著者
勝亦 陽一 山田 亜沙妃 池田 達昭
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.205_3, 2016

<p> 本研究は、日本人一流競技者における小学生期の競技種目実施状況を明らかにすることを目的とした。対象は、14&ndash;55歳の日本人一流競技者790名(男性394名、女性396名)であった。対象の競技は、2000年以降のオリンピック競技種目とした。対象者には、専門競技および専門競技以外の競技経験(競技開始年齢、練習頻度)を質問紙に記入するよう指示した。本研究の結果、未就学期および小学生期に専門競技を開始したのは、男性が250名(63%)、女性が238名(60%)であった。小学生期に専門競技および専門競技以外の競技を実施していたのは、男性では69名(18%)女性では81名(20%)であった。専門競技以外の実施は、男性では水泳が40名、サッカーが34名、野球が26名と多かった。一方、女性では、水泳が44名、体操競技が7名と多かった。本研究で対象とした日本人一流競技者の多くは、小学生期に複数の競技を経験することによって多面的に運動能力を発達させたのではなく、専門種目のみを長期間に渡り実践することで種目特有の運動能力を発達させたと考えられる。</p>
著者
須貝 勝 平田 藍 齋藤 博子 大橋 恭彦 山田 彰 安孫子 修 井上 元保 平山 美麻 間宮 加奈 谷口 暁代 瀬尾 大樹 吉田 哲平 鶴見 太朗 永松 康太 和田 優子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに,目的】近年,膝蓋骨脱臼に対して内側膝蓋大腿靭帯(MPFL)再建術が導入されており,概ね良好な結果が得られている。一方,術後リハビリテーションプロトコールについては様々な報告が行なわれており,一定の見解を得ていない。当院では,術後早期より再建靭帯に強度が得られるなどの理由から,人工靱帯を用いたMPFL再建術を行ない,術後早期より膝関節可動域運動等の理学療法を実施している。今回,当院におけるMPFL再建術後の膝関節可動域の完全屈曲獲得日数,ならびに膝蓋骨脱臼再発の有無の調査を行なった。その結果を踏まえた上で,早期膝関節可動域運動実施の妥当性及び安全性について検討したので報告する。【方法】対象は2006年12月~2012年6月までに当院にて人工靭帯(LK-15)を用いMPFL再建術を施行した反復性膝蓋骨脱臼患者のうち,経過を追うことができた17例22膝(平均年齢25.75(±9.92)歳,男性1名1膝,女性16名21膝)である。術中,膝屈曲60°にて再建靱帯を固定し,膝屈曲伸展全可動域にてlength patternを確認している。方法は,術後膝完全屈曲獲得日,術後1年後のCrosby&Install grading system,術前及び術後1年後のapprehension test,ならびに単純X線画像から膝屈曲30°のCongruence angle(正常値-6±11°)を測定し,膝蓋骨脱臼再発有無の調査を行なった。術後リハビリテーションプロトコールは,術後1日目よりQuad setting等の大腿四頭筋エクササイズ開始,3日目より膝屈曲45°からCPM開始し1日5°毎に屈曲角度を拡大する。5日目よりニーブレース装着下での部分荷重歩行及びセラピストによる膝関節可動域運動を開始,12日目よりパテラブレースでの全荷重歩行許可,2週目以降より症状に応じて階段昇降,自転車エルゴメーター,スクワット開始,8週目よりジョギング許可,16週でフルスポーツ許可となっている。【倫理的配慮,説明と同意】対象患者には治療,研究を目的に検査結果を使用することを事前に説明し,本研究の発表にあたり同意を得た。【結果】術後膝完全屈曲獲得日は平均80.9(±62.57)日であった。術後1年後のCrosby&Install grading systemは,Excellent,16膝(72.72%),Good,5膝(22.73%),Fair to poor,1膝(4.55%)であった。Fair to poorの1膝は術後感染による腫脹,疼痛の残存を認めていた。apprehension testは術前では全例陽性であったが,術後1年後では全例陰性となった。膝屈曲30°のCongruence angleは,術前では,平均22.61(±21.50)°であったが,術後1年後では平均-1.70(±17.40)°と正常化した。【考察】当院におけるMPFL再建術後の膝屈曲関節可動域獲得は良好であり,膝蓋骨脱臼再発も認めなかった。生体内の正常MPFLにおいては,膝屈曲60°までが膝蓋骨のstabilizerとして機能しており,MPFLは膝屈曲60°付近で最も緊張し膝蓋骨の制動効果が高いといわれている。また,MPFL再建術後においても,膝屈曲60°以上では再建靭帯にストレスはかからず,膝深屈曲位での5mm程度の緩みはむしろ生理的であり望ましいといわれている。したがって,膝屈曲60°までは再建靭帯へのストレスを考慮する必要があるが,膝屈曲60°以上の関節可動域運動は早期より実施可能であると考えた。本研究の結果,人工靱帯を用いたMPFL再建靱帯後における早期膝関節可動域運動実施の妥当性及び安全性が示唆された。膝蓋骨脱臼の病態は複雑かつ多様であるため,MPFL再建術後の理学療法を実施していく上では,軟部組織や骨形態などの先天的解剖学的因子に加え,内側広筋の筋収縮力や下肢のアライメントなどの膝関節に関わる安定化機構も考慮する必要がある。今回,人工靭帯を用いたMPFL再建術での調査報告であったが,今後,自家腱を用いた場合についても検証していきたい。【理学療法学研究としての意義】MPFL再建術後の理学療法は,膝蓋骨制動機能及び膝蓋骨脱臼の病態を理解した上で,再建靱帯へのストレスを考慮して実施する必要がある。本研究は,MPFL再建術後早期からの膝関節可動域運動実施の妥当性及び安全性を示唆するものである。
著者
齋藤 博子 神保 隆行 須貝 勝 高橋 香保里 大橋 恭彦 山田 彰 井上 元保
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.354, 2006

<B><はじめに></B>近年、反復性膝蓋骨脱臼の要因として内側膝蓋大腿靭帯(以下MPFL)の重要性が指摘され、人工靭帯あるいは自家腱を用いた再建術が行なわれている。今回、自家腱を用いたMPFL再建術後の症例について、当院で実施している理学療法プログラムを中心に紹介する。<BR><B><症例紹介></B>17歳女性。高校では卓球部に所属。14歳で卓球の試合中に初回左膝蓋骨脱臼をきたし、その後3年間で計3回の脱臼歴あり。最終脱臼後に当院整形外科受診。術前理学療法を1ヶ月間(2回/週)行った後、左膝MPFL再建術を施行した。<BR><B><術前評価></B>関節可動域(以下ROM)制限なし。膝蓋骨異常可動性およびapprehension testは高度陽性で、kujala score56点。extension lag15°、BIODEX SYSTEM3を用いた筋力測定は60°/sec・180°/sec・300°/secの3スピードにて測定したがほとんど筋出力は得られず、それぞれ健側に対しての欠損率は膝伸展で97%、屈曲では99%であった。左大腿部は著明な筋萎縮がみられ、周径は5cm以上の左右差があった。歩行については左膝関節の円滑な動きが損なわれている印象が得られた。<BR><B><理学療法プログラム></B>手術翌日からSLR・セッティング等の大腿四頭筋訓練、2日目からCPMでのROM訓練、3・4日目からニーブレース装着下での部分荷重歩行、5日目から端座位での膝伸展、セラピストによるROM訓練、6日目からパテラブレースでの全荷重歩行、10日目から階段昇降、2週目から自転車エルゴメーター、4週目からスクワット、8週目からジョギング開始、16週でフルスポーツ許可とした。<BR><B><術後評価></B>術後9週時点において、膝蓋骨異常可動性およびapprehension testは陰性で、kujala score75点。膝ROM制限なし。extension lag5°BIODEX SYSTEM3による筋力測定での健側に対する欠損率は膝伸展68%、屈曲33%であった。大腿周径の左右差は3cm以内と改善、歩行は術前と比較して、いくぶん改善傾向がみられた。<BR><B><考察></B>近年、機能解剖学的および生体力学的研究から、MPFLは膝蓋骨内側支持機構の第1制御因子であることが証明されている。当院では、膝蓋骨内側支持機構の第1制御機構であるMPFLは第一に再建するべきであり、その上で種々の先天的解剖学的因子の有無に応じて付加的手術を行うかを決定するのが合理的であると考えて、MPFL再建術を行っている。膝蓋大腿関節は屈曲角度が大きくなるにつれて骨形態により安定するため、特に膝伸展位から屈曲90°範囲でのMPFLの機能が重要であるとされている。よってMPFL再建術後のROM訓練では、屈曲90°までを慎重に行うことが重要と考えられる。<BR> MPFLの膝蓋骨側約1/3は内側広筋遠位部の後面に癒合している。手術時にはこの部分の剥離を行ううえ、術前からの筋萎縮が強い症例が多い。また、術後膝蓋骨が内側へ矯正されることで内側広筋の筋収縮の感覚が得られ難い。そのため今回の症例のように術後の筋力回復、extension lagの改善が困難であることが多いと考えられる。以上よりMPFL再建術後の理学療法に関して最も重要となる点は、慎重なROM訓練と膝筋力の獲得であるといえる。
著者
大泉 杏 山田 英司 三浦 亜衣子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.C0147, 2006

【目的】大腿骨頚部内側骨折に対する治療は、一般的に手術療法が選択されるのが現状である。しかし、高齢者であるため様々な合併症があり手術が不可能な場合、あるいは患者様自身や家族が手術を希望しない場合にはやむをえず保存的療法が選択される。Garden分類stage1、2に対しては骨癒合を目的とした保存療法が可能であることが報告されている。しかしstage 3、4では支配血管の損傷が伴いやすく、解剖学上、骨癒合が困難であるため、現在のところ統一されたプロトコールは確立されておらず、保存療法の経過を報告した研究は散見する程度である。そこで今回、大腿骨頚部内側骨折のGarden分類stage3、4を受傷し、保存療法を施行した5例において移動能力を中心にした成績の検討を行ったので報告する。<BR>【方法】2000年から2004年までに大腿骨頚部内側骨折Garden分類3、4を受傷し保存療法を施行した5例(男性2例、女性3例、平均年齢83±5歳)を対象とした。追跡期間3ヶ月から14ヶ月、手術が施行されなかった理由は合併症4例,手術拒否1例であった、また、受傷前歩行能力は独歩3例、T字杖歩行1例、老人車による歩行1例であり全員自立歩行が可能であった。<BR>当院に転院後、疼痛に対して温熱療法、消炎鎮痛剤による薬物療法及び介達牽引を施行した。そして可能な限り疼痛をコントロールしながら、積極的な運動療法を行った。まず、端座位から開始し、車椅子への移乗練習、可能ならば平行棒内起立練習を開始した。荷重は痛みに応じて漸増していき、平行棒内歩行、歩行器歩行、杖歩行へと進めた。筋力強化練習、他動的関節可動域練習は歩行練習と併用し積極的に行った。<BR>【結果】受傷からリハビリ開始までの期間は最短17日、最長6ヶ月、平均2.7ヶ月であった。5例中1例がGarden分類3にもかかわらず内反位で骨癒合し、残りの4例は骨折部の2次的転移により偽関節が形成された。その結果,1.5~3cmの脚長差が生じたが、補高をすることにより代償することが可能であった。疼痛もリハビリ開始当時と比べ徐々に軽減した。また5例共に受症前と比べADLの低下を生じたが、四輪型歩行器による自立歩行2例、四脚型歩行器による自立歩行1例、四点杖による監視歩行1例、片ロフストランド杖による監視歩行1例と何らかの移動能力は獲得することができた。<BR>【考察】今回の結果から保存療法は決して放置、あきらめではなく可能な限り疼痛をコントロールし,離床を促していくことが重要であり、積極的な運動療法を行なうことでGarden分類stage3、4例における保存療法でも移動動作の再獲得ができる可能性があると考えられた。<BR>
著者
山田 明義
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部紀要
巻号頁・発行日
vol.38, no.1-2, pp.1-17, 2002-01-31

日本の野生きのこ類の主要な位置を占める菌根性きのこ類について,食資源としての利用性を明らかにすることを目的に,文献調査を行った。その結果,これまでに300種を超えるきわめて多様なきのこ類が利用されており,今後さらに研究の進展にともない,より多くのきのこ類が利用される可能性のあることが示唆された。これら菌根性きのこ類は,これまで殆ど人工栽培の研究が行われていなことから,産業利用の見地からは研究の必要性が指摘された。
著者
山田 晶 AKIRA YAMADA 京都大学
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-20, 2001-03-31
著者
山田 恵吾
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.443-453, 1999-12-30 (Released:2007-12-27)

本稿は、1926年(大正15)年地方官官制改正への千葉県労務当局の対応を通して「自由教育」に対する統制策を検討するものである。 従来、この時期の初等教育実践に関しては、いわゆる「大正自由教育」の展開として師範学校附属小学校や私立校における新しい実践の試みと、それに対する文部省側の政治的抑圧という観点から検討がなされてきており、児童の自発的学習に配慮した教育実践とその研究・運動が体制側に否定されていく過程として捉えられてきている。一方、地域レベルでの初等教育実践の展開については、いくつかの成果が認められるものの、十分検討されることのないまま対立的構図、及び「大正デモクラシー」から「ファシズム」へという歴史的文脈の中に解消される傾向にあったといえる。 そこで本稿では、地域における初等教育のありようを地方政治や地方行政の動向との関わりから捉えなおすことに積極的意義を認め、1920年代に千葉県労務当局が推進した「自由教育」に対する統制策に焦点を当てることにした。とりわけ、1926(大正15)年地方官官制改正(郡役所廃止や学務部設置)が教育行政体制に如何なる変容をもたらし、またそれが「自由教育」への統制策にどう結実していくのかを検討した。その結果、次の点が明らかになった。すなわち、(1)この時期の教育行政の専門家を背景として、(2)1926年地方官官制改正、とりわけ郡役所廃止に伴う公立校の監督指導体制の確立の要請、さらに(3)郡指導監督下の不統一な教育状況に対する県の姿勢を厳しく質した県会の圧力等を諸要因として、県は「自由教育」に対する「統制」を図ったことが明らかとなった。その「統制」とは具体的に千葉県師範学校附属小学校の「自由教育」の模範としての存在感を低下させるとともに、教育実践の新たな基準の創出=「小学校教育改善要項」の制定を通じて、県下公立校の統制を図ることであった。後者では、特に「自由教育」が附小と基本的条件の異なる公立校で実践されることによって生ずる様々な問題を「改善」することを意味していた。一方、「小学校教育改善要項」の基本理念として設定された「教育の郷土化」は、その後、文部省の推進する郷土教育に呼応しつつ、郷土教育展覧会を開催するなど県主導の下に具体化が図られていく。つまり、県の教育行政の自立性は、中央の政策を強化する方向で機能を果たすことになるのである。こうして1920年代の新しい教育実践の試みは、その独自の活動性を後退させるとともに、次第に行政機構内に収斂されていったのである。
著者
山田 泰士 志垣 竹弥 金澤 親良 安野 嘉郎 浪本 正晴
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.97, 2009

【はじめに】<BR> 左片麻痺により起居動作や歩行の円滑性が妨げてられている症例に対して、その原因の一つとなっている肩関節亜脱臼(以下肩亜脱臼)と上肢屈筋痙性を軽減する目的で、上肢装具を試作し一定の効果を得ることができたので報告する。<BR>【対象】<BR> 視床出血により左片麻痺を呈した45歳男性。理学療法所見では、左上肢Brunnstrom Stage2~3で左肩亜脱臼が認められた。また動作時に左上下肢の痙性を認め、左上肢は屈曲肢位を呈し、生活動作全般で非対称姿勢が生じていた。深部腱反射は左上腕二頭筋と左上腕三頭筋においてやや亢進状態であった。<BR>【上肢装具】<BR> ネオプレーン生地3mmを使用し肩全体を包み込み、烏口突起から後方に固定用補強ベルト付けた。前腕部からのベルトを前腕外側から上腕内側に螺旋状に走らせ、腕全体を引き上げて肩関節後方で止めた。<BR>【方法】<BR> 1肩亜脱臼:単純X線撮影による骨頭下降率を計測した。2動作分析:起居動作と杖歩行の動作分析を行った。また歩行は、10m歩行の速度、歩幅、歩数を計測した。(1,2共に装具非装着時、装着時計測)<BR>【結果】<BR> 1肩亜脱臼:骨頭降下率は非装着時で20%、装着時で6%と亜脱臼の改善を認めた。<BR> 2動作分析:1)起居動作、非装着時:左肩甲帯は後退し、左肘関節と手指は連合反応により屈曲を呈している。装着時:左肘関節は連合反応により軽度屈曲位であったが、左肩甲帯は中間位となり、手指は若干伸展位を認めた。2)杖歩行、非装着時:左肩甲帯は前傾し、左肘関節と手指は連合反応により屈曲を呈している。体幹は右偏側位で非対称的であり、左下肢への荷重が不十分である。10m歩行:速度平均62秒、歩幅平均40cm、歩数平均55歩。装着時:左肘関節と手指は若干屈曲を呈しているが装着前と比較し手指は伸展位を認めた。左肩甲帯は中間位となり、体幹はほぼ正中位で保持され対称的となった。そのため左側への重心移動が可能となった。10m歩行:速度平均59秒、歩幅平均42cm、歩数平均52歩。<BR>【考察】<BR> 本装具では、前腕部からベルトを螺旋状に走らせ、上肢を外旋・伸展位に保持し上肢全体を引き上げることを可能にした。このことにより関節窩での上腕骨頭の位置の改善や左上肢下垂位により生じる上腕二頭筋の伸張反射亢進、連合反応による左上肢屈筋痙性の高まりを軽減できたと考える。また左肩甲帯を中間位に矯正したことも過剰な連合反応の抑制にも繋がった。これらにより、姿勢が対称的となり起居動作や歩行時の動作改善に繋がったと推察された。そして、本装具を常時装着することは、疼痛軽減や関節拘縮の予防を促し、また麻痺側上肢の痙性を抑制し、麻痺側上肢自体の使用頻度増加による機能回復が促される可能性があるために、今後一人で本装具を着脱できるよう改良する予定である。
著者
槌野 正裕 荒川 広宣 中島 みどり 山下 佳代 山田 一隆 高野 正博
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 第33回九州理学療法士・作業療法士合同学会 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
pp.3, 2011 (Released:2012-03-28)

【背景】 当院は、大腸肛門の専門病院として、大腸癌、特に下部直腸癌に対する肛門機能温存術が積極的に行われている。術後は、残存骨盤底筋群に対してバイオフィードバック療法(BF)を行い、通常術後3~6か月で一時的人工肛門を閉鎖する。今回、便を貯留させる耐容量の増大を目的として、新たに取り組み始めたバルーン留置訓練を実施した症例を以下に報告する。【症例紹介】 H21年9月に直腸癌(Rb)StageIの診断でParital ISR(D3廓清、根治度A、AN3:右骨盤神経温存、J-pouch)、covering ileostomyを造設された症例A氏(60歳代女性)、人工肛門造設時のWexnerスコア2であり、術後6か月のDefecographyでは、肛門収縮時でも造影剤が漏れており、残存肛門機能の検査結果も併せて人工肛門閉鎖後の便失禁の可能性が高いことが懸念され、主治医より直腸肛門機能訓練を依頼された。【治療経過】 術後1か月目からBFを開始した。術後6か月で安静臥位では残存括約筋の収縮は可能となっていたが、静止圧24.5cmH2O、随意圧72.1cmH2Oと肛門括約筋機能低下、耐容量40ml、体幹筋群との協調的な括約筋の収縮が困難であったため、バルーン留置訓練を開始した。 治療内容は、1)安静臥位でバルーンを挿入した状態での肛門括約筋収縮弛緩の学習、2)抵抗を加えて筋力強化、3)片脚拳上など腹圧上昇課題を与えて持続収縮力の強化、4)抗重力活動での持続力強化の順に進めた。4)では無意識のうちにバルーンが排出されていたが、訓練開始2か月後には、バルーンが自然排出することなく動作時も保持可能となった。静止圧44.9cmH2O、随意圧109.5cmH2Oと内圧上昇し、Defecographyでは収縮時の漏れが減少していた。その後2か月程度訓練を継続し、耐容量は85mlまで上昇。安静時の漏れも改善されてストーマ閉鎖となった。訓練時の空気の量は、最少感覚閾値の20mlから開始し40mlで行った。ストーマ閉鎖後は、本人も驚くほど排便コントロールされており、便失禁を気にせずに旅行にも行け、仕事にも復帰された。【考察】 直腸癌術後の排泄機能訓練は確立されておらず、当院でも筋電図を用いたBFのみを行っていた。今までの人工肛門閉鎖症例の排便状況からは、「便意があったらトイレまで我慢できない。」などの訴えが多く、検査結果からは、静止圧の低下とともに耐容量も低値であったため、バルーンを留置しての運動療法を取り入れた。筋の収縮のみの静的訓練から歩行などの動的な訓練を行ったことで、残存括約筋と体幹筋群の協調的な収縮方法を学習でき、トイレまで我慢できる能力を獲得したことが術後の排便障害を軽減させた要因であると考えられる。
著者
山田長夫
出版者
横浜市
雑誌
調査季報
巻号頁・発行日
no.11, 1966-05-31
著者
山田 佳昭 松下 訓
出版者
神奈川県水産技術センター
雑誌
神奈川県水産技術センター研究報告 (ISSN:18808905)
巻号頁・発行日
no.1, pp.43-49, 2006-03
被引用文献数
3

1 相模湾へ流入する河川からの汚濁物質負荷量を河川等の水質データから推定した。2 各河川からの流入負担量は、窒素27.9トン/日、リン1.9トン/日、COD30.9トン/日であった。3 各河川からの流入負荷量に占める相模川と境川の割合が高い。4 負荷量の変動には流域の降水量が影響している。5 処理場放流水による負荷量も多く、その量は年々増加している。
著者
吉澤 徹 山田 浩樹 堀内 健太郎 中原 正雄 谷 将之 高山 悠子 岩波 明 加藤 進昌 蜂須 貢 山元 俊憲 三村 將 中野 泰子
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.459-468, 2016 (Released:2017-03-16)
参考文献数
23

非定型抗精神病薬は定型抗精神病薬に比べ錐体外路系の副作用などが少なく,また陰性症状にも効果を示すため,統合失調症治療薬の第一選択薬として用いられている.しかし,これら非定型抗精神病薬の副作用として,体重増加や耐糖能異常などが生じることが問題となっている.われわれは抗糖尿病作用,抗動脈硬化作用,抗炎症作用などを示し,脂質代謝異常により減少する高分子量アディポネクチン (HMWアディポネクチン) や増加するとインスリン抵抗性を助長するレチノール結合蛋白4 (RBP4) を指標として非定型抗精神病薬であるオランザピンとブロナンセリンの影響を統合失調症患者において観察した.薬物は通常臨床で使用されている用法・用量に従って投与され,向精神病薬同士の併用は避けた.その結果オランザピンはブロナンセリンに比べ総コレステロールおよびLDLコレステロールに対し有意な増加傾向を示し,HDLコレステロールは有意に増加させた.また,HMWアディポネクチンとRBP4に対してオランザピンは鏡面対称的な経時変化を示した.すなわち,オランザピン投与初期にHMWアディポネクチンは減少し,RBP4は増加した.ブロナンセリンはこれらに対し大きな影響は示さなかった.体重およびBMIに対してはオランザピンは14週以後大きく増加させたが,ブロナンセリンの体重増加はわずかであったが,両薬物間ではその変化は有意な差ではなかった.インスリンの分泌を反映する尿中C-ペプチド濃度に対してはオランザピンはこれを大きく低下し,ブロナンセリンはわずかな平均値の低下であり,有意な差はなかった.血中グルコースおよびヘモグロビンA1c (HbA1c) やグリコアルブミンは両薬剤において有意な影響は認められなかった.このようにオランザピンはコレステロール値や体重,BMIなどを増加させ,さらにインスリンの分泌を抑制し耐糖能異常を示す兆候が認められたが,ブロナンセリンはこれらに大きな影響を与えないことが示された.
著者
池内 和忠 若森 晋之介 廣兼 司 山田 英俊
出版者
公益社団法人 有機合成化学協会
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.76, no.9, pp.904-913, 2018-09-01 (Released:2018-09-07)
参考文献数
83
被引用文献数
2

This review describes synthetic methods that have brought remarkable increase of synthesizable ellagitannins. Acquisition of capability to enable syntheses of all ellagitannins, which are more than 1,000 characterized natural products and their analogues, would contribute to development of understanding structure-activity relationship. The two major reasons diversifying the structures of ellagitannins are the presence of the hexahydroxydiphenoyl group and the C-O digallates, each of which arises through formation of a C-C or a C-O bond between two galloyl groups. To increase the number of synthesizable ellagitannins, establishment of methods for synthesizing these two components and for assembling the components to construct ellagitannin molecules are essential. Three focuses here are methods for synthesizing (1) the hexahydroxydiphenoyl group, (2) glucose derivatives with hexahydroxydiphenoyl bridges, and (3) the C-O digallates. In addition, several applications of these methods for total syntheses of ellagitannins are exemplified.
著者
小野寺 みつ江 仙波 静 山内 登志子 石田 泉 山田 さゆり 遠藤 利江子 山田 泰子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集
巻号頁・発行日
vol.60, pp.161, 2011

東日本大震災時における福島県厚生連6病院栄養科の対応と教訓福島県厚生連栄養士会 小野寺みつ江・仙波静・山内登志子・石田泉・山田さゆり・遠藤利江子・山田泰子<はじめに>東日本大震災時に福島県厚生連の栄養科で、何がおき、いかに対応し、どのような教訓を得たのかを報告する。<各病院の状況>福島第1原発から3_km_の双葉厚生病院では、3月11日地震により調理器具の全てが倒れ、ガス漏れが発生した。ライフラインは電気のみ確保されていた。当日夕食は、ガスコンロにより飲水不可の水で非常食を温めて提供したが、患者の避難場所が把握できず、また緊急に来院した外来患者にも食事を提供したので食数が掴めなかった。隣接する健康施設に職員用の炊き出しを依頼した。翌12日朝食も非常食を提供した。昼、水道が復旧、厨房器械の点検をしたが、原発事故のため全患者全職員が緊急避難し、同院は現在も休院中である。原発から30kmの南相馬市に位置する鹿島厚生病院では、震災直後、ガス、ボイラー、エレベーターが停止した。原発事故後、職員は自主勤務になったため、調理員の数が不足し、他部門のスタッフと協力を得て食事を提供した。さらにガソリン不足と物流停滞のため、16日以降の食材納入が停止した。栄養士は病院に宿泊し、食材集めに奔走した。同院は19日から4月10日まで一時休院した。中通り南部に位置し、液状化現象が起きた白河厚生総合病院は、建物には被害がなかったが、外部の水道管が破裂し断水した。病院の貯水タンクの水を使い、自衛隊による給水支援を受け、節水しながら食事を提供し、非常食は使用しなかった。塙厚生病院では6時間の停電があり、1食、非常食を使用した。坂下厚生総合病院ではガスが停止し、1食、非常食を使用した。高田厚生病院では食事提供上の問題は発生しなかった。<考案>_丸1_災害時に備え、設備、給食材料の業者と契約を結んでおく。_丸2_水を確保する。_丸3_非常時に備え、栄養科以外の職員に、非常食提供の指導と訓練をしておく。ライフラインが確保されない時を想定しておく。_丸4_患者や職員以外の非常食を備蓄しておく必要がある。
著者
山田 一隆 緒方 俊二 佐伯 泰愼 高野 正太 岩本 一亜 福永 光子 田中 正文 野口 忠昭 高野 正博
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.513-520, 2016 (Released:2016-11-07)
参考文献数
20
被引用文献数
1

下部直腸・肛門管癌に対する括約筋間直腸切除術(ISR)に関しては,術後排便機能障害として便失禁が比較的高率であることが課題となっている.そこで,当施設において2001~2013年に下部直腸・肛門管癌に対してISR, partial ESRを施行した治癒切除178例を対象に,術後1年の排便機能について解析した.術後1年における排便機能に関しては,continent patients(Kirwan grade 1, 2)が64.9%であり,total ISR とpartial ESR症例では低い傾向であった.直腸肛門内圧検査と直腸肛門感覚検査を継時的(術前・術後3ヵ月・6ヵ月・1年)に施行し,肛門管最大静止圧,肛門管最大随意圧ならびに肛門管電流感覚閾値に術後3ヵ月に著明な悪化がみられ,その後の回復が比較的不良であった.これらの解析を基に,ISR術後の排便機能障害に対する対応について検討した.
著者
西野 一郎 緒方 公介 野見山 宏 安永 雅克 西嶋 幸司 藤原 明 山田 昌登嗣
出版者
West-Japanese Society of Orthopedics & Traumatology
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.1038-1040, 1993-09-25 (Released:2010-02-25)
参考文献数
3
被引用文献数
2

Accelerometric measurement of gait ananlysis is a simple, inexpensive and effective way to evaluate gait and was first introduced by Liberson and colleagues. Smidt applied accelerometry to the normal and abnormal patterns of gait. Ogata used accelerometry to quantitatively vevaluate the lateral thrust of the knee and investigated the dynamic effects of a wedged insole on the thrust of OA knees.In the present study, we used an accelerometer, strain gauge and goniometer to inveshgate the effects of accelerometry on heel strike in gait analysis. The acceleration placed on the calcaneal region on heel strike appeared faster than any other measurement. Our results suggest that an accelerometer placed on the calcaneal region provides the most useful information on the exact moment when the heel strikes the ground.
著者
山本 幸 柿本 竜治 山田 文彦
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.45.3, pp.553-558, 2010-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
11
被引用文献数
1

本研究の目的は、筆者ら提案する災害リスクマネジメントのフレームの汎用性を検証することにある。山都町菅地区での山間地域の防災力向上への取り組みにPDCAサイクルに基づく災害リスクマネジメントのフレームを適用することで、8回に亘る継続的なWSと2回の避難訓練の運営を効率的に行うことが出来た。また、PDCAサイクルを巡回させることで、防災学習の取り組み内容を地域全体の防災から災害時要援護者の支援へとスムーズに発展させることが出来た。WSを通して、地域の災害リスクの認知、世帯カルテの整備、災害時要援護者の確認、地域のソーシャル・ネットワークの確認が行われ、災害時に地域や行政が特に配慮しておくべき世帯等が絞られた。避難訓練を通して、地域の防災連絡体制の強化と集落間の協力関係の強化が図られ、避難時間が40分短縮されるなどの効果が見られた。また、WSでの議論により、地域ニーズと地域特性に応じた雨量観測システムと安否確認システムが構築され、実装された。最後に、本取り組みを通じて、地域防災学習のWSを継続していくにあたっての留意点を明らかにした。