著者
板橋 幸弘 馬場 俊明 加藤 智 佐々木 睦男
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.108-111, 2005-01-01
被引用文献数
9

症例は36歳の女性で,間欠的な強い腹痛で近医を受診し,右上腹部に径10cm大の腫瘤を指摘されたが原因不明のまま退院した.再度腹痛が出現したため当院救急外来を受診した.腹部超音波およびCTで右上腹部の可動性のない腫瘤に一致して腸管重積像を認めた.翌朝より血便を伴い,血清CPK値1,003IU/Lと著明に上昇したため緊急手術となった.回腸末端を先進部とし,横行結腸中央付近に達する回盲部型腸重積症で,Hutchingson手技で重積を解除したが,重積されていた右側結腸全体の腸管壁が著明に硬く肥厚しており結腸右半切除術を施行した.盲腸から上行結腸にかけて後腹膜に固定されていないことが腸重積の誘因と思われた.切除標本で重積の原因となりうる器質的変化を認めず,特発性腸重積症と診断した,重積腸管が広範囲で,長時間経過している場合には腸管壁の不可逆的な変化が強く,重積を解除しても腸切除は必要と思われた.
著者
水谷 聖子 加藤 章子 大橋 裕子 丹羽 さゆり 岡部 千恵子 水谷 勇
出版者
日本赤十字豊田看護大学
雑誌
日本赤十字豊田看護大学紀要 = Journal of Japanese Red Cross Toyota College of Nursing (ISSN:13499556)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.33-41, 2005-03-31

性感染症、人工妊娠中絶件数の増加など思春期における性の現状は、適切な性教育が展開されていない火急の課題である。思春期における性教育の一方法としてピア(仲間)による方法の有効性は言われているが、B県ではピアによる性教育は実施されていなかった。ピアによる性教育の現状をふまえ、ピア・サポーターを養成しピア・サポーターによる生や性の教育を市民講座に設定して実施した。講座には、事例、グループワークやワンポイントリレー講義を導入した。受講生にとって事例を用いたグループワークは事例を通して客観的に話し合うことができ、その体験を自分自身の価値観と重ねて考える機会になっていた。また、アンケート結果からはグループで話し合うことで価値観の多様性に気づき、話し合いの過程においてわからなかったことや知りたいことが明確になり、ワンポイントリレー講義を通して知りたかった新たな知識を習得していた。ピアによる性教育が効果的に実施されるためには、地域社会で性に関する問題を共有していく基盤が不可欠であることはいうまでもないが、今後は、ピア・サポーターの養成やピア・サポーターによる教育の効果測定など一般化に向けての検証や修正をしていく必要がある。
著者
忠鉢 洋輔 表 祐志 品川 高廣 加藤 和彦
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.2402-2412, 2013-12-15

近年,オペレーティングシステム(OS)のカーネル権限を不正に取得する攻撃が増加している.攻撃者による永続的な不正アクセスを防ぐためにシステムイメージをOSの外部から保護する研究が行われているが,保護のためのTrusted Computing Base(TCB)が大きくなりがちなこと,正確な保護が行えないことが問題となっている.本研究では,OSから透過的にバイト粒度での保護を実現するハイパバイザの設計と,このハイパバイザに最適化された完全性保護のための情報を生成する手法を示す.さらに,一般的なクライアントOSであるWindows XPとFAT32ファイルシステムを対象に,BitVisorをベースした実装と評価を行った.この結果,全体で31KLOCと小さいTCBのハイパバイザで比較的低オーバヘッドの完全性の保護が実現できることを確認した.
著者
加藤 三恵子
巻号頁・発行日
2012

Thesis (Ph. D. in Science)--University of Tsukuba, (A), no. 6345, 2012.11.30
著者
中野 嘉邦 鴻巣 健治 加藤 秀雄 末田 章
出版者
公益社団法人精密工学会
雑誌
精密機械 (ISSN:03743543)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.579-584, 1981-05-05
被引用文献数
9

本報では、任意の輪郭をもつ歯車状工作物を加工するためのボブの輪郭を決定する新しい数値計算法を提案している。この方法では、従来の方法のように超越方程式を解く必要がない。本報の方法は、機械加工によって生じる工作物の実体部分の境界輪郭が、所定の加工精度に対応する一定の限度に収束するまで逐次近似計算を繰返す方法である。本報では、さらに、設計したホブの正しさを検証するため、このホブによって創成される工作物の輪郭を計算する方法も提示している。これらの計算方法を用いれば、任意の輪郭をもつ歯車状工作物を加工するためのホブの設計が容易に行われるばかりでなく、ホブ切り中における切れ刃の干渉状態も容易に吟味することができる。
著者
加藤 博一
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

1.正方形マーカーを用いたインタフェース方式の改良小型カメラを2台内蔵したHMDを用い,ステレオカメラ方式での拡張現実感システムを構築した.これにより精度・安定性を向上させた.また,カメラのレンズ歪みモデルにも改良を加え,カメラキャリブレーション手法のユーザビリティの改善を図った.2.評価実験の実施上述のシステムを用いて,3次元拡張現実感インタフェースの評価実験を行った.特に複数人での共同作業場面における有効性の確認や問題点の発見に注目した.ステレオ表示の有効性が確認され,また,現実世界と仮想物体の逆隠蔽問題による指差し行為の妨害効果なども確認できた.3.平面対象物の位置姿勢計測アルゴリズムの開発テンプレートマッチングに基づき平面対象物の位置姿勢をリアルタイムに検出する手法を開発した.対象画像からトラッキングに有効と思われる複数の特徴点を自動的に検出し,それを用いて特徴点を自動登録する.トラッキング中は,利用可能な特徴点の中から位置姿勢計算に有利な4点を動的に選択しテンプレートマッチングによりトラッキングを行う.4.屋内環境でのリアルタイム位置合わせ手法を開発屋内環境を平面近似によりモデル化し,そのモデルに基づく屋内環境でのリアルタイム位置合わせ手法を開発した.3の手法を応用し,多少の凸凹のある物体に対しての位置合わせを実現した.5.仮想物体表示における実世界シーンへのシャドウイングアルゴリズムの開発仮想物体を実世界映像上に重畳表示する際に,仮想物体の影を実世界シーンに投影するリアルタイム表示アルゴリズムを開発した.6.本・定規・カップ・サイコロによるインタラクション方式の考案と実装本,定規といった日常的道具を用いたインタラクション手法を考案した.それぞれの道具の有するアフォーダンスを有効に利用することで,ユーザが直感的に理解しやすいインタラクション方式を実現した.
著者
加藤 徹
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.67, no.8, pp.843-847,a1, 1999-08-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
13

明治後期から昭和前期にかけ, 行われた耕地整理事業において標準区画的に採用されていた短辺10問, 長辺30間の1反歩について, 上野英三郎が「日本に1反歩が適当なりとは如何の論拠より来りたるか, 余輩は未だ不幸にして, 何等解釈を聞く能ず」と疑問を投げかけていた。そこで, 本報では, この1反歩区画のルーツ等について歴史的観点から総説的に跡づけることを試みた。その結果, 1反歩区画は, 条里制の区画割の半折型 (12間×30間=360歩) →太閤検地の面積基準 (5間×60問=300歩)→鴻巣式の1反歩区画 (10間×30間=300歩) という流れになること, などについて整理できた。
著者
中丸 禎子 川島 隆 加藤 敦子 田中 琢三 兼岡 理恵 中島 亜紀 秋草 俊一郎
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

言語・時代の枠組みを超えた文学の超領域的研究と、教養教育・社会人教育における研究成果の還元モデルの確立を目的に、各研究者がアンデルセン『人魚姫』に内包される諸テーマを緩やかに共有した。個々の研究者が「人魚姫」「世界文学」「教養教育」などのテーマで成果を発表した。また、ブース発表「「人魚」文学を扱う授業の実践報告―多言語文学間の共同研究と教養教育への還元モデル」、シンポジウム「異界との交流」、シンポジウム「高畑勲の《世界》と《日本》」(映画監督・高畑勲氏を招聘)において、共同・連名で成果を発表した。
著者
久留 景吾 恩田 裕一 河守 歩 加藤 弘亮
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.95, no.5, pp.267-274, 2013-10-01 (Released:2013-11-13)
参考文献数
13
被引用文献数
9 23

福島第一原子力発電所の事故により放射性物質が降下した福島県内の林相の異なる森林3地点を対象に, 樹冠から林床へ降下するリターを通じた放射性セシウムの移行の特徴を明らかにした。事故後4カ月目から11カ月間, 定期的にリターの134Csおよび137Csの放射能濃度を測定し, 降下量の解析を行った。リターの放射能濃度は総じて落葉広葉樹-アカマツ混交林よりもスギ人工林で高い値を示したのは, 事故発生時に広葉樹が落葉していたために, 飛散した放射性セシウムの多くが広葉樹の樹冠を通過して林床へ降下した結果と考えられる。一方, スギ人工林ではリターに伴う放射性セシウム降下量の累積値が大きく上昇し続けており, 調査終了時でも樹冠に放射性セシウムが相当量残存していることが確認された。2011年10月以降各林分でのリターの放射能濃度が概ね横ばいに推移する中, 放射性セシウム降下量は樹冠からのリター降下量に大きく影響されていることが明らかとなった。今後は降下するリターに加え, 樹冠における生葉の鉛直分布や林床でのリターの平面分布, 林内雨や樹幹流などを含めて総合的に放射性セシウムの移行機構を解明していく必要がある。
著者
加藤 博之 西原 学宣 大森 啓造 須永 俊明 徳永 蔵
出版者
日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.38-44, 1993-02-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
26

A case of drug-induced fulminant hepatitis is reported. A 48-year-old female was transferred to Saga Medical School Hospital because of fever, general fatigue, jaundice and marked liver dysfunction after being treated by her private physician with several drugs containing antibiotics and aspirin DL-lysine. On admission, prothrombin time was prolonged (13%), but the patient's consciousness was clear. Viral markers for hepatitis A, B and C were negative. On the fourth hospital day, consciousness disturbance (hepatic coma: grade IV) developed, and despite intensive treatment including glucagon-insulin therapy and plasma exchange, the patients died of hepatic coma with multiple organ failure on the eleventh hospital day. The liver weighed 710g, and exhibited features of massive necrosis histologically. The lymphocyte stimulating test was positive for cefmetazol and aspirin DL-lysine. A review of literature showed that in Japan about 5% of cases of fulminant hepatitis are due to drugs other than halothane. In most cases reported recently, the lymphocyte stimulating test has been positive for the causative drugs.
著者
高後 裕 加藤 淳二 越田 吉一 新津 洋司郎 茂木 良弘
出版者
札幌医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

Long-Evans Cinnamon(LEC)ラットは金属(銅および鉄)代謝異常を有し、肝炎・肝癌を自然発症することが知られている。本研究では申請当初、長期エタノール摂取の中止による肝癌発症に与える影響を検討することを目的として本ラットにエタノールを投与したが、数日以内に死亡することが判明したため、平成5年度は本ラットに存在するエタノール代謝異常について検討した。LECラットの腹腔内にエタノールを投与し(2g/kg体重),血中エタノールおよびアセトアルデヒド濃度をガスクロマトグラフィーで測定すると,両者の血中濃度は,対照に比べエタノール投与4時間後まで約2倍遅延していた。次にLECラット肝のエタノール代謝関連酵素解析を行った結果、アルコール脱水素酵素(ADH)およびアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)活性(とくにlow KmALDH活性)は,対照のWistarラットに比べ約25%低下していた。そこで両酵素の活性低下の原因を明らかにする目的で、LECラット肝のADH-1遺伝子およびALDH-2遺伝子を解析した結果、LECラット肝ADH-1遺伝子の第1イントロンに16塩基のinsertionが存在するとともに、ALDH-2遺伝子の第67codonにCAG→CGG(Gin→Arg)の点突然変異が存在することを見い出した。すなわち、LECラット肝のADH-1およびALDH-2遺伝子は異常を有しているためにこれらの2つの酵素が不活性型となっているものと考えられた。
著者
大渕 朗 加藤 崇雄 米田 二良 本間 正明 吉原 久夫 三浦 敬 高橋 剛
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

種数gの代数曲線Cに対する平面モデルの最少次数s_c(2)は評価式としてs_c(2)≦g+ 2が成立する。s_c(2)=2g-t+ 2の時は種数tの曲線に二重被覆であると言うMartens-Keemの予想をt=0, 1, 2で考察し、特にt=2の時はg≧10なら予想は肯定的に成立、g≦9では各gに反例が存在することを示した。また第7回代数曲線論シンポジウム(横浜国立大学にて2009年12月05日(土)-12月06日(日))、第8回代数曲線論シンポジウム(埼玉大学にて2010年12月11日(土)-12月12日(日))と第9回代数曲線論シンポジウム(首都大学東京にて2011年12月10日(土)-12月11日(日))を開催した。
著者
小野 博 穂屋 下茂 田中 周一 工藤 俊郎 加藤 良徳
出版者
福岡大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

多くの教員は学生のコミュニケーション能力を感覚的に把握しているが、数値化された測定方法が共通化されていないため、測定方法を開発した。学習に際し大学生に求められるコミュニケーション能力の構成要素は、(1)発信力、(2)受信力、(3)初対面積極性、(4)学習積極性の4要素が重要だと考えた。約6、000名の学生に質問紙調査を実施した(1)質問紙の評価、(2)教員の面接による評価、(3)客観的な日本語力調査を実施し、学生のコミュニケーション能力と基礎学力等の検討を行い、教員の感覚と一致する測定方法を開発した。
著者
加藤 光男
出版者
日経BP社
雑誌
日経アーキテクチュア (ISSN:03850870)
巻号頁・発行日
no.897, pp.16-21, 2009-04-13

名古屋市のビジネス街の中心地、伏見地区のオフィスビルを建て替えた。既存の建物は、旧日本興業銀行の名古屋地区の拠点でもあった名古屋興銀ビル。伝統と格式、重厚さが特徴だったが、興和不動産はイメージの一新を求めた。 「誰もが第一印象で美しいと感じる洗練されたデザイン。街の活性化にも貢献するエレガントなビルにしたいと考えた」と興和不動産の名倉三喜男社長は語る。
著者
加藤 祐次 清水 孝一
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

散乱媒質中の蛍光体深さと厚さを同時に推定する簡便な手法を新たに開発した。本手法では、多波長複数配置光源群の励起光を用い、蛍光体の深さと厚さを同時推定する。この計測原理確率確立のため,数値解析および生体試料実験等において、蛍光体深さと厚さと蛍光強度比の関係を検証した。その結果、深さと厚さ推定が原理的に可能であり、また生体組織への適用性も確かめられた。最後に、生体模擬ファントムを用いて蛍光体の深さ厚さの同時推定を行った。推定された深さ情報から散乱により劣化した蛍光像を改善した。更に厚さ情報を加えて3次元再構成することで、蛍光体の3次元像の取得が可能であることを示し、提案手法の有用性を明らかにした。
著者
国安 稔 根岸 悟 小玉 喜三郎 加藤 進
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.34, pp.187-197, 1990-03-30
被引用文献数
1

北海道南部苫小牧沖海域には並走する数条の褶曲構造が発達し, 石油・天然ガスの賦存が期待されている。この地域の地質構造形成過程を仮想基盤変位法(KODAMA et al., 1985)により実験的に再現した。本地域は褶曲構造付近を境界として地層の層厚が急変したり, 浅層と深層で褶曲形態が異なる現象が見られる。実験の結果, これらの褶曲構造は隣合う翼部で形成時期が違うこと, あるいは浅層と深層で褶曲の形成時期が異なることがわかり, 地層の堆積過程における下位層の累積変形として乏くの褶曲構造の形成を説明できると考えた。また, 褶曲の形態ならびに形成過程が東部と西部で異なっており, これは隣接したふたつの堆積盆地の異なった造盆地運動を反映した結果であると総括された。なお垂直運動と水平運動による変形像の比較は, この両者は互いにエンドメンバーであり, 実際の地質構造は両者の特徴を合わせ持ったものであると考察された。