著者
坂本 浩子 山崎 勝利 加賀 千文 山本 幸子 伊藤 隆二 黒澤 康之
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.598-602, 1996-05-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
18
被引用文献数
1 21

準強力粉を主原料として中華麺を調製し,麺の物性に対するMTGaseの添加効果を調べた.(1) かんすいの添加量を調整し生麺調製時のpHを約6~10と変化させ,ゆで麺,酸処理麺の破断強度に及ぼす影響を調べた結果,MTGase無添加麺ではpHが高いほど破断強度が高かったが,MTGase添加系ではpH 6~8で破断強度増加効果が得られた.(2) pH 8.0で生麺を調製し, MTGaseの添加量が破断強度に及ぼす影響を調べた結果,MTGase 0~7U/gproteinで酵素濃度の増加とともにゆで麺の破断強度が増加した.ゆで麺を酸処理またはレトルト処理した場合,調べた0~10U/g proteinの範囲内で酵素濃度の増加とともに破断強度が増加した.(3) 生麺の断面を走査型電子顕微鏡により観察した結果から,これらMTGaseによる効果はG-L架橋形成によりグルテンのネットワーク構造が補強されたためと推定された.(4) 以上より,MTGaseを使用するとゆで麺の破断強度が増加すること,さらに酸処理やレトルト処理をしても破断強度の低下が抑制されることが判明した.
著者
坂本 優紀 渡辺 隼矢 山下 亜紀郎
出版者
公益社団法人 日本地理学会
巻号頁・発行日
pp.000341, 2018 (Released:2018-06-27)

1.研究背景と目的 長野県は,2013年の打揚煙火製造額が全国2位,製造業者数では1位と,煙火生産の盛んな地域である.その中でも特に,長野市を中心とする北信地方と飯田市を中心とする南信地方に,その利用の偏りがみられる.今回対象とする南信地方は,1712年に奉納煙火があったことが記録されており,長野県内において最も古くから煙火を扱ってきた地域といえる.当地域の煙火の特徴としてあげられるのが,三国(さんごく)と呼ばれる筒系吹き出し煙火である.三国は,赤松の大木を刳り抜いたものや,竹筒,あるいは紙管の中に数種類の火薬を詰めた煙火で,長さは大きいものでおよそ200cm,重さは約250kg(火薬の総量は24kg)になる.現在でも,北は宮田村から南は阿南町まで幅広い範囲において神社の祭りで奉納されている. 古くから奉納煙火として使用されてきた三国であるが,近年では,三国を地域のイベントに取り入れる事例もある. そこで本発表では,長野県南信地方北部の上伊那地域における三国の分布とその利用形態に着目し,三国の拡がりと利用形態の変遷を明らかにすることを目的とする. 2.対象地域対象地域である長野県上伊那地域は,長野県南信地方の北部に位置し,伊那市を中心に,駒ヶ根市と上伊那郡の6町村によって構成される.当該地域は,古くは南流する天竜川と,木曽駒ケ岳から東流する太田切川によって地域内の交流が分断され,方言や文化などに差異がみられることで知られており,三国においても同様の傾向がみてとれる. 3.結果と考察2016年に打揚げられた上伊那地域の三国は,14件である.煙火は,江戸時代に愛知県三河地方から伝わったとされており,その分布をみると南側に偏っていることがわかる.利用形態では,多くの打揚げが祭り時の奉納煙火であるものの,箕輪町での打揚げのみが,イベント時のパフォーマンス目的となっている.また,宮田村の三国に関しては,1962年から商工会主体で奉納を始めた記録が残っており,他の地域の奉納煙火とは異なる経緯が明らかとなった.以上の結果をまとめると,江戸時代に愛知県より伝わった煙火は,長野県南信地方で三国へと変化し,駒ヶ根市の太田切川を北限として,神社の奉納煙火として氏子たちにより継承されてきた.戦後になると,駒ヶ根市の北側の宮田村の祭礼に三国が取り入れられることとなった.しかし,それは氏子ではなく,商工会が主体となって行われた.さらに,2000年代に入るとより北側の箕輪町でもパフォーマンスの一環として三国が打揚げられることとなった.上伊那地域においては,三国を氏子主体で奉納煙火として利用する地域から,北側にその打揚げ範囲が拡大していくとともに,その利用形態に関しても,より世俗的なものに変化していることが明らかとなった.本研究の遂行にあたり,2017年度筑波大学山岳科学センター機能強化推進費(調査研究費),課題「山岳地域に関するツーリズム研究の課題構築」(代表者:呉羽正昭)の一部を使用した.
著者
小渕 千絵 原島 恒夫 田中 慶太 坂本 圭 小林 優子
出版者
国際医療福祉大学学会
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 = Journal of the International University of Health and Welfare (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.29-36, 2020-02-29

標準化された聴覚検査では,静寂下での単音節や単語の聴取検査が多く,雑音下での検査など聴取に負荷のかかる検査は少なく,日常生活での聞き取りの困難度を検査によって明らかにはしにくい.そこで本研究では,聴覚障害児者や聴覚情報処理障害が疑われる児者の抱える聞き取り困難を評価する臨床的な検査として,雑音下の単語聴取検査や両耳での分離聴検査,交互聴検査などの 7 つの聴覚情報処理検査を作成し,学齢児 60 名の適用について検討した.この結果,今回作成した検査については,就学後の学齢児で実施できない児はおらず,適用可能であった.検査ごとに比較すると,早口音声聴取検査および雑音下の単語聴取検査においてのみ,学年間で統計的に有意な差がみられたが,それ以外の検査では学年間差はなく,学齢児では同程度の得点を示した.今後は,幼児や成人例への適用,および聞き取り困難を抱える方への応用についても検討していく必要性が考えられた.
著者
田頭 豊 志村 浩孝 坂本 博 佐藤 和宏 梁川 功 千田 浩一
出版者
医用画像情報学会
雑誌
医用画像情報学会雑誌 (ISSN:09101543)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.43-47, 2016-06-27 (Released:2016-07-01)
参考文献数
10

June 7, 2015, Japan Network for Research and Information on Medical Exposures(J-RIME)published Diagnostic Reference Levels(DRLs 2015)for the first time in Japan. To operate the DRL, it is necessary to collect a great deal of radiation dose information of own facilities efficiently. The purpose of this study was to construct a system for collecting dose information in CT examination using Radiation Dose Structured Report(RDSR). As a result of displaying the contents of RDSR using the free software, it was confirmed that there are differences in the information in RDSR by equipment and manufacturers. In-house software of dose management could be designed by focusing on the enumerated value, it was possible to extract information of interest from RDSR. For facilities which cannot introduce a commercial system, development of software for collecting radiation dose information using RDSR contributes greatly to the operation of DRL.
著者
坂本 正夫
出版者
飯田市美術博物館
雑誌
伊那谷自然史論集 (ISSN:13453483)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.1-18, 2014-03-31 (Released:2019-06-05)

過去約1600年間の有史に記録された被害地震の内, 長野県南部に発生した被害地震は極めて少ない. 広範囲に被害をもたらした地震は, 1718年に飯田市南信濃を震源とする遠山地震のみである. しかし,この地震災害の大きさはあまり詳しく調査された報告はない. そこで, 遠山地震だけを対象にして文献の収集を可能な限り広く行い, その記述をもとに現地調査を行ったのでここに報告する.
著者
熊谷 太州 坂本 真樹 野々村 美宗
出版者
一般社団法人 色材協会
雑誌
色材協会誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.93, no.1, pp.2-8, 2020-01-20 (Released:2020-01-28)
参考文献数
28
被引用文献数
1

滑り運動下におけるぬくもり感の発現メカニズムを明らかにするため,10種の試料について触覚次元に基づく官能評価試験を行い,試料の物性値と得られた触覚因子との関係を系統的に解析した。その結果,ぬくもり感の認知においてはWarm感だけではなく,Soft感も関与している可能性が示された。Warm感は,試料の表面粗さが大きいと熱抵抗が増加,初期熱流束最大値(q-max)が減少することによって知覚されたものと考えられる。また,Soft感は試料の弾性率を示すヤング率とソフトマター表面を擦ったときの滑り出し過程における摩擦力の弾性項の寄与を示す摩擦パラメータksが小さいときに認知された。このことは,試料が縦方向に大きくひずみ,滑り出しから最大静摩擦までの摩擦力の増加が緩やかだとSoft感が知覚されることを示している。
著者
坂本 真樹 田原 拓弥 渡邊 淳司
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.213-216, 2016 (Released:2016-09-09)
参考文献数
8

Although many studies have addressed the issue on tactile perceptual space, very few studies have paid attention to individual differences. In this study, we propose a system to visualize individual differences in tactile perceptual space using a map of onomatopoeia. The system visualizes the relationship on the map between onomatopoeic words that can express tactile sensations and basic tactile materials. In addition, it allows users to move onomatopoeic words to locations they feel more appropriate on the map. As a result, the difference in the configuration of the words on the map shows the individual differences of how tactile sensations are categorized. This system can be used for visualizing trends of differences in tactile perception, for example, between young and old people, and between male and female.
著者
田中 直美 牛膓 昌利 牛膓 真美 坂本 あづさ 稲田 美帆 河原 俊 長谷川 拓馬 持田 美香
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】車いす座位姿勢の評価・シーティングを行う際,骨盤を起こし,水平,前後傾中間位とし,その上に胸郭・頸部・頭部が位置すると考えられている。しかし超高齢者は座位保持能力の低下により,骨盤を起こした姿勢では重力に抗することができず,頭部にかかる重力ストレスにより頭部が前下方へ落ちこみ,臀部が前方へ滑りだす姿勢を取ることが多い。骨盤を起こした姿勢が本当に安定した座位姿勢となっているのか疑問に感じる。そこで,シーティングの新しい考え方である,骨盤の後傾をゆるしもたれることで身体の物体的な安定を図る,脳性麻痺児・者を中心とした理論及び技法のキャスパー・アプローチ(以下,CASPER)に基づき,車いすシーティングを実施し,超高齢者への有効性を検討した一症例について報告する。【方法】普通型車いすでの一般的な座位姿勢(以下,非介入)と三角クッションを使用しCASPERを実施した座位姿勢(以下,介入)の二者間で開始座位姿勢,座位保持可能時間(バイタル変動をアンダーソンの基準に基づき終了),姿勢変化の3項目を比較した。対象は98歳認知症女性。コミュニケーション困難。介入当初BIは0点。【結果】開始座位姿勢:非介入;胸郭と仙骨が背もたれと接触し,頭頸部は右前下方へ傾く。介入;胸郭下部,坐骨がクッションと接し胸郭,頭部は一直線上に位置する。座位保持可能時間:非介入;平均3分53秒。介入;平均13分41秒。姿勢変化:非介入;頭頸部は右前下方へ倒れるまたは左情報へ伸展。右回旋は可能だが,左回旋は正中を超えなかった。約3分経過後から頭頸部の右屈曲が強まる。声かけに対して発声により反応するが,検者と視線を合わすことはなかった。介入;頭頸部が自由に全方向へ可動し,正中に戻ることも可能。全方向からの声かけに対して検者と視線を合わせ,言葉で返答することが可能。【結論】非介入で垂直に設定された骨盤は後方へ倒れようと不安定で,背もたれが上部胸郭と仙骨の倒れを固定する。上方の頭頸部は重力により前下方へ落ち込む。そのため臀部を前方へずらすことで頭頸部の落ち込みを回避していると考えられる。この座位姿勢では頭頸部の落ち込み回避のために筋力が必要であり,頸部回旋の自由度を減少させると考える。介入では,骨盤を後傾位に設定するが,坐骨を座面に設置した三角クッションに乗せることで臀部の前方への滑りを固定した。また,後方へ倒れる胸郭の重みを背もたれに設置した三角クッションで受けることで胸郭から下方が安定し,上方の頭頸部の支持性が向上したと考えられる。そのため,座位保持に必要な筋力が減少し,楽に座ることができた。また,声かけなどの刺激に対して,多様な反応を示すことができたと考える。今後,対象者数を増大,評価項目を検討し,高齢者に対する座位保持理論を系統化していきたい。
著者
坂本 頼之
出版者
国士舘大学哲学会
雑誌
国士舘哲学 = Kokusikan tetsugaku (ISSN:13432389)
巻号頁・発行日
no.23, pp.80-92, 2019-03-20

本稿は「海保青陵「談五行」訳注稿 (1)」(『国士舘哲学』第十九号 平成二十七年三月)「海保青陵「談五行」訳注稿 (2)」(『国士舘哲学』第二十号 平成二十八年三月) 「海保青陵「談五行」訳注稿 (3)」(『国士舘哲学』第二十一号 平成二十九年三月) 「海保青陵「談五行」訳注稿 (4)」(『国士舘哲学』第二十二号 平成三十年三月)に続き、江戸時代の漢学者海保青陵 (1755~1817) の「談五行」の訳注を試みたものであり、本稿分で「談五行」の訳注を全て試みたこととなる。
著者
遠藤 康裕 坂本 雅昭
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.303-308, 2019 (Released:2019-06-25)
参考文献数
22
被引用文献数
1

〔目的〕簡易的なテストを用いて機能評価を行い,投球時痛を有する選手の身体特徴を明らかにすることを目的とした.〔対象と方法〕対象は中学生野球選手27名とし,投球時痛の有無で2群に分けた.テストは,ショルダーモビリティ,Finger Floor Distance,Heel Buttock Distance(HBD),股関節内旋,しゃがみ込み,片脚立位,フォワードベンド,フォワードベンチ,サイドベンチとした.〔結果〕疼痛群では対照群に対して,HBD,股関節内旋,フォワードベンドで有意に陽性者が多かった.〔結語〕投球時痛を有する選手では,大腿四頭筋柔軟性低下,股関節内旋可動域制限,動的立位バランスの低下を有することが示唆された.
著者
坂本 愛 浦田 元樹 岩川 真也 田中 香奈 北村 芳子
出版者
一般社団法人 日本腎臓病薬物療法学会
雑誌
日本腎臓病薬物療法学会誌 (ISSN:21870411)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.13-23, 2018 (Released:2018-07-27)
参考文献数
24

高齢者におけるポリファーマシーは、潜在的に不適切な薬物が増加することで、有害事象が増加する危険性がある。慢性腎臓病(CKD)患者は、一般的に服用薬が増加する傾向にあるとされるが、CKD病期に応じた変化や、有害事象の潜在的リスク因子となる薬物の服用程度については明らかではない。そこで、2016年1~6月に入院した65歳以上の647例を対象として、CKDの糸球体濾過量(GFR)区分で群分けを行い、入院時の常用薬のうち定時服用薬について、服用薬と用法の種類を調査した。服用薬の種類が6種類以上でポリファーマシーと定義した。加えて、高齢者および腎機能低下患者において有害事象の潜在的リスク因子となる薬物の服用状況と入院中の中止・他剤への変更状況について調査した。その結果、ポリファーマシーの割合はG1/2群の42.0%に比しG4、G5D群ではそれぞれ84.1、90.5%と有意に高く、用法の種類もG4群以降にG1/2群に比べ有意な増加が認められた。高齢者において有害事象の潜在的リスク因子となる薬物の服用割合は、G1/2群の50.7%に比しG4、G5D群ではそれぞれ84.1、71.4%と有意に高かったが、腎機能低下患者において有害事象の潜在的リスク因子となる薬物の服用割合は、各GFR区分において33~50%程度で、有意な差は認められなかった。有害事象の潜在的リスク因子となる薬物は、GFR区分に応じて種類に特徴を認め、入院中に中止・他剤への変更となった割合はG4、G5群が他のGFR区分と比較して明らかに高かった。本検討より、CKDを有する高齢者では病期の進行に伴いポリファーマシーの割合は増加し、有害事象の潜在的リスク因子となる薬物の服用割合も増加する傾向にあることが明らかとなった。そして、有害事象の潜在的リスク因子となる薬物はCKD病期に応じた薬学的管理が重要であると示唆された。
著者
濱上 陽平 本田 祐一郎 片岡 英樹 佐々部 陵 後藤 響 福島 卓矢 大賀 智史 近藤 康隆 佐々木 遼 田中 なつみ 坂本 淳哉 中野 治郎 沖田 実
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0076, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】線維筋痛症は全身の激しい痛みと軟部組織のこわばりによって特徴づけられる難治性の慢性疾患であり,本邦における推定患者数は200万人以上といわれている。線維筋痛症に対する理学療法アプローチとしては,運動療法に加えて鎮痛を目的とした各種の物理療法が行われているが,線維筋痛症の原因・病態が明らかにされていないがゆえに,物理療法に効果があるのか否かは未だ議論が続いており,エビデンスも示されていない。そこで今回,これまでに発表された線維筋痛症に対する物理療法の効果を検証したランダム化比較試験(Randomized controlled trial;RCT)を検索し,メタアナリシスを行ったので報告する。【方法】医学文献データベース(Medline,CINAHL Plus,Pedro;1988年~2016年8月に発表されたもの)に収録された学術論文の中から,線維筋痛症に対する物理療法の効果を検証した論文を系統的に検索・抽出した。その中から,ヒトを対象としたもの,研究デザインがRCTであるもの,アウトカムとして痛みの程度(VSA),圧痛箇所数(Tender point),線維筋痛症質問票(Fibromyalgia Impact Questionnaire;FIQ)のいずれかを用いているもの,結果の数値が記載されているもの,適切な対照群が設定されているもの,言語が英語であるものを採用し,固定効果モデルのメタアナリシスにて統合した。なお,有意水準は5%未満とし,採用したRCT論文はPEDroスコアを用いて質の評価を行った。【結果】抽出された227編の論文のうち,採用条件のすべてを満たした論文は11編であり,PEDroスコアは平均5.82ポイントであった。検証された物理療法の内訳は,低出力レーザーが5編で最も多く,全身温熱療法が4編,電気刺激療法が1編,磁気刺激療法が1編であった。次に,メタアナリシスにおいて,物理療法による介入の有無によって痛み(VAS)の変化を比較した結果,低出力レーザー,全身温熱療法,電気刺激療法,磁気刺激療法のすべてで有意差を認め,効果が確認された。同様に,圧痛箇所数およびFIQの変化を比較した結果,低出力レーザーと全身温熱療法で有意差を認め,効果が確認された。なお,採用した論文の中に電気刺激療法,磁気刺激療法の効果を圧痛箇所数およびFIQで検証したものはなかった。【結論】今回の結果,低出力レーザー,全身温熱療法,電気刺激療法,磁気刺激療法のすべてにおいて線維筋痛症の痛みに対する効果が確認された。採用論文は多くはないが,線維筋痛症に対する物理療法の効果をメタアナリシスで検証した研究は国内外で他に見あたらず,本研究の結果は物理療法のエビデンスの確立に寄与するものと思われる。ただ,電気刺激療法と磁気刺激療法に関しては採用した論文はそれぞれ1編であったため,エビデンスが示されたとは言い難く,今後さらにRCTの発表と蓄積が求められる。
著者
村中 昌紀 山川 樹 坂本 真士
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.87.15211, (Released:2017-01-14)
参考文献数
31
被引用文献数
4 9

We developed the Interpersonal Sensitivity/Privileged Self Scale (IPS) to measure personality traits related to “modern-type depression,” and assessed its validity and reliability through three surveys completed by 804 undergraduates. Factors for validity were examined by confirmatory factor analysis. As predicted, the scale comprised two superordinate factors: interpersonal sensitivity (IS) and privileged self (PS). Criterion-related validity for the IPS scale was assessed by examining its relationship with depressive symptoms and typus melancholicus, and by comparing subscale scores regarding depression types (i.e., melancholic, atypical). All subscale scores were positively correlated with depressive symptoms. Correlations between typus melancholicus and subscales showed that the interpersonal sensitivity subscale was positively correlated with typus melancholicus, while the privileged self subscale was not correlated. An analysis of variance revealed that the “self-righteousness” score was significantly higher for the atypical depression group compared to the melancholic depression group. The test-retest correlation indicated good test-retest reliability for all subscales. Overall, the findings indicated that the IPS has high validity and reliability.
著者
坂本 勉
出版者
東洋史研究會
雑誌
東洋史研究 (ISSN:03869059)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.657-694, 1993-03-31

Raw silk had been the principal export article of Iran since medieval times. In 1864, however, pebrine, silkworm disease which originally broke out in France and Italy, spread to Iran by way of Ottoman territory, and devastated raw silk production in the province of Gilan. Raw silk trade simultaneously declined. Restoring the production and trade of raw silk was critical task, since Iranian economy considerably depended on the raw silk export. Uninfected silkworm eggs were imported from Japan in an attempt to meet the problem, but the Japanese silkworm eggs were not suited to the soil of Iran and the attempt failed. From the beginning of 1890s, silkworm eggs were imported from Bursa, and consequently raw silk production in Gilan recovered. However, the export trade never surpassed earlier level, and changed its article from raw silk to cocoons. This trade was controlled by Greek merchants from the Ottoman empire. Thus Iranian silk trade was continued but under conditions of greater subordination to the worldwide capitalist economy system than previously.
著者
宇賀 大祐 阿部 洋太 高橋 和宏 浅川 大地 遠藤 康裕 中川 和昌 中澤 理恵 坂本 雅昭
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【目的】群馬スポーツリハビリテーション研究会では,県内の各高校野球大会にて傷害に対するテーピングや応急処置,試合後のクーリングダウン等のメディカルサポートを実施している。筋痙攣は最も多い対応の一つであり,選手交代を余儀なくされることもある。本研究の目的は,メディカルサポートにおける筋痙攣の対応状況を明らかにし,適切な対応策について検討することである。【方法】対象は過去7年の全国高等学校野球選手権群馬大会とし,メディカルサポートの全対応人数・件数,筋痙攣の対応人数・件数,好発部位,各試合日の1試合当たりの発生件数(発生率),発生時間帯,発生イニング,プレー復帰状況を調査した。また,気候の影響を検討するため,気象庁発表の気象データを元に,気温及び湿度,日照時間と発生率について,ピアソンの積率相関係数を用いて検討した。【結果と考察】全対応数は199名・273件であり,そのうち筋痙攣は75名(37.7%)・146件(53.5%)であった。好発部位は下腿及び大腿後面であった。発生率は大会初期の1,2回戦が平均0.37件/試合と最多で,その後は徐々に減少した。時間帯による発生件数はほぼ同様で,イニングは各試合後半の7,8,9回が多かった。気象データと発生率は,いずれも相関は認められなかった。夏季大会の筋痙攣は熱中症症状の一つとして現れることが多いが,気象データとの関連はなく大会初期に多いことから,大会前の練習内容や体調管理等による体温調節能の調節不足が一要因として大きな影響を及ぼし,そこに疲労が加わることで試合後半に多発するのではないかと考えられる。また,プレー復帰状況は,36.8%の選手が選手交代を余儀なくされており,試合の勝敗に影響を与えかねない結果となった。発生予防が重要な課題であり,大会中の応急処置のみでなく,大会前のコンディショニングや試合前や試合中の水分補給方法等の暑さ対策を中心に指導することが重要と考える。