著者
マイヤー ノーバート ミヒャエル
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

1.試作機による実験実験環境は終了しました。傾斜および全ての必要設備は2007年度の財政で終了しました。また安全面についても考慮しました。一つの重大な危険性はローターによるものです。ほとんど起こりえないことですが、ローターが突然押さえられ、外枠が急速に回転を始める可能性があります。この目的のため、足はそれぞれ外枠から独立に動かせるように外枠に取り付けられています。外枠の急速な回転は足の動きや損害、傷害の原因にはなりえません。更なる安全強化のために、試作機が倒れて地面にぶつけるのを避けるために、スチールワイヤーによるケーブルカーのような構造を設計しました。構造は試作機の普通の運動時には妨げにならないように出来ていなければなりませんでした。ジャイロの初期構造はモーターの耐え切れない侵害となっていました。(今年の初めの月に3個のモーターが壊れました)この問題は機械的にギアのペアによってモーターの軸とローターの軸を離すことによって解決されました。実験は明らかに試作機のヨーとロール回転を安定化しましたが、他の機械のパーツにまだ問題があることがわかりました。一つの問題は足裏の形状によって足を地面に擦るフットスカッフィング現象が起こり、歩行を不可能なものにしました。結果として、最初の形状から足に接着物を取り付けて修正しなおしました。現在、明らかな問題は不安定な振る舞いの原因になっている膝の設計にあります。2.会議とジャーナルでの以前の結果の流布以前の結果はジャーナル誌および、会議の議事録誌などに出版されました。この論文では、ジャイロのダイナミクスがいわゆる2次元受動歩行ロボットに比べ、特に膝なし形状において安定化されることを議論しています。これはポワンカレマップのようなカオス理論による手法で行われています。また、膝ありロボットによる結果についてもこれらの出版物に要約されています。
著者
梅原 徳次 後藤 実 月山 陽介 野老山 貴行 吉野 雅彦 川口 雅弘 上坂 裕之 村島 基之
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2013-05-31

摩擦誘導ナノ構造層による超低摩擦の安定指針を得るため2つの装置を試作し、超低摩擦発現モデルを提案した。「超低摩擦発現ナノ構造変化層の摩擦時その場計測装置」により、カーボン系硬質膜の無潤滑時の超低摩擦は摩擦で形成するナノ構造変化層の厚さ、硬さ及び表面粗さが重要で、それらのパラメータを用いた「薄膜固体潤滑理論」が超低摩擦モデルとして妥当であることを定量的に明らかにした。また、「超低摩擦摩擦面の表面エネルギーのESEM内その場評価装置」により、摩耗痕の表面エネルギーの低減が摩擦低減に有効であることを定量的に明らかにし、超低摩擦が発現した際はナノ構造層の内部で摩擦する超低摩擦メカニズムを提案した。
著者
田母神 繁
出版者
秋田県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

植物ホルモンは害虫の食害ストレスに対応するシグナル物質として機能する。特に食害葉ではジャスモン酸(JA)関連代謝物が機能し、不活性なJAがアミノ酸のイソロイシンと結合して活性体のJA-Ileに活性化される。植物の葉が食害されると遠隔葉で抵抗性が誘導される現象があり、メチルジャスモン酸(MeJA)は有力な移行性シグナル物質の候補である。モデル実験植物(ヒナタイノコズチ)の下部から投与したMeJAの上葉への移行と代謝を解析し、MeJAは移行先で活性体のJA-Ileに変換されることを示した。さらに、MeJA水溶液に重水を加えることで、誘導されるテルペンがde-novo代謝物であることを見出した。
著者
橋本 啓
出版者
宇都宮大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

アリルイソチオシアネート(AITC)には1割程度の弱いポリフェノールオキシダーゼ(PPO)抑制活性しか認められなかったが、AITC溶液を加熱することによりPPO抑制活性が発現した。また、ナスのアントシアニン系紫色素であるナスニンのPPOによる損失を加熱処理AITCは完全に抑制し、ナス皮からのナスニンの抽出量を約2倍にした。食品加工時に生じる規格外ナス中に含まれるアントシアニンの安定的かつ効率的な回収法につながると期待された。
著者
中西 美和
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、透過型のヘッドマウントディスプレイ(HMD)を利用した強化現実(AR)の技術を、作業マニュアルに応用することを目指し、そのためのヒューマンファクターガイドラインを示した。特に本研究では、作業マニュアルによって与えられるインストラクションの内容、及びそれが用いられる際の作業状況を考慮し、各ケースにおける応用可能性を、ヒューマンファクター実験による評価に基づいて明らかにした。
著者
稲葉 哲郎
出版者
立命館大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

政治的知識,マスコミ接触,法定選挙媒体接触,政治広告に対する評価を主要な内容とする意識調査を総選挙後に大学生312人に対しておこなった。政治的知識は,政策争点や政治制度とは直接関連のないような「ソフト」な政治的知識(例「橋本首相の趣味」「理系出身の党首」)を6項目,政策争点や政治制度と関わる「ハード」な政治的知識(例「新しい選挙制度の呼び名」「消費税据え置きと減税を公約に掲げた政党」について6項目の調査をおこなった。正答率の低かった1項目を除く11項目について対応分析をおこなったところ,第1軸の固有値が高く,政治的知識はおおむね1次元を成しているといえる。ただ,第2軸について検討をしてみると,1項目を除き,あらかじめ想定された「ソフト」と「ハード」な知識を分離する軸となっていた。従って,政治的知識は,たがいに相関が高い2つの次元から形成されていると考えられる。次いで,これらの「ハード」な知識と「ソフト」な知識についてマスコミ接触や法定選挙媒体接触との関連を検討した。法定選挙媒体との関連では,「ハード」な政治的知識の知識量は政見放送,政党のテレビコマーシャル,新聞広告への接触との相関が「ソフト」な政治的知識の知識量より高かった。また,マスコミ接触では,「ハード」な知識,「ソフト」な知識とも新聞,テレビニュースへの接触量との相関がともに高かったが,「ハード」な知識は「家族との話」との相関が高く,「ソフト」な知識は雑誌への接触との相関が高かった。「ソフト」な政治的知識の話題の情報源として考えられていたワイドショーへの接触は相関が低かった。今後の課題としては,政治的知識を筆記において測定する場合における中間回答の判断の問題,成人の政治的社会化に伴う政治的知識の次元の分化,があげられる。
著者
服部 英雄 五味 文彦 神田 由築 高野 信治
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

差別される環境に耐えて、力強く生きた人びとの歴史を明らかにした。これまでの歴史叙述では賤民視された彼ら彼女らは貧しく劣悪な環境におかれ、虐げられた生活のみを強いられたとされてきた。それは一面ですべてではない。教科書には河原ノ者は河原に住んだと記述するものがある。このような歴史理解では、子孫が祖先の活動を誇ることはできない。「ムラ」がなかなかに解体しなかったのはなぜか。富みは確実にあった。皮革製品・製作加工業の独占である。海外交易にても不足を補充、富みを蓄積した。周囲の目は残酷で冷たかったが、かばいあうムラの中は暖かく、一般ムラよりもむしろ真に人間らしい、やさしさがあった。
著者
山内 誠
出版者
仙台高等専門学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2012

本研究は、これまで研究者らのグループが行ってきた、簡易電気自転車開発、競技用簡易電気自動車開発の技術と研究成果を基に、アシスト付電動補助リヤカーを母体とした電源供給や照明設備等を兼ね揃えた災害時支援ミニステーションの構築実現を目的として、以下の研究活動を行った。研究実施計画に沿って報告する。1.災害時用の電動補助付リヤカーの設計・製作駆動システムの試作検討を行い、電流センサを用いたマイコンにての左右二輪トルク制御の駆動システムとダイレクトドライブを用意し、安定した駆動性能と信頼性を実現した。2.双方向型降圧チョッパ回路を利用した人力による電気自転車用発電回路の設計・製作当該回路の発電性能を評価し、発電効率の改善を試みた。データロガーを使用して、システムの完成度と改良点を確認した。3.自作発電システムと市販発電装置の性能比較と安全性の検討実用性と安全性を重視し、リヤカーに搭載する発電装置の比較・検討を行った。今回の製作したリヤカーには、市販の発電装置を搭載し、自作発電システムは引き続き改良と開発を行う。4.電動補助付リヤカーを母体とした発電装置を有した災害時のためのミニステーションの設計・製作リヤカーの駆動輪は荷台の下に配置し、車輪半径分のスペースは、防災用品等を収納可能な二段構造とした。駆動用回路・バッテリーの他、予備バッテリー、LED照明装置、ラジオ・ヘルメット等の防災グッツを収納。荷台サイズは要救助者搬送も考え、1000×2000mm。長イスに変形できる救助用担架も製作、平時は搭載する。5.実用性の評価と商品化の検討、研究取りまとめ駆動方法の検討、発電・蓄電装置の性能と問題点を確認した。設計・製作においては、被災経験から震災時に必要と考えられるコンセプトを最大限に取り入れたことから、やや重量超過の感が認められるも、実用性は十分である。今後は搭載したコンセプトを提示して、必要なものを選択し製作できる、震災用簡易リヤカーの設計・製作に向けて研究活動を行っていきたいと考えている。
著者
何 燕生 末木 文美士 佐藤 弘夫 池上 良正
出版者
郡山女子大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

栄西や道元、円爾などの入宋僧の精神世界について、実地調査に基づきながら、文献学および宗教学の視点から再検討し、中世宗教研究の新たな展開を図かろうとした。具体的には、まず入宋僧たちが当時訪れたとされている現在中国の杭州や寧波、天台山、普陀山などの地域の寺院におけるそれぞれの足跡を実際に調査し、経済成長と宗教復興が進む近年において、それらの遺跡が一体どのような現状におかれているかを確認した。次はそれらに対する分析を踏まえつつ、歴史的、宗教的コンテキストに即して総合的な理解を試みようとした。さらには、仏教学や日本思想史などの諸分野による関連研究とも連携し、可能な限り学際的に検討することを目指した。
著者
青西 亨 宮川 博義
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

近年、2光子顕微鏡などのイメージング装置の急激な発展により、細胞内のカルシウム動態を時空間的に高解像度で計測可能となった。我々は、高解像度カルシウムイメージングデータの解析手法を開発した。研究I:カルシウムイオン濃度と観測可能な蛍光シグナルの間にある物理過程を状態空間モデルで記述し、細胞内カルシウム濃度を推定するベイズ統計手法を開発した。研究II: 樹状突起内のカルシウム波を定量的に解析する手法を開発した。研究III: 高解像度多細胞イメージングデータに非負値行列因子分解を適用し、細胞体や樹状突起などの機能単位の蛍光信号を自動的に分離するアルゴリズムを開発した。
著者
楊 大慶
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012

本研究の第一年目の計画は資料収集と研究準備の段階を設定しております。今年度は一連の図書館、博物館、史料館で19世紀後半における長崎、浦塩、上海と海底電信に関する史料収集を行った。具体的に長崎市では海底線史料館、長崎歴史文化博物館、長崎県立図書館で、上海市では上海市図書館、上海市档案館、上海市電信博物館でウラジオストク市立ゴーリキー図書館、国立遠東大学図書館、国立アルセーニエフ総合博物館、アムール地区研究会図書館で文献資料収集した。集めたロシア語の史料の一部を英語に翻訳してもらいました。又はデンーマクの学者の協力を得て、大北電信会社の営業報告書の一部を入手した。極東アジア都市史と通信史の先行研究も購入した。さらに資料収集と共に、中国ロシアの研究者と都市史、通信史について有意義な交流が出来ました。これらの研究活動によって、19世紀後半から20世紀に初期にかけて長崎、浦塩、上海における「通信事情」と研究状況を解明することが出来ました。言うまでもなく、これらの研究活動は本研究の基盤である、こらから、史料の補足と分析する必要がある,これに基づいて、技術史、都市史等の諸分野の最新研究に照準し極東アジア地域通信史への新視角を構築することが出来ると信じている。
著者
若月 光夫 富田 悦次 西野 哲朗
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

決定性プッシュダウン変換器のスタック記号を1種類に限定した決定性限定1カウンタ変換器について,それが最終状態受理式の場合,より一般的なε-推移を持つ場合についてもその等価性判定及び包含性判定が多項式時間で行えることを明らかにした.また,実時間最終状態受理式決定性限定1カウンタ変換器に対して,所属性質問及び等価性質問を用いた多項式時間の学習アルゴリズムを開発した.更に,正則言語の部分クラスに対する正例からの極限同定を組み込んだジュウシマツの歌構造解析ツールEUREKAを利用することによって,コンピュータ上でトランプゲームの大貧民の対戦を行うプログラムの挙動の規則性が抽出可能なことを示した.
著者
牛島 光一
出版者
筑波大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

本研究プロジェクトでは人的資本の蓄積に関する3件の研究を進めた。①子供の健康の評価と母親の教育水準の関係:教育水準の高い母親ほど子供の健康を評価する能力が高いかを調べた。教育水準の低い母親ほど病院に入院するような病気であっても子供を病院に連れて行っていなかったことを示した。②医療制度の導入が家計の予備的貯蓄に与えた影響:新たに導入された医療保障制度が家計の医療支出の不確実性を減少させることを通じて貯蓄行動を変化させることを示した。③健康投資としての居住地選択:環境政策が人々の健康投資行動に与える影響について研究を行った。持ち家率の高い地域ほど大気環境への限界支払意志額が高くなることが分かった。
著者
苑田 亜矢 直江 眞一
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

12世紀後半に作成された教令集や教会法学文献の写本の分析に基づいて、アングロ・ノルマン学派およびアングロ・ノルマン教会法学の形成と展開を跡づけるとともに、とくに重罪聖職者の取り扱いに関係する二重処罰禁止原則についての初期のアングロ・ノルマン学派の法理論および成立期コモン・ローの法理論に相互関係が認められることを明らかにすることができた。
著者
日下志 厳 磯貝 典孝
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

自家移植を目的とする耳介軟骨の再生実験として、自家膝関節(犬)より採取した軟骨細胞を単離し、耳介形状を有する生分解性ポリマーに播種した。実験群として、4群(軟骨細胞のみを播種した群、骨膜組織のみを縫合した群、軟骨細胞を播種した後、骨膜を付加した群、基材のみの群)を作成し、自家移植およびヌードマウス皮下へ移植した。その結果、ヌードマウス移植後11週目において、耳介形状を有する複合体の外観形態を観察したところ、耳介形態は、全ての群において保持されていた。また、組織学的検討を加えた結果、軟骨細胞群および軟骨細胞滑膜群において、分化した小円形の軟骨細胞とSafranin Oに強く染色された細胞外基質が認めれた。一方、骨膜群では、基材の骨膜側に沿って骨組熾の形成が認めれた。また、基材のみの群では、わずかなマクロファージ様細胞の浸潤は認めたが、軟骨、骨絹織などの新生組織の形成は認められなかった。Laser capture assisted PCR法の結果より、コラーゲンII型の遺伝子発現は軟骨細胞群および軟骨細胞/骨膜群のみに認めれ、特に、軟骨細胞/骨膜群では発現がdown regulationされる傾向を認めた。今後、自家移植モデルにおける長期的観察の結果を検討している。
著者
村本 哲哉
出版者
東邦大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

細胞間での遺伝子発現がばらつく変異株の単離を試みた結果、4種類の興味深い変異株が得られた。そこで、母細胞での転写の活性化状態が、娘細胞でどの程度失われているのか、遺伝子の転写を生細胞内で長時間計測するライブイメージング技術を用いて検討した。その解析の過程で、発生分化開始直後にはランダムな振る舞いをしていた発生の遺伝子が、発生分化開始後5時間で、細胞集団全体で同期して活性化と不活性化を繰り返すという非常に興味深い現象を発見し、その詳細なメカニズムを解析した。
著者
荒瀬 尚 香山 雅子 末永 忠広 平安 恒幸
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

我々は、ミスフォールドしたMHCクラスI分子を細胞外へ輸送する分子としてMHCクラスII分子をクローニングした。そこで、他の蛋白質を解析したところ、卵白リゾチームや抗体の重鎖、さらに、リポ蛋白質の一つであるβ2GP1がMHCクラスII分子に結合することで、細胞外へ輸送され、関節リウマチや抗リン脂質抗体症候群で産生される自己抗体の特異的な標的抗原になっていることが判明した。一方、ミスフォールド蛋白質輸送分子を明らかにするために、細胞表面のミスフォールド蛋白質に会合している分子の検索を行った。その結果、質量分析によって、いくつかの候補分子が同定された。
著者
吉田 直人
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

クリソタイルは天然に産出する水和ケイ酸塩粘土鉱物で、針状の結晶として成長する。多くの工業製品に利用されていが、人が長期間にわたって吸入するような機会に遭遇した場合、健康影響が懸念されている。本研究ではクリソタイルと細胞との間にどのような相互作用があるのか、細菌細胞を用いて明らかにした。溶液中で大腸菌とクリソタイルを混合するのみでは、クリソタイルは大腸菌の生育になんら影響を及ぼさない。ところが弾性体上にて曝露させると大腸菌とクリソタイルに物理的変化が生じることがわかった。寒天等の弾性体上にてクリソタイルと共に曝露させる方法を考案し、曝露装置を開発して実験に供したところ、曝露時間が長くなるに従って生細胞は漸次減少した(弾性体曝露)。曝露後の大腸菌を電子顕微鏡にて観察すると、クリソタイルの細胞膜への穿刺が確認された。本実験条件においてクリソタイルは細菌に対しては変異原となるのではなく、ミサイルのように穿つといった物理的で性急な反応をもたらすと結論づけた。クリソタイルにプラスミドを付着させ、大腸菌をクリソタイルと共に弾性体曝露させたところ10^7/μg DNAの効率でプラスミドを取り込んで、抗生物質耐性に形質転換することを見出した。クリソタイルは溶液中では6-9μmの凝集体あるいは、さらに細かい針状結晶として浮遊している。曝露の過程では、曝露時間に伴って水分が弾性体中に浸透していくので、クリソタイルの濃度が弾性体表面では上昇する環境が生まれる。この過程でクリソタイルは自己凝集し、栗のいが状になることが判明した(いがぐり状化凝集)。その時にすべり摩擦力が同時に加えられので、細菌を付着したいがぐりが滑っていくような物理現象を明らかにした。これら一連の研究において、すべり摩擦力を利用した生物工学の概念を創出し、摩擦生物工学として新たな研究分野を切り開いた。
著者
高櫻 綾子
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

幼児が日常的に交わす発話には幼児間の関係性が反映すると考えられる。なかでも「ね」発話(e.g.一緒に遊ぼうね、ね~仲間に入れて)は幼児にとって身近な発話である反面、情動や意図が暗黙的に込められることから、遊びや会話を成立させるには「ね」発話を間主観的に理解し、相手との関係性に応じた相互作用を交わす必要がある。そこで本年度は保育園の3歳児クラス20名を対象に1年間(各月2回)の参加観察を行って得たデータをもとに「ね」発話に着目して幼児間における親密性について検討した。まず「ね」発話を用いた相互作用と親密性形成との関連を検討した結果、呼びかけの「ね」発話により相手の注意を喚起し、語尾につける「ね」発話によって聞き手への配慮を示すことで、相手からの応答を引き出しやすくなり、二者間での間主観的な理解を促進することが明らかとなった。またこうした相互作用が親密性形成の基盤になると同時に、二者間での親密性の深化に伴い、第三者によって生起された事象に対する情動や意図についても互いの内的状態を間主観的に把握することを示した。さらに3歳児は「ね」発話を実際に使用し、相手の反応を得る中で「ね」発話の使い分けを獲得することを明らかにした。特に親密な二者間と第三者との間では、遊びの開始や内容を呼びかける「ね」発話に差異が認められた。また「ね」発話同様、3歳時期の会話に多用されている終助詞「よ」と比較した結果、自らの意図を明確に伝えたい文脈では「よ」を使用し、相手に配慮を示し、共感を得る中で遊びや会話の成立を図ろうとする文脈では「ね」発話を使用することが明らかとなった。よって3歳児は「ね」発話を手掛かりに互いの情動や意図を間主観的に把握するなかで親密性を形成し、相手との親密性やその場の状況に応じて「ね」発話を使い分けることが明らかとなり、「ね」発話が幼児間における親密性を捉える指標になることを示した。