著者
佐々木 佳子
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
vol.117, pp.131-145, 2012-12-26

これまでの教師の思考に関する研究では,主に授業場面の教師の思考活動に焦点が当てられ,実践的知識や熟達化との関係が明らかにされてきた。だが,教師の思考そのものについては暗黙とされることが多く,実践場面での教師の思考がどのような内容で,どのような構造なのかは実際のところよくわかっていない。本稿では,教育実践における教師の思考に関する国内の研究をその内容と構造の視点から概観し,教育実践における教師の思考について論じた。教育実践における教師の思考を,授業場面,学級をめぐる実践場面,実践記録に分類,整理したところ,授業構想とのズレや予想外応答への気づき,意図的視点による問題状況への気づきがあることがわかった。教師の気づきは実践の中だけでなく,実践についての省察の過程においても再構成されることがわかった。また,気づきの機序については,暗黙知(ポラニー.M)との関連が示唆された。
著者
佐々木 剛 戎 達生 飯田 正博 垰田 嘉一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IE, 画像工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.431, pp.7-11, 2005-11-17

CGアニメーションを駆使したスタジオ番組制作が多くなり、演出手法も多様化している。3次元バーチャルシステムを使用した撮影・収録において、CGと照明効果を連動させることで実写映像とCG画像の合成における違和感を少なくすることや、照明灯体の照度・動き・色変化に対し、CGオブジェクトをリアルタイムで変化・追従させることは、テレビ制作だけでなく、新たな映像表現として期待できる。本報告では、照明コンソールから出力されたDMX512信号をもとに、照明の変化に対応してリアルタイムでCGを変化させるハイビジョン映像効果システムの開発について、番組での使用例を紹介すると共に、今後の展望・課題について述べる。
著者
神森 眞 小川 利久 橋本 政典 小長谷 一郎 大原 毅 佐々木 毅
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.717-721, 1996-03-01
被引用文献数
5

本邦における食道異所性胃粘膜島の発生頻度は男性4.0%,女性2.6%でその大部分は食道入口部近傍に存在するとされている.しかし,上部食道の異所性胃粘膜島より発生した腺癌の本邦報告例は,検索しえた限りでは5例のみであり,極めてまれである.症例は,74歳の女性.特記すべき既往歴,家族歴なし.平成5年12月27日上腹部不快感生じ,精査のため平成6年1月17日当院入院する.上部消化管X線検査にて,頚部食道に3cm大の有茎性腫瘍を認め,さらに上部消化管内視鏡検査にて,切歯列より約14cmの頚部食道後壁左側に,山田III型ポリープ様病変をみとめた.生検の結果は,乳頭状腺癌であった.また,超音波内視鏡検査にてこの腫瘍の深達度はmmと考えられた.平成6年2月15日,腫瘍を含めた頚部食道粘膜切除術を施行した.病理組織学的には,異所性胃粘膜島より発生した高分化腺癌と考えられた.今回,我々は外科的粘膜切除術で根治がえられたと考えられる極めてまれな早期頚部食道腺癌を経験したので,文献的考察を加え報告する.
著者
福本 尚人 佐々木 広 井上 弘士 村上 和彰
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.101-111, 2012-05-29

本稿では,マルチコア・プロセッサの性能向上を目的としたヘルパースレッド実行法を提案する.マルチコア・プロセッサの性能向上阻害要因として,メモリウォール問題の顕著化がある.これに対して,プロセッサ・コアを「演算用」だけでなく「メモリ性能向上用」に用いることで,性能向上を目指す.メモリ性能向上用のコアでは,プリフェッチを行うヘルパースレッドを実行する.提案方式では,コア間の同期などによりアイドルとなったコアを活用しヘルパースレッド実行を行う.さらに,メモリ性能がボトルネックとなる場合,並列プログラムを実行するコアを減らしてヘルパースレッドを実行する.これにより,プログラムの特徴に応じてメモリ性能向上用のコア数を変更することで,演算性能とメモリ性能の間の適切なバランスをとる.提案方式をシミュレータを用いて評価した結果,従来の全コア実行に対して最大で42%の性能向上を達成した.This paper proposes the helper threads management technique for a multicore processor, and reports its performance impact. Integrating multiple processor cores into a single chip, can achieve higher peak performance by means of exploiting thread level parallelism. However, the memory-wall problem becomes more critical in multicore processors, resulting in poor performance in spite of high TLP. To solve this issue, we propose an efficient helper threads management technique. Unlike conventional parallel executions, this approach exploits some cores to improve the memory performance. In our evaluation, the proposed approach can achieve 42% performance improvement to a conventional parallel execution model.
著者
安室 喜正 中田 昇 川人 誠治 佐々木 睦男
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.397-404, 1987-12-01
被引用文献数
2 3

置換型ライコムギ(2n=42,AABBR'R')の特徴は,(1)A,Bゲノムのほか,コムギDゲノムの染色体とライムギRゲノムの染色体から構成された新しいR'ゲノムからなり,(2)そのR'ゲノムはほとんど例外なく2Rを欠き,2Dを含むことである.この特異的な2D-2R染色体置換は,メキシコのCIMMYTの育成系統群では,地理的条件から2D上の日長不感応性遺伝子によるものとされている.しかし,我々の研究室で育成した置換系統群は,育成過程でそのようた地理的制約はたいので,当該遺伝子の影響は考えられず,2D-2R置換の原因は種子稔性に関与する遺伝子が2Dに存在するためであろうと推測した(YASUMURO et al. 1983)、本研究は,2D,2R染色体とコムギおよびライムギ細胞質を因子として組合せた4種類の核・細胞質型の個体を作成し,それらと種子稔性との関係を調査し,ライコムギの2D-2R置換の原因を明らかにしようとした. 3系統の交配親,(1)aestivum細胞質(aes)をもつ2D-2R置換型ライコムギ系統S78,(ゲノム構成AABBR'R',ただしこのR'ゲノムの染色体構成は1R,2D,3R,4R,5R,6R,7Rである),(2)複倍数体型系統Beagle(AABBRR),(3)cereale細胞質(cer)をもつ複倍数体型系統(cer)-JM_135を用いて,S78x Beagleと(cer)-JM_135 x S78の交配を行い,F_2,F_3を育成した、(aes)および(cer)の2細胞質とAABBR'R'とAABBRRの2ゲノム構成を組合わせた4種類の核・細胞質型の個体,(aes)-AABBR'R',(aes)一AABBRR,(cer)一AABBR'R',(cer)-AABBRRを,F_2,F_3から同定して選び出し,それらの個体の種子稔性を調べた.その結果,2D,2R染色体とコムギ,ライムギ細胞質との問には,種子稔性に関して次のような顕著な相互作用が認められた.(1)2D染色体の存在は(aes)細胞質のもとでは高種子稔性をもたらすが,(cer)細胞質のもとでは植物体が貧弱となり低種子稔性をもたらす。(2)2R染色体の存在は(aes)細胞質のもとでは高低いずれの種子稔性をももたらすが,(cer)細胞質のもとで高種子稔性を得るためには不可欠である(Fig.2).これらの結果はコムギ細胞質における2Dの2Rに対する選択的有利性を表わしており,ライコムギにおける2D-2R染色体置換の原因となることを示している.また,このような主要形質における核・細胞質相互作用の存在は,ライコムギ育種において,コムギあるいはコムギ近縁種の細胞質に対する最適核遺伝子型の選抜,即ち核・細胞質相互作用の選抜が有効であることを示している.
著者
安藤 雄一 八木 稔 佐々木 健 小林 秀人 小林 清吾 堀井 欣一
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.440-447, 1995-07-30
被引用文献数
11

新潟県内のフッ化物洗口(以下,F洗口)の実施地域(36市町村)と未実施地域(37市町村)における12歳児DMFTの経年的な推移について検討した。評価期間は1982〜1993年度とした。分析対象はF洗口を管内のすべての小学校で6年以上継続実施している市町村と未実施の市町村とした。F洗口を実施している料については,開始時期別に,1970年代開始群,1982〜1985年度開始群,1986年度開始群の3群に分類して分析を行った。未実施群のう蝕は漸減傾向にあり,全国平均に極めて近い傾向を示した。評価期間以前にF洗口の効果が現われていたと考えられる1970年代開始料は,未実施群と同様,漸減傾向を示したが,う蝕は一貫して少なかった。1993年度における未実施料と比較した1970年代開始群のDMFTの差は43.2%であった。一方,評価期間中に注目を開始した群では,F洗ロ開始以後のう蝕の減少量が未実施料よりも大きく,その減少傾向は統計的に有意であった。未実施料のう蝕減少量を考慮して1993年度時点のF洗口の補正減少率を算出した結果,82〜85年度開始群が45.1‰86年度開始群が31.1%であった。以上より,F洗口によるう蝕の予防効果は,F洗口以外の要因の影響によるのう蝕の減少を除外しても高いことが確認された。
著者
佐々木 啓
巻号頁・発行日
2011

Thesis (Ph. D. in Medical Sciences)--University of Tsukuba, (B), no. 2552, 2011.7.25
著者
小中 隆義 鈴木 良 外崎 学 成田 光幸 田中 知朗 佐々木 一正
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. OFT, 光ファイバ応用技術 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.615, pp.1-6, 2004-01-23
被引用文献数
3

光ファイバコアにブラッグ・グレーティングを形成させたFBGは格子間隔に依存する特定の波長光を反射する特性を利用した歪みセンサとして優れた可能性を特っていることから,著者等はこれを防災に役立てることを考え,構造物の変形監視システムの開発を行なっている.実際に2001年12月より,FBG歪みセンサを青函海底トンネル作業坑に敷設してフィールド実験を継続中である.途中経過と,さらなる適用事例ついて報告する.
著者
小中 隆義 鈴木 良 外崎 学 成田 光幸 田中 知朗 佐々木 一正
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. LQE, レーザ・量子エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.621, pp.1-6, 2004-01-23

光ファイバコアにブラッグ・グレーティングを形成させたFBGは格子間隔に依存する特定の波長光を反射する特性を利用した歪みセンサとして優れた可能性を特っていることから,著者等はこれを防災に役立てることを考え,構造物の変形監視システムの開発を行なっている.実際に2001年12月より,FBG歪みセンサを青函海底トンネル作業坑に敷設してフィールド実験を継続中である.途中経過と,さらなる適用事例ついて報告する.
著者
宮本 英美 小池 琢也 佐々木 正人 冨田 昌夫 玉垣 努 玉垣 幹子 梅村 文子 松本 琢磨
出版者
東京大学大学院教育学研究科
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.365-381, 2000-03-15

We studied about development of putting on socks action performed by a patient with paralytic symptom in rehabilitation of ADL. Our purpose is to reveal what information are available to relearn and improve the action. Especially, it is important how he organized many movement into whole process of action and what patterns of action were used and selected, because we can find in these developmental aspects what information were explored and used to coordinate segments of body. We analyzed 5 videotaped actions over 6 months in these ways : time, number of sub-actions, organization of action process, variation of action patterns. Time decreased gradually, but number of sub-actions didn't correspond to it. Organization of action process and variation of patterns showed that the patient explored posture supporting trunk and manipulation simultaneously and change of such posture varied some kinds of manipulation. These results suggest that putting on socks is based on this basic posture ('simultaneous posture') and it is source of generating new patterns of actions.
著者
大林 太良 山下 晋司 秋道 智彌 杉田 繁治 竹村 卓二 佐々木 高明 船曳 建夫 石川 栄吉
出版者
東京大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1986

1987年6月までに整理された資料に基づき, 100項目の文化項目, 150民族についてクラスター分析を行なった結果, 次のような東南アジア, オセアニア諸文化の分類の樹状図が得られた. この地域の文化は大きく東南アジアマクログループとオセアニアマクログループに2分される. 東南アジアマクログループは, インドシナ=核島嶼群と, アッサム=辺境島嶼部群に分かれる. 更に, インドシナ=核島嶼部群は, インドシナ=華南亜群と東南アジア高文化亜群に分かれる. アッサム=辺境島嶼部群は, 東南アジア穀物栽培民亜群と, 周辺根菜民亜群に分かれる. 他方, オセアニアマクログループは, オセアニア栽培民群と採集狩猟民群に2分される. 後者は主としてオーストラリア原住民より成り, 顕著な下位区分は示していない. ところが, オセアニア栽培民群は, メラネシア栽培民亜群とミクロネシア=ポリネシア栽培民亜群に分かれる. 次に, 同じ資料を用いて因子分析を行なった結果, 4個の因子を認めることができた. 概して因子分析の結果は, クラスター分析の結果を支持しており,ことに東南アジア対オセアニアという二分の傾向, 穀物栽培民対根菜民の対照等を浮き彫りにしている. その後, 1988年1月までに回収された資料に基づき, 238民族のクラスター分析を行なったが, その結果は上述の150民族についての分析とほぼ同様な分類を示している. また, 238民族についても因子分析を実施中である. この他, 文化項目を単位としていかなる項目のクラスターが見られるかについても分析中であり, これらの結果はまとめて正式報告書に発表される予定である. 東南アジア, オセアニア全域にかけての文化分類については, 従来は主観的な分類がもっぱら行なわれていたが, 本研究によってはじめて統計的処理によるほぼ妥当な分類が呈示されたのである.