著者
太田 一昭
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.213-224, 1989-06-01 (Released:2017-04-11)

新歴史主義批評の基本的な前提と視点についてまとめてみた. 新歴史主義は, 文化あるいはテクストの統一を否定する. 新歴史主義は文学と歴史の二項対立的区分を拒否し, 歴史を, 安定した背景として文学テクストと対置しない. 文学も歴史の一部を構成し, 非文学テクストあるいは他の文化的実践と相互に浸透し, それらのコンテクストになりうると考える. 新歴史主義批評は, テクストを権力関係との係わりという点から分析することに深い関心をもつ. 文学研究の新しい歴史化とは, 新しい政治批評であるとも言える. この批評の政治性は, 特にイギリスのマルクス主義的唯物論派の人々に顕著である. アメリカの新歴史主義者は, 自己の批評活動の政治性を抑圧する傾向がある. 新歴史主義の批評方法にはさまざまの困難や問題点が見出されるけれども, それが最も刺激的で大きな可能性をもった現代の批評方法の一つであることは確かである.
著者
太田 紘史 佐金 武
出版者
科学基礎論学会
雑誌
科学基礎論研究 (ISSN:00227668)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.1-11, 2011-11-25 (Released:2017-08-01)
参考文献数
28

Temporality is an essential part of our conscious experience. Indeed, it is difficult to conceive of a conscious individual who does not know what it's like to "experience time." For instance, we know what it's like to see bubbles in a glass rising up to the surface, to hear music playing, and even to feel time passing. In this paper, we first clarify three temporal characteristics of conscious experience: change, duration, and direction. Next, we criticize a memory-based account of those characteristics and suggest a representationalist account as an alternative approach. We also consider some objections to the representationalist account raised by B. Dainton, and try to reply to them. Finally, we give an outline of a systematic representationalist theory of all the three temporal characteristics.
著者
長谷 康二 竹腰 隆男 藤井 彰 馬場 保昌 武本 憲重 加来 幸夫 清水 宏 小泉 浩一 尾形 悦郎 太田 博俊 西 満正 柳沢 昭夫 加藤 洋
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
雑誌
消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy (ISSN:03899403)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.252-255, 1993-06-18 (Released:2015-07-15)
参考文献数
17

生検で十二指腸球部の腺癌と診断し,切除標本に癌巣を認めなかった症例を経験したので報告する。症例は49歳男性。上部消化管X線検査で十二指腸球部後壁に小隆起性病変を認めた。内視鏡検査で同部に発赤調の約7mmの隆起性病変を認めた。生検では正常十二指腸上皮に囲まれ,粘膜内に限局した腺癌を認めた。第2,3回の内視鏡検査時には,病変は約3mmと縮小していた。外科的に縮小手術を施行した。切除標本では術前の点墨の肛門側に接して3mmの発赤した隆起性病変を認め,病理組織学的に連続的切片を作成して検討した。粘膜筋板の乱れ,線維化を伴うBrunner腺の過形成と再生上皮を認めるのみで,癌巣は認めず,生検により摘除されたと考えた。早期十二指腸癌は1991年までに122例123病変の報告があるが,生検で癌と診断し,切除標本で癌が消失していた報告は本例が1例目である。
著者
太田 信子
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.320-325, 2019-09-30 (Released:2020-10-01)
参考文献数
10
被引用文献数
1

展望記憶は未来の出来事を意図し, 自発的に想起する。二重経路モデルによると展望記憶の想起には自動的想起と意図的想起があり, 課題形式, 想起の形式, 動機づけやメタ記憶が関連する。課題形式はある出来事を手がかりに想起する事象ベース課題と時間経過や時刻を手がかりに想起する時間ベース課題, 想起の形式は何かすることがあったのに気づく存在想起と何をするのかに気づく内容想起である。自動的想起では手がかりが展望記憶活動に含まれるため想起が容易である。意図的想起では方略的モニタリングによる手がかりの認識が必要である。自験例に対して, この 2 つの想起過程の獲得のための訓練を行った。記憶低下例は符号化および方略的モニタリングが可能となった。遂行機能低下例の動機づけは不十分であったが, 方略的モニタリングが一部可能となった。これらの一定の改善から, 展望記憶訓練の可能性が示唆された。
著者
太田 碧
出版者
法政大学大学院
雑誌
大学院紀要 = Bulletin of graduate studies (ISSN:03872610)
巻号頁・発行日
vol.88, pp.14-22, 2022-03-31

オタクを取り巻く環境や在り方は変化している。本研究では,趣味とし愛好する対象によってオタクをマンガオタク・アニメオタク・キャラクターオタクに分け,各オタクのコンテンツへの態度・行動によってその形態が分類可能かを検討した。因子分析の結果,マンガオタク尺度とアニメオタク尺度はいずれもおおまかに読書・視聴について,積極的ファン行動について,コンテンツへの共感についての3 因子に分類された。キャラクターオタク尺度はキャラクターへのファン活動と消費,二次元好き,外見的魅力と憧れの3因子に分類された。これらはマンガやアニメとの接触頻度やオタク自認度とも相関があり,特にアニメオタク自認度と各尺度の因子にはすべて正の相関が見られた。またマンガ読書冊数とマンガオタク自認度,アニメ視聴分数とアニメオタク自認度に正の相関が見られた。オタクが愛好するマンガ・アニメとの関わり方や楽しみ方は一様ではないことが示された。
著者
太田 健一 綿 祐二
出版者
日本福祉大学健康科学部, 日本福祉大学健康科学研究所
雑誌
日本福祉大学健康科学論集 = The Journal of Health Sciences, Nihon Fukushi University
巻号頁・発行日
no.24, pp.1-10, 2021-03-30

Participation of International Classification of Functioing, Disability and Health(ICF)is considered an important achievement in the field of rehabilitation. But there are few reports about the effect of participation. As a factor, in this study, we focused "involvement in social roles" in participation and investigated the recognition of participation by therapists. The method was to conduct an interview survey and content analyze of 25 therapists who are engaged in rehabilitation services in the long-term care insurance law in prefecture A. As a result, the therapists recognized in the participation of the ICF that execution of some action, such as Hobby activity, Involvement with others, Go to a place of participation, etc. rather than "involvement in social roles" and many of them were supposed to go out. Therefore, the participation was regarded as difficult, and the importance was lowered compared to the activities of the ICF. Since the therapists have little awareness of "involvement in social roles" in ICF participation, we would like to raise their awareness by creating evaluation indicators for future participation, and would like to lead to intervention in participation. 国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disability and Health:以下,ICF)における参加は,リハビリテーション領域の重要な成果とされているが,現状,参加に踏み込むことが出来ていない.その要因として本研究では,参加において「社会的役割への関与」に重きを置き,理学療法士・作業療法士・言語聴覚士(以下,セラピスト)の参加の認識を調査した.方法は,A 県内で介護保険法の訪問・通所リハビリテーションサービスに従事するセラピスト 25 名に対し,インタビュー調査を行い,内容分析を行った.結果,セラピストは ICF の参加において,「社会的役割への関与」ではなく,【趣味活動を行う】,【個人以外と関わりを持つ】,【参加の場に出向く】等,何らかの行為の遂行と認識し,これらには外出を想定されるものが多かった.これにより参加を難度の高いものと捉え,ICF の活動に比して重要度を下げていた.よって,セラピストは ICF の参加において,「社会的役割への関与」の認識が薄く,今後参加の評価指標作成を通して認識を促し,参加への介入に繋げていきたい.
著者
太田 深秀
出版者
独立行政法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

統合失調症のPET研究の中で再現性の高い所見に、中枢刺激薬負荷時に統合失調症群では健常群と比較して線条体でのドーパミンの放出量が増加していたという所見がある。本研究では統合失調症モデル動物を対象に中枢刺激薬負荷試験の有効性を検証する。平成24年度には統合失調症モデル化前後でラットにメチルフェニデートを負荷し、ドーパミン放出量の変化を検討した。その結果、統合失調症モデル化後はモデル化前と比較してメチルフェニデート負荷によるドーパミン放出量が増大していることを確認した。平成25年度からはマーモセットを対象とした[18F]fallyprideによるドーパミンD2受容体密度の測定を開始している。
著者
太田 洋子
出版者
プール学院大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:09110690)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.29-49, 1990-12-21
著者
田中 淳一 太田(目徳) さくら 武田 善行
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.149-154, 2003 (Released:2003-12-18)
参考文献数
12
被引用文献数
3 7

ツバキの園芸品種‘炉開き’はその形態的特徴,発見された地域や状況等から,ヤブツバキ(Camellia japonica)の変種ユキツバキ(C. japonica var. decumbens)とチャ(C. sinensis)の種間交雑種であると考えられてきた.しかし,決定的証拠ともいえるDNAについて‘炉開き’の雑種性について検討した例はなかった.‘炉開き’について,DNAマーカーの一種であるRAPD(Random Amplified Polymorphic DNA)およびSSR(Simple Sequence Repeat)マーカーによる解析を行った.RAPDによる解析においては,‘炉開き’から検出されたRAPDバンドの全てがチャ,ヤブツバキのいずれかより検出された.さらに,チャでは多型が全く検出されなかったチャのSSRマーカー(TMSLA-45)についてヤブツバキを調査したところ,チャとは異なる増幅産物が検出され,‘炉開き’はチャとヤブツバキの増幅産物を共有していることが確認された.これらの結果は‘炉開き’が種間交雑種であることを強く支持するものであった.続いて母性遺伝RAPDまたはそれをe-RAPD(emphasized-RAPD)化したものを用いて‘炉開き’の細胞質を調査し,日本在来のチャの細胞質とは異なることを確認した.これらの結果より,‘炉開き’は種子親がヤブツバキ,花粉親がチャの種間交雑種であると結論された.また,チャと‘炉開き’を交雑し,両者の形態的特徴を色濃く反映する一個体を得た.この個体について調査し,ヤブツバキ由来のRAPDおよびSSRマーカーが‘炉開き’を経由してこの個体へと遺伝していることを確認し,チャ育種における‘炉開き’のヤブツバキの遺伝子の導入のための橋渡し親としての利用に道を拓く結果を得た.
著者
太田澄三郎 編
出版者
水野書店
巻号頁・発行日
vol.上, 1902
著者
夏木 茜 堀 雅之 松原 康策 太田 悠介 齋藤 良一 磯目 賢一 岩田 あや 池町 真実 竹川 啓史 山本 剛 大楠 美佐子 石和田 稔彦
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.96, no.6, pp.240-244, 2022-11-20 (Released:2022-11-21)
参考文献数
21

Moraxella catarrhalis is a common causative bacterium of otitis media and respiratory tract infection in children. Childhood-onset M. catarrhalis bacteremia is more common in children with underlying conditions, such as immunodeficiency, or those using a nasal device. In children without underlying conditions, the onset is usually at younger than 2 years of age.We encountered a case of M. catarrhalis bacteremia in a previously healthy 3-year-old boy. The patient was hospitalized with a 5-day history of fever. Physical examination on admission showed redness and swelling of the ear drums bilaterally. Blood culture and upper nasopharyngeal swab culture both grew M. catarrhalis, which led to the diagnosis of bacteremia and otitis media caused by this organism. The patient was treated with intravenous cefotaxime for 3 days and sulbactam/ampicillin for the subsequent 3 days, followed by oral clavulanate/amoxicillin for 8 days, with good response. Absence of abnormalities in immunological screening tests and absence of any significant past medical history suggested that the patient was not immunocompromised.

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著者
太田清次郎 編
出版者
弘栄社
巻号頁・発行日
vol.初編, 1910
著者
太田 悠誠 野口 悠暉 松島 慶 山田 崇恭
出版者
一般社団法人 日本計算工学会
雑誌
日本計算工学会論文集 (ISSN:13478826)
巻号頁・発行日
vol.2022, pp.20220014, 2022-10-19 (Released:2022-10-19)
参考文献数
18

本研究では,自立性を満たす構造設計案を創出するためのトポロジー最適化法を提案する.まず,自立性を満たさない構造を検出するために,仮想的な物理モデルを導入する.次に,レベルセット法に基づくトポロジー最適化法を導入し,自立性を実現するための制約条件を仮想的な物理場によって表現する.自立性が求められる代表例として,音響クローキング設計問題を対象に最適化問題の定式化を行う.トポロジー導関数の考え方に基づく設計感度の表式を述べ,複数の数値解析例を示すことによって提案手法の妥当性及び有用性を示す.具体的には,提案する仮想的な物理場の特徴を説明し,自立性を満たさない構造が排除された音響クローキング構造の最適設計案を示す.
著者
太田 英利 藤井 亮 岡本 卓 疋田 努
出版者
日本爬虫両棲類学会
雑誌
爬虫両棲類学会報 (ISSN:13455826)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.2, pp.128-137, 2004-09-30 (Released:2010-06-28)
参考文献数
29

Two reptiles, Mauremys mutica kami and Hemiphyllodactylus typus typus, are newly recorded from Haterumajima, the southernmost island of the Yaeyama Group, southern Ryukyus, on the basis of voucher specimens. Of these, M. m. kami was found in large number, and this strongly suggests that this freshwater turtle has already established a breeding population on this island. With respect to H. t. typus, only one individual, juvenile female, was found. However, considering possible parthenogenetic nature of its East Asian assemblages, this gecko may have also established on this island already. Besides these new records, our survey yielded additional specimens of Lepidodactylus lugubris, another parthenogenetic gecko non-native to Haterumajim Island. Characteristics of the dorsal pattern in these specimens indicate that the Haterumajima assemblage belongs to so-called “clone C” like assemblages of this gecko from all other islands of the Ryukyus exclusive of the Daito Group. Records of reptile species from this island are reviewed and problems requiring future investigations are clarified.