著者
大和 浩 太田 雅規 中村 正和
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.130-135, 2014 (Released:2014-04-16)
参考文献数
11

目的 飲食店の全客席の禁煙化が営業収入に与える影響を,全国で営業されている単一ブランドのチェーンレストランの 5 年間の営業収入の分析から明らかにする。方法 1970年代より全国で259店舗を展開するファミリーレストランでは,老朽化による改装を行う際に,全客席の禁煙化(喫煙専用室あり),もしくは,喫煙席を壁と自動ドアで隔離する分煙化による受動喫煙対策を行った。2009年 2~12月度に全客席を禁煙化した59店舗と,分煙化した17店舗の営業収入の相対変化を,改装の24~13か月前,12~1 か月前,改装 1~12か月後の各12か月間で比較し,客席での喫煙の可否による影響が存在するかどうかを検討した。改装が行われておらず,従来通り,喫煙区域と禁煙区域の設定のみを行っている82店舗を比較対照とした。解析は Two-way repeated measures ANOVA を行い,多重比較検定は Scheffe 法を用いた。結果 全客席を禁煙化した52店舗,喫煙席を壁とドアで隔離する分煙化を行った17店舗,および,未改装の82店舗の 3 群の営業収入の相対変化(2007年 1 月度比)は,12か月単位の 3 時点の推移に有意差が認められた(P<0.0001)。改装によりすべての客席を禁煙とした店舗群の営業収入はその前後で増加したが(P<0.001),喫煙席を残して壁と自動ドアで隔離する分煙化を行った店舗群の営業収入は有意な改善を認めなかった。結論 ファミリーレストランでは,客席を全面禁煙とすることにより営業収入が有意に増加するが,分煙化では有意な増加は認めらなかった。
著者
道下 竜馬 太田 雅規 池田 正春 姜 英 大和 浩
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.11-20, 2016 (Released:2016-02-18)
参考文献数
30
被引用文献数
1 2

目的:近年,運動負荷試験中の過剰な収縮期血圧の上昇が将来の高血圧や心血管病の新規発症と関連することが多数報告されている.本研究では,勤労者の職場環境や労働形態,労働時間,睡眠時間,休日数と運動負荷試験中の収縮期血圧の反応との関係について横断的に検討した.対象と方法:某市の健康増進事業に参加した者のうち,安静時血圧が正常であった労働者362名(男性79名,女性283名,平均年齢49.1歳)を対象とした.自転車エルゴメータを使用して3分毎に10–30 wattsずつ漸増する最大下多段階漸増運動負荷試験を実施し,各負荷終了1分前に血圧を測定した.Framingham Studyの基準に準じ,運動負荷試験中の収縮期血圧の最大値が男性210 mmHg以上,女性190 mmHg以上を過剰血圧反応と定義した.また,自記式質問票を用いて,職場の有害環境や労働形態,労働時間,睡眠時間,休日数,通勤時,仕事中の身体活動時間,余暇時の運動時間について調査した.結果:362名中94名(26.0%)に運動負荷試験中の過剰な収縮期血圧の上昇が認められた.有害環境や労働時間,睡眠時間,休日数,通勤時の身体活動時間別による過剰血圧反応発生の調整オッズ比について検討したところ,過剰血圧反応発生と関連する要因は,労働時間が1日10時間以上,睡眠時間が1日6時間未満,休日数が週1日以下であった.労働時間,睡眠時間,休日数を3分割し,それぞれの組み合わせによる過剰血圧反応発生の調整オッズ比について検討したところ,労働時間が長く,睡眠時間,休日数が少ないほど,過剰血圧反応発生の調整オッズ比が有意に高かった.まとめ:本研究の結果より,労働時間が長く,睡眠時間や休日数が少ない勤労者は,将来の高血圧や心血管病発症,過労死防止のため,日常生活や職場,運動負荷時の血圧変動を把握することが重要であると考えられる.
著者
江口 泰正 井上 彰臣 太田 雅規 大和 浩
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.256-270, 2019-08-31 (Released:2019-08-31)
参考文献数
34
被引用文献数
12

目的:忙しい労働者における,運動継続が出来ている人の特性について,特に運動継続の理由・動機に着目して探索的に明らかにし,新たな行動変容アプローチに関する示唆を得ることを目的とした.方法:労働者に対して運動実施状況や運動継続の理由等について質問紙による横断的調査を実施し,1,020名から回収できた.無効なデータ等を除いた最終的な分析数は521名分であった.継続理由の強さを1~5点に得点化し,平均値を運動継続群と非継続群で比較した.また継続理由を因子分析した.結果:労働者における運動継続者の継続理由の上位[推定平均値(SE)]には,体力向上[4.02(0.12)],体型維持[3.98(0.13)]や健康への好影響[3.90(0.12)]など,健康への利益が多かったが,非継続者も上位は同様で,得られる利益について認識していることが明らかになった.次に継続理由の因子として「楽しさ・高揚感」「依存・自尊」「外観・陶酔」「健康利益」「飲食的充足」の5つが抽出された.このうち運動継続者に見られる顕著な特性として「楽しさ・高揚感」の重要性が示唆された.また「飲食的充足」は,非継続者の方が継続者より有意に得点が高かった.結論:労働者における運動継続への動機として「楽しさ・高揚感」が最も重要であることが示唆され,この因子に対する良いフィードバックが継続へのアプローチとして有効となる可能性がある.
著者
太田 雅子
出版者
日本科学哲学会
雑誌
科学哲学 (ISSN:02893428)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.45-54, 1999-05-15 (Released:2009-05-29)
参考文献数
9

Higher-level (mental, sociological and biological, etc.) entities are said to be supervenient on more basic, lower-level (physical, micro-level) entities, and there is a view that lower-level theories can completely and sufficiently explain higher-level events. But Harold Kincaid criticizes such a view. He does not deny that lower-level theories do explain something, but argues that they are only partial and incomplete, because they cannot refer to higher-level kinds which supervene on the relevant lower-level entities and answer important questions about causal laws. I will argue that the completeness or sufficiency of explanation is often evaluated interest-relatively, and, against Kincaid, that higher-level explanation cannot be sufficient without mentioning lower-level causal mechanism.
著者
太田 雅子
出版者
日本科学哲学会
雑誌
科学哲学 (ISSN:02893428)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.45-54, 1999

Higher-level (mental, sociological and biological, etc.) entities are said to be supervenient on more basic, lower-level (physical, micro-level) entities, and there is a view that lower-level theories can completely and sufficiently explain higher-level events. But Harold Kincaid criticizes such a view. He does not deny that lower-level theories do explain something, but argues that they are only partial and incomplete, because they cannot refer to higher-level kinds which supervene on the relevant lower-level entities and answer important questions about causal laws. I will argue that the completeness or sufficiency of explanation is often evaluated interest-relatively, and, against Kincaid, that higher-level explanation cannot be sufficient without mentioning lower-level causal mechanism.
著者
永原 真奈見 太田 雅規 梅木 陽子 南里 明子 早渕 仁美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.131-142, 2020-08-01 (Released:2020-09-26)
参考文献数
37

【目的】小学校に入学した1年生が6年生になるまでの6年間における,朝食の食事バランスと生活習慣や不定愁訴を調べ,生活習慣及び不定愁訴と朝食の食事バランスとの関連性を明らかにした。【方法】2011年入学の1年生(n=91)を対象に,起床や就寝,朝食,共食,食事の手伝い,不定愁訴に関する自記式質問紙調査を6年間継続して実施した。学年時別実態及び経年変化を明らかにすると共に,朝食の食事バランスと関連のある生活習慣・不定愁訴について検討した。【結果】朝食の欠食率は1~4年時は3~5%,5・6年時は11~14%に増えており,共食の割合は進級に伴って減少していた。朝食で主食・主菜・副菜がそろった食事をしている児童の割合は1年時が45.1%と最も高く,4~6年時には主食のみの食べ方が増加した。起床時刻や自律起床習慣は,高学年時に顕著な改善はみられず,就寝時刻は進級に伴って遅くなっていた。不定愁訴に関しては,6年時の児童の約90%がだるさや疲れ,イライラやむかつきを感じ,約63%が学校が嫌になることがあると回答した。また,朝食の食事バランスは,起床・就寝時刻,共食,手伝い,疲れ,学校が嫌の項目と関連がみられた。【結論】低学年時に望ましい生活習慣を確立できるよう積極的に介入すること,高学年時にはバランスの良い朝食摂取や睡眠の意義を再教育し,不定愁訴にも配慮することの重要性が示唆された。
著者
太田 雅子
出版者
日本科学哲学会
雑誌
科学哲学 (ISSN:02893428)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.17-29, 2005-07-25 (Released:2009-05-29)
参考文献数
9

We often have irrational beliefs which are not coherent with the others. If they could be explained under "The Principle of Charity", they would no longer be regarded as irrational. How can we explain irrational beliefs as such and give their place in the system of our beliefs? Donald Davidson proposed "the partitioning of mind" as the answer to this question, but his solution is hopeless because it seems to be inconsistent with holism. I propose the idea of Motivated Irrationality as an explanatory strategy of irrationality, because I think it can explain irrationality more simply than the mental partitioning and give the way out of the paradox of irrationality.
著者
窪田 崇斗 森田 泰智 太田 雅文 古谷 聡 家田 仁
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.641-646, 2008-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
4

東京圏における鉄道ネットワークは輸送力増強が講じられ、最混雑率は年々低下傾向にある。一方で、夜間・ピークサイドにおける混雑が顕在化し、第2フェーズの混雑対策が求められているが、改善の検討が今後ますます重要になってくる。しかしながら、大都市交通センサス等の既存の交通統計調査は、過去のデータの蓄積が豊富で交通流動量といった量的データが充実しているものの、抽出率が5%程度と低く、夜間・ピークサイドにおける混雑緩和の検討に使用するにはデータの精度が粗いため、詳細な分析は困難である。そこで本研究では、自動改札機・車両応荷重データを用いた時間帯別混雑率の推定方法の検討を行った。
著者
竹岡 志朗 太田 雅晴
出版者
日本情報経営学会
雑誌
日本情報経営学会誌 (ISSN:18822614)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.52-63, 2009-08-17
被引用文献数
2

Market environment surrounding enterprises and various organizations is globalized ever faster and very fluid. Establishment of sustainable competitive advantage is sought for every organization to develop, survive and adapt in such managerial circumstances. Innovation is one of useful managerial principle. In this paper, the applicability of Actor-Network Theory (ANT) as an analytical viewpoint to innovation studies was discussed. ANT is a prime example of the Socio-Technical approach. First, precedent innovation studies were surveyed and current streams of the studies were confirmed. Then, precedent innovation studies applied ANT were surveyed and the differences between them were clarified. From these differences, the usefulness and applicability of ANT as an analytical viewpoint to innovation studies were concluded. One of reasons is, ANT analyzes innovation from not the viewpoint of reductionism but the viewpoint of relationship. Furthermore, the viewpoint of ANT has an affinity for the viewpoint of innovation studies in general management studies, especially the viewpoint that focuses on process and network. Starting on the study of innovation using ANT, it will have the complexity that all things are treated as variables without the assumption that something is constant tacitly. However it has the possibility to discuss the innovation topic from the difference views and to derive some unique results. Lastly, two issues for innovation studies using ANT were brought.
著者
江口 泰正 太田 雅規 大和 浩
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.247-253, 2011-09-01

現在,職場における健康保持増進の取り組みとしてもっとも多い内容は,「労働者健康状況調査結果の概況」(厚生労働省2008)によると「健康相談」であるが,2番目に多いのは「職場体操」である.一人でも,あるいは集団でも手軽にできる「体操」は労働者に受け入れられやすく,また継続もしやすいことから,ストレッチングは職場体操としても様々な形で実施されている.しかし,近年その効果に関して否定的な文献も多くなってきた.そこで,総説論文を中心に調査したところ,静的ストレッチング(static stretching)直後における筋パワー系運動(muscle strength/force and isokinetic power)のパフォーマンスはむしろ低下,運動後の筋肉痛の予防にはならないことも明らかにされている.「職場体操」の目的は様々であるが,ストレッチングを職場体操として選択する場合には,その目的に応じたやり方を考慮する必要がある.
著者
江上 周作 鵜飼 孝典 太田 雅輝 川村 隆浩 松下 京群 古崎 晃司 福田 賢一郎
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.SWO-057, pp.05, 2022-08-05 (Released:2022-08-10)

ナレッジグラフのトリプルに出典,文脈,時間等の様々なメタデータを付与するメタデータ表現モデル(MRM)が複数提案されている.本研究では同一のナレッジグラフに対して異なるMRMを適用したデータセットを作成し,ナレッジグラフ埋め込み手法によるリンク予測の精度評価を行うことで,各MRMの特性を埋め込みの観点から分析する.
著者
太田 雅己 堀江 邦明 土井 誠 田中 実 草場 公邦
出版者
東海大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

代数曲線,特に楕円モジュラー曲線の塔に付随する"大きな"p-進エタール・コモホロジー群の研究を行った.素数pと正整数N(pXN)を固定し,モジュラー曲線の塔{X^1(Np^γ)}(γ=1、2、……)を考える.昨年迄の研究により、これに付随するパラボリック・コモホロジー群の通常部分が良いp-進ホッジ構造をもつ事がわかっていた.即ち,この群に自然なp-進ホッジfiltrationが入り,それをA-進カスプ形式の言葉で記述することができ,"特殊化社塑像による個々のレヴェル,重さをもつコモホロジ群のp-進ホッジ構造が取り出せる事を示した。この研究の自然な継続,発展として開曲線の族{X_11(Np^γ)-{cusps}(γ=1,2,……)のエタノール・コノホロジー群の通常部分のp-進ホッジ構造の研究を開始した.これは上記結果をアイゼンシュタイン級数のp-進族を含む形に拡張する事を目標にしており、応用としてはアーベル対上のアーベル体上のアーベル拡大の具体的構成が見込まれている。未だ理論の全体が構築された訳ではないが,今年度の研究により次の諸点が明らかになった:・上記コホモロジー群が∧-加群としてうまくcontrolできる事;・モジュラー形式に関する,異なった重さに対応する"大きな"p-進ヘッケ環の通常部分が重さによらない事:・モジュラー形式の射影系と∧-進モジュラー形式の間に,カスプ形式の場合と同様の対応がある事;・一般ヤコビ多様体を用いて,上記コホモロジー群を記述するp-divisible群が構成できる事;等である.この研究は来年以降も継続して行う.尚,A. WKilesによりフェルマ-の最終定理が証明されたが,それについての解説的仕事も行った.
著者
太田 雅子
出版者
The Philosophy of Science Society, Japan
雑誌
科学哲学 (ISSN:02893428)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.1_75-1_90, 2011 (Released:2011-10-13)
参考文献数
7

In his Book Kagaku no Sekai to Kokoro no Tetsugaku, Michio Kobayashi features on Descartes’ theory of minds as “subjective-active consciousness”, and defends it against the physicalist movement of philosophy of mind. I try to show that Kobayashi’s method has a difficulty for defending the existence of our mind because Descartes didn’t allow the scientific investigation of our mental experience from outside. In addition, Cartesian theory of mind cannot appropriately grasp the significance of “other minds”. Instead of Cartesian view, I propose the “mind in general” view, in which minds are open to our world and exists in our communication.
著者
大和 浩 姜 英 太田 雅規
出版者
日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.3-14, 2015 (Released:2015-01-29)
参考文献数
38
被引用文献数
5

It is necessary to implement 100% smoke-free environments in all indoor workplaces and indoor public places in order to protect people from exposure to second-hand tobacco smoke (SHS). Forty-four countries have already implemented comprehensive smoke-free legislations according to the Framework Convention on Tobacco Control (FCTC) Guidelines on protection from exposure to tobacco smoke. The Occupational Safety and Health Law (OSHL) was partially revised to strengthen the countermeasures against SHS in Japan in 2014. However, the revision was only minimal. Firstly, it is necessary to make efforts to implement countermeasures against SHS (their implementations are not obligatory, as required in Article 8). Secondly, the revised OSHL allowed the implementation of designated smoking rooms inside workplaces (Article 8 requires 100% smoke-free environments). Thirdly, revised OSHL does not effectively cover the small-scale entertainment industry so that workers in restaurants and pubs will not be protected from occupational SHS. We explain the importance of implementation of 100% smoke-free environments by law, using the data on leakage of smoke from designated smoking rooms, and occupational exposure to SHS among service industry workers. The decrease in the incidence of smoking-related diseases in people where a comprehensive smoke-free law is implemented is also introduced. These data and information should be widely disseminated to policy makers, media, owners of service industries, and Japanese people.