錯体を注入した後、高温で乾熱処理することで高いめっき密着性が達成できた。液晶高分子であるLCPやエポキシについては密着性の向上に工夫を要した。解決法の一つは構造の類似な2種の錯体を混合使用する方法で、これにより超臨界流体に対する溶解性が向上し、めっき触媒であるパラジウムを強固に高分子表面に固定できた。その他に高分子表面を電子線加工する方法、プラズマ処理する方法、レーザー照射する方法等も効果があることを明らかにした。
著者
杉浦 芳夫 原山 道子 石崎 研二
出版者
東京都立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

1.ナチ・ドイツの国土計画に中心地理論が応用されていく最大の契機は、国土調査全国共同体研究所長のMeyer(ベルリン大学)の中心地理論への注目であったが、学位論文提出後のChristallerは、フライブルク大学のMetzらの急進的民族主義(volkisch)地理学者たちとつながりを持つようになり、それも媒介として、ナチ・ドイツの国土計画に参画していった。2.人口の不均等分布の解消のみならず、原料・食糧の効率的な調達・供給も目ざしていたナチ・ドイツの国土計画論では、国土全域の階層的編成が求められていたので、中心地に加え、開拓集落、工業集落をも構成要素とするChristallerの集落システム論(1938年のアムステルダムIGCで発表)は、その要請に答えうるものであった。3.1939年9月のポーランド占領後、東方占領地の集落再編計画に中心地理論は応用されようとしたが、ポーランド語文献によれば、それに先立ち、1937年にはポーランドと国境を接するシュレージェン地方において、防衛上の観点から、中心地網の整備案が、国土調査全国共同体研究所の命を受けたブレスラウ大学の地理学者たちによって作成されていた事実が判明した。4.関連文献の引用分析だけからは、中心地理論の他の学問分野の集落配置プランへの影響を厳密に捉えることができないので、他の学問分野の関連文献を詳細に読み込む必要がある。5.ナチ・ドイツに受容された中心地理論が、1939年以降、占領地ポーランドで実際に応用されていく過程については、Christallerの1940年代の論文等を検討することで解明されるであろう。
著者
飯塚 博 兼岩 敏彦 高橋 武志
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

籾殻・大豆皮等の植物非食部を炭化焼成して得られる炭素粉体を用いたプラスチック複合材料の電磁波遮蔽・吸収材料としての可能性について検討した.複合材料の製造は,作製した炭素粉体と複合材料の母相となるプラスチック繊維を水中で分散混合する抄紙法を用いて行った.その結果,電磁波遮蔽性については,複合材料の導電性と良い相関があり,有意に材料設計が可能になった.電磁波吸収性には炭素粉体の粒径,粉体配合率,試料厚さ,導電性等が複雑に影響した.したがって,それらの最適な組み合わせを合理的に決定する手法の確立が求められた.本研究では電磁波の無反射曲線を求め,そこから製造条件を決定する手法を確立した.
著者
松田 嘉子
出版者
多摩美術大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

エジプト、スペイン、チュニジアで現地調査を行い、音楽家に聴き取り調査を実施した。アラブ古典音楽の新しい教育法についても調査した。また革命後の音楽事情を取材した。エジプト系オーストラリア人ウード奏者ジョゼフ・タワドロスを日本に招聘し、コンサートを開催した。期間全体を通じて、文献および音源の多彩な資料収集ができた。チュニジア伝統音楽研究機関「ラシディーヤ」との研究協力体制を強め、今後の展望が開けた。
著者
熊谷 幸博
出版者
東北大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は,河川水生昆虫の遺伝子レベルの生物多様性を低下させている環境因子を解明するために,膨大なDNA塩基配列の中で環境選択が起きている領域(遺伝子座)を検索することである。研究方法として,まず宮城県の6水系(名取川水系等)の源流から下流まで分布する計62地点の主要な水生昆虫4種(ウルマーシマトビケラ,ヒゲナガカワトビケラ,シロズシマトビケラ,フタスジモンカゲロウ)のDNAサンプルを得た。そして,個体間の遺伝的変異の大きさを定量化するAFLP法を用いて計1793個体のDNA多型分析を実施して129-473遺伝子座/種をジェノタイピングした。そして,ソフトウェアBayeScan等による遺伝シミュレーション解析に基づき,環境選択が働かない(中立)仮定下で出現する集団遺伝構造を確率論的に予測した。このシミュレーションでは,まずランダム予測を繰り返し,中立下における遺伝的分化係数Fstの理論出現分布を導く。そして,上記AFLP分析によるFstの観測値を,この理論分布の95%パーセンタイル値よりも極端に大きなFstを示したDNA領域を環境選択的領域として決定する。通常,環境選択を受けた領域の遺伝的分化は中立領域よりも大きくなる。以上の解析の結果,7-23遺伝子座/種が環境選択を受けていることを突き止めた。現地調査等で得た環境データ(標高,流速,BODや栄養塩類等の各種水質,河床材料,GISに基づく周辺土地利用状態等)とこれら環境選択遺伝子座の相関分析の結果から,ウルマーシマトビケラとヒゲナガカワトビケラは標高,シロズシマトビケラは河川水中クロロフィルa濃度,フタスジモンカゲロウはアンモニウム性窒素濃度が最も強く遺伝的選択を起こしている環境因子であることを推定した。
著者
岡田 桂
出版者
関東学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

スポーツ文化と男性性の結びつきに関して、昨年度から引き続き、主に19世紀のイギリスおよび英語圏を中心に研究・考察した。具体的には、文献による先行研究の分析と、イギリスで調査・収集した資料と情報を元に考察を行い、いくつかの業績としてまとめた。なお、当初予定していたアメリカでの参与観察は、大学における授業期間と重複したため行うことができず、研究計画前半部分にあたる、スポーツと身体、ジェンダーの歴史社会的考察を中心としたものに修正した。上記の考察により、近代における文化としてのスポーツは、身体そのもののイメージを仲立ちとした強固な男性ジェンダー領域として成立し、現在もその価値観を色濃く反映したかたちで存続していることを明らかにした。また、スポーツが、身体による"行為"(実際の行為であれイメージとしての行為であれ)と強く結びついた数少ない文化領域であることから、スポーツ文化がジェンダーのみではなく、身体そのものと、そこから派生するセクシュアリティ自体のイメージに大きな規程力を及ぼしてきたことの一端も明らかにできた。これは、現在行われているスポーツ活動に担わされたジェンダーと身体のイメージの恣意性を客観化し、よりニュートラルなスポーツ活動参加を促す上での理論的な視座となるはずである。また、スポーツ的活動と身体イメージに関する問題意識のうち、19世紀末から20世紀初頭の事例に関しては、主に「身体文化(physical culture)」に関する考察としてまとめており、これらは従来の研究で看過されがちな領域であったため、スポーツ研究、身体研究双方に対して一定の研究貢献となると考えられる。
著者
荒井 弘和
出版者
法政大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

研究1では、コレクティブ・エフィカシーを評価する尺度を開発し、信頼性・妥当性を確認した。研究2では、コレクティブ・エフィカシーの関連要因を検討した。探索的に実施した研究3では、ファシリテーションプログラムが、コレクティブ・エフィカシーを増強する可能性を確認した。追加で実施した、コレクティブ・エフィカシーの増強方略を収集した調査の成果も踏まえて、研究4では、コレクティブ・エフィカシーを増強するためのプログラムが備えるべき要素を提示した。
著者
内田 圭一
出版者
東京海洋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

一般的に,漁業では狙った生物以外の生物が混獲されることがある。直接的に海面下の環境をモニタリングすることのできない漁業者は,種々の生物の混獲状況から漁場の環境変化を推し測っている。本研究では水温や底質に注目し,あなご筒漁業で漁獲される混獲生物の関係を調査した。その結果,混獲個体数が多かった種より,幅はあるものの混獲時の水温との関係が明らかになるとともに,これらの種は環境指標生物として有効とあることが示唆された。今回対象としたあなご筒漁では,飼育実験から水温と混獲の関係は,対象生物の摂餌行動に依存しているものと考えられた。
著者
斎藤 早苗 河原 俊昭 高垣 俊之 ライト キャロリン 木村 麻衣子
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

次の3点に注目する。(1)現地調査のためのアンケート及びインタビューの調査票の作成と検討、(2)10の地方都市地域における外国人住民のための言語支援の実態の把握のため地方自治体の取り組みと外国人住民が直面している日常生活での諸問題問題の把握、(3)国際学会における研究の中間と成果発表である。調査の結果、様々な問題や不便さの中でも特に「表現の平易化」と情報が行き届いていないことが明らかになった。従って、地方自治体をはじめ、教育関係者や個々の日本人が外国人住民が健全にそして十分に参加できる共生社会づくりに向けて簡略化した言語の提供と生活に必要な情報の普及に関して対応策を打ち出すことを提言する。
著者
森田 健太郎
出版者
産業医科大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

1型糖尿病患者は現在増大しており、その原因の1つに環境因子が考えられている。日本では2000年以降黄砂の飛来が急増している。黄砂は浮遊粒子状物質であり、大気環境基準物質に指定されているが、糖尿病発症の環境因子になりえるかどうかは未だに不明である。そこで、本研究では、発症機序の異なる2種類の1型糖尿病モデルマウスの系を用いて黄砂が1型糖尿病に及ぼす影響を検討した。その結果、黄砂は1型糖尿病モデルマウスの系に依存して増悪因子とも抑制因子ともなりえることが示唆された。しかし、どのようなメカニズムによってこのような相反する結果が生じたのかは不明であり、今後さらなる検討が必要である。
著者
河野 守夫 牟田 弘 三浦 一朗 中嶋 鴻毅 杉戸 清樹 大山 玄
出版者
神戸市外国語大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1992

1.聞き取り(listening)のメカニズムについて(1)聞き取りを行う際に、発話の流れを聞き手は一定の単位で区切って極く短い期間一時的に記憶する(echoic memory)と考えられている。この単位をperceptual sense unit(PSU)と名付ける。これについて脳梁損傷者、1才6ケ月から9才0ケ月の幼児、健常な成人を含む、1000名以上の被験者を動員して20回以上の実験を繰り返した結果、perceptual sense unitとは「聞き手が一気に(holistically)に知覚することが出来る7つ(±2)以内の長さを基準の長さとする音節群が伝える1つの意味単位」であることがつきとめられた。(2)人間はある音節群をholisticallyに知覚するためには各音節が互いに300ms以内の短い間隔で結ばれていなくてはならない。Holisticallyに一気に知覚できる音節の数は大体7±2が限度である。一方、500ms以上間隔があくと各刺激を予想と検証の作業によって追跡する分析的知覚に切り替わる。両者は神経心理学に異質だが、listeningにはともに必要で、前者はPSUの形成に、後者はいくつかのPSU間の文法的意味関係を探る作業に深くかかわるuniversalな現象である。(3)Hosticallyに知覚された音節群は、分析的に知覚された音節群よりも有意に長く、echoic memoryに格納される。2.Productive sense unitについてPSUと同類とみられる単位が、吃および発話失行症患者の発話に、一定のprosody上の特徴を伴って、観察される。特に、後者の発話にはPSUに見合うproductive sense unitが存在する確たる証拠がある。3.拍・音節と言語のリズムについて(1)1才6ケ月の幼児の発話にみられるリズム現象を規定する要因は、拍ではなくて音節である。(2)言葉のリズムのlanguage specificな現象は各言語の音節構造と深い関係がある。4.ジェスチャ-と言葉の知覚・認識について(1)lconixから談話の意味をとる作業は言語能力と高い相関関係がある。(2)ジェスチャ-の単位は上記のPSUとほぼ、一致する。(3)ジェスチャ-は発話と同期するか、それより早い目に生起する。この順を機械的に逆にして、ジェスチャ-を発話より1秒遅らせると、発話を理解する作業は有意に阻害される。(4)母国語よりも外国語の発話でジェスチャ-が多用される。(5)英米人は所作がおおげさだが、ジェスチャ-の使用率は日本人と変わらない。
著者
黒川 雅幸
出版者
福岡教育大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

もったいないと感じることには、価値の損失、価値あるものの未発揮、再利用・再生利用可能性の消失、投資分の未回収、無駄な出費、の 5 つの生起先行条件があることが明らかになった。また、もったいないと感じることによって、もったいないと感じないようにその後の行動の改善が動機づけられることが示唆された。最後に、価値の損失や再利用・再生利用可能性の消失によってもったいないと感じやすいことは環境配慮行動を説明した。
著者
小野 克彦
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

我々は、有機π電子系にホウ素キレートを導入すると分極構造が誘起され電子受容性が発現することを見出した。本研究では、このコンセプトを用いて高性能なn型有機半導体の開発を目指した。分極構造によって発生する正電荷は電子受容性の発現には必要であるが、正電荷間で生じる静電反発によりπ電子系が不安定になる。これを本研究の解決すべき課題と考え、ビチオフェン誘導体の改良を行った。πスペーサとして二重結合や三重結合を導入し、正電荷間で生じる静電反発の減少を調査した。加水分解反応の速度論解析と電気化学測定から、二重結合をもつ分子で静電反発の大幅な減少が確認された。
著者
安達 真由美 金内 優典 半田 康 多賀 昌江
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では78人の妊婦を18~22週、23~27週、28~32週、33~36週に分け、音楽に対する生理・心理的反応、気分、気質、普段の食生活、ストレス解消行動における妊婦の個人差が、音楽に対する胎児の動きとどう関連するのか、また、ヘッドフォンを通して妊婦が音楽を聴いている時と、家庭用スピーカーから普通の音量で胎児のみが音楽に接触している時の違いを探究した。 その結果、週齢および音楽の呈示方法に関わらず、2割程度の胎児が音楽に対してより動くことが明らかになった。また、妊婦がストレス軽減につながるような食生活や活動を行っている頻度が高いほど、音楽に対して胎児がより動くという傾向が明らかになった。
著者
大前 慶和
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

体験型環境教育の重要性が主張されている。しかし、体験型環境教育がすぐさま環境配慮行動に結びつくわけではない。むしろ、体験型環境教育は環境価値に対する自己判断のプロセスを経ることによってはじめて環境配慮行動に結実すると見るべきである。そこで、大学生を対象とした環境教育プログラムを構築した。アクティブ・ラーニングを促すプログラムであり、生ごみのアップサイクルによってスイーツをプロデュースするプログラムである。課題解決型学習プログラムと言える。エコスイーツ活動と呼ばれる活動内容となっており、大学生は様々な活動を通じて実行可能性を自ら評価する能力を習得できるようになっている。
著者
布施 光代
出版者
明星大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,小学校の児童の積極的授業参加行動のうち授業に集中して聴き,教師の指示に従うなどの授業の基本となる行動である「注視・傾聴」行動に注目し,その行動を促進する要因,阻害する要因を検討した。また,実際の小学校の授業観察の結果から,「注視・傾聴」行動の多い児童,少ない児童の行動の特徴を描き出した。これらの結果をもとに,「注視・傾聴」行動を促進するためのプログラムを検討したい。
著者
平田 郁恵
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

本期間中には,回路素子として前期間に作製したトランジスタの動作特性の解明を行った.具体的には,自己組織化単分子膜の共吸着によって作製した自己組織化単分子膜(self-assembled monolayers; SAM)の表面形状と電位を測定し,トランジスタ特性の変化と比較した.また,共吸着されたSMA上の有機半導体の結晶構造の変化を観察した.まず,共吸着されたoctylphosphonic acid(HC8-PA)とperfluorooctylphosphonic acid(FC8-PA)の表面形状と電位をKFMによって観察した. FC8-PAの混合比であるχが大きくなるにつれ表面電位は平均的に上昇した.しきい値電圧の変化はビルトイン・ポテンシャルによって誘起される固定電荷をもとに考えるモデルに従うことがわかった.また,χが小さくなるにつれ,絶縁膜表面が平滑化されることがわかった.この結果は,SAM混合比と絶縁膜表面のトラップ密度との関係とも整合性がある.すなわち,FC8-PAの増加によって,表面の平坦性に起因するトラップ密度が減少したと考えられる.次に,共吸着したSAM表面に有機半導体であるdinaphtho[2,3-b:2’,3’-f]thieno[3,2-b]-thiophene(DNTT)を熱蒸着し,その結晶構造についてXRDを用いて観察した.その結果,混合比を変えることによって,特にb軸方向の結晶面間の増加が顕著となることがわかった.DNTT結晶でホール移動度について最も実効的であるのがa軸,次にb軸である.トランジスタとしての移動度の変化は,これに起因するものであると考えられる.
著者
根立 研介 中村 俊春 平川 佳世 安田 篤生 稲本 泰生 深谷 訓子 劔持 あずさ 松岡 久美子 宮崎 もも 中尾 優衣 田中 健一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

美術史の転換期の問題は、何を強調するかで、美術史の語り方が大きく変わってくることもある。本研究は、従来美術史で語られてきた枠組みを再検討するための試みである。特に、大きな成果は、通常日本の古代末期に登場したとされてきた彫刻の和様の問題である。近年の日本史学の成果を取り入れると和様の成立は、中世初期とすることが可能かと思われ、和様は日本の中世期を貫く重要な様式であったことなどを明らかにした。また、この和様の成立には、中国の唐から宋への転換期の問題も深く関わることを明らかにした。