著者
中村 克行 趙 卉菁 柴崎 亮介 坂本 圭司 大鋸 朋生 鈴川 尚毅
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.88, no.7, pp.1143-1152, 2005-07-01
被引用文献数
22

本論文では, 複数のレーザレンジスキャナを用いた歩行者トラッキングの方法, 及び駅での検証実験について述べる.提案手法は, ネットワークを利用して複数のレーザスキャナを同期させ, 得られた足断面のレンジデータから歩行者トラッキングを行う.トラッキングアルゴリズムは次の機能で構成される: レンジデータのクラスタリングによる足候補の検出, 足候補のグルーピングによる歩行者候補の検出, 歩行者候補の動きベクトル検出, 歩行モデルに基づく拡張カルマンフィルタによる既存軌跡の延長処理.提案手法を東京都内の駅構内コンコースに適用した結果, 最大で約150人を同時にトラッキングすることができた.トラッキング精度は, 通勤ラッシュ時において8割を超えた.広範囲における高密度の群集計測への応用が期待される.
著者
伊木 亜子 菊地 和美 田中 ゆかり 土屋 律子 木下 教子 坂本 恵 佐藤 恵 菅原 久美子 畑井 朝子 藤本 真奈美 宮崎 早花 村上 知子 山口 敦子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】日本調理科学会特別研究(平成24~25年度「次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理」)の資料とすることを目的として,昭和30~40年頃までに北海道に定着した家庭・郷土料理に関する書誌情報の調査および聞き書き調査を実施した。これらの調査から得られたおやつ・間食について,主材料や調理操作を分析し地域性を検討したので報告する。<br />【方法】調査は,北海道を道央・道南・道北・道東の4地域に区分し,平成25年4月~26年12月に実施した。<br />【結果】北海道全域で特産のじゃがいもを使った「いも団子」「いも餅」が多く,調理法や食べ方も多様である。また各地にデンプン工場があったため,「でんぷん焼き」や煮豆を加えた「でんぷん団子」もみられる。かぼちゃも各地でつくられ,「かぼちゃ団子」など利用が多い。穀類の利用も各地にみられるが,道南には特に古くから伝わる伝統の菓子が多く,米粉を利用した「こうれん」や「べこ餅」がある。その他では,雑穀のそば・キビなども,まんじゅうや餅に利用されている。全般的に,いもやかぼちゃ・豆類などの農産物,穀類の利用が多く,調理法は,煮る・蒸す・焼くなどが多い。<br />また北海道らしく,干した鱈・鮭(トバ)・かすべ・鰊・数の子など海産物が道北海岸やその他内陸においてもおやつになっている。自家栽培の果物ばかりでなく自生していた桑・野イチゴ・こくわ,胆振地方特産のハスカップも生や加工して利用している。牛乳を用いたおやつは,酪農が盛んな帯広を中心とする道東で,自家製の「牛乳豆腐」や「ヨーグルト」などあるが他での利用は少なく,酪農品を早くからとりいれた札幌で若干みられる。以上より,北海道のおやつ・間食は,各地の産物をうまく利用した地域性があることを確認した。
著者
尾臺 珠美 市川 麻以子 宮坂 尚幸 高木 香織 西田 慈子 塗師 由紀子 中村 玲子 服部 早苗 遠藤 誠一 坂本 雅恵 島袋 剛二
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.215-221, 2016-07-31 (Released:2016-09-24)
参考文献数
9

2009年から2014年の6年間に当院で妊娠22週以降に分娩した6,236件のうち,死産であった35症例(0.56%)を対象とし,周産期背景と子宮内胎児死亡(IUFD ; intra uterine fetal death)の原因について後方視的に検討した。35例の年齢中央値は34歳で,高年妊娠は17例(48.6%),初産婦18例,経産婦17例,高年初産は7例(20%),不妊治療後は5例(14.3%)であった。IUFD診断時の妊娠週数の中央値は30週で,飛び込み受診のため週数不明例が4例あった。6,236件のうち高年分娩は1,790例で,35歳未満のIUFDの割合0.40%に比し,0.95%と有意に高かった(p<0.05)。また,全飛び込み分娩例は109例あり,IUFDの割合は3.7%と有意に高かった(p<0.05)。受診契機はIUFDのため他院からの紹介6例,母体搬送3例,救急搬送5例,自己来院15例,入院中6例であった。IUFDの原因は臍帯因子10例,胎盤因子9例,胎児因子4例,外傷1例,原因不明11例であった。飛び込み受診例・高年妊娠でのIUFDの割合は高く,妊婦健診受診への啓発活動とより慎重な妊娠管理が求められる。約30%は原因不明であり,死因究明に対して積極的な姿勢が望ましい。
著者
坂本 信介 坂本 尚子 上村 佳孝
出版者
慶應義塾大学日吉紀要刊行委員会
雑誌
慶應義塾大学日吉紀要 自然科学 (ISSN:09117237)
巻号頁・発行日
no.50, pp.43-52, 2011

50号記念号研究ノート慶應義塾大学日吉キャンパス特色GP「文系学生への実験を重視した自然科学教育」の事業Ⅲ「新しい実験テーマの開発と実験マニュアルの整備」(生物学)の継続事業として, 「動物の最適採餌理論」を題材とした新たな学生実験テーマの開発を行った。具体的には材料の選定, 実験計画の決定, 学生配布資料・提出用レポートのフォーマット作成, 学生対象の試行実験を行った。本プログラムでは新規実験手法の体験よりも, むしろ, 科学的思考力を養うことに重点を置き, パターン認識や仮説検証のプロセスを訓練することを目的とした実験の開発を行った。学生が動物の役割を演じるrole-playing実験であり, 具体的には, 学生が動物のつもりで餌探索を行い, どのように餌が採集できたかについてグラフ化し(パターン認識), なぜそのようなパターンが得られたのかについて仮説をたて検証する(仮説検証)という流れである。試行実験では, 誘導的に仮説を導く過程においてヒントの有無, および, 班による議論の有無という二種類の操作を行い, 仮説とその検証方法を正しく導くことができたかを4グループの間で検証した。仮説の正答率はヒントを与えたグループでやや高く, 仮説を検証するためのプロセスを正しく辿ることのできた学生の割合は, ヒントなしで議論をしたグループがもっとも高かった。このことは, 正しい仮説検証のプロセスを導く上でより重要なのは仮説をたてる上でのヒントよりも仮説をたてる上での十分な議論であることを示唆している。
著者
港谷 昌成 原 貴子 坂本 直一 笹木 敏行
出版者
公益社団法人 石油学会
雑誌
石油学会 年会・秋季大会講演要旨集 創立50周年記念国際シンポジウム/第38回石油・石油化学討論会
巻号頁・発行日
pp.62, 2008 (Released:2009-01-05)

コンビナートルネッサンス構想の一環として、水島コンビナート地区に「一般的に行われている各留分毎の水素化脱硫プロセス」よりコスト的に有利である「新規一括脱硫プロセス」を開発し、2009年度より稼働予定である。本発表では当該新規一括脱硫プロセスの概要を示すと共に、プロセスの優位性について報告する。
著者
大嶋 弘子 内藤 俊夫 久木野 純子 福田 友紀子 坂本 直治 三橋 和則 武田 直人 奥村 徹 礒沼 弘 渡邉 一功 林田 康男
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.167-173, 2005-06-30
参考文献数
18
被引用文献数
1

目的:特定の診療科を決めかねる病態として不明熱がある.順天堂大学医学部附属順天堂医院総合診療科を初診し入院を要した不明熱患者215症例について,今後の診断の参考とするためその特徴を解析し検討した.対象および方法:1994年10月から2004年8月までに当科を初診し,入院治療が必要となった成人の原因不明の発熱患者215名について検討した.対象患者の発熱の原因を疾患別に分類し検討した.また,65歳以上の高齢者と65歳未満の非高齢者での原因疾患について比較を行った.結果:原因疾患として,感染症が102名(47.4%),非感染性炎症性疾患が40名(18.6%),悪性疾患が14名(6.5%),その他の疾患が21名(9.8%),原因不明が38名(17.7%)であった.頻度の高かった伝染性単核球症・髄膜炎・深部膿瘍・感染性心内膜炎の中で,初診時の平均年齢は深部膿瘍で有意に高く,平均体温は伝染性単核症で有意に低かった.65歳以上の高齢者では65歳未満の患者に比較し,感染症を原因とする不明熱の割合が低く,原因不明の症例が多かった.85歳以上の超高齢者も7名含まれた.考察:不明熱の原因の約半数は感染症であった.特に,伝染性単核球症・感染性心内膜炎・深部膿瘍・髄膜炎の頻度が高く注意が必要である.HIV関連不明熱・麻疹・風疹の患者も比較的多く認められた.悪性腫瘍は多岐に渡ったが,画像検査の普及や進歩のため不明熱の原因となることは少なくなっており,過去の報告に比べ割合が低下していた.7症例は診断確定までに60日以上を要しており,周期的な発熱のみを症状とし,診断の手掛かりが得られ難かった症例であった.この中で死亡後に病理解剖により原疾患が判明した患者が2名おり,共に悪性リンパ腫と診断された.不明熱患者の診断には,感染症を中心とした多疾患にわたる知識が必要であると考えられた.
著者
坂本 多穂
出版者
福島県立医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

高コレステロール血症治療薬スタチンは横紋筋融解症や筋力低下などの筋毒性をもつが、その発症機序は不明である。低分子量G蛋白質Rabは、脂質ゲラニルゲラニルピロ燐酸(GGPP)を介してオルガネラ膜に結合し、小胞輸送を制御する。我々は以前、スタチンがGGPPを枯渇させ、Rabを不活性化させて筋空胞変性を起こすと報告した(Sakamoto et al.,2007EASEB J)。しかし、Rabには60以上のアイソフォームがあり、それぞれが固有の輸送経路を制御する。本研究では、スタチンがどのRabアイソフォーム、どの経路を阻害し筋毒性を起こすのか調べた。小胞体・ゴルジ輸送は全小胞輸送系の起点であり、Rab1Aが制御する。初代培養ラット骨格筋線維に1μMフルバスタチン(Flv)を4日間作用させると、Rab1Aは膜から離脱した。GGPP補充で膜への結合は回復した。GGPPは、Flvによる空胞変性と壊死も抑制した。ER-ゴルジ輸送阻害薬ブレフェルジンAはFlvによる毒性を再現した。以上より、スタチンがRab1Aを阻害し、細胞内の物流が停滞して、筋が壊死すると考えられる。さらに、スタチンによる筋収縮低下について検討した。Flv(10μM)存在下で筋線維を3日間培養するとカフェイン誘起性収縮が有意に抑制した。スタチンは、筋原線維には影響しなかったが、筋小胞体Ca^(2+)貯蔵量および筋ATP量を低下させ、これらが収縮抑制の原因と考えられた。スタチンはミトコンドリア障害を起こし、これがATP低下の原因だと思われる。GGPPはスタチンによる収縮抑制、ATP低下を抑制した。本研究より、スタチンによる筋壊死や収縮抑制が低分子量G蛋白質の不活性化が原因であることが分かった。またスタチンの毒性が、GGPP補充で軽減できることも分かった。治療への応用が期待される。
著者
坂本 正裕 有田 秀穂
出版者
東邦大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

本年度は、ネコの脳幹を免疫組織化学的方法で染め出し、特定の表情筋を支配する顔面神経核内の細胞群とそこに投射する伝達物質を含有する神経終末の分布様式を化学顕微鏡で調べた。1)セロトニン含有終末は、顔面神経核内のいずれの亜核においても細胞体や近位の樹状突起に対して付着している様に見えた。その中で特に腹内側核と腹外側核には強い投射が観察された。このセロトニン入力の起始細胞は脳幹の縫線核にあると考えられる、縫線核の細胞の活動は日中増大し、夜間には減少する。したがってセロトニン入力の役割が覚醒時の口唇部の緊張維持に関係していることが示唆された。2)「痛み」に関係している伝達物質とされているエンケファリンは、主に眼輪筋を支配する運動神経細胞の樹状突起の遠心部に付着しているが、セロトニンにはそのような付着がみられなかった。このことは眼の周囲の表情形成にはエンケファリンの影響が強いと考えられる。3)p物質は主に近位の樹状突起に付着しており、鼻の周囲以外の表情筋の緊張(特に口唇部において)に関与している可能性があった。上記の研究成果は、情動表出における表情筋の動きが顔面神経核レベルでの神経伝達物質含有終末の分布差に影響されていることを示唆している。しかし、表情表出パターンの生成は、より上位の中枢で行われているらしい。そこで表情パターンの発生機構を探るために、予備実験をラットを用いて行った。顔面神経核に投射を持つ扁桃核を電気刺激した結果、中心核より深い部位の刺激は、血圧の上昇とともに刺激と同側の眼球突出や耳、口唇の動きを誘発した。また、顔面神経核に逆行性標識物質を微量注入して、扁桃核の吻側部の中心核付近に標識細胞を見いだした。これらのことは扁桃核が表情表出パターンの生成に直接に関与していることを示唆した。
著者
坂本 亘 関嶋 政和
雑誌
研究報告バイオ情報学(BIO) (ISSN:21888590)
巻号頁・発行日
vol.2017-BIO-50, no.43, pp.1-6, 2017-06-16

創薬において創薬標的タンパク質や薬候補化合物の立体構造の可視化は重要な役割を果たしている.しかし,現在多くの分子構造描画システムでは本来 3 次元の立体構造を 2 次元のディスプレイで描画している.本来3次元であるタンパク質や薬候補化合物の立体構造は,その相互作用や化合物の最適化を考える上で,3 次元で可視化した方がより有用な知見が得られると考えられる.そこで,本研究ではタンパク質や化合物の立体構造を Mixed Reality (複合現実) を実現するデバイスである HoloLens を用いて複合現実で描画するシステムを開発した.HoloLensの性能に起因する表示上のパフォーマンスに課題はあるものの,今後課題を解決していくことで,創薬において本システムは有用なものになると考えられる.
著者
遠藤 秀紀 日柳 章彦 九郎丸 正道 林 良博 坂本 一則 木村 順平
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.635-640, 1997-08-25
被引用文献数
1 2

シマハイエナ (Hyena hyena) の膵臓の葉区分を肉眼解剖学的に観察し, 膵管と副腎管の走行を検討した. また, 組織学的に外分泌部と膵島の配置を確認し, 免疫組織化学的手法により, 膵島におけるA, B, D, およびPP細胞の分布状態を検討した. 膵臓は胃の大弯付近から十二指腸近傍にかけての間膜に発達していた. 幽門部を境界に鋭く折れるため, 前半部を左葉, 後半部を右葉と判断することができた. 右葉よりさらに後方に, 特徴的な独立した小さな葉が確認され, これを後葉 (caudal lobe) と名付けた. 導管は合計3本確認され, 大十二指腸乳頭近傍に到達するものと, そこからさらに前方に分岐するものを膵管と推定し, 後葉から十二指腸に至る最後部の管を副膵管と定めた. 組織学的には多数の膵島が外分泌部の間に観察された. A細胞およびPP細胞は膵島の辺縁部に限局し, B細胞とD細胞は, 膵島内に偏りなく分布していた. また, 外分泌部に単独で散在するB細胞が観察された. ハイエナ類の膵臓の形態はこれまでに記載されたことがない. 肉眼的には後葉の存在と膵管の分岐が特記された. 組織学的には, B細胞の膵島での均等な分布と外分泌部での散在が, シマハイエナの特徴であるといえる. これらの結果は, 食肉類の中で独特の進化を遂げたハイエナ科における膵臓の形態学的データとして, 今後の比較検討にも用いることができよう.
著者
小林 貴 坂本 将吾
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.A_194-A_201, 2017

<p>本研究は、踏切内事故の主要因である遮断直前横断の発生要因を明らかにするために、遮断直前横断の有無と、踏切横断までに運転者が経験した交通状況の関係について、実測調査を用いた分析を行った。 その結果、遮断直前横断の発生には、待ち時間・待ち台数・待ち距離・遮断経験といった運転者の経験が影響しており、車列到着時と車列滞在中では異なる要因が遮断直前横断発生に影響している。車列到着時には待ち台数の多さや距離の長さが影響している可能性があり、車列滞在中には、待ち台数、徐行時間、遮断による停止経験が影響している。徐行時間の増加は、停止時間の増加に比べ、約3倍遮断直前横断を発生しやすくさせる。</p>
著者
兼保 直樹 吉門 洋 水野 建樹 田中 敏之 坂本 和彦 王 青躍 早福 正孝
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.80-91, 1994

関東地方で初冬季に出現する広域・高濃度NO<SUB>2</SUB>現象の要因として, 数値実験的にはその寄与が指摘されていたNO<SUB>x</SUB>-炭化水素系光化学反応を, 野外観測によって捉えることを試みた。 NO<SUB>2</SUB>の高濃度 (>90ppb) が観測された1991年11月26, 27日および12月6, 7日に東京都都心部の高層ビル屋上および地上, 東京湾岸の東京都環境科学研究所, 関東平野内陸部の4地点および筑波山頂上において光化学反応に関与する物質の測定を行い, 各物質濃度の経時変化を検討した。<BR>東京都都心部でのperoxyacetylnitrate (PAN) 濃度は最高3.9~11.7ppbと高濃度を示し, 経時変化は [PO (=NO<SUB>2</SUB>+O<SUB>3</SUB>)-NO<SUB>2</SUB><SUP>Prime</SUP> (直接排出起源のNO<SUB>2</SUB>)] の経時変化と類似した挙動を示した。 高層ビル屋上で測定されたNO<SUB>3</SUB><SUP>-</SUP>濃度は12月7日以外の3日間は日中に顕著な増加を示し, 特に12月6日に最高59μgm<SUP>-3</SUP>と非常な高濃度に達した。 アセトアルデヒド/CO比は12月6, 7日の日中に顕著な増加を示した。 これらの指標物質の挙動から, 高濃度NO<SUB>2</SUB>の出現時に光化学反応が生じていたことが明らかとなった。 また, 船舶による東京湾内での観測結果より, 東京湾上空ではPOはO<SUB>3</SUB>の形で存在する割合が大きいことが示唆された。 さらに, 関東平野内陸部での観測結果より, 冬季光化学大気汚染はNO<SUB>3</SUB><SUP>-</SUP>の生成を通して高濃度SPM現象の一因となる場合があることが明らかとなった。
著者
坂本 毅啓
出版者
大阪健康福祉短期大学
雑誌
創発 : 大阪健康福祉短期大学紀要 (ISSN:13481576)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.77-92, 2009-03

介護の現場において起きている介護職員の不足と、将来必要とされる介護職員の確保は、現在の介護保障制度において重要な課題となっている。本論では厚生労働省による『「社会福祉事業に委従事する者の確保を図るための措置に関する基本的な指針」の見直しについて』と総務省による『介護保険事業等に関する行政評価・監視<評価・監視結果に基づく勧告>』を基にして、介護職員の不足問題を整理し、現状とその背景を分析した上で、将来必要とされる人材の確保が難しい見通しを示した。それをふまえて、労働経済学を用いて介護職における労働供給曲線と労働需要曲線を導きだし、現在の労働市場の均衡を示した。それにより、介護職員を増やすためには民間企業と同様に賃金の引き上げが必要であることを明らかにした。またそのためには介護事業所における事業収入を増やすことが必要であると指摘した。そして事業収入を増やしつつ、あわせて平等消費型介護保障制度を維持するには、介護報酬を引き上げることが不可避であると明らかにした。それに伴う国民の負担増については、介護保険料の定額制から定率制への移行、収入分の使途を社会保障に限定した消費税率の引き上げによって行うことを提案した。
著者
原田 佳澄 木村 圭佑 岩田 研二 河村 樹里 古田 大貴 坂本 己津恵(MD) 松本 隆史(MD) 櫻井 宏明 金田 嘉清
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第28回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.85, 2012 (Released:2013-01-10)

【目的】 回復期リハ病棟で歩行を含む日常生活活動が改善し退院に至るも、退院後の不活動により再入院という例が存在する。しかし、回復期リハ病棟退院後の活動量を定量的に測定した研究報告は少なく、具体的な予防策がない。そこで、活動量の計測方法として使用される歩数計に注目した。本研究の目的は回復期リハ病棟退院前後における歩数の変化を明らかにし、入院時、退院後の運動指導に役立てるものである。今回は活動量計を用いて入院時から退院後3か月間の活動量の変化について経過を追った一症例を報告する。【方法】 症例は70歳代女性で当院回復期リハ病棟の入院患者である。左被殻出血を発症、右片麻痺を呈し、発症30日後当院回復期リハ病棟に転院し、発症115日後自宅退院となり、週2回の頻度で当院通所リハ短時間利用を開始した。評価より、当院入院時SIAS-m3-4-4-4-3、退院時SIAS-m5-4-5-5-4であった。移動手段は、入院時病棟内歩行器歩行自立、入院2週間後院内歩行器歩行、病棟内T字杖歩行自立、入院1か月後院内T字杖歩行自立、退院後屋内は独歩自立、屋外はT字杖歩行自立となった。また、退院後の目標歩数を退院直前の平均歩数5,000歩とした。計測は、パナソニック社製アクティマーカーを非麻痺側腰部に装着して行った。計測期間は、入院時、入院1か月後、入院2か月後(退院直前)、退院1か月後、退院2か月後、退院3か月後に各4日間、入院時は9時~17時、退院後は9時~就寝まで計測を行った。今回は各期間4日間の平均歩数のみとし、データ解析は、アクティマーカー解析ソフトを用いて行った。 本研究は当院倫理委員会の承認を得て行い、対象者には口頭にて十分な説明を実施し、書面にて同意を得た。【結果】 9時~17時までの平均歩数は、入院時2,609±521歩、入院1か月後5,168±317歩、入院2か月月後(退院直前)4,636±1,034歩、退院1か月後3,135±435歩、退院2か月後2,684±853歩、退院3か月後3,360±1,076歩であった。退院後の17時~就寝までの平均歩数は、退院1か月後595.5±8歩、退院2か月後1,475±16歩、退院3か月後2,392±27歩であった。【考察】 先行研究では、回復期リハ病棟入院中の平均歩数は、2,483歩(9時~17時)と報告している。今回、入院中の平均歩数は先行研究を上回っていた。また、退院1か月後の歩数が減少した理由は、冬季であったため屋外での活動が減少し、屋内中心の活動になったと推察された。そのため、気候や天候に合わせて対応可能な指導が必要になる。また入院時より定期的に歩数計測を行うことで、運動に対する動機付けができモチベーション維持につながったと推察された。退院後、17時以降に歩数の増加がみられた理由は、入院生活は非日常的な生活であり、退院後の活動時間と相違があったと推察された。そのため、退院後の1日の生活リズムに合わせて、運動指導を行っていくことが必要である。【まとめ】 活動量を意識させる上で、入院中より歩数計を使用し、目標歩数の設定、及び病棟と共通の活動量指標としての活用が重要である。今後は、対象者を増やし、退院後の活動量を維持するために必要な退院時の活動量、また退院後の介護保険サービスの種類、頻度を明らかにし、リハビリ介入の頻度調整に繋げていく。
著者
森本 晃司 桜井 進一 内藤 慶 青柳 壮志 奥井 友香 加藤 大悟 遠藤 康裕 中澤 理恵 坂本 雅昭
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.C3O1119-C3O1119, 2010

【目的】<BR>ラグビーやアメリカンフットボールなどのコンタクトスポーツにおいて,脳震盪などの頭・頚部の外傷は時として重大な事故を引き起こすことから,安全対策上重要な問題として取り扱われる.国際ラグビー評議会の定款では,未成年のラグビープレイヤーは脳震盪を生じた場合,3週間の練習・試合を禁止するとされており,頭・頚部の外傷は頚部筋力を向上させることで予防可能との報告もある.本研究の目的は,高校生ラグビープレイヤーにおける頚部筋力と周径の関連,脳震盪と頚部筋力の関連について検討し,脳震盪予防の一助とすることである.<BR>【方法】 <BR>対象は全国大会レベルの群馬県N高校の高校生ラグビープレイヤー69名(1年生30名,2年生18名,3年生21名)とした.評価項目は経験年数,過去8カ月間の脳震盪の有無(1年生を除く),頚部周径,頚部筋力とした.頚部周径はメジャーを使用し直立位にて第7頸椎棘突起と,喉頭隆起直下を通るように測定した.頚部筋力の測定にはアニマ社製ハンドヘルドダイナモメーターμTasMF-01を使用した.測定肢位は臥位とし,両肩と大腿部を固定した.センサーはベッドに固定用ベルトを装着した状態で額,後頭部,側頭部の各部分に当て,頚部屈曲,伸展,左右側屈の等尺性筋力を3秒間測定した.各方向3回ずつ測定し,最大値を採用した.<BR>統計学的処理にはSPSS ver.13を用い,頚部筋力と周径,経験年数の関係にはspearmanの順位相関係数を用い,各学年間の頚部筋力,周径との関係には一元配値の分散分析後,Tukeyの多重比較検定を行った.また脳震盪経験の有無と頚部筋力・周径の関係には対応のないt-検定を用い有意水準は5%とした.<BR>【説明と同意】<BR>チーム指導者並びに対象者に対し本研究の主旨及び個人情報保護についての説明を十分に行い,署名による同意を得て実施した.<BR>【結果】<BR>2,3年生計39名のうち,脳震盪経験者は28名であり非経験者は11名であった.脳震盪経験の有無で頚部筋力を比較した結果,頚部筋力,周径ともに有意差は認められなかった.<BR>頚部筋力と周径では有意な相関関係が認められた(P<0.05,R=0.52~0.65)が,経験年数と頚部筋力及び周径との間には相関関係は認められなかった.<BR>学年間の頚部筋力の比較では全項目において有意差が認められ,また,学年間の周径においても有意な差が認められた(P<0.05).多重比較検定では,頚部筋力では1年生に対して2,3年生の筋力が有意に高く(P<0.05),2年生と3年生との間に有意な差は認められなかった.頚部周径では1年生と3年生にのみ差が認められ、3年生の周径が有意に大きかった(P<0.05).<BR> 【考察】<BR>本研究における脳震盪の有無と頚部筋力の検討では,両群で有意差は認められなかった.タックル動作において,脳震盪となる場面ではタックル時に頭部が下がる,飛び込むなどのスキル的な要素や,瞬間的に頚部を安定させる筋収縮の反応などの要素も関連していると考えられる.今回の研究ではそれらの要素は検討できていないため,両群で差が見られなかったものと考える.<BR>また,各学年と頚部筋力の検討では1年生と他学年との間に有意な差が認められたが,経験年数と頚部筋力との間に相関関係は認められなかった.群馬県では中学校の部活動としてラグビー部はなく,経験者も週1回程度のクラブチームの練習に参加する程度である.このため,1年生では経験者であっても十分な頚部筋力トレーニングが行えていない可能性が考えられる.また,頚部筋力と周径ではすべての項目で相関関係が認められたことから,選手のコンディショニング管理の一つとして,筋力測定器などがない場合には,頚部周径を確認しておくことの意義が示唆された.頚部筋力は脳震盪予防のための重要な一要因であるが,今回は頚部筋力と脳震盪経験の有無とに関連は見られなかった.今後はタックル動作のスキルや,筋の反応時間なども検討することが課題である.<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>本研究の結果から,高校1年生と2・3年生の頚部筋力の違いが明らかとなり,新入生に対する早期からの筋力評価とトレーニングの重要性が示唆され,スポーツ障害予防のための基礎的資料となる.<BR>
著者
坂本 麻実子
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.1-8, 2009-03

明治32年(1899),「高等女学校令」が公布され,全国に庁府県立の高等女学校の設置が義務づけられた。同43年(1910),さらに女子の就学率を上げるため,「高等女学校令」が改正され,本科(普通教育)の高等女学校(以下,高女と略す)に対して,裁縫を重視し,主婦教育を行う実科高等女学校(以下,実女と略す)の設置が認められた。実女は,高等小学校に併置することができ,教員も高等小学校との兼務が可能なので,高女よりも設置が簡単であった。そのため,実女は,大都市よりは地方で,府県内では郡部で相次いで設立され,郡立,町立,町村組合立が多かった。本稿では,大正から昭和初期にかけて,実女から高女への組織変更に伴う音楽教員の需要について,東音の甲師卒や第四卒の配置状況と絡めて考察する。
著者
児玉 雄二 青木 啓成 坂本 義峰 村上 成道
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.CaOI2035-CaOI2035, 2011

【目的】<BR>我々は某長野県立高校野球部(野球部)の一学年に対してメディカルチェック(MC)を定期的に行い、経過と結果について、第44・45回日本理学療法学術大会、第7回肩の運動機能研究会において報告した。MCの特徴は当センターで実施している体幹機能と運動軸の評価の中で8種目をパフォーマンステスト(PF)として行い、体幹を中心とした全身機能評価の一つの指標としている。今回の目的は、1.PFの評価と対応が腰痛の改善と予防に関係があるか検証すること、2.腰痛とその他の障害の関連性を探ることである。<BR>【方法】<BR>対象は野球部の一学年25名について、MCを入学時から3年生4月までの2年間に4月、8月、12月の年3回、計7回実施した延べ175名のうち、外傷の2名を除く173名である。MCの評価内容は障害部位の確認、練習休養の有無、PF、関節可動域(ROM)から成り、PFは8種目のテストで合計12点を満点とした。ROMは股関節、肩関節、肘関節の3関節について計11項目を測定し、肘関節と股関節は左右差なしを1点、肩関節は左右差10度以内を1点とし合計11点を満点とした。MCを実施したのべ173名について、腰痛を訴えた選手を腰痛群、他の障害はあっても腰痛が無い選手を腰痛なし群、全く障害が無い選手を障害無し群と3群に分けて全MCやMC毎のPF、ROMについて比較検討した。検定にはMann-WhitneyのU検定、Wilcoxonの符号付き順位検定を用いた。有意確率は5%未満とした。なお今回の腰痛は、野球動作において全力でプレーが行えたとしても、腰部周囲の痛みを訴えるすべてを腰痛とした。部位は腰部を中心に上部は肩甲骨下角付近で、下部は仙腸関節付近までとした。<BR>【説明と同意】<BR>MCは野球部の依頼で実施し、事前に指導者と選手にはMCについての説明を行ない同意を得た。<BR>【結果】<BR>のべ173名のうち腰痛群は36名、腰痛無し群は47名、障害無し群は90名であった。入学後の4月と8月のMCにおいて腰痛を訴えた3名は全員中学校期にも腰痛の既往があり、うち2名は腰椎分離症と診断されていた。1年生で行なった3回のMCでは腰痛群は3名であったが、2年生4月では6名、8月では9名になった。その後腰痛群の人数は減少し、2年生12月は4名、3年生4月は5名と推移したが、全7回のMCのすべてに腰痛を訴える選手はいなかった。腰痛群が最も増加した2年生8月とその前の2年生4月での3群間比較において、ROMは腰痛群と障害なし群が有意に低下していたが、PFでは障害なし群のみ有意に向上していた(P<0.05)。全7回のMCにおける3群間比較では、腰痛群のPFが低下する傾向を認めた(P=0.097)。腰痛群で同時期にその他の身体部位に障害を有していたのは18名であり、その50%は肩関節痛で、肘関節痛は27%であった。高校入学以降で腰椎部の変性疾患や、分離症等の診断を受けた選手は無く、腰痛による1週間以上の長期休養した選手はゼロであった。<BR>【考察】<BR>腰痛群の約80%は肩関節と肘関節に疼痛を訴えていた。我々はMCにおける肩関節痛の先行研究において、肩関節痛とPFにおいて有意差が有ることを確認している。今回も全MCにおける腰痛群は障害無し群に比しPFが低下している傾向が認められており、PFの低下が障害発生に関係している事がうかがえた。一般的に腰痛をきたす要素は腰椎周辺組織の変性の他、股関節や上部体幹の可動域制限、自律神経系、メンタル等、要因が多岐に及ぶためROMやPFに相関はみられないと仮定していたが。しかし、今回の結果より腰痛群と障害無し群においてPFが関係している事がうかがえたので、早期より体幹機能と運動軸の問題を評価し対応することによって、腰痛やその他の障害の予防に繋がる可能性が示唆された。今後もよりシンプルで効果的なMCを実施することによって、障害予防をしつつ効率的なトレーニングが継続できるように参画したいと考えている。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>我々の臨床や現場における経験において、以前は腰痛を訴える高校野球選手の評価と治療を行なっても、疼痛の持続により練習休養を余儀なくされるケースが散見されていたが、体幹機能と運動軸の評価結果に基づいたセルフケアとトレーニングを指導する事によって、腰痛で練習を長期休養するケースはみられなくなった。今後も臨床やMC等の野球現場において、効率的で効果的な評価と治療が実施できるよう検証してゆきたい。