著者
堀 千明 吉田 誠 五十嵐 圭日子 鮫島 正浩
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.173-188, 2019-10-25 (Released:2019-11-02)
参考文献数
83

木材腐朽菌は植物細胞壁の主要成分(セルロース・ヘミセルロース・リグニン)を効率的に分解する。この特徴的な分解能力やその機能を担う酵素について,これまで様々な応用を見据えて精力的に研究がなされてきた。最近では次世代シーケンサーの登場により,すでに250種以上の菌類のゲノム情報が取得され,それに基づく多様な腐朽菌が保有する木材分解メカニズムの解析について新しい知見が報告されている。本稿では,まず腐朽菌による木材分解現象に関するこれまでの研究の経緯を説明した上で,最近の比較オミックス解析で明らかにされた腐朽形態の違いの要因となる分子メカニズムについて紹介し,さらに分子時計解析から見えてきた木材腐朽菌の起源や進化について考察を行った。
著者
川口 敬之 阿部 真貴子 山口 創生 五十嵐 百花 小川 亮 塩澤 拓亮 安間 尚徳 佐藤 さやか 宮本 有紀 藤井 千代
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
pp.2023.001, (Released:2023-08-23)
参考文献数
21

目的:精神保健福祉に関わる複数の立場の者が「患者・市民参画(Patient and Public involvement:PPI)」による研究を想定した際に,参画する研究段階や研究テーマについて,どのような考えを持っているかを明らかにすることを目的とした。方法:対象は,当事者,家族,支援専門職,行政職員,研究者の立場の参加者37名とし,半構造的なフォーカスグループインタビューを実施した。インタビューでは,PPIによる研究に対し,『どの研究段階で共同したいか/共同できるか』および『研究テーマや方法によって共同したい気持ちは変わるか』に関する参加者個人の考えを聴取した。質的データは,質的内容分析に基づきカテゴリー化を行った。結果・考察:研究段階に関する【研究段階によるPPI実施の可能性】および【各研究段階におけるPPI実施に関する見解】の2領域では,全ての研究段階で共同することの意義とともに,当事者や家族による柔軟な参加の許容が望まれるとする見解や,研究段階における当事者や家族の参画の意義や課題感が示された。また,研究テーマによるPPI実施についての具体的な意見に基づいた【研究テーマによるPPIの実現可能性】および【PPIに基づく研究が有効または実施が期待される研究テーマ】の2領域が生成された。精神保健福祉研究におけるPPIの普及に向け,成功事例の蓄積や解決策の検討を行うべき課題が提示された。
著者
平 朝彦 飯島 耕一 五十嵐 智秋 坂井 三郎 阪口 秀 坂口 有人 木川 栄一 金松 敏也 山本 由弦 東 垣 田中 智行 西村 征洋 鈴木 孝弘 木戸 芳樹 渡邊 直人 奥野 稔 井上 武 黛 廣志 小田 友也 濱田 泰治 室山 拓生 伊能 隆男 高階 實雄 勝又 英信 原田 直 西田 文明 南川 浩幸 金高 良尚
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.118, no.7, pp.410-418, 2012-07-15 (Released:2012-12-04)
参考文献数
20
被引用文献数
7 5

東北地方太平洋沖地震において関東地方を中心に前例のない広域的な液状化被害が報告されている.都市地盤における液状化現象を理解し,その対策を立てるには,液状化が地下のどこで起ったのかを同定することが極めて重要である.本報告では,千葉県浦安市舞浜3丁目のボーリングコア試料に対して,X線CTスキャン解析を実施し,非常に鮮明な地層のイメージの取得に成功した.この結果,地面下13 mまでの地層を5つのユニットに区分することができ,その中で6.15 mから8.85 mまでの間で地層のオリジナルな構造が破壊されており,液状化した層であると判定した.この手法は,今後の液状化研究に関して,大きな貢献が期待できる.
著者
五十嵐 悠紀
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.388-389, 2017-04-15
著者
倉田 香織 五十嵐 俊 南郷 栄秀 土橋 朗
出版者
Japan Society for Pharmaceutical Education
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.2019-003, 2019 (Released:2019-11-07)
参考文献数
12

近年,Evidence-based Medicine(EBM)の実践とその教育の重要性が高まっている.本研究の目的は9ヶ月間に渡るEBM学習プログラムを通じて受講生である薬剤師にもたらされた教育効果を明らかにすることである.2016年4月から12月まで毎月1回,23名の希望者を対象にEBMの実践に必要な知識と技能を学習するためのワークショップ形式の研修会を開催した.EBMの実践に関する自己評価を,研究開始時,研修中,研修終了時および研修後の計4回実施して比較検討した.研修開始後の総学習時間に変化はないが,医学文献の閲覧時間は増加した.EBM教育を受けることで,医学文献に対する抵抗感が緩和されたものと考えられる.さらに,日常業務での疑義照会や処方提案の場面で,エビデンスを共有し意志決定する試みを経験していた.研修終了後も,EBMの実践に必要な知識と技能を維持していることが明らかとなった.
著者
五十嵐 仁
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.38-48, 2009-09-25 (Released:2018-02-01)

80年代の臨調・行革に始まる新自由主義政策の下で労働分野での規制緩和も進められてきた。このような労働の規制緩和はいくつかの段階を経て2000年前後から本格化し,小泉政権の下で雇用・労働政策は大きく変容することになった。本稿の課題は,このような新自由主義政策の具体化としての労働政策の変容をめぐるアクター間の配置と構造を検討し,規制緩和の現段階と対抗関係を明らかにすることにある。とりわけ,2006年以降の「反転の構図」に注目しながら,それが何故どのようにして生じてきたのか,最近の「潮目の変化」を生み出した背景と要因の解明に焦点をあてることにしたい。
著者
五十嵐 裕子 イガラシ ユウコ Yuko Igarashi
雑誌
浦和論叢
巻号頁・発行日
no.46, pp.45-68, 2012-02

日本の折り紙のはじまりは神事や贈答儀礼に用いられる「儀礼折り紙」であった。江戸時代になると、折り紙は礼法や決まりから離れ、折り方そのものを楽しむ「遊戯折り紙」がおとなの遊びとして広まった。江戸時代中期には、それまで祖母や母から女子の躾として伝承されていた折り紙が、「子どもの遊び」となり普及していくようになる。一方西欧では、フレーベルが子どもの創造的活動衝動を自由に表現するための「作業具」の1つとして、折り紙を位置づけた。フレーベルの教育理論を導入した日本の幼稚園でも折り紙は保育教材として採用されたが、フレーベルが折り紙に込めた教育的意図は理解されないまま、折り紙はやがて保育教材・教具から放逐されていった。しかし折り紙遊びはその後も現代に至るまで家庭や幼稚園、保育園で子どもたちに親しまれている。折り紙あそびの普遍的魅力を再考し、折り紙の教材的価値や折り紙遊びにおける子どもへの適切な援助に関する研究が望まれる。The purpose of the study is to reassess the changeless appeal of Origami play through examination of its historical correlates. In the Heian era, origami was "courtesy origami" for "Act of God" or exchange of presents courtesy. From the middle of the Edo era, origami had become a popular play among children. In the Meiji era, Froebel's origami was introduced in Japan as one of his occupations for creative activity of children and the origami was taken in as the teaching materials of kindergarten and primary school. But in Japan, origami was intended to develop the process of accuracy and skillfulness of the fingers. Therefore the origami was not utilized positively as the childcare teaching materials. But the origami play is high in popularity in the present age. It is necessary for us to revaluate a meaning of the origami play as the childcare teaching materials.
著者
中谷 こずえ 五十嵐 石塚
出版者
人間福祉学会
雑誌
人間福祉学会誌 (ISSN:13465821)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.67-74, 2021 (Released:2022-12-06)

矯正施設で社会復帰を目指す成人男性受刑者の健康実態と健康意識の現状を明らかにし、健康問題の観点から 健康を維持増進するための看護支援を明らかにすることを目的とした。全国56箇所の成人男性受刑者708名に対して、健康実態と健康意識についての質問紙調査を郵送法で行った。調査内容は、基本属性(年齢、施設での生活歴、前職業、過喫煙歴、BMI、現在歯数など)と、健康状態(精神・睡眠状況、食欲、身体活動量、・生きがい意識など)で構成した。統計解析には、275名(有効回答率38.8%)のデータを使用し、調査項目ごとに記述統計量を算出し、t 検定、相関関係、さらに関連要因を探索するため、重回帰分析も用いた。研究参加者の平均年齢は45.5±10.71歳であった。入所期間は、 5 年以上が半数(58.9%)であった。受刑前職業種では、土木業者や専門・技術職者(67.6%)が半数以上を占めていた。年代別現在歯数を一般値と比較した結果、30から50歳代(p<0.001)と70歳以上(p<0.05)は有意に低いことが示された。現在歯数を従属変数として重回帰分析では、年齢、排便習慣、食事摂取量が有意な負の標準回帰係数を示した。医療体制が十分ではない刑務所という環境下において、刑期が長期にわたり、加齢による変化は避けられない。また、歯の損失により、十分にかみ砕くことができないため、食事摂取量やさらには、排泄にも直接的に影響を及ぼすことが明らかになった。社会復帰を目指すためには、健康が保たれなければならない。そのため、精神・睡眠・身体活動量や生きがい意識にも働きかけながら、矯正施設内でも行える歯周病などの病気発症の予防ケアが求められていると考えられた。
著者
五十嵐 雅哉
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.8-15, 2004-01-25 (Released:2011-03-02)
参考文献数
25

一般的にパターナリズムは「ある個人の利益になるという理由で, その個人の自律性を制限する干渉を行うこと」と定義されることが多い. この定義を医療にあてはめるといくつかの矛盾が生じることがある. このことは, 医療におけるパターナリズムの定義が再考される必要があることを示す.医療におけるパターナリズムがすべて正当化されるべきであるとは主張しない. 正当化されることがあるとすればその条件は何か. その条件を ethical な観点から導き出すことが本稿の目的である. そのために, まず以下を前提として議論を進めることにする. それは, (1)たいていの場合, 自律性は尊重されるべきである, (2)インフォームドコンセントに基づく医療はいいことである, (3)医療行為は患者の利益のためになされるものである, (4)医師の説明は適切に行われている, (5)患者が同意した場合, それは医師の説明を理解し, 自律性に基づいて自発的になされている. 以上の五点である.これらをもとにインフォームドコンセントを整理し, パターナリズムによる医療をインフォームドコンセントに基づかない医療と定義した. この観点から, 医師の裁量権や拒否権から legal な正当化条件を整理し, また, J.S. ミルの『自由論』の議論をもとに,「危害原理」に基づく正当化論を整理した. さらに, ここから論を進めて「自律性の確認目的のための干渉」理論とでもいうべき正当化論を導き出した. これは, 生命の危機が迫っているためにインフォームドコンセントが得られないときにかぎり, パターナリズムが正当化されると考えるものである. この場合の医療は, 患者にたいして医療を行いたいが説明できる状態ではないとき, 説明できる状態にまでまず応急的に医療を行うと考える. つまり「正当化される干渉とは自律性, すなわち自己決定を確認するための干渉である」と考えるのである. この自律性を確認するという干渉はインフォームドコンセントの過程に含まれることであるから議論に矛盾しない.
著者
五十嵐 元道
出版者
一般財団法人 日本国際政治学会
雑誌
国際政治 (ISSN:04542215)
巻号頁・発行日
vol.2018, no.193, pp.193_140-193_156, 2018-09-10 (Released:2018-12-19)
参考文献数
81

In contemporary international relations, it is almost impossible to acknowledge the actual situation of armed conflicts without the reports of human rights NGOs. These reports often record detailed data, including the number of civilian casualties, and therefore contribute to the construction of the representation of armed conflicts. While constructivism analyzes the normative power of human rights and NGOs, it misses the struggle over the representation of armed conflicts between human rights NGOs and sovereign states. Applying P. Bourdieu’s theory of fields, this article demonstrates how human rights NGOs have fought against sovereign states and acquired a decisive influence over the representation of armed conflicts. Sovereign states and NGOs have constituted global and local fields in which actors wrangle over legitimacy by making the representation of the armed conflicts.This article argues that the struggles over the representation of armed conflicts between states and NGOs began in the late 1960s because of several post-colonial conflicts such as the Nigerian Civil War (the Biafran War) and the Northern Yemen Civil War. In these conflicts, traditional neutrality rarely afforded protection from military attack to NGOs; on the contrary, the International Committee of the Red Cross (ICRC)’s policy of avoiding testimony faced severe criticism as this policy seemed to help genocide continue. Until the 1960s, NGOs such as the ICRC had tended to avoid publicly criticizing sovereign states in armed conflicts even when NGOs confronted genocides.In the 1970s, human rights networks, including local and international NGOs, have been created because of serious human rights violations in Latin American countries. Various NGOs recorded human rights violations and publicly criticized authoritarian states. In the 1980s, when the Salvadoran Civil War occurred, local NGOs tracked civilian casualties and human rights violations by armed forces. With the help of these local NGOs, the newly established Americas Watch published many reports on the Salvadoran Civil War. Thereby, the Americas Watch tried to change the foreign policy of the Reagan administration that strongly supported the Salvadoran government. The data on civilian casualties was the focal point of the struggle between NGOs and the Reagan administration. This struggle contributed to the constitution of the global regime for humanitarian crises and led to the development of the methodology of fact-finding in armed conflicts. In the late 1980s and 1990s this global regime for humanitarian crises expanded as the number of human rights NGOs increased and the UN was involved in fact-finding missions.
著者
田中 雄太 加藤 茜 伊藤 香 五十嵐 佑子 木下 里美 木澤 義之 宮下 光令
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.129-136, 2023 (Released:2023-05-10)
参考文献数
24

【目的】緩和ケアの実践には,現場の医療者の認識や受容性などを考慮することが重要である.本研究の目的は,救急・集中治療領域の医師の緩和ケアに対する認識や緩和ケア実践の障壁を明らかにすることである.【方法】集中治療室および救命救急センターに勤務する医師を対象に緩和ケアに関する質問紙調査を実施し,自由記述データを質的に分析した.【結果】873名に質問紙を送付し,436名から回答を得た(回収率50%).そのうち,自由記述欄に回答した95名(11%)を分析対象とした.【結論】本研究の結果から,わが国における救急・集中治療領域の医師は緩和ケアを自らの役割と捉え,日常的なケアの一部と考えて実践している一方で,緩和ケア実践の難しさや不十分さを感じていることが推察された.実践の障壁として,緩和ケアチームのマンパワー不足と利用可能性,救急・集中治療領域における緩和ケアに対する認識が統一されていないことなどが存在していた.
著者
五十嵐 泰正 安東 量子
出版者
関東社会学会
雑誌
年報社会学論集 (ISSN:09194363)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.34, pp.45-53, 2021-07-31 (Released:2022-08-31)
参考文献数
14

While sociologists do not have a large presence in the practical field of urban development, they are sometimes expected by experts in urban planning to “be familiar with the community and its people.” However, it is not clear what “being familiar with the community and its people” really means. In order to articulate this, we will examine the workshops on radiation risk communication held after the F1NPP accident, where local people were confused by risks and scientific language that were beyond their previous experience, and conflicts within community were apparent. Specifically, two cases will be examined: Roundtable in Kashiwa and Fukushima Dialogue, in which Igarashi and Ando played a central role. These case studies suggest that “being familiar with the community and its people” means interactive ability to reconcile expertise with the needs of the local people based on an in-depth understanding of their reality, as well as an attitude of extracting the local people’s knowledge to integrate it with expertise.
著者
小林 謙 五十嵐 岳史
出版者
一般社団法人 日本めまい平衡医学会
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.108-114, 2008 (Released:2008-05-29)
参考文献数
15
被引用文献数
5 3

We performed a demographic analysis of 2293 vertiginous patients seen at our clinic from February 1995 to November 2005. While a definitive diagnosis could be made in 1287 cases (56%), the diagnosis remained tentative in 622 (27%), and the cause diagnosis remained unknown in 384 cases (17%). The most common vertiginous disease was benign paroxysmal positional vertigo (456 cases), followed in prevalence by Meniere's disease (232 cases). Most patients had visited other medical facilities before visiting our clinic. Analysis of the medical facilities visited by the patients suggested that the vertiginous patients visited both physicians and otolaryngologists; while. physicians saw the patients in primary care settings, otolaryngologists examined the patients at general hospitals and university hospitals. This discrepancy may complicate the care of vertiginous patients.