著者
角 保徳 譽田 英喜 道脇 幸博 砂川 光宏 佐々木 俊明
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.337-341, 2003
被引用文献数
1

最近, 口腔の状態と種々の全身疾患との関連についての関心が高まりつつある。誤嚥性肺炎による要介護高齢者の障害や致死は高齢者の健康にとって主要な問題である。本研究の目的は, プラーク中微生物叢に検討を加え, 要介護高齢者に呼吸器疾患を引き起こしうる起炎菌の有無と存在する確率を調査・検討することである。研究方法と対象は, 要介護高齢者97名のプラーク中の微生物叢を培養法によって同定・評価した。その結果, 本研究で21種の微生物種がプラークより検出された。また, 97例中64例 (66%) に呼吸器疾患を引き起こしうる起炎菌がプラーク中に検出された。本研究の結果, 要介護高齢者のプラークに誤嚥性肺炎起炎菌が高率に存在することが明らかとなった。プラークが咽頭に対するいわゆる誤嚥性肺炎起炎菌のリザーバーとしての役割を果たしていることを示唆している。
著者
遠藤 秀紀 山際 大志郎 有嶋 和義 山本 雅子 佐々木 基樹 林 良博 神谷 敏郎
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.1137-1141, s・iv, 1999-10
被引用文献数
2 7

ガンジスカワイルカ(Platanista gangetica)は,ガンジス・ブラマプトラ川周辺の水系に限られて分布する,珍しいイルカである.同種は,原始的とされる形態学的形質が注目されてきたが,近年生息数を減らし,保護の必要性が指摘されている.筆者らは,東京大学総合研究博物館に収蔵されてきた世界的に貴重な全身の液浸標本を利用して,気管と気管支の走行を,非破壊的に検討した.ガンジスカワイルカの気管は,右肺葉前部に向けて,気管の気管支を分岐させることが明らかとなった.MRIデータにおいては,気管の気管支と左右の気管支の計3気道が,胸腔前方において並列する像が確認された.原始的鯨類とされるカワイルカで気管の気管支が確認されることは,鯨類と偶蹄類の進化学的類縁性を示唆している.一方で,左気管支は右気管支より太く発達していた.気管の気管支によって,右肺前葉に空気を供給する同種では,気管支のガス交換機能は,左側が右側より明らかに大きいことが示唆された.MRIによる非破壊的解剖学は,希少種の標本を活用して形態学的データの収集を可能にする,きわめて有効な手段として注目されよう.
著者
羽根 一博 奥山 賢一 佐々木 実
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会誌 (ISSN:09120289)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.1532-1536, 1998 (Released:2009-06-30)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

With an intense thermal variation, optical encoder yields measuring error because of the generation of nonlinear strain due to the difference of the thermal expantion coefficient between a glass scale and a metallic parts of machines. In this study, a method of using a grating which is directly manufactured on a metallic surface of parts of machines is proposed. Using this method, the thermal strain is made linear and the error becomes simplified to calibrate. Furthermore, it realizes a miniaturization of the system and improves its vibration-resistance. This paper shows the process of making a grating on a metallic surface by photolithography using some methods and ascertains the sufficient performance of this scale in an optical encoder.
著者
佐々木 宣介
出版者
県立広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究はコンピュータプログラムによる自動プレイにより大量のゲームのデータを採取するという手法で、将棋の変種、特に「中将棋」と呼ばれる変種のように大きな盤でプレイされる変種において、各種ルールがゲームの性質にどのような影響を与えているか評価を行うものである。平成22年度は、昨年度に引き続き機械学習および自動プレイに関する改善を目指してきた。また、それらの結果を利用し、中将棋の特殊ルールについて考慮した計算機実験を行っている。特に、中将棋における特徴的なルールである、獅子という駒に関する特殊ルール群に着目をし、それらのルールの有無によって、自動プレイによるゲームのデータがどのように異なってくるか自動プレイによる計算機実験を行い、評価を進めている。前述の機械学習等の計算機実験の改善と並行して実施していたこともあり、これらの計算機実験は完全には終了しておらず、現在も実験は継続中であるが、現時点までに得られたデータについての評価を進めている。さらに、将棋類の変種間の類似度評価を行うための数値的な評価尺度について検討を行っている。計算機実験によって得られたゲームのデータについて、ゲームの長さ、合法手の数などといった各要素を個別に比較する他に、いくつかの要素を組み合わせた指標化を行うことを目指している。いくつかの指標化について検討を行い、その指標を用いた変種間の質的類似度の比較を行っている。これらの実験・評価結果については、今後学会等への発表を行っていく予定である。
著者
藤井 守男 佐々木 あや乃
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、神秘主義の発展過程からみて重要性が際立つ3つのペルシア語説教テクストの特徴を明らかにするため、独自の検索機能を設定した「ペルシア語説教テクスト文例対比データベース」を構築した。これを活用することで、13世紀の後半に頂点を迎えるペルシア神秘主義文学の形成過程に、ペルシア語説教テクストが果たした役割の学問史的位置づけを実証的に提示することが可能となった。
著者
佐々木 宗雄
出版者
弘文堂
雑誌
基礎科学
巻号頁・発行日
no.21, pp.17-25, 1950-12
著者
木村 丈司 甲斐 崇文 高橋 尚子 佐々木 秀美
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.18-24, 2013 (Released:2013-04-05)
参考文献数
20
被引用文献数
1

腎機能に応じた適正な投与量・投与間隔での抗菌薬使用を実践する為に,抗菌薬の投与量・投与間隔,腎機能に応じた調節を院内にわかりやすく周知する表を薬剤部主導で作成し,2011年4月より普及活動を行った.この活動の有効性を評価する為,MEPM, DRPM, TAZ/PIPCの投与量・投与間隔を腎機能別に活動開始前の2010年度と開始後の2011年度で比較・検討した.   結果として,MEPMではeGFR>50の群で1000 mg×3回/dayが,eGFR 11–50の群で1000 mg×2回/dayが増加した.DRPMではeGFR>50の群で500 mg×3回/dayが,eGFR 31–50の群で250 mg×3回/dayが増加した.TAZ/PIPCではeGFR>50の群で4500 mg×4回/dayが,eGFR≦20の群で2250 mg×3回/dayが増加した.MEPM, DRPM, TAZ/PIPC投与患者全体で今回作成した資料に従う投与方法が選択される割合は,2010年度の52.1%に比べ2011年度は67.0%と有意に増加した(p<0.01).   以上の事から,薬剤師主導による適正な投与量・投与間隔での抗菌薬使用に関する情報提供は腎機能に応じた投与量・投与間隔の調節の実践に有効であった.また腎機能別に抗菌薬の投与方法を評価する事は,抗菌薬使用に関する問題点を詳細に分析するのに有用と考えられた.
著者
永房 典之 菅原 健介 佐々木 淳 藤澤 文 薊 理津子
出版者
The Japanese Psychological Association
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.83, no.5, pp.470-478, 2012
被引用文献数
7

Behavioral standards are an important determinant of delinquent behavior. The present study investigated the associations between behavioral standards and juvenile delinquency of children in reformatory institutions. A total of 1 248 children in reformatory institutions completed the Standard for Public Space Scale (SPS). The resulting alpha coefficients suggested that the SPS had high internal reliability. Factor analysis revealed five factors: (a) Public Values, (b) Egocentric, (c) Regional-standards, (d) Peer-standards, and (e) Care about Others. Cluster analysis revealed that juvenile delinquency experiences fell into two clusters of "likelihood of committing a crime" and "committing a crime". In addition, ANOVAs suggested that juvenile delinquents in reformatory institutions had higher scores on factors of Egocentric and Peer-standards on the behavioral standards, compared to juvenile non-delinquents. The value of using the Standard for Public Space Scale for the study of juvenile delinquency was discussed.
著者
常松 浩史 吉村 淳 春島 嘉章 長村 吉晃 倉田 のり 矢野 昌裕 佐々木 卓治 岩田 伸夫
出版者
日本育種学会
雑誌
Breeding science (ISSN:13447610)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.279-284, 1996-09-01
被引用文献数
15

RI系統群は遺伝的に固定しているので分離することなくその増殖と配布が可能である.さらに,そのRI系統群を用いて連鎖解析を行えば,現在それぞれ独立している地図情報を統合することや新しく単離された分子マー力-の連鎖地図上での位置を容易に推定することができる.そこで,本研究ではイネにおけるRI系統群の作出とそれを用いたRFLP骨格地図の作成を行った. 日本型品種「あそみのり」とインド型品種「IR24」のF_2個体から単粒系統法を用いて自殖を重ね,F_6世代で165系統からなるRI系統群を作出した.この中の71系統をF_6とF_7でRFLPマッピングに供試した.マッピングにはSaito et al(1991)およびKurata et al(1994)によるRFLPクローンを用いた.連鎖分析の結果,構築されたRFLP連鎖地図は375個のマーカーからなり,その全地図距離は1275cMであった(Fig.1).また,染色体ユ,3,6,11,12においてはマーカーの分離のひずみが観察され(Fig.1),そのすべてにおいて日本型親の「あそみのり」の遺伝子頻度が減少していた.F_6におけるヘテロ接合体領域の割合はO%から19.3%で,その平均は3.6%であった.また,F_7におけるヘテロ接合体領域の割合はO%から5.5%で,その平均は1.9%であった(Fig2).
著者
佐々木 基樹 遠藤 秀紀 山際 大志郎 高木 博隆 有嶋 和義 牧田 登之 林 良博
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.7-14, s・iii, 2000-01
被引用文献数
3 8

ホッキョクグマ(Ursus maritimus)の頭部は,ヒグマ(U. arctos)やジャイアントパンダ(Ailuropoda melanoleuca)に比べて扁平で,体の大きさの割に小さいことはよく知られている.本研究では,ホッキョクグマとヒグマの頭部を解剖して咀嚼筋を調べた.さらに,ホッキョクグマ,ヒグマそしてジャイアントパンダの頭骨を比較検討した.ホッキョクグマの浅層咬筋の前腹側部は,折り重なった豊富な筋質であった.また,ホッキョクグマの側頭筋は,下顎骨筋突起の前縁を完全に覆っていたが,ヒグマの側頭筋は,筋突起前縁を完全には覆っていなかった.ホッキョクグマでは,咬筋が占める頬骨弓と下顎骨腹縁間のスペースは,ヒグマやジャイアントパンダに比べて狭かった.さらに,側頭筋の力に対する下顎のテコの効果は,ホッキョクグマが最も小さく,ジャイアントパンダが最も大きかった.これらの結果から,ホッキョクグマは,下顎骨筋突起の前縁を側頭筋で完全に覆うことによって,下顎の小さくなったテコの効果を補っていると考えられる.また,ホッキョクグマでは,咬筋が占める頬骨弓と下顎骨腹縁間のスペースが狭いことから,ホッキョクグマは,ヒグマ同様の開口を保つために豊富な筋質の浅層咬筋前腹側部を保有していると推測される.本研究では,ホッキョクグマが,頭骨形態の変化に伴う咀嚼機能の低下を,咀嚼筋の形態を適応させることによって補っていることが示唆された.
著者
主原 憲司 佐伯 護 佐々木 博一 上田 豊
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.38-41, 1971-10-30

筆者の1人,主原は1968年2月23日,滋賀県鈴鹿山脈で採集したヒサマツミドリシジミの卵1個を成虫まで飼育して,本種の生活史の一部を知ることができた(本誌,Vol.20, No.3&4に報告).更に,1969年秋,鈴鹿山脈および京都北山で採集した本種の卵を飼育して,その生活史の大要を知ることができた(蛹までの飼育経過は1970年5月3日,本会25周年記念大会で報告).その後1970年秋に鈴鹿山脈,および北山(京都,滋賀両府県にわたる)で,ブナ科植物3種から本種の卵を多数採集した.これらの資料からえられた本種の生活史の一部,卵,幼虫,蛹のおおよその形態について現在までに知りえた知見を報告したい.本文に入るにさきだち,日頃より御指導をいただき,今回の報告に際しても種々御教示下さった九州大学教授白水隆博士,国際大学教授丹 信実先生,平安高校井上宗二先生に厚く御礼申し上げるとともに,写真撮影をしていただいた三井正晴氏,主原信宏氏に深く感謝する.