著者
中川 佳英
出版者
富山県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

ヴァルター・ベンヤミンは、彼の著作「ゲーテの『親和力』」において、ゲーテが、この小説のなかで、彼の自由志向にもかかわらず、一方で宿命的な人生観、世界観に捉えられていることを指摘し、これを「神話的な力」と名付けた。本研究は言わばこの見解の批判的発展である。2005年秋に独文学会北陸支部研究発表会で口頭発表をした、「ゲーテ『タウリス島のイフィゲーニエ』と犠牲」においては、犠牲を迫る諸力(=神話的な力)と犠牲の儀式を廃止しようとする意志(=自由への意志)が当該作品の中で、どのように対決し、展開していくかを論証しようとしたものである。これは冊子体の科研費研究成果報告書に掲載されている。また、同報告書に同論と並んで掲載されている他の2論文について概要を述べると、まず、「『ファウスト』第二部第三幕におけるヘレナとフォルキュアス-美の啓蒙運動」においては、ヘレナの美という、文字通りの「神話」が、弱肉強食の生存競争を包摂しており、メフィスト扮するフォルキュアスとの口論を通じて、それがあぶり出され、最終的にヘレナの脱出という形で、この「神話」の克服が希望されていることを示した。つぎに「『親和力』における情熱、延期、昇華-オッティーリエとエドアールトを中心に」においては、情熱という、本来既成倫理や因習、すなわち神話的な威力をもったものを打破する力となるべきものが、度重なる「延期」行為を通じて、フロイト的昇華作用を受け、その結果、情熱自体が審美的方向に変質してしまう様を示した。以上、当初の予定では、「ゲーテ『タウリス島のイフィゲーニエ』と犠牲」を含め、これら3つの論を学会誌に発表した上で、同報告書に掲載するつもりであったが、諸事情から、そのための時間を得られなかった。しかし3つの論とも、近いうちにしかるべき学会誌に掲載するつもりである。
著者
西薗 秀嗣 中川 功哉 須田 力 斎藤 勝政
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.17-26, 1984-02-01
被引用文献数
1 6

アーチェリーのシューティングについて,日本のトップアーチャー2名並びに技術水準の異なる男子大学生アーチャー15名の上肢,上肢帯,体幹筋の筋電図記録,動作分析を行い,以下の知見を得た。1)初心者及び経験5年程度の中級者では,セットアップ,ドローの初期から上肢の放電が著しく,フルドローに入って左右側の筋緊張が不安定な状態でリリースがなされる。これに対してトップアーチャーでは初期から上肢帯,体幹筋の活動が大きく,フルドローでは左右側で均等な強い筋活動がみられた。さらに,フォロースルーで一定時間,筋活動が安定して持続し,合理的な筋の作用がなされていた。2)トップアーチャー2名において,リリースに先行して両側の三角筋肩峰部で筋放電休止期Silent Period(S.P.)が認められ,さらに1名で押し手(左)僧帽筋横部でも認められた。3)大学生アーチャー12名、について,経験年数と成績から上級者,中級者,初級者に分け,三角筋でのS.P.の出現率,潜時,リリース反応時間について検討した紬果,初級者ではS.P.の出現は2名に認められたが出現率は低く,リリース反応1時間は190〜230msecと長く,かつ分散している。上級者では全員S.P.の出現があり,出現率は70〜100%と高く,S.P.潜時及びリリース反応1時間の平均値はそれぞれ,115msec,175msecとなり,しかもばらつきが少ない。4)引き手(右)三角筋のS.P.の出現と同側僧帽筋の活動増強の時期が,特に上級者群でほぼ一致した。この両筋は神経支配が異なり,リリース動作での拮抗筋と考えられず,リリース動作での一連の主働筋と考えられる。これらのことから,アーチェリーのシューティングという複雑な動作で出現したS.P.は,長期にわたるトレーニングによる巧緻性獲得過程にみる一つの合理的な神経筋機構であると考えられる。
著者
和泉 光紀 中川 健治 横谷 哲也
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J94-B, no.5, pp.698-707, 2011-05-01

ネットワークシミュレータNS-2を用いてDRR (Deficit Round Robin) のパケット廃棄確率を推定する.IS (Importance Sampling) シミュレーション法を適用し,シミュレーションを高速化し,かつ推定精度を向上させる.その際,推定値の分散を最小にする分布,いわゆる最適シミュレーション分布を決定して使用する.MC (Monte Carlo) 法とIS法によるシミュレーション結果を比較し,考察する.
著者
米田 真弓 (中川 真弓)
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本研究の柱の一つは、日本中世における願文執筆活動を明らかにすることである。その研究の始発として、中世菅家の礎を築いた菅原為長(1158~1246)に着目した。実用的・幼学書的性格を有するものが多く、作文集・作例集の存在も留意される為長の著作のうち、子孫・後世に影響を与えたと考えられる願文集である『菅芥集』(『続群書類従』所収「願文集」の本来の書名)を取り上げ、各願文を読み解くことによって為長の執筆活動を明らかにし、さらには願主ならびに供養対象者の伝記史料しての位置付けをおこなった。特に書写山円教寺関連の願文に着目し、為長による「性空上人伝」の文献的利用について明らかにして、これを論文にまとめた(「祖師の伝記-菅原為長と性空上人伝-」、阿部泰郎編中世文学と隣接諸学2『中世文学と寺院資料・聖教』竹林舎)。当論文によって、菅原為長の執筆活動だけではなく、中世初期における書写山円教寺の状況の一端が明らかになったと考える。また、研究のもう一つの柱としている寺院調査については、以前より参加している金剛寺科研調査(科研代表者:後藤昭雄氏成城大学)において、仁木夏実氏と共同で同寺所蔵の「無名仏教摘句抄」を閲覧・調査し、解題および影印と翻刻の紹介をおこなった(「金剛寺蔵『無名仏教摘句抄』-解題と影印・翻刻」)。さらに、岡山県倉敷市日差山宝泉寺の所蔵資料調査についても、引き続き現地での調査・検討をおこなった。今後も所蔵者の許可を得て、目録の作成作業を続ける予定である。
著者
中川 成美 西 成彦 木村 一信 フォックス チャールズ 富田 美香 ベルント ジャクリーヌ
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

<平成16年度研究概要>日本文学・文化研究の国際的ネットワーク・データ・ベースの基礎構築として平成16年度には以下の研究を促進した。1 基礎データベースの作成に関する打ち合わせ(平成16年7月)2 欧米・アジア・オセアニア圏において日本文学・文化に関する講座を設置する大学、研究機関の調査3 欧米・アジア・オセアニア圏において日本文学・文化を研究する研究者の調査4 欧米・アジア・オセアニア圏において日本文学・文化に関する講座・講義・シンポジウム・学会などの調査(2から4までを夏休み休暇中に調査終了)5 調査で得た情報をもとにデータベースを入力(平成16年9月から平成16年12月)6 5の基礎データをもとにより精査して、ファイリング・テクストに変換して参照・使用に供するようなデータベースの作成(平成17年1月から3月)7 日本文学・文化研究国際ネットワークの仮称のもとにデータ交換を主要拠点大学を中心に広報した。(平成17年3月)<平成17年度研究概要>日本文学・文化に関する研究者、研究機関、大学等における講座、研究機関の国際的なデータベースの第一次基礎データベースを作成した。ここでは文学・文化と視覚性の問題に関与すると思われる要項を抽出しておこなった。包括するのは北米、ヨーロッパ、アジア、オーストラリアであり、主にアメリカ合衆国、オーストラリア、韓国、中国、イギリス、フランス、ドイツに関しての約1000件のデータが収集された。これを検索サーチ用にファイル化したが、今後はこの基礎データをもとにより詳しいデータを加えていけるための形式を完成した。今回の科研にて焦点化した文学・文化と視覚性の基礎理論構築に関しては、2006年2月に視覚理論に関するシンポジウム「映画・女性・権力-ジェンダーと視覚性-」をおこなった。
著者
白石 貴司 筒井 健 中川 英朗 江崎 哲郎
出版者
一般社団法人日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.23-33, 2008-04-10
参考文献数
13
被引用文献数
1

本研究では,台湾大甲渓支流の小雪渓流域(22.0km^2)を対象に,2004年7,8月のミンドリ,アイリ台風に伴う豪雨により発生した土石流に伴う土砂移動の分析を試みた.高分解能衛星画像のステレオ解析から作成した5mメッシュのDEMと2次元衛星画像解析により,土砂移動の範囲を抽出して,これを斜面崩壊地と河道に区分し,それぞれの分布の変遷,土砂移動量,地形的特徴を分析した.その結果,小雪渓流域では,集集地震時に発生した斜面崩壊により,崩壊土砂が斜面下部や河道に堆積し,ミンドリ,アイリ台風時の豪雨で,集集地震時の堆積土砂が,斜面や河道を流下して土石流となり,大規模な土砂移動に至ったことがわかった.このときの斜面崩壊地の生産土砂量は9,814千m^3,堆積土砂量は2,898千m^3,河道の洗掘土砂量は1,353千m^3,堆積土砂量は2,387千m^3であり,小雪渓流域から大甲渓本流への流出土砂量は,5,882千m^3であった.本研究で提案した土砂移動の分析手法は,広域砂防計画のための新たな有効手段の一っになり得ると考えられる.
著者
グェン ミンティ 川村 隆浩 中川 博之 田原 康之 大須賀 昭彦
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.166-178, 2011 (Released:2011-01-06)
参考文献数
31
被引用文献数
2

In our definition, human activity can be expressed by five basic attributes: actor, action, object, time and location. The goal of this paper is describe a method to automatically extract all of the basic attributes and the transition between activities derived from sentences in Japanese web pages. However, previous work had some limitations, such as high setup costs, inability to extract all attributes, limitation on the types of sentences that can be handled, and insufficient consideration interdependency among attributes. To resolve these problems, this paper proposes a novel approach that uses conditional random fields and self-supervised learning. Given a small corpus sample as input, it automatically makes its own training data and a feature model. Based on the feature model, it automatically extracts all of the attributes and the transition between the activities in each sentence retrieved from the Web corpus. This approach treats activity extraction as a sequence labeling problem, and has advantages such as domain-independence, scalability, and does not require any human input. Since it is unnecessary to fix the number of elements in a tuple, this approach can extract all of the basic attributes and the transition between activities by making only a single pass. Additionally, by converting to simpler sentences, the approach can deal with complex sentences retrieved from the Web. In an experiment, this approach achieves high precision (activity: 88.9%, attributes: over 90%, transition: 87.5%).
著者
中川 信治 藤川 義人 坂井 知志
出版者
日本教育情報学会
雑誌
年会論文集
巻号頁・発行日
no.26, pp.198-201, 2010-08-21

学校で行われる教育課程(正課)では、著作権法35条により、その目的の範囲内で著作物の無断複製を行うことができる。しかし正課を離れた青少年教育活動などの課外活動では、同条が適用されないケースが多々存在する。一方、一定数以上の集団のもとで行われる青少年教育活動での著作物の無断複製は、著作権30条の私的使用にもあたらない。かかる著作権法上の問題が多い青少年教育活動について検討し、またその指導者が注意すべき点や具体的なケースにおける問題点について取り上げたコンテンツの例を紹介する。
著者
姫岡 とし子 中川 成美 池内 靖子 松本 克美 立岩 真也 二宮 周平 松井 暁
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、1、労働概念が男性の多い有償の経済労働を中心に組み立てられ、2、職業/家事、正規社員/パートなどジェンダー問でさまざまな境界線が引かれ、3、労働法も中立ではなく、4、労働研究がジェンダーの構築に関与している、という多様な意味合いで、労働がジェンダー化されていることを出発点とした。そして概念、制度、労働分担、働き方、セクシュアリティなどにいかにジェンダーが組み込まれているのかを、その変容過程も含めて考察し、また分析するために、歴史、社会学、法学、政治学、経済学、表象の分野で学際的な研究を行った。本研究では、労働の脱ジェンダー化に向けての提案も行った。本研究の過程で、「労働のジェンダー化」シンポジウムを開催し、制度面と表象面の2つの側面から、買売春やアンペイドワークなど、従来の労働概念に含まれていない労働も含めて考察した。その成果は、『労働のジェンダー化-揺らぐ労働とアイデンティティ』として平凡社から2005年に公刊されている。労働のジェンダー化は、家族と密接に関連している。家族については、歴史的観点から、日独の近代家族の形成と現在における家族の個人化について考察し、未完に終わったととらえた資本制と家父長制をめぐる論争に関して、性別分業がなお存在しつづけている理由とそこから誰が利益を得ているのかが検討された。家族法では、女性差別撤廃条約の視点から民法改正がなされる必要性が指摘された。また教育現場のセクシュアルハラスメントに関して、当該機関に環境配慮義務のあることが指摘された。表象については、アングラ演劇をマスキュリニティ構築のパフォーマンスとして読み解いている。
著者
林 進 伊藤 栄一 岡田 正樹 塚本 睦 中川 一 野平 照雄 山口 清 横井 秀一
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.9-26, 1992-12-25
被引用文献数
1

国指定天然記念物「臥龍桜」は,岐阜県宮村にある推定樹齢一千年の,淡墨桜に次ぐ県下第二位の老大樹である。その姿には,一千年という時間の厳しさ,またそれを生き技いてきた樹自身の生命力の強さが表されている。しかし,近年腐朽が進み樹勢維特上不安が持たれている。このため早急に何らかの対策を講じなければならない。樹木保護に当たっては総合的な対策が必要であるが,現在そのための調査方法や,対策技術が未確立な状況にある。そこでそれらの確立に向けて基礎調査研究を行った。調査は,現状を把握するため,桜本体の形状,腐朽部,成長状況,葉・花・根の様子,病虫害について行った。調査の結果から,臥龍桜の樹勢は旺盛である点,しかし,腐朽が強度に進行している部分もありそれらに対しての防腐対策,さらには,樹形保存のための外科手術など,多くの保護対策を講じる必要がある点などが考えられる。これらの保護対策は,それぞれ個別の対策ではなく,総合的に実施されること必要である。そのため,臥龍桜の保護管理サポートシステムを確立すること,モニタリングを長く継続して行うことが必要となる。以上のことから体系的樹木医学の確立へのステップとなり得る研究として報告する。
著者
中川 順子
出版者
熊本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究課題の研究成果は次の3点である。第一に、近世ロンドンの外国人教会による救貧は、同胞による困窮移民に対する救済活動として重要な役割を果たした。それは同時に、教会による移民の規律化とアイデンティティ形成の手段でもあった。第二に、18世紀初頭のドイツ系移民はロンドン流入後に支援獲得の手段としてパラタイン移民という自己意識を形成した。彼らの流入は移民に対するイギリス社会の態度を移民規制の方向に転換させた。第三に、他者の顕在化と他者との共生(救貧や法的地位の付与)を巡る議論は、近世イングランド社会(人々)に自己意識の形成を促した。
著者
中川 元 ナカガワ ハジメ Nakagawa Hajime
出版者
龍南會
雑誌
龍南會雜誌
巻号頁・発行日
vol.19, pp.1-3, 1893-10-09