著者
柏崎 礼生 坂根 栄作 込山 悠介 宮崎 純 中沢 実 岡部 寿男
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:21888787)
巻号頁・発行日
vol.2020-IOT-49, no.7, pp.1-8, 2020-05-07

新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の日本国内での蔓延に伴い,2020 年 2 月中旬以降に開催が予定されていた大規模な集客を見込むイベントは中止,延期を余儀なくされた.学術においても状況は同様であり,日本国内においては特に卒論・修論発表会の終わった 2 月中旬から 3 月下旬まで学会・研究会が集中して開催される時期である.本稿では 3 月上旬に開催された,参加人数が例年 500 人を超える規模のイベントがどのようにオンライン開催の意思決定を行い,そのための準備を進め,運用を行ったのか情報共有を行い,同様の有事が発生する未来に対する議論と提言を行う.
著者
伊藤 恵士 桐谷 佳恵 小原 康裕 玉垣 庸一 宮崎 紀郎
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.19-26, 2007-07-31 (Released:2017-07-11)
被引用文献数
1

商品購入時のパッケージデザインの重要性をふまえ、ユーザ印象を考慮した日本酒のラベルデザインのあり方を検討するための基礎資料として、日本酒のパッケージの印象評価を行った。まず、13色の瓶の印象評価及び因子分析を行い、ユーザが瓶色に対して何らかのイメージを抱く事を確認した。次に、現行ラベルデザイン14種を6色の瓶と組み合わせ、それらの印象を評価させた。その結果、熟成感、濃淡感、嗜好性の因子が抽出された。ラベル自体の熟成感には色(彩度)、濃淡感には色(色相)と用いられるグラフィックの量、嗜好性には高級感を演出する金などの色や誘目性の高いレイアウトが効果的であることがわかった。そしてラベルの印象は、それが貼られる瓶の色によって大きく変化した。特に嗜好性は、瓶とラベルに使用されている色の統一感、色相差、明度差、色数によって大きく変わった。
著者
菊地 博 川崎 聡 中山 均 齋藤 徳子 島田 久基 宮崎 滋 酒井 信治 鈴木 正司
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.461-466, 2010-05-28 (Released:2010-06-22)
参考文献数
15
被引用文献数
1

ノイラミニダーゼ阻害薬であるオセルタミビルは,インフルエンザAおよびB感染症の治療,予防に有効な薬剤である.慢性維持透析患者に対する,治療,予防に関する報告は少なく,その推奨量は決定されていない.2007年2月19日~20日,火木土昼に透析を受けている患者9人のインフルエンザA発症を確認した.発症患者の病床は集積しており,施設内感染が強く疑われた.透析患者は感染のリスク,重症化のリスクが高いと考えられ,感染の拡大を防ぐため,オセルタミビルの治療投与のほか,予防投与も行った.385名の透析患者に,十分なインフォームドコンセントを行い,同意が得られた患者にオセルタミビル75 mg透析後1回経口投与を行った.アンケート等の協力が得られた339名を調査対象患者とした.9人が治療内服,299名が予防内服を行い,31名が内服しなかった.治療内服後,全員が速やかに解熱し,重症化例を生じなかった.予防内服者には,インフルエンザ感染を生じなかったが,非予防内服者に2名の感染を認めた.この2名も同様の内服により,速やかに解熱,軽快した.内服者において,報告されている臨床治験時にくらべ,消化器症状の発症率が低かったが,不眠を訴える割合が多かった.また,内服者は非内服者にくらべ,臨床検査値異常は多くなかった.血液透析患者におけるオセルタミビル75 mg透析後1回投与は,健常者の通常量投与にくらべ,血中濃度が高値となると報告されている.過量投与による副作用の報告はなく,また,今回の透析患者339名の検討でも,安全性には概ね問題がないと考えられた.予防投与は有効で,当施設におけるインフルエンザAアウトブレイクを収束させた.
著者
石田 喜美 名城 邦孝 関 敦央 宮崎 雅幸 寺島 哲平
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学=Cognitive studies : bulletin of the Japanese Cognitive Science Society (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.375-391, 2018-12

In recent years, we have witnessed cases of “gamification” in various social fields,such as education, social welfare, and even ecological problem solving. Within the background of such cases, there seems to be a need for change in the reality of our daily lives. In fact, we can see some cases of gamification occurring in our actual lives. According to Suits (2005), to play game is to engage in “the voluntary attempt to overcome unnecessary obstacles.” In daily life, obstacles exist as things to avoid, but in a game context, such obstacles are necessary for our pleasure. Thus, using the method of gamification and introducing the game context, we can change the meaning of various obstacles, and construct alternative meaning to our reality. In this article, we focus on the process in which our reality is reconstructed through the conversation after playing a game-based educational program. Describing how they design their interactions and construct their realities, we aim at finding how games affect our realities. This field of research is RPG-based, and focuses on a user-education program implemented in an academic library, called “Libardry,” which is a combination of the word “library” and the title of a popular game, “Wizardry.” The program consists of two parts: an RPG-based education program and a group discussion (Flick,2002). The participants were six university students, two females and four males. We focused on conversations in a group discussion and analyzed them to determine how the participants, staff members, and students, elicit meaning from difficulties when accessing library resources as artifacts. As a result, we determined how participants change their meaning collaboratively. In their conversations, they stated that difficulties are “unnecessary obstacles to overcome”for pleasure. Game context not only visualizes the existence of artifacts from the viewpoint of “pleasure,” it also opens up the field of meaning negotiation for people in various fields.
著者
宮崎 かすみ
出版者
和光大学表現学部
雑誌
表現学部紀要 (ISSN:13463470)
巻号頁・発行日
no.16, pp.127-146, 2015

本稿では、変質論と推理小説の親和性を論証した。まず19世紀半ばにフランスで精神医学の理論として発表された変質論がもっと前の時代の、人類学における人種論としての議論にまで遡り系譜をたどった。その上で、ロンブローゾの犯罪人類学の理論的骨格となっている変質論が、人種論に由来するものであることを明らかにした。後者の変質論は、ダーウィニズムの影響が色濃く、退化や先祖がえりといった概念を特徴とするが、アーサー・コナン・ドイルのホームズ・シリーズを、この変質論のパラダイムから読み解いた。そして、ホームズ物語は、犯罪という現象の原因にある政治や社会問題を、犯罪者の変質した身体の問題へと収斂させるというプロットを内在させていったことを指摘した上で、そのベクトルを変質論から援用していたという結論に至った。
著者
長井 千春 宮崎 清
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.77-86, 2007-05-31

ヨーロッパの後進国ドイツは、19世紀末には世界屈指の産業国家に成長していた。日本では、同じ頃、イギリスに代わる近代化の準拠国として新たにドイツに照準をあわせ、重要な輸出産業である陶磁器製造においてもドイツを模範とした。本稿は、マイセンでの磁器開発を起点に盛んとなるドイツ磁器産業の発祥から発展の経緯を検証するなかで、その特性を整理し考察を試みた。19世紀中葉のドイツ文化圏には4つの特徴ある磁器産業地帯が形成されていた。各産地ともに資源環境に恵まれ、量産技術の開発と合理的な経営に優れた工場が多く、これまで特権階級の所有物であった磁器を日用必需品として、幅広い生活層への普及に貢献した。そして、20世紀初頭には輸出量でアメリカ市場を制覇し、かつて粗悪で悪趣味と呼ばれた磁器製品は、国策としての工芸振興とデザイン運動との連動により、技術力とデザインで国際的に認知されるまでに力をつけ始めていた。
著者
三上 史哲 宮崎 仁
出版者
川崎医療福祉学会
雑誌
川崎医療福祉学会誌 = Kawasaki medical welfare journal (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.115-128, 2017

近年,国際生活機能分類(ICF)の意義や活用の重要さは認識されてきたが,構造の複雑さや項目 数の多さ(全1,457項目),用語の難しさ,全体像の理解の難しさなどから,実践的活用までに至って いないといえる.本研究では ICF の実践的な活用を目指し,その第一歩として適切なコード化を促 す支援システムを作成し,その活用例を示した.支援システムは ICF をインターネットを介して閲 覧,検索可能とする Web システムとした.ICF 検索機能としては Google 検索エンジンのサイト内検 索を利用し,多くのユーザが見慣れた検索結果を得ることが可能となった.さらに,Yahoo 形態素解 析(WebAPI)を利用し,文章による検索を可能とした.類義語に関しては,形態素解析で分割され たキーワードに対する類語辞典へのリンクを表示し,容易に再検索できるようにした.このシステム の活用例として,①日本広範小児リハ評価セット,②居宅サービス評価票,③要介護認定調査票,④ 重症児チェックリスト,⑤障害程度区分,⑥認知症アセスメント,⑦機能的自立度評価表の各評価項 目を ICF コード化した.全生活機能評価票の分析対象項目は,合計で291件あった.コーディングし たデータを評価票ごとに集計し,頻度分布図を作成したところ,評価内容が心身機能「b」を中心に したものと活動・参加「d」を中心にしたものに分かれることが示唆された.そこで,評価票間のコー ド(質問項目)の類似度をクラスタ分析を用いて確認したところ,日常生活動作を中心に調査を行っ ている評価票と高齢者を対象とした調査の分類があることが示唆された.新しい評価票を作成した際 に,同様の分析を行えば類似度の高い評価票を確認することができる.この活用例では,既存の評価 票を ICF コード化し,類似の評価票を分類することで,新しい評価票を作成する際により完成度を 高めるための一つの方法を示すことができたと考える.
著者
宮崎 雅雄
出版者
公益社団法人におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.25-33, 2016-01-25 (Released:2020-09-01)
参考文献数
28
被引用文献数
1

多くの動物は,生活環境に自分のにおいを残して縄張りを主張する.一方,自分以外の動物に残されたにおいを嗅ぎつけた動物は,におい主の種や性,年齢,個体情報を識別する.これはにおい主の情報が自身の生存や種の存続に必要不可欠だからである.例えばにおい主が敵のものであれば忌避することで自身の生存につながり,同種の異性で繁殖適期の個体であると分かれば,近隣を探すことで子孫を残すためのパートナーが見つかり,種が存続する.また動物個体から分泌されるある種の化学物質は,同種の仲間に特定の行動を誘起したり内分泌系を変化させる生理活性を有し,フェロモンと称される.においやフェロモンは自分が不在の時も生活空間に残すことが可能で自己の情報を相手に伝える媒体として利用できる.このように動物の嗅覚は,種間,異種間コミュニケーションにとても重要である.本稿では,哺乳動物のにおい,フェロモンの受容機構から筆者らが研究しているネコの嗅覚コミュニケーションについて紹介する.
著者
宮崎 泰成 稲瀬 直彦
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.6, pp.1212-1220, 2017-06-10 (Released:2018-06-10)
参考文献数
13
被引用文献数
1

過敏性肺炎とは,感受性のある個体において特定の抗原(動物由来蛋白(鳥など),真菌/細菌,あるいは無機物(イソシアネートなど))が肺局所で反応して免疫学的機序で発症する間質性肺炎である.発症に至る免疫機序は,特異抗体(III型アレルギー)と感作リンパ球(IV型アレルギー)が重要であるが,加えて原因抗原の種類・量,肺内での除去速度および内的外的要因によって免疫反応は変化する.臨床病型は急性および慢性の2つに分けられる.急性はTh1とTh17反応が主体であるが,慢性ではそれらの反応がTh2にシフトし,線維化の原因となる.診断においては,原因抗原を特定することが重要である.原因抗原は多数あるが,特に羽毛やとり糞などの鳥関連蛋白および真菌の頻度が高い.治療においては,抗原の回避を基本とし,ステロイドや免疫抑制薬によってアレルギー性炎症をコントロールし,線維化を抑制する.線維化の進んだ慢性過敏性肺炎の治療が今後の課題である.
著者
上木 賢太 原口 悟 吉田 健太 桑谷 立 浜田 盛久 Iona McINTOSH 宮崎 隆 羽生 毅
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.3-21, 2023-03-31 (Released:2023-03-31)
参考文献数
60

Kikai caldera, a submarine caldera to the south of Kyushu, is the source of the youngest caldera-forming supereruption during the Holocene (i.e., the Kikai-Akahoya eruption at 7.3 ka). During its volcanic history, the Kikai caldera has experienced at least three caldera-forming supereruptions (i.e., the Kikai-Akahoya, Kikai-Tozurahara and Koabi eruptions). To better understand the processes of submarine caldera-forming supereruptions and the evolution of the large felsic magma bodies from which they derive, we have constructed a geochemical database for the eruption products of the Kikai Caldera, including proximal deposits and distal tephras (https://doi.org/10.6084/m9.figshare.20066630). We compiled geochemical data reported in various papers and proceedings from both domestic Japanese and international journals. The new database, comprising 413 individual samples from 59 publications, contains all available major- and trace-element concentrations, isotopic ratios, analytical methods, geographical coordinates (latitude, longitude, and altitude) of sampling points, age data, refractive index, and geological and petrological information. The database is freely available to the public online. Based on the constructed database, we review the current geochemical understanding of Kikai caldera magmatism and discuss geochemical characteristics of magmas from the Kikai caldera. The difference in magma composition between the two recent caldera-forming supereruptions (the Kikai-Akahoya eruption at 7.3 ka and the Kikai-Tozurahara eruption at 95 ka) is clearly seen in the compiled data. Moreover, we find that the distal tephra represents a more SiO2-rich magma composition than that of the proximal deposits, especially in the case of the Kikai-Akahoya eruption.
著者
寺町 晋哉 Shinya TERAMACHI 宮崎公立大学人文学部 Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.49-64, 2023-03-09

本稿では「できないこと」を共有しやすい小学校初任者教師が責任の分有を果たせるのか を分析することで、小学校初任者の困難を生み出す要因を明らかにした。 本稿では、初任者教師へ行ったインタビュー調査のデータをもとに分析を行った。分析の視点として、「責任の分有」を目指すヴァルネラビリティ・モデルを用い、初任者の業務や児童に対する責任が「誰にどのように担われているのか」を分析した。 初任者は入職直後から学級担任・授業者として質量ともに膨大である業務をこなしており、日々の仕事をこなすことで精一杯であった。また、初めて教師として働くため、「できない」ことも多く、それゆえの困難や悩みを抱えていた。そして、困難や悩みを周囲に共有できても、他の教師と責任の分有が行われることは少なく、担任として責任が紐づけられていた結 果(「責任の個別化」)、最終的には初任者が対応せねばならない状況になっていた(個業性)。 初任者であっても担任として「責任の個別化」から抜け出せないことは二つの問題がある。第一に、児童が「危害」に晒され続けるということである。学級担任業務と授業を初任者一人で遂行する、非常に無理のある現在の制度設計の皺寄せが全て、児童たちへ向かうことになる。第二に、初任者自身も「危害」へ晒される。長時間労働でなければ業務を遂行できないだけでなく、「できない」ことへ直面し、苦悩も含めてそれを周囲へ共有しても、助言や研修を通して「できるようになる(成長)」責任を初任者は求められており、そのことが更なる多忙・重労働という「危害」へ晒すことになる。
著者
山崎 震一 山崎 健二 宮崎 高明 松岡 健司 丸山 寅巳 八木 禧徳 高桜 芳郎 伴野 昌厚
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.31-39, 1994 (Released:2009-06-05)
参考文献数
12
被引用文献数
6 9 10

注腸二重造影像に示された腸管に紙紐を使って盲腸,結腸の各部分,直腸の長さと内径を測定し,性,年齢,身長,体重,肥満度,横行結腸下垂,S状結腸挙上,症状に対する統計学的分析を試みた.検査対象は男性120例,女性112例,平均年齢56.6歳であった.結果は大腸の長さは性と年齢に対して有意に関与するが,身長,体重,肥満度に対しては積極的関与はなかった.内径に対しては横行,S状結腸とも身長,体重に正の相関,年齢に負の相関があり,性差ではS状結腸の内径は女性の方が小であった.つぎに横行結腸下垂は性,年齢,身長,体重,肥満度,横行結腸大腸の長さに,S状結腸挙上は年齢,S状結腸,大腸の長さに,便秘は性,年齢身長,体重,横行結腸S状結腸大腸の長さに,便通異常は横行結腸大腸の長さに,出血は性に相関があり,腹痛はすべてに有為差を認めなかった.
著者
釜田 茂幸 清家 和裕 亀高 尚 牧野 裕庸 小山 隆史 安野 憲一 宮崎 勝
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.691-695, 2009-06-01 (Released:2011-12-23)
参考文献数
17

Stage I大腸癌根治切除4年後に孤立性仙骨転移を来したまれな症例を経験した.症例は75歳の男性で,平成13年7月に近医でS状結腸癌のためS状結腸切除術を施行され,病理組織学的検査では高分化型管状腺癌,mp,n0,ly0,v0,Stage Iと診断された.平成18年5月,肛門痛の増強のため当科外来を受診した.仙骨に孤立性腫瘍を認め,他に明らかな原発巣はなかった.生検の結果,大腸癌孤立性仙骨転移と診断した.化学放射線療法では無効であったため,腫瘍のfeeding arteryから動注化学療法(以下,TAIC)を13クール施行した.臨床的に明らかな腫瘍径の変化や腫瘍マーカーの降下はなかった.多発肺転移が出現したため全身化学療法へと変更したが,術後6年8か月目に死亡した.大腸癌骨転移に対しては手術だけでなく,化学放射線療法,TAICなども含めた集学的治療が必要となる場合がある.まれな転移を示した本症例に対し,文献的考察を加えて報告する.
著者
渡邊 圭祐 宮崎 貴志 片山 哲治 菊田 浩一 中村 夏樹 田中 秀幸 木村 龍範 矢埜 正実
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.375-378, 2012-07-01 (Released:2013-01-16)
参考文献数
15

症例は62歳,男性。下肢静脈瘤に関連した蜂窩織炎にて過去8回の入院歴があり,今回も蜂窩織炎で入院した。入院後まもなく看護師の目の前で突然意識消失するも短時間で意識が回復し,その後1時間あまりの間に6回の心室細動が出現した。ICUに入室し鎮静薬投与および気管挿管後からは心室細動の出現がなく,第2病日に抜管した。ICU入室時の体温は41℃であり,V1,V2誘導で特徴的なcoved型ST上昇を認めた。その後ST上昇は改善するも,Brugada症候群と診断し,埋め込み型除細動器埋め込み術を行った。平常時の心電図はBrugada型の所見は認めず,過去の発熱時の心電図においても軽度ST上昇が認められたが,Brugada症候群と診断するのは不可能であった。発熱を契機に診断されるBrugada症候群の報告は散見され,発熱患者を診る機会の多い集中治療医も銘記しておくべき病態である。