著者
阿部 智行 宮川 伸 中村 義一
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.147, no.6, pp.362-367, 2016 (Released:2016-06-11)
参考文献数
37

アプタマーとは,複雑な三次元立体構造をとることで標的分子に結合する一本鎖のRNAまたはDNA分子である.標的となる分子は,タンパク質,ペプチド,炭水化物,脂質,低分子化合物,金属イオンなど多岐にわたり,その高い結合力と特異性から,医薬品や診断薬,分離剤などさまざまな分野で実用化されている.医薬品としては,世界で初めてのアプタマー医薬であるMacugen®が滲出型加齢黄斑変性症治療薬として2004年にアメリカで承認され,いくつかのアプタマーが臨床段階にある.また,ドラッグデリバリーシステム(DDS)のツールとしての研究も進んでおり,医薬品分野におけるアプタマーの重要性がますます高まることが予想される.そこで本稿では,医薬品としてのアプタマーの取得方法,最適化について概説し,臨床試験中のアプタマー医薬の最新の動向について紹介する.
著者
宮澤 僚 礒 良崇 田代 尚範 鈴木 洋 林 宗貴 宮川 哲夫
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.93-98, 2021-03-01 (Released:2021-03-01)
参考文献数
19

【目的】生存退院した48時間以上の人工呼吸器装着患者における退院時自立歩行獲得の関連因子を明らかにする。【方法】2016年6月から2017年10月までの期間に,当院に入院し,生存退院した48時間以上の人工呼吸器装着患者81名を対象とした。退院時自立歩行獲得に関連する因子をICU退室時に診療録から得られた情報で後方視的に検討した。【結果】自立群と非自立群では,年齢,functional comorbidity index(FCI),ICU退室時のせん妄とfunctional status score for the ICU(FSS-ICU)に有意差を認めた(P<0.05)。多重ロジスティック回帰分析の結果,ICU退室時FSS-ICU(OR:1.21,95%CI:1.09〜1.34,P<0.01)とFCI(OR:0.62,95%CI:0.40〜0.95,P=0.02)が自立歩行獲得の独立した関連因子であった。【結論】生存退院した長期人工呼吸器装着患者の自立歩行獲得には,ICU入室時の疾病の重症度よりも,ICU退室時の基本動作能力と機能的併存症が関連していた。
著者
宮川 久美
出版者
奈良佐保短期大学
雑誌
奈良佐保短期大学研究紀要 = Bulletin of Nara Saho College (ISSN:13485911)
巻号頁・発行日
no.21, pp.25-34, 2013-03-31

この作品は,従来,スーホの白馬に対する思いの深まり,純粋な愛,「変わらぬ絆」を描いていると解釈されてきた.しかし本稿は,スーホの二度の決断をとおして,彼の白馬に対する愛の変容を描いていると考えた.一度目は,白馬にまたがって殿様主催の競馬に出たこと.それは,白馬と他の馬とを比べることであり,自慢の白馬をみんなに見せびらかすことである.その結果白馬を失うことになる.二度目の決断は,スーホの元に瀕死の重傷を負いながら帰ってきて翌日死んだ白馬が夢に現れ,自分の体で楽器を作るようにと言ったとき.白馬の,身を以てスーホを慰めようとする愛に呼応してスーホの愛は「ぼくの白馬」という「所有の愛」を超え,対等の愛,個の尊厳を認めた手放す愛へと昇華する.この結果,楽器「馬頭琴」はひとりスーホを慰めるだけでなく,聞く人の心をゆりうごかし,広いモンゴルの草原中に,ひろまって,多くの羊飼いたちの一日の疲れを忘れさせるものになったのである.
著者
宮川 昌久
出版者
千葉大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

多数の口腔扁平上皮癌組織と、同一患者の正常組織を用いて以下の実験を行った。1)第10番染色体上にマップされている多数のマイクロサテライト領域のうち、特にヘテロ接合性を示す確率の高い17ヵ所をPCR-microsatellite assay法により調べた。その結果、第10番染色体全体ではmicrosatellite instabilityは42.4%、loss of heterozygosityは72.7%と高率に検出され、口腔癌発生に第10番染色体異常が関与していることが示唆された。また、共通欠失領域として長腕上のD10S202領域(34.6%)とD10S217領域(28.6%)を同定した。さらに、PCR-SSCP-sequence法を用いてPTEN遺伝子を解析したところexon-1の上流に共通したmutationを検出した。mRNAの発現に対する修飾が行われている可能性が示唆された。2)第12番染色体上にマップされている多数のマイクロサテライト領域のうち、特にヘテロ接合性を示す確率の高い24ヵ所をPCR-microsatellite assay法により調べた。現在までのところ、第10番染色体全体ではmicrosatellite instabilityは26.2%、loss of heterozygosityは38.4%とあまり高い変異は検出されず、また、現在までのところ、共通欠失領域は同定できなかった。今後第12番染色体についてさらに詳細に検討を加えていく。
著者
宮川 準
出版者
日本経営倫理学会
雑誌
日本経営倫理学会誌 (ISSN:13436627)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.123-136, 2010-03-31 (Released:2017-08-08)

Major Apparel brands, Nike, Gap have developed the self-regulation approach to manage 'Sweatshop Issue' during last 10 years. Along with the dispute between corporations and labor/human rights organization, this approach has evolved into the detailed monitoring/disclosure program, hardly seen among other industries. But evaluating the CSR reports they disclosed, the level of coherence and remediation in the contract factories is still far from the ideal, after 10 years of their private initiatives. Looking ahead, it seems this approach would lose faith in public and also in apparel giants themselves. Actually their initiatives had significant effect on the trend of the issue, but smaller corporations cannot take similar path because of its burden. Thus less self-regulative, more public, coherent approach is demanded near future. Larger public international entity like ILO could take this role, but this idea takes time to be realized, based on the experiences of Nike, Gap.
著者
駒田 致和 高雄 啓三 中西 和男 宮川 剛
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.69-76, 2009 (Released:2009-05-01)
参考文献数
6
被引用文献数
1 4

近年の分子生物学などの飛躍的な発展の一因として,複雑な実験手技についての明確なプロトコルが確立されていることが挙げられる。しかし,テキスト形式のプロトコルでは伝達できる情報量が限られており,実験系の確立に手間や時間がかかることが多い。そこで注目を集めているのがオンラインビデオジャーナルのJoVE(Journal of Visualized Experiments)である。実験プロトコルや実験の結果についてのより多くの情報を,動画を用いて科学コミュニティー全体で共有するというJoVEの取り組みや今後の展開を紹介する。
著者
今井 浩三 中村 卓郎 井上 純一郎 高田 昌彦 山田 泰広 高橋 智 伊川 正人 﨑村 建司 荒木 喜美 八尾 良司 真下 知士 小林 和人 豊國 伸哉 鰐渕 英機 今井田 克己 二口 充 上野 正樹 宮崎 龍彦 神田 浩明 尾藤 晴彦 宮川 剛 高雄 啓三 池田 和隆 虫明 元 清宮 啓之 長田 裕之 旦 慎吾 井本 正哉 川田 学 田原 栄俊 吉田 稔 松浦 正明 牛嶋 大 吉田 進昭
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)『学術研究支援基盤形成』
巻号頁・発行日
2016

①総括支援活動 : 前年度立ち上げたホームページ(HP)に改良を加えて公募の円滑化を進めた。モデル動物作製解析の講習や若手研究者の交流促進を推進する技術講習会を開催した。成果ワークショップを開催し本活動の支援成果をアピールした。②モデル動物作製支援活動 : 相同組換えやゲノム編集など支援課題に応じた最適な胚操作技術を用いて、様々な遺伝子改変マウスおよびラットを的確かつ迅速に作製し、学術性の高い個体レベルの研究推進に資する研究リソースとして提供した。件数は昨年度より大幅に増加した。③病理形態解析支援活動 : 昨年より多い35件の病理形態解析支援を7名の班員で実施した。研究の方向性を決定づける多くの成果が得られた。論文の図の作成にもかかわり、論文が受理されるまで支援を行った。その結果、より高いレベルの科学誌にも受理された。④生理機能解析支援活動 : 疾患モデルマウスの行動解析支援を実施するとともに、諸動物モデルでの規制薬物感受性解析、光遺伝学的in vivo細胞操作、意志決定に関与する脳深部機能解析、等の支援を展開した。⑤分子プロファイリング支援活動 : 依頼化合物の分子プロファイリング316件、阻害剤キット配付86枚、RNA干渉キット配付・siRNAデザイン合成83件、バーコードshRNAライブラリーによる化合物の標的経路探索15件、を実施し、より多くの研究者の利便性を図った。
著者
川口 和紀 北口 暢哉 中井 滋 宮川 剛 大橋 篤 堀 秀生
出版者
藤田保健衛生大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

アルツハイマー病の病因物質の一つとされるアミロイド蛋白(Aβ)を、末梢血中から短時間に急速に除去することで脳内濃度を下げることにより、認知機能を改善する治療システムの構築を目指し、ラットを用いて血中Aβの動態と認知機能に与える影響を検討した。1.麻酔下ラットの大槽内に投与したヒトAβの末梢血中へ移行が確認された。2.ラットを用いた血液浄化の実験系および認知機能評価系が確立された。
著者
杉田 稔 宮川 路子
出版者
日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.514-523, 2012 (Released:2012-10-25)
参考文献数
49
被引用文献数
2 1

Introduction: Large amounts of radioactive materials were leaked into the environment from the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant (FDNPP) of the Tokyo Electric Power Company damaged by the 2011 Great East Japan Earthquake and accompanying tsunami. Increased health impairment risks due to the leaked radioactive materials are of concern over a long period of time and over a wide geographical area. From the results of epidemiologic studies conducted after the Chernobyl accident, the health risks are not anticipated to be very marked. The purpose of the present study is to examine (i) the elevated health risks as viewed by the general population, (ii) tolerance to the risks that the general population suffer from their viewpoint, and (iii) the overall picture as seen by researchers and experts in specialized areas of study after the accident. Method: Information was obtained from articles in print and on the Internet and by interviewing a psychologist and tens of employees of several corporations. Results and Discussion: Epidemiologic studies conducted after the severe accident of the nuclear power plant in Chernobyl revealed an elevated risk of thyroid cancer in children due to 131I while elevated risks due to radioactive materials other than 131I were not detected. The amount of radioactive materials leaked into the environment from the FDNPP was less than that in Chernobyl. Therefore, it is possible to estimate that health impairment risks due to the leaked radioactive materials from the FDNPP are low. However, it is impossible to conclude a zero risk. It is likely that the general population does not fully understand the health impairment risks due to the leaked radioactive materials from the FDNPP. Although no increased incidences of diseases other than thyroid cancer of children were scientifically shown en masse from studies in Chernobyl, individual risks and results in the future caused by the severe accident of FDNPP cannot be denied. Much of the general population is apt to demand the security of a zero risk from human-generated disasters such as the severe accident of FDNPP. Many are very intolerant of the health impairment risks factors and wish to avoid any risk altogether. The viewpoint of the general population differs considerably from that of epidemiologists and other research experts. Researchers and experts are often well versed in their own specialized areas but ignorant of other areas. Thus, it is difficult to grasp the complete view of an event under consideration. This so-called ‘takotsubo’ situation is dangerous in human society. Researchers and experts must make effort to understand areas other than their own specialized areas. Scientific researchers usually possess a great deal of conviction from the results of their own studies. They are apt to ignore criticism of their study results from individuals working in other research areas even when the results of their studies are inadequate. When the conditions of their studies are changed somewhat and insufficient information is obtained, the results may not be accurate. Researchers and experts should take full cognizance of this possibility, view with strong skepticism about the results of studies even in their own areas, and listen with humility to criticisms from those working in fields of discipline other than their own. Conclusions: It should be fully recognized that the viewpoint of the general population is considerably different from that of researchers and experts regarding health risks due to the severe accident of FDNPP. Researchers and experts must make effort to understand the opinions of those working in areas other than their own in order to grasp a true and complete view of an event under consideration.

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著者
宮川 繁
出版者
The Linguistic Society of Japan
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.152, pp.1-29, 2017 (Released:2017-12-29)
参考文献数
66

Chomsky(1977)は,CPの上にトピックのための特別なポジションがあると議論したが,本論文ではこの考え方をいくつかの観点から考察する。まず第1に,英語,日本語,スペイン語の3言語において,いわゆるAboutness topicがこのポジションに入ることを示す。第2に,このトピック・ポジションは主節では自由に現れるが,従属節ではHooper and Thompson(1973)によって特定されたある種の述語としか共起しないことを示す。Villalta(2008)のスペイン語の仮定法の分析に基づき,トピック・ポジションの従属節における制限を,従属節とそれを選択する述語の意味的特性から説明する。最後に,いわゆるContrastive topicとFamiliar topicの分布が言語によって異なることを示し,この言語間のバリエーションがStrong Uniformity(Miyagawa 2010, 2017)から予測できることを指摘する。
著者
宮川 幸子
出版者
法政大学イノベーション・マネジメント研究センター
雑誌
イノベーション・マネジメント (ISSN:13492233)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.149-165, 2023-03-31 (Released:2023-03-31)
参考文献数
35

本論文の目的は、中国テンセント社の事例を通じて、中国SNS市場で成長する企業の経営戦略における間接的アプローチに関する新たな仮説を提示することにある。本論文では「中国SNS市場において経営資源劣位にある企業は、どのようにユーザーネットワーク内の顧客と関係性を構築すればよいのか」という問いを設定し、中国SNS市場におけるスタートアップ企業であったテンセントの短期的な企業成長に着目して事例研究を行う。本論文では、「間接的アプローチ」とは、「企業が顧客個人ではなく、顧客集団に対して、新たな顧客間関係の創出を目指して顧客間相互作用を促進する働きかけを行うこと」と定義し、間接的アプローチの方法論を明らかにする。テンセントは、間接的アプローチを通じて、顧客間相互作用を意図的に生み出すことより、自社ユーザーネットワークの量的拡大・質的充実とユーザーネットワークの収益化の両方を実現した。その背後では、顧客のあらゆる行動特性分析、心理的特性分析、顧客評価を通じて顧客知識と開発ノウハウを組織内に継続的に蓄積し、企業が直接コントロールし難い消費者主導のコミュニティを活性化させるための製品開発に活用していた。テンセントの事例研究を通じて、経営資源劣位企業の戦略として、企業が意図的に顧客間の相互作用を生み出す間接的アプローチの有効性に関する仮説を提示する。
著者
山下 和彦 野本 洋平 梅沢 淳 宮川 晴妃 川澄 正史 小山 裕徳 斎藤 正男
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌C(電子・情報・システム部門誌) (ISSN:03854221)
巻号頁・発行日
vol.124, no.10, pp.2057-2063, 2004 (Released:2005-01-01)
参考文献数
25
被引用文献数
2 2

There is the increasing concern of the society to prevent the tumbling of the aged. The study of the static, as well as dynamic aspects, such as the muscular strength of the lower-limb and the postural stability, should be developed, especially from the viewpoint of the aged. This paper focuses on the external observation of the foot and toenail, as being correlated to the physical functions of the lower-limb against tumbling. The lower-limb functions are evaluated in terms of the 10 m walking time, the toe-gap force and single-foot standing period. The correlation to the personal tumbling experiences is also examined. It is seen that the groups, which exhibit external abnormalities in the foot and the toenail, generally decline in the muscular strength and postural stability. They also have more frequent tumbling experiences and express in their concern of the danger of tumbling. It seems that those shapes abnormalities can indicate, to some extent, the tumbling danger of the aged.
著者
難波 敦子 Moe Moe NYEIN Sanda Ye WIN 宮川 金二郎
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.639-646, 1999-06-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
16

A continuation of the study on post-heated fermented teas that are distributed in south-west of Yunnan, China and in the northern part of Southeast Asia is reported. These teas seem related to Awa-bancha and Goishi-cha, fermented teas produced in Shikoku, Japan. In Shan State of Myanmar, Lepet-so that is a kind of edible pickled tea fermented by bacteria under anaerobic conditions, and its dried forms, which are used for drinking (Lepet-chin-chauk), are widely produced on a large scale. The pickled teas are produced on a small scale, one beeing fermented by fungi and bacteria in a small vinyl bag or in a bamboo tube and using matured tea leaves. The hard matured tea leaves are softened by the action of the fungi. The pickled tea fermented by fungi and bacteria may be similar to Japanese Goishi-cha that is similarly fermented. Some non-fermented edible teas in Myanmar are also discussed.