著者
伊東 卓爾 佐々木 勝昭 吉田 保治
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.629-635, 1997-12-15
被引用文献数
12

近畿大学附属農場湯浅農場 (和歌山県湯浅町) においてハウス栽培されたマンゴー'Irwin'の果実発育中および追熟中の呼吸量, 糖質および有機酸含量の変化について調査した. 発育中の調査には, 6月14日から8月21日までの果実を用いた. 追熟中には, 8月2日, 8月8日および8月21日に採取した果実を用い,25°C下に貯蔵した.<BR>果実の肥大は, 内果皮の硬化が始まるまでは速やかであったが, 硬化後 (7月19日) は非常に緩やかとなった.<BR>呼吸量は7月19日までは急速に低下したが, 内果皮が硬化した後はほぼ一定であった. 追熟中は, クライマクテリックライズが始まった後1~2日目に呼吸量が最大となった. 呼吸量がピークに達した時, 果皮の着色と果肉の軟化が始まった. 芳香は, 果皮の着色開始から数日遅れて発生し始めた.<BR>遊離糖として, 果糖, ブドウ糖およびショ糖が検出された. 内果皮が硬化した後, 果糖およびショ糖含量は増加し, 8月21日にはそれぞれ3.4g•100g<SUP>-1</SUP>FWおよび1.9g•100g<SUP>-1</SUP>FWに達した. 逆に, ブドウ糖含量は減少し続けた. 発育中は, 果糖が主要糖であった. デンプン含量は, 内果皮が明らかに硬化した7月19日には2.1g•100g<SUP>-1</SUP>FWであったが, その後急増し8月21日には11.7g•100g<SUP>-1</SUP>FWに達した. 追熟後は, デンプンはほとんど検出されなくなり, ショ糖含量の増加が著しく, 果糖含量はわずかに増加した.その結果, ショ糖が主要糖となり, 還元糖の大部分を果糖が占めた. デンプンの蓄積量が多い果実で, 全糖含量が多くなった.<BR>有機酸としてクエン酸およびリンゴ酸が検出されたが, 大部分はクエン酸であった. クエン酸含量は内果皮が硬化し始める頃に1.4g•100g<SUP>-1</SUP>FWに達したが,その後減少し続け, 8月21日の含量は0.6g•100g<SUP>-1</SUP>FWであった. 追熟後は, クエン酸含量はさらに減少した.<BR>樹上で果皮が赤または黄色に着色し始める段階が,和歌山県有田地方においてハウス栽培された'Irwin'の収穫適期であると考えられる.
著者
佐々木 康朗
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.591-597, 2011-10-01

本稿では,相互意思決定状況を主観的に認識する主体を想定したハイパーゲーム理論を紹介する.通常のゲーム理論は,ゲームのルールが主体間で共有されている際の合理的な意思決定を追求するのに対し,ハイパーゲーム理論では,そもそもゲームの構造に関する認識に主体間で差異があるような状況を考え,そのことが主体の意思決定やゲームの結果に及ぼす影響について分析する.さらにゲームの結果の認識のあり方へのフィードバックについても扱い,認識と意思決定の相互関係を論じるものである.具体的な事例をもとにいくつかのハイパーゲームモデルを紹介しながら,その独自の問題意識について解説する.

1 0 0 0 OA 三角洲新田

著者
佐々木 清治
出版者
一般社団法人 人文地理学会
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.5, no.5, pp.323-341,402, 1953-12-30 (Released:2009-04-28)
参考文献数
28

Various aspects and problems of Shinden(reclaimed rice-field) on delta have been so far investigated, but materials which refer to its geographical distribution are hardly to be found. Here in this report, I am to make a comparative study on the distribution of the settlemets of Shinden on the delta of the Fuji river and that of the Oi river (both in Shizuoka Pref.).(1) There are two ways in which Shinden is formed and developed on the delta, namely, the intussusception growth and the apposition growth. The one means that Shinden is formed and covers the delta by way of thrusting itself in already established villages, and by the other is meant that Shinden is added at the circumference of old settlement. In other words, the former can be called the area-expanding growth which makes Shinden spread over the delta, and the latter the thickening growth which makes the settlement on delta thicker. As the typical examples of these two ways of development of Shinden on delta, are taken the reclaimed rice-fields on the delta of the Fuji river (the apposition growth) and that of the Oi river (the intussusception growth).(2) Irrespective of the above-mentioned area-expanding growth or the thickening growth, Shinden is divided into another two kinds, the centrifugal growth and the centripetal growth, according to the direction of its development. Shinden on the delta of the Fuji river belongs to the former. There, the original rice-field being in the center of delta, the new rice-field developed thence toward the outer side-namely, the centrifugal growth. On the contrary, the one on the delta of the Oi river was centripetally formed. developing, from the circumference toward the surface of delta.(3) If developed by the intussusception growth, the reclimed rice-field is distributed all over the surface of delta. A good example is found in the one on the delta of the Oi river, which can be called an equifacial settlement. The equifacial settlement sometimes has a naturally formed nucleus, and there are two cases of forming the nucleus. In one case, the nucleus being vague, people can only surmise the nuclear part, and in the other case, the nucleus being distinct, the reclaimed rice-field is spreading around it. I call the nucleus of the latter a hilum of Shinden on delta. Such a hilum is found just in the center of delta of the Oi river, that is, Kamishinden in Aikawavillage. Besides the case the hilum coincides with the center of delta as afore-mentioned, there may be another case the hilum keeps at a distance from the center of delta.(4) The delta is edged by the reclamed rice-field if the latter developed by the thickening growth; and the bordered distribution or ringed distribution of the reclaimed ricefield on delta comes to be observed. The one on the delta of the Fuji river is its good example, which shows distinctly the distribution of pericycle settlement. When the delta is not edged wholly, the half bordered distribution is observed as we see on the deltas of the Ota river (Hiroshima Pref.) and the Hii river (Shimane Pref.). If Shinden is scanty in the center of delta while it is distributed only around it, a central gap is made in the region of reclaimed rice-field, of which good example is given by the distribution of Shinden on the delta of the Fuji river.
著者
木村 影方 佐々木 正夫 馬場 正三 宇都宮 譲二 有吉 寛 笹月 健彦
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1995

わが国における高発がん家系の実態調査を行い、大腸がん、乳がんそれぞれで、全がんの約1〜2%が高発がん家系に由来することを見出した。また、これらの家系では、同一部位がんのみならず、他臓器がんや重複がんの発生頻度が高かった。ことに大腸がん多発家系由来の大腸がんでは、これまでの報告と異なり、わが国では低分化腺がんが比較的多いことが初めて示された。一方小児がん登録調査により、2次がん発生には遺伝的要因が深く関与すること、また親の放射被爆歴の多いことが明らかになった。ついで、このような高発がん家系由来試料を用いることにより、複数の家系で、hMSH2およびhMLH1(大腸がん)、BRCA1(乳がん)遺伝子継世代変異を同定した。また大腸がん抑制遺伝子のひとつが既知のDCC遺伝子よりセントロメア側に存在することを見出した。一方大腸がん多発家系の大腸がんでは約半数にマイクロサテライト不安定性が認められるが、APCおよびDCC変異が低率であることから、その発がん機構は一般大腸がんとは異なることが強く示唆された。さらにマイクロサテライト不安定性を伴う大腸がんではTGFBRII、POLB、B2M、WAF1変異が特異的に生じていることを明らかにした。また肺がんの発生にはマイクロサテライト不安定性は関与していないが、単塩基リピート部の欠失は肺がんハイリスクグループである中国人女性に高頻度に生じていることを見出した。さらに乳がんおよびその前がん病変は全て単クローン性であることを証明した。一方白血病発症ハイリスクグループであるファンコニ貧血の実態を調査し、発症年令や白血病危険率は米国と同様であるが、わが国では約180人に1人がファンコニ貧血遺伝子の保因者であると推定された。
著者
佐々木 けいし 柴田 尚 伊藤 隆介 羽子田 龍也 閔 鎭京
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

廃校等を芸術文化的施設として活用している事例を、全国46、海外2箇所訪問調査すると同時に、HPやFaceBookを活用して情報収集した。最終報告で全国94施設をリスト化し、うち北海道内19施設、北海道外5施設、海外2施設を具体的に紹介した。この数を基に、廃校の芸術文化的活用の割合は、全国で1.2%、北海道では3.5%であるという結論を導き出した。加えて「廃校・旧校舎アートフォーラム」を2回開催し、廃校の新たな文化施設としての側面の検証及び、近未来の日本型のアートスペースの在り方や運営法、可能性について検討した。
著者
伊澤 喜三男 瀬川 滋 佐々木 営吉 藤井 博
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.18, no.11, pp.p1142-1147, 1977-11-15

In this paper we describe an attempt to make an unmanned computer center. That was applied to the computer center of Osaka University and the system which was implemented is now in operation. When an emergency arises in the computer system or in the environment surrounding it, that system would be able to react so that it automatically shuts off the power, rings an alarm, and records the situation. It is the same way as automatically cutting the power supplies when all the jobs are completed.
著者
栗原 伸芳 下郷 幸子 佐々木 理恵
出版者
日本小児医事出版社
雑誌
小児科臨床 (ISSN:0021518X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.9, pp.1799-1803, 2002-09
著者
佐々木 隆
出版者
上智大学
雑誌
人間学紀要 (ISSN:02876892)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.99-124, 2006-12-20

ルイスのナルニア物語を注釈し紹介を試みた。いくら勧めても、説明しても、読まない、読めない学生がいる。本を読ませること、本を読むことに対して反省することになった。教育者であったルイスは読書をどのように考えていたのか。彼の書いた「批評における実験」という文芸評論についての論文をもとに、人間にとって本を読むこととは何かを考えた。ルイスによれば、読者は大きく分けて非文学的な多数者と文学的な少数者に分けられる。これは真理を求めて授業を聞く学生と、ただ、就職のための単位が欲しいだけで、授業の内容自体には全く関心を持っていない学生との関係に似ている。彼はよい本を読むのがよき読者であると言う通説を逆転させ、読者にしかるべきよい読み方をさせる本が良い本であることを論証したが、同じようによき授業もまた、学生のよき受講態度から評価されなければならないが、そこでは、実用を超えた価値への探究へと共に歩むように多数の学生を啓蒙する指導がなされなければならないのである。
著者
萩原 育夫 大西 有三 佐々木 猛 西山 哲
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.357-367, 2009-12-25 (Released:2009-12-25)
参考文献数
14
被引用文献数
2 2

不連続変形法を用いた落石シミュレーションにおける形状パラメータ設定方法の体系化を目的として,落石の形状特性に関する定量的指標の導入について検討した。落石の形状特性を表す指標としてアスペクト比,円形度,形状エントロピーに着目し,跳躍過程を主体とする解析ケースを対象とした感度解析並びに落石崩落事例解析を行って各形状指標の適用性を検討した。検討結果から,着目した形状指標のうち曲率に関する形状エントロピーと円形度は落石ブロックの形状特性に関連した跳躍時の射出方向変化や崩落時のエネルギー減衰等のシミュレーション結果に対応することを明らかにし,実際の落石崩落を対象とした事例解析において各指標の有効性を把握することができた。これらの形状指標を解析パラメータの設定に導入することは,落石の形状特性把握における主観的誤差の低減や,合理的な落石シミュレーションの実施に有効と考えられた。
著者
佐々木 健 小泉 輝 岡崎 俊郎 森岡 崇 井東 道昌 宮武 秀樹 森 密雄 鈴木 隆司
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.435-439, 2011

Control issues on haptic device control for virtual prototyping of power window switches are presented. A one degree-of-freedom haptic device was designed to display a virtual switch. The difference in the mass of a real switch and that of the haptic device was the main cause of the difference in the operational feeling. Dynamic equivalent mass was reduced by assisting the operational force. Hysteresis was also incorporated in the force-stroke curve. Sensory evaluation has verified that these control methods have enhanced the reality of the operational feelings of the virtual switch.
著者
佐々木 昌一 池内 隆人 神谷 浩行 小島 祥敬 梅本 幸裕 郡 健二郎
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.50, no.8, pp.559-563, 2004-08

擬似的な微小重力環境における哺乳類の造精機能や精子運動性,受精,初期発生に対する影響を検討した.微小重力環境における頭側への体液移動モデルである尾部懸垂マウスでは,精巣/体重比と血清テストステロン値が有意に減少した.ジェット機のパラボリックフライトにより作り出された微小重力環境においてヒト精子運動能は低下した.クリノスタットを利用した擬似微小重力環境下では体外受精の受精率には影響しなかったが,96時間の培養でマウス受精卵が桑実胚および胞胚形成した割合は有意に少なかった.微小重力環境下では,精巣萎縮とテストステロン産生低下をきたし,精子運動性の低下を認めるが,受精能には影響を与えず,受精卵の初期発生には障害を及ぼす可能性がある