著者
稲留 陽尉 山本 智子
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.63-71, 2012-05-30

タナゴ類は、コイ科タナゴ亜科に属する魚類で、繁殖を行う際に二枚貝を産卵床として利用することが最大の特徴である。鹿児島県には、アブラボテTanakia limbata、ヤリタナゴT. lanceolata、タイリクバラタナゴRhodeus ocellatus ocellatus 3種のタナゴ類が生息し、北薩地域は、アブラボテの国内分布の南限となっている。アブラボテなど在来タナゴ類は、外来タナゴ類との競合や種間交雑が危惧されているが、鹿児島県内ではこれらのタナゴ類の詳細な分布の記録が残っておらず、在来種と外来種が同所的に生息する状況についても調べられていない。そこで本研究では、北薩地域を中心にタナゴ類とその産卵床であるイシガイ類の分布を調べ、同時にタナゴ類各種によるイシガイ類の利用状況を明らかにすることを目的とした。調査は、2007年4月から2008年10月まで、鹿児島県薩摩半島北部の16河川で行った。タナゴ類はモンドリワナを用いて採集し、イシガイ類は目視や鋤簾による採集で分布を確認した。採集したイシガイ類の鯉を開口器やスパチュラを使って観察し、タナゴ類の産卵の有無を確認した。アブラボテとタイリクバラタナゴが各5河川で確認され、ヤリタナゴは1河川でのみ採集された。このうち2河川ではアブラボテが初めて確認され、アブラボテとタイリクバラタナゴの2種が生息していた江内川では、両種の交雑種と見られる個体が採集された。イシガイ類については、マッカサガイPronodularia japanensis、ニセマツカサガイInversiunio reinianus yanagawensis、ドブガイAnodonta woodianaの3種の分布が確認された。それぞれのタナゴ類は、産卵床として特定のイシガイを選択する傾向が見られたが、交雑種と思われる個体も採集された。このことから、それぞれの好む二枚貝の種類や個体数が限られた場合、この選択性は弱くなるものと考えられる。
著者
山本 和弘
出版者
栃木県立美術館
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

少子高齢化社会において芸術が高齢者や障害者、病人を治癒するのみならず、社会そのものをも治癒する「効能」をもっていることを1)ヨーゼフ・ボイスの社会彫刻2)アウトサイダー・アート3)環境倫理学の横断的かつ学際的研究によって明らかにし、《厚生芸術》という新しい概念が21世紀の芸術と社会において極めて有効な概念であることを理論と実践現場の双方から理論化、概念化する。平成22年度は1)ヨーゼフ・ボイスの思想を光学に偏向した旧来の芸術を批判した熱学的芸術としてとらえ直し、「社会彫刻」概念を創造的資本論として再解釈する研究を中心軸として2)芸術の社会的役割を「芸術の効用再考」、「厚生芸術=芸術(教育+医療・福祉+環境)」「芸術という労働市場」の三方向から文献によって定立し直すとともに、それらをアウトサイダー・アートと厚生(福祉)経済学との連関からも多層的研究を深めた。結果として、これらの背景になっている物理学における熱学が近代社会を駆動する基盤となったことを確認し、ボイスの芸術がまさにこの熱学の導入によって、芸術が社会的に有用なものであることを目指すものであることを解明するにいたった。少子高齢社会の厚生を創造性が支えることはすでにヨーゼフ・ボイスの芸術が示したとおりであるが、21世紀の社会では従来型とは異なる社会的意義を担った新たなタイプのアーティストの出現が望まれる環境になってきている。以上の理論的研究は堅冷化していない若い創造性へと接続される必要があるために、芸術系大学での実践プログラムとして大学が革新されるべきことを本研究の成果報告書としてまとめた。タイトルは以下のとおりである。「厚生芸術の萌芽的研究 少子高齢化社会における社会厚生のための熱学思想と創造的資本論の接続による実践美学試論」
著者
須藤 研太郎 山口 武人 中村 和貴 原 太郎 瀬座 勝志 廣中 秀一 傳田 忠道 三梨 桂子 鈴木 拓人 相馬 寧 中村 奈海 北川 善康 喜多 絵美里 稲垣 千晶 貝沼 修 趙 明浩 山本 宏 幡野 和男 宇野 隆 多田 素久 三方 林太郎 石原 武 横須賀 收
出版者
日本膵臓学会
雑誌
膵臓 (ISSN:09130071)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.656-662, 2012 (Released:2012-11-28)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

近年,化学療法および化学放射線療法の進歩により局所進行膵癌の治療成績は向上している.切除不能症例を対象とした臨床試験で生存期間中央値15ヶ月を超えるものも報告される.また,非切除治療が奏効し根治切除可能となった局所進行例も報告され,conversion therapyとしての役割も注目される.一方,局所進行膵癌に対する治療はエビデンスの乏しい領域であり,化学放射線療法の意義についても未だcontroversialである.今回,われわれは化学放射線療法82例(S-1併用56例,その他26例)の成績を供覧し,非切除治療の現状と意義について考察を行う.全82例の生存期間中央値15.4ヶ月,3年生存率17.5%,5年生存率6.7%と化学放射線療法のみでの長期生存例も経験された.さらなる成績向上のためには外科切除との連携に期待されるが,本稿ではわれわれの経験を供覧し,今後の展望について考察を行う.
著者
塚本 悠 倉田 博之 大久保 海斗 山本 学
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CPM, 電子部品・材料 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.113, no.231, pp.1-4, 2013-10-01

ホログラム多重記録再生方式として,球面参照光を用いてテラビット/平方インチの記録密度を越える記録再生方式を検討した.シミュレーションにより,球面参照光においては媒体シフトの3軸方向により多重記録が可能であるが,さらにペリストロフィック多重方式を複合することにより,容易に高密度記録が可能であることを実験およびシミュレーションにより明らかにした.
著者
清田 公保 櫻井 敏彦 山本 眞司
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.636-644, 1995-03-15
被引用文献数
19

視覚障害者の使用を目的としたオンライン手書き漢字入カシステムの実現のため、視覚障害者から収集したオンライン手書き漢字のサンプルデータを晴眼者のものと比較することにより視覚障害による手書き変動の性質を調査した。分析の結果、視覚欠如によって書かれた文字は全体のバランスが悪く、部分パタン間で重なりや分離が生じやすい。特に筆運びが大きくなる部分では、ストロークの相対位置構造は不安定になりやすいことが分かった。このような視覚障害者のオンライン入力を許容するような手書き変動に強いシステムの構築には多方面からの解析が必要であり、処理時間の大幅な増加が予測される。このため、認識の初期段階で漢字候補を十分に絞り込んでおくことが重要である。本論文では、変形分析項目のうち視覚障害者でも安定であった画数とセグメント情報を用いた漢字大分類法を提案した。教育漢字による大分類の結果、画数のみによる大分類に比べて、実用的な正分類率レベルで約4倍以上も分類効率が向上し、本方式の有効性を示した。
著者
古荘 真敬 野矢 茂樹 信原 幸弘 高橋 哲哉 梶谷 真司 石原 孝二 原 和之 山本 芳久
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

「感情」現象をあらためて哲学的に吟味することを通して、倫理的価値の発生する根源的な場所を明らかにし、ひいては新たな価値倫理学の基礎づけを試みること、それが本研究の目標であった。われわれは、現象学、中世哲学、心の哲学、分析哲学、現象学的精神病理学、精神分析という、各研究分担者の専門的視座から持ち寄られたたさまざまな「感情」研究の成果を相互に批判的に比較検討することを通じて、人間存在にとっての感情現象の根本的意義(謎にみちたこの世界において行為し受苦するわれわれにとっての感情現象の根本的意義)を明らかにする多様な成果を上げることができた。これにより上記目標の核心部分は達成されたと言いうるだろう。
著者
山本 長紀 北村 尚紀 飯島 淳 阿部 学 長嶋 昌子
出版者
木更津工業高等専門学校
雑誌
木更津工業高等専門学校紀要 The bulletin of Kisarazu National College of Technology (ISSN:21889201)
巻号頁・発行日
no.48, pp.103-109, 2015-01

The goal of the current paper is to report a song-making project for Foreign Language Activities at elementary school. A project group ""E-UTA Project"", in which project members make original songs based on teaching materials of Foreign Language Activities, plan lessons with the original songs, and conduct the lessons at elementary schools, organized the activity. The project has made several original songs for Foreign Language Activities with the following concepts; melodies that learners can enjoy, tunes that help learners understand lyrics, and repetitions of target phrases that learners learn through the songs. The project members conducted numbers of lessons with the original songs at elementary schools. Through these lessons, members observed that some learners showed their interests more than they usually showed to what they were learning through the songs.
著者
山本 富久 中曽根 英雄 黒田 久雄 加藤 亮
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.29, no.9, pp.561-564, 2006 (Released:2010-01-09)
参考文献数
31
被引用文献数
1

We surveyed the water quality of irrigation reservoirs in a tea field catchment. The study area was located in Shizuoka Prefecture, Japan. Water in some of the reservoirs showed alkalinity because of the photosynthesis of aquatic plants. On the other hand, water in one irrigation reservoir showed acidity because of nitrogen fertilizer. The NO3-N concentration increased how many times owing to large runoff from a watershed when rainfall was strong and heavy accumulation. The Changes in NO3-N concentration were small throughout the season when was light rainfall. The average of NO3-N concentration in the irrigation reservoirs was about 5 mg·l-1.
著者
宮町 宏樹 泊 知里 八木原 寛 井口 正人 為栗 健 山本 圭吾 大倉 敬宏 安藤 隆志 尾西 恭亮 清水 洋 山下 裕亮 中道 治久 山脇 輝夫 及川 純 植木 貞人 筒井 智樹 森 済 西田 誠 平松 秀行 小枝 智幸 増田 与志郎 加藤 幸司 畠山 謙吾 小林 哲夫
出版者
特定非営利活動法人日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.227-237, 2013-03-29

2008年に実施された屈折法地震探査によって得られたP波初動走時により,姶良カルデラおよび桜島火山の深さ3kmまでの速度構造を推定した.本研究地域の基盤層である四万十層群は4.6-5.0km/sのP波速度を持ち,姶良カルデラの中央部に向け傾斜している.姶良カルデラの中央部には,4.2-4.4km/sの低速度域が深さ1.5-3kmに存在している.そして,この低速度域はカルデラ下に存在する深部マグマ溜まりからのマグマ供給系が活発であることを示唆している.また,基盤層は鹿児島地溝帯の北西域の境界に沿って深さ1kmから2.5kmに急激に落ち込んでいることがわかった.桜島火山の速度構造は3.6-3.7km/sの領域が存在することで特徴づけられる.桜島火山の山頂直下で発生している火山性地震の震源域と速度構造の比較から,地下構造が種々の火山性地震の震源域の広がりに強い影響を与えていることを示した.
著者
田村 瑞枝 山本 貴嗣 石井 太郎 萩原 徹 斎藤 正樹 服部 研吾 久山 泰 宮本 博文 小田中 佳子 加藤 洋司 新谷 和夫 松井 浩 杉下 靖郎 小田 福美
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
健康医学 (ISSN:09140328)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.249-253, 2001-11-30 (Released:2012-08-27)
参考文献数
13

無症状の人間ドック受診者242人を対象に,尿中抗Helicobacter pylori抗体(ウリネリザ)を測定し血中抗体法と比較したところ,良好な一致率であった。内視鏡的検査を基準とした場合,ウリネリザの診断能は血中抗体法とほぼ同等であった。またウリネリザ陽性群では陰性群と比較して,上部消化管の有所見率が高い傾向が認められ,上部消化管のスクリーニングの一法として有用である可能性が示唆された。

1 0 0 0 OA 飼料学(49)

著者
山本 朱美 古谷 修 石橋 晃
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 = Animal-husbandry (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.695-701, 2008-06 (Released:2011-01-18)
著者
平野 幸伸 山本 武 櫻井 博紀 青田 安史
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.243-246, 2014

〔目的〕本研究の目的はハンドヘルドダイナモメーター(HHD)によるヒラメ筋筋力測定法の妥当性を検証することである.〔対象〕対象は健常成人14名28肢とした.〔方法〕測定指標は最大筋力および最大トルク値とした.測定方法は徒手抵抗によるHHD法,固定用ベルトを用いたHHD法,設置型筋力測定装置による等尺性足関節底屈筋力測定法,設置型筋力測定装置による等尺性ヒラメ筋筋力測定法,徒手筋力検査(MMT)の5種類とした.〔結果〕固定ベルトを用いて行うHHD法と設置型ヒラメ筋筋力測定装置との有意な相関が認められた.〔結語〕固定用ベルトを用いた方法は妥当性がある. <br>