著者
小林 彩 吉川 美香 小川 英作 奥山 隆平
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.346-349, 2013-08-01 (Released:2013-09-07)
参考文献数
5
被引用文献数
2 1

基幹病院とクリニックが連携して患者の治療を進めることは,地域医療を充実する上で大変重要である。慢性皮膚疾患の一つである乾癬の診療では,生物学的製剤が近年使用できるようになり,高い治療効果を得ることが可能となってきた。そこで,私たちは長野県内の皮膚科医 (皮膚科を標榜する病院,クリニック) にアンケート調査を行い,乾癬治療の現状を把握することを試みた。 159 施設へアンケートを郵送し,各診療施設での患者数,現在の治療法,生物学的製剤に対する各医師の考えなどに関して,質問を行った。その結果,87 施設 (回答率 55%) から回答が得られた。アンケート結果からは長野県内の乾癬患者数は約 3000 人,その 7 割近くはクリニックで診療を受けていた。全体の 8 割以上の患者は外用剤のみで加療されていた。クリニックでは,生物学的製剤投与の対象となる患者が 15 施設 34 人いることがわかった。また,副作用への懸念や患者への説明時間が確保できないといったことがクリニックでの生物学的製剤導入を阻む要因となっていた。これらの結果から,生物学的製剤を含めた乾癬の診療を進める上で,クリニックと基幹病院の間の連携が大変重要であると考えた。
著者
奥山 健二 川口 辰也
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.229-247, 2010 (Released:2010-04-23)
参考文献数
98
被引用文献数
5 9

Triple helix は,すべてのコラーゲンで見られるタンパク質のユニークな構造モチーフである. コラーゲンらせんにおいては,そのアミノ酸配列中で Gly が必ず 3 残基ごとに存在し,イミノ酸含量が多いという厳密な制約が必要である.繊維状コラーゲンの X 線回折パターンは,1920 年代から研究されてきたが,回折データが少ないために繊維回折像だけからではユニークならせんモデルは得られていない.一方,最近 15 年間に,多くのコラーゲンモデルペプチドの単結晶解析が行われ,平均のらせん対称,水素結合ネットワーク,triple helix 周りの水の分布,ヒドロキシプロリンによる triple helix の安定化に対する構造論的な知見など,物理化学的に重要な情報を提供してきた.
著者
石川勲 近澤 芳寛 佐藤 一賢 奥山 宏 今村 秀嗣 羽山 智之 山谷 秀喜 浅香 充宏 友杉 直久 由利 健久 鈴木 孝治 田中 達朗
出版者
金沢医科大学
雑誌
金沢医大誌 (ISSN:03855759)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.522-530, 2005
被引用文献数
1

金沢医科大学腎移植チームでは,1975年3月より2005年6月30日までの約30年間に,260例の腎移植を行ってきたが,この間における移植成績の向上には隔世の感がある。これには長年にわたる経験の積み重ねに加え,免疫抑制療法や急性拒絶反応に対する治療法の飛躍的な進歩が深く関わっていると思われる。そこで我々が行ってきた腎移植の成績はどのように変化してきたか,また移植腎が生着し,現在も外来に通院中の患者について現状はどうかまとめてみた。腎移植260例の内訳は,生体腎移植212例,死体腎移植48例で,生体腎移植は透析導入直後の例で多く,死体腎移植は長期透析例で多かった。また提供者をみると生体腎移植では親が多く,死体腎移植では若い人から高齢者まで様々であった。30年にわたる移植時期を10年ごとに区切って,その間の移植成績をみると,すなわち,免疫抑制薬としてステロイドとアザチオプリンを使用した最初の10年,それに続き,ステロイド,アザチオプリン,シクロスポリンを使用した次の10年,さらに,ステロイド,ミコフェノール酸モフェチル,シクロスポリンまたはタクロリムスを使用したここ10年に分けて,5年腎生着率を比べてみると,それぞれ68.3%(n=89),73.0%(n=86),93.7%(n=37)と大きく向上してきている。1975年に行われた最初の4例は現在も生着し,腎機能も良好である。またこの間12例の患者が18児を出産した。外来通院中の134例について高血圧の頻度は86.6%で,うちコントロール良好例は86.2%,糖尿病の頻度は18.7%で,うちコントロール良好例は80.0%であった。以上より金沢医科大学における腎移植の成績は良く,生活習慣病関連事項もコントロール良好と言える。近年では,移植数の減少が最大の問題点となってきている。死体腎移植に対するさらなる理解と啓発・提供者の増加,生体腎移植における適応の拡大(ABO不適合移植,夫婦間移植)がなによりも求められるところである。
著者
赤松 利恵 林 芙美 奥山 恵 松岡 幸代 西村 節子 武見 ゆかり
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.225-234, 2013 (Released:2013-11-08)
参考文献数
24
被引用文献数
2 2

【目的】特定保健指導を受診し,減量に成功した男性勤労者を対象に,減量のために取り組んだ食行動を質的に検討した。【方法】対象者は,栃木県,埼玉県,和歌山県,及び大阪府にある5つの職域健康保険組合が委託した機関において,特定保健指導を受診し,4%以上減量した者に研究協力を依頼した。同意が得られた27名を対象に,インタビューガイドを用いた約30分間の個別半構造化面接を実施した。分析は6ヶ月評価時に実際に4%以上の体重減少があった26名を対象とした。逐語録を作成しグラウンデッド・セオリー・アプローチを参考に分析を行い,本研究では,概念的枠組みの大分類【取り組み方】に分類された食生活に関する内容を食行動と行動技法の観点から,カテゴリ化した。【結果】逐語録から,食行動の観点では,31のサブカテゴリと7つのカテゴリ,行動技法の観点からは,17のサブカテゴリと9つのカテゴリが抽出された。減量成功者の取り組んだ食行動は多様であり,多くの対象者が行動技法を用いて,支援時に立てた目標に取り組んでいた。【結論】減量に成功した男性勤労者は,食行動の実践において行動技法を用いており,その内容は具体的で実行しやすく,勤労者特有のものであった。
著者
北村 雅哉 西村 憲二 三浦 秀信 小森 和彦 古賀 実 藤岡 秀樹 竹山 政美 松宮 清美 奥山 明彦
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.91, no.7-8, pp.589-594, 2000-07-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
18

(目的) TESE-ICSIは非閉塞性無精子症に対して広く用いられてきたが, その適応については今だ議論の残るところである. 今回われわれは精子回収の可否, ICSIの結果などについてそれを予見する術前のパラメータがないか, 後向き検討を行った.(対象と方法) 1997年7月から1999年9月まで大阪大学医学部泌尿器科およびその関連施設でTESE-ICSIを施行した非閉塞性無精子症の症例, 44例においてその臨床的パラメーターとTESE, ICSIの結果との相関を調査した.(結果) 1) 44例中32例 (72.7%) で精子の回収に成功し, うち29例でICSIを施行, 15例 (46.9%) で妊娠が成立した. 10例は Sertoli-cell-only の組織型が確認されていたが, うち3例 (30%) で不動精子が回収された. 2) 精巣容量, JSC, FSHが精子回収の可否を有意に予測するパラメーターであったが, 閉塞性の要因の関与も考えられるJSC8以上の症例を除外するとその有意差は無くなった. 染色体異常の有無は精子回収の可否を予測するパラメーターとはならなかった. 3) 妻の年齢, 精子運動性の有無, 精巣容量は受精の可否を予測するパラメーターとなった. 染色体異常は受精の可否を予測するパラメーターとはならなかった.(結論) 非閉塞性無精子症で精子の回収を予測する絶対的なパラメーターはなかった. 非閉塞性無精子症のすべての症例がTESE-ICSIの適応となり, またTESE-ICSIなしでは絶対不妊の診断は下せないものと思われた.
著者
久米 達哉 佐藤 政則 諏訪田 剛 古川 和朗 奥山 栄樹
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会学術講演会講演論文集 2016年度精密工学会春季大会
巻号頁・発行日
pp.49-50, 2016-03-01 (Released:2016-09-02)

我々は,形状基準を不要とすることから長尺対象物の高精度な形状評価に有効と考えられる,角度検出器を用いる形状評価法において,傾斜計では検出できない水平面内を含むあらゆる方位角が検出可能な,ジャイロを用いた方法について検討している.ここでは,角度検出方向と直交方向に回転するジャイロから得られる角度信号をもとに,地球自転軸を基準としてジャイロ回転軸の方位角を求める方法について,検討を行った.
著者
四ヶ所 高志 塩崎 太伸 奥山 信一
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.78, no.684, pp.355-364, 2013-02-28 (Released:2013-05-31)
参考文献数
14
被引用文献数
1

The piloti, elevating the building above ground, is one of the most characteristic modernist structural types. This element also has spatial implications, as recognized by Le Corbusier's “Five Points” and exemplified in his “Villa Savoye (1928-31)”. After World War II a number of such houses made their appearance in Japan. Here we aim to illustrate and examine how Japanese architects of the time extrapolated a design theme from this model, based on a study of such work as it appeared in architectural publications. Initially, two aspects of the piloti concept were selected, and each scheme was then subjected to a “KJ-method” analysis (originated by KAWAKITA Jiro). First, we scrutinized the architect's intention in adopting a piloti scheme. Secondly, we attempted to assess each architect's distinct view of the spatial character of the prototype, as exemplified in his deployment of the piloti model. At this point, the composition of each house was assessed with regard to two aspects involving the relationship between building and ground, namely the interrelation of building to site and to its natural gradation. Finally, the mediation between each architect's thinking and the final composition has been plotted in terms of this dual classification.
著者
櫻井 健一 小笠原 茉衣子 芳沢 昌栄 岸田 杏子 奥山 貴文 増尾 有紀 秋山 敬 榎本 克久 天野 定雄 藤崎 滋 槙島 誠
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.179-182, 2015-08-01 (Released:2016-01-25)
参考文献数
10

リンパ節転移を伴った甲状腺微小癌を経験した.症例は68 歳,女性.甲状腺腫瘍を指摘され来院した.超音波検査で甲状腺に多発する腫瘍を認めた.穿刺吸引細胞診を施行したところ左葉の直径5 mm の腫瘤のみがClass IV の診断であった.甲状腺亜全摘術+リンパ節郭清術を施行した.病理組織診断は多発する腺腫様甲状腺腫と直径5 mm のpapillary carcinoma であり,左気管傍リンパ節に転移を認めた.微小癌の予後は良好とされるが,今後の慎重な経過観察が必要であると考えられた.
著者
塩足 亮隼 北口 雄也 奥山 弘 八田 振一郎 有賀 哲也
出版者
公益社団法人 日本表面科学会
雑誌
表面科学 (ISSN:03885321)
巻号頁・発行日
vol.33, no.7, pp.382-387, 2012-07-11 (Released:2012-07-25)
参考文献数
17

Nitrogen monoxide (NO) has an unpaired electron in its 2π* orbital, giving rise to various reactivity such as dissociation and dimerization on the surfaces. One of the most important and frequently discussed issues has been whether its unpaired electron survives or not when adsorbed on metal surfaces; NO on metal surfaces is an ideal model system to study the interaction between molecular spin moment and condensed matters. We investigate the valence states of NO molecules adsorbed on Cu(110) with scanning tunneling microscopy (STM) and scanning tunneling spectroscopy (STS). Two orthogonal 2π* valence states are observed at the Fermi level, suggesting that the unpaired electron of NO is alive and localized on the molecule. The covalent interactions between two NO molecules are visualized by manipulating the overlap of their “active” 2π* orbitals.
著者
近藤 光男 南野 博美 奥山 源一郎 本田 計一 永沢 久直 大谷 泰永
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.14-18, 1983-11-15 (Released:2010-08-06)
参考文献数
7

Physicochemical properties of β-glycyrrhizin (β-G, a triterpenoid saponin) and α-glycyrrhizin (α-G, a stereoisomer of β-G, newly developed in this study) were examined in connection with cosmetics.Both α- and β-G's exhibited similarly considerable interfacial activity. However, the aqueous solution of β-G formed extremely rigid gel in acidic media, whereas α-G showed no sign of gelation.β-G can emulsify various oily materials lying in a wide range of required HLB value, while α-G has the solubilizing ability for several perfume materials.A series of experiments were carried out to obtain some informations on the solubilizing, emulsifying, and gelling mechanisms of G's by using 13C-NMR, scanning electron microscope and various derivatives of G's.The results suggested that β-G molecule which was found to be cyclically constructed constitutes the micells which in turn orient anisotropically to form the rigid gel and stabilize the emulsion.
著者
橋本 敏博 桝永 秀彦 奥山 牧夫
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.149-154, 1991-02-28 (Released:2011-08-10)
参考文献数
8

胃内発酵によりアルコール性低血糖をおこした血液透析患者の1例を報告する.症例は72歳男性で, 慢性血液透析を施行していたが, 幽門部胃潰瘍を合併し, 固形物は食べ難い状態であった.昭和63年9月10日, 意識障害にて入院, 著明な低血糖を呈し, ブドウ糖の静注にても血糖維持が困難であった.呼気にアルコール臭がするため, 胃内発酵によるアルコール性低血糖を疑い胃管を挿入したところ, アルコール臭のする多量の食物残渣が吸引された.それととともに, 低血糖症状は消失した.胃管挿入前の血漿エタノール濃度は0.2mg/mlであったが, 胃吸引後は測定限界以下となった。胃液培養からはCandida alubicansおよびTorulopsis glablataが検出され, in vivoでそのアルコール発酵能が証明された.
著者
奥山洋一郎
雑誌
大学研究
巻号頁・発行日
vol.16, 1997
被引用文献数
1
著者
奥山 章雄
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1312, pp.149-152, 2005-10-17

予期せぬ出来事でした。監査法人としてこれをどう受け止めたらいいのだろうと、本当に戸惑いました。 9月13日、私ども中央青山監査法人の公認会計士4人がカネボウの粉飾決算に関与した疑いで、東京地方検察庁特捜部に逮捕されました。そして10月3日、うち3人が証券取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の罪で起訴されました。
著者
川原 由紀奈 園田 茂 奥山 夕子 登立 奈美 谷野 元一 渡邉 誠 坂本 利恵 寺西 利生
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.297-302, 2011 (Released:2011-06-07)
参考文献数
16
被引用文献数
4 2

〔目的〕2006年以降より回復期リハビリテーション病棟での訓練時間は1日上限6単位から9単位に増加した.このことから訓練量増加の効果をADLとの関係で検討した.〔対象〕回復期リハビリ病棟に入退棟した脳卒中患者で,2005年度の5~6単位の群122名と2008年4月から9月の7~9単位の群41名とした.〔方法〕2群間の入退棟時FIM運動項目合計点(FIM-M),FIM-M利得(入院時-退院時FIM-M),FIM効率(FIM-M利得/在棟日数)と自宅復帰率の関係を比較した.〔結果〕7~9単位の群は5~6単位の群に比べFIM-M利得,FIM効率,自宅復帰率が有意に高かった.〔結語〕訓練増加がADL改善に効果的であると考えられる.