著者
須長 史生 小倉 浩 正木 啓子 倉田 知光 堀川 浩之
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.80, no.5, pp.396-421, 2020 (Released:2020-12-25)
参考文献数
9

本研究は,2016年度から2018年度の3か年にわたって実施した「インターネットを活用したセクシュアル・マイノリティに関する学生の意識調査」の2018年度分実施内容に関する結果の報告である.すなわち,本論文は「セクシュアル・マイノリティに対する大学生の意識と態度:第1報」(須長他[2016])および「性的マイノリティに対する大学生の意識と態度:第2報」(須長他[2017])の続編であるとともに,特に3か年分の調査結果を俯瞰してこれまでに得られた知見をまとめたものである.本研究の目的は18歳から20代前半の男女の,性的マイノリティに対する意識や態度を明らかにすることである.調査対象は2016年度,2017年度と同様に,首都圏の医療系A大学一年生とした.3回目の調査である2018年度においては,在籍学生数598名に対して,453名(男子136名,女子315名,その他2名)からの回答が回収され,回収率は75.8%であった.プライバシーの確保と回収率の向上のために,前2回の調査と同様インターネットを活用し,スマートフォンを用いたアンケートに回答する方法で調査を実施した.アンケート回答の集計結果から得られた,主要な知見を列挙する.①性的マイノリティに関する正しい知識を有している割合は2017年度と比較して向上した.②性的マイノリティに関する正しい知識を身に付けたいと考える学生の割合は3か年を通じて増加している.③身近に存在する同性愛者(同じ大学の人,きょうだい)に対する嫌悪感は3か年を通じで漸減傾向にある.本報告では,上記の単純集計から得られる知見以外に,3か年分の回答に対して実施した主成分分析の結果から,性的マイノリティに対する意識や態度における特徴的な応答を抽出し,学生像の把握を試みた.また,戸籍上の性別と性的マイノリティに対する意識や態度に何らかの相関があるかという問いに対しても,統計的な解析を実施した.これらの結果も併せて報告する.
著者
安藤 晴夫 柏木 宣久 二宮 勝幸 小倉 久子 山崎 正夫
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.407-413, 2003-07-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
7
被引用文献数
15 20

1970年代から月1回実施されている公共用水域の水質モニタリングデータを用いて,東京湾全域の表・底層水温の長期的な変動傾向を月別に検討した。その結果,水温の長期変動傾向は季節により異なり,概ね5月~8月には下降傾向,10月~3月には上昇傾向が認められた。また,地域的にも傾向が異なり,外洋水の湾内への流人経路と考えられる湾南西部の海谷に沿う地点で特にこうした上昇・下降傾向が顕著であった。外洋水の水温は湾内の海水に比べて夏季には低く,冬季には高いことから,湾内への外洋水流入量が長期的には増加傾向にあると仮定すると,こうした傾向をよく説明できる。
著者
小倉 祐一
出版者
教育実践学会
雑誌
教育実践学研究 (ISSN:18802621)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.53-67, 2001 (Released:2021-04-30)

本稿は,茨城県常総地方(県西地域の旧結城郡・旧真壁郡)に於いて「学び方教育」を推進した稲川三郎と「綴方教育」の実践家である増田実について, その人物の概略の紹介と国語教育を中心とした授業諭などについて考察したものである。主に稲川の著書『第三の授業』と増田の著書『宿題のない学校』について論じたものである。稲川は, 国語教育における読解指導について主体的な読みを追求し, 子供が自ら学ぶ授業を「第三の授業」 と定義した。「第三の授業」は学習の過程を大切にする授業であり,稲川は,そこに人間性の育成も展望しているのである。増田は, 綴方教育に留まらず, 聴き方教育や読み方教育等の国語教育全般における貴重な実践があるが, 校長として「宿題のない学校」 というリベラルな学校運営を推進したように,優れた指導力や時代の先を見る卓越した教育観を持っていた。彼らの実践は,現在の教育現場にも多くの示唆を与えるものである。
著者
廣川 美子 阪口 明弘 日色 真帆 小倉 繁太郎 伊藤 泰行 山下 享子
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1998

高級土壁の展示場といわれる角屋、土壁の塗りたて当初の色を再現するために、1992年2月の測定値と2000年2月の測定値の比較を行い、変化の方向と変化量を考察した。Lab表色系により色差を求めているが、L値について新旧で変化の大きい土壁は黄大津磨きと赤大津磨きであり、共にL値の高い方に変化している。C値については黄大津磨きと大阪土の変化が大きく共にC値の低い方に変化している。a値とb値について変化が大きいのは、a値は江州白の赤と大阪土であり、共にa値の低い方に変化、b値は赤大津磨き、黄大津磨き、大阪土であり、すべてb値の低い方に変化している。色差が最も大きいのは扇の間西側廊下の赤大津磨きと馬の間縁側の江州白の赤であった。聚楽土と漆喰壁の色差は少なかった。文化財壁の復元作業においては色合わせが重要な役割をもつ。今回文化財壁を形成している土、砂、すさのような粉末状の試料の色の数値化に伴う側色技術およびコンピュータを用いた色合わせを検討した。粉体の分光特性はその充填密度、厚さ、入射光を照射する側の試料面の状態に強く依存するので、充填作業に個人差がでにくいよう開発したセル厚可変の石英窓板付き粉末セルと精度よく散乱光のみを検知する正反射トラップ付き大型積分球の組み合わせ用いた拡散反射測定によってこの問題点を解決した。この測定法で得た可視スペクトルをもとにCCM(コンピュータカラーマッチング)を行った結果、目標色との色差が1.0未満の良好な結果を得た。関西には聚楽土、大阪土、浅黄土、九条土、桃山土等の色土が豊富であったが、特に利休が茶室に用いた聚楽土には格別な思い入れがある。その聚楽土を地質学的に知るために、その採集地の地層の成り立ちを調べることにした。聚楽土は平安京跡付近の地下の泥層を掘ったものである。考古学では平安京の地盤と考えている。京都盆地北部の平原は賀茂川や天神川などの扇状地でできている。扇状地礫層の上には厚さ1m程度の泥層が堆積している。その形成過程を知るために、各地の扇状地の泥層を採集している段階である。
著者
竹内 友一 小倉 明夫 椎名 亮介 中野 裕喜
出版者
公益社団法人 日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術学会雑誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.75, no.7, pp.631-637, 2019 (Released:2019-07-20)
参考文献数
16
被引用文献数
2 2

Recently, many methods are suggested to evaluate spatial resolution in MRI. However, those techniques are not simple and easy. The International Electrotechnical Commission (IEC) recommends a method to evaluate spatial resolution using a periodic pattern image as IEC 62464-1. IEC 62464-1 prescribes specifications and placement of phantom, and a method of analysis, but these details grounds are not clear. A purpose of this study is to examine the effect in each factor of IEC 62464-1 method and define the characteristics of this method. Nine phantoms with different plate thickness were made including prescribed specifications of IEC 62464-1. Imaging was conducted with changing the placement angle of these phantoms. Also, analysis was carried out in region of interest (ROI) of three different size. As a result, the placement angle of the phantom, measurement error was <1% on a condition prescribed by a method of IEC 62464-1. There was not the effect if the transverse diameter for the longitudinal diameter exceeded 100% fort the size of ROI. In specifications of the phantom, there was not the dependence for the thickness of the plate of the phantom in IEC 62464-1 prescribes.
著者
山崎 繁一 庄司 克雄 厨川 常元 岡西 幸緒 小倉 養三 福西 利夫 三宅 雅也
出版者
公益社団法人 砥粒加工学会
雑誌
砥粒加工学会誌 (ISSN:09142703)
巻号頁・発行日
vol.49, no.9, pp.506-510, 2005 (Released:2006-08-11)
参考文献数
4

前報では, チタン合金コアのブレードとチタン合金製フランジとを組合せて, 周速450m/sでの回転試験に成功した. 本報では, 本ブレードをベースにして, 周速350m/sの超高速研削切断に使用可能なブレードを開発したプロセスについて述べる. 最初に, 前報で試作したコンティニュアスタイプのブレードを用いた場合, 5.9MPaの高圧ノズルを使用してクーラントを供給したにもかかわらず, 周速100m/s (工作物・砥石速度比 v/V = 0.0833×10-3) で研削焼けが発生した. そこで, 砥石外周にセレーション (半円状の切り欠き) を設けたところ, 正常な研削切断が可能になった. しかし周速をさらに200m/sに高めると, 再び研削焼けが発生した. そこでさらにセレーション間のランド部側面にフルート (導水溝) を設けて, 切断面へのクーラントの到達を促した. その結果, 周速300m/sでも研削焼けが生じず, 研削抵抗値の安定した加工が可能であった. さらに高周速化するために高強度のボンド剤を採用し, セレーションおよびフルートの数を半減して砥石部の高強度化を図った. その結果, 最終的に周速350m/sで, 研削焼けのない正常な超高速研削切断に成功した. これは, これまで報告されている超高速研削の砥石周速としては, 最高速である.
著者
馬場 裕 小林 智也 小倉 加奈代 西本 一志
出版者
情報処理学会
雑誌
インタラクション2012論文集 (情報処理学会シンポジウムシリーズ) (ISSN:13440640)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.3, pp.433-438, 2012-03-15

日常行われている会話には,様々な問題点がある.たとえば失言や重要な話の聞き逃しは,人間関係を悪くしてしまう危険性がある.これらは,空気中の音速で声が人間の何百倍の速さで移動する事が要因と考えられる.音速を遅くすることで,音声に追いついたり音声の重畳や参照をすることが可能になる.そこで,超低音速空間 CreepingVoice を構築し,会話の問題解決を試みている.本稿では,超低音速空間CreepingVoice を実装するための基礎的な実験の結果について報告する. : Everyday conversations have various problems. For example. a slip of the tongue spoils human relations. This problem is attributable to the speed of sound. Sound is too fast for us people to catch up. If the sound speed is much slower, we can catch up with our voice,modify it and refer it. We have been constructing a super slow sound space “CreepingVoice” to solve the problems. This paper reports results of elemental experiments for implementingCreepingVoice.
著者
小倉 繁太郎
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.273-275, 1997-03-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
13
被引用文献数
1

芸術工学(デザイン)専攻学部学生に「フーリエの冒険」を教科書として使用した際に得られた,おもに波動物理の教育の結果と問題点について報告した.
著者
鴨井 久博 小倉 喜一郎 佐藤 勉 丹羽 源男 鴨井 久一
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.185-190, 2001-04-30 (Released:2017-12-08)
参考文献数
13

亜鉛(Zn)は必須微量元素の1つで,その摂取不良は成長遅延や免疫低下,味覚異常など多岐にわたる臨床症状を示すことが知られているが,Zn欠乏時の臨床症状の発現機構やZn代謝については不明な部分も多い。このため,本研究では口腔粘膜組織,おもに歯列組織周辺に対するZn欠乏の影響を調べる目的で,生後4週齢のWistar系雄性ラット12匹を対照群とZn欠乏群の2群に分け,特殊精製粉末飼料にて3週間飼育した。その結果,Zn欠乏群において体重増加は対照群に比べ緩やかであり,実験開始2週目ころより腹部,頸部などにおける脱毛がみられ,血清Zn濃度,血清ALP活性ともに価値であった。走査電子顕微鏡観察においては,Zn欠乏群に異物の蓄積や不規則な形態を呈した。また光学顕微鏡観察では今回の実験においてZn欠乏群に歯局組織の変化はみられなかったが,口蓋部における粘膜表層の角化や歯肉境移行部付近から頬粘膜にかけて錯角化が観察された。
著者
齋藤 秀之 瀬々 潤 小倉 淳
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

ブナ目を代表してブナのゲノム構築法について検討を行い、ドラフトゲノムを構築した。ゲノム配列をアセンブリするソフトウェアはPlatanusが最良であった。ブナゲノムは対立する遺伝子座のヘテロ配列が大きく頻度が高い特徴をもつことが示唆された。RNA-seqのDe novoアセンブリは遺伝子の配列決定において配列数が収束せず、遺伝子推定にはゲノム配列情報が必須と考えられた。遺伝子ファミリー内での遺伝子の機能予測には、塩基配列情報に加えて遺伝子発現パターンが補助情報として有用であることが示唆された。最終的に523Mbp(カバー率96.9%)が完成した。
著者
木村 拓哉 馬場 里英 岡部 太郎 藤井 遼 皆川 裕祐 藤田 健亮 角谷 隆史 加茂 徹郎 高井 千尋 山田 宗 鯉沼 俊貴 萩原 祥弘 三角 香世 小林 孝臣 山中 隆広 髙橋 秀徳 小村 賢祥 荒井 大輔 長尾 元太 小西 駿一郎 神元 繁信 仲地 一郎 小倉 崇以
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.95, no.2, pp.147-152, 2021-03-20 (Released:2021-10-02)
参考文献数
13

A preliminary report from a global study showed that remdesivir, a nucleoside analog pro-drug that was originally developed as a therapeutic drug against Ebola virus, may exert clinical efficacy in cases of COVID-19, by shortening the time to recovery. We had the opportunity to use this new drug in the treatment of 7 COVID-19 patients with respiratory failure.
著者
山崎 聡 竹内 大輔 大串 秀世 牧野 俊晴 小倉 政彦 加藤 宙光
出版者
公益社団法人 日本表面科学会
雑誌
表面科学 (ISSN:03885321)
巻号頁・発行日
vol.33, no.11, pp.634-638, 2012-11-10 (Released:2012-11-20)
参考文献数
24

Diamond is a new semiconductor which has been developed in the last around 15 years. It has unique properties and the potential of unique electronic devices. The typical example is negative electron affinity (NEA) for hydrogen terminated diamond surface. The nature of diamond electron affinity was investigated using by photo-yield spectroscopy (TPYS). Using the NEA property, electron emission p-n (p-i-n) diodes were fabricated, and this diode can be used as a new principle power device; a vacuum micro switch operated by a p-n diode.
著者
安部 真治 小倉 泉 根岸 徹 加藤 洋 宮崎 茂 斎藤 一彦 青柳 泰司 熊谷 曜子
出版者
東京都立医療技術短期大学紀要委員会
雑誌
東京都立医療技術短期大学紀要 = Bulletin of Tokyo Metropolitan College of Allied Medical Sciences (ISSN:0916040X)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.71-83, 1995-03

近年,電子技術の進歩に伴い,X線装置の分野ではインバータ式X線装置が普及しきた。最近ではインバータ周波数が数十kHz以上に高周波化された装置も出現している。今回,この高周波化されたインバータ式X線装置について管電圧波形,リプル百分率,短時間特性,百分率平均誤差,X線出力の再現性,一次側波形と出力の関係などを検討し,波形解析を行った。これらの結果,最新のインバータ式X線装置の動作機構と諸特性について明確にした。
著者
小倉 亜紗美
出版者
日本環境学会
雑誌
人間と環境 (ISSN:0286438X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.28-44, 2016 (Released:2016-03-02)
参考文献数
28
被引用文献数
1
著者
小倉 久幸 久保 峰鳴 武内 孝太郎
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.159-165, 2021-02-18 (Released:2021-04-14)
参考文献数
7

脳卒中後片麻痺患者の歩行機能の改善はリハビリテーション治療の重要な目標の1つであり,歩行評価に基づいた治療や訓練を展開する必要がある.しかし,観察による歩行分析は評価者の経験などによる評価のばらつきがあるために客観的指標が求められる.麻痺側立脚期の矢状面における膝関節制御に影響する床反力作用線のモーメントアームを,傾きによる成分と足圧中心と膝関節軸との距離による成分に分けて考えることにより,膝関節制御の面から短下肢装具の効果を明確化し,歩行訓練の治療戦略を具体化することができる.今後,客観的な評価方法によって片麻痺歩行を類型化し,適切な治療方法を導くシステムの確立が望まれる.