著者
工藤 豪
出版者
Japanese Council on Family Relations
雑誌
家族研究年報 (ISSN:02897415)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.57-73, 2013-07-10 (Released:2017-02-14)
参考文献数
46

本稿は、隠居制家族が現代日本の家族構造を理解するにあたって重要な意義をもつという立場から、これまでの研究が隠居制家族をどう捉えてきたのかを整理するとともに、隠居制家族を「同質論」・「異質論」という議論の枠組みの中にどのように位置づけるべきなのかについて考察を試みたものである。     社会学、民俗学、社会人類学において展開されてきた研究を踏まえて、清水と上野による整理を土台としながら新たな視点を加えて考察を行ったところ、家族構造・社会構造および隠居制家族と東北日本型・西南日本型に関する六つの考え方が存在することが明らかになった。以上の結果、隠居制家族の位置づけにおいて、家族構造についての捉え方が同質論か異質論か、隠居制家族について重点をおく部分は相続か生活単位か、そして「西南日本型」に関する理解と用い方、この三点が重要な指標になってくるのではないかとの結論に達した。

13 0 0 0 OA 海の国のアトム

著者
工藤 君明
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.336-340, 2010 (Released:2019-09-06)
参考文献数
5

海洋の科学と科学技術について,いまどんな研究が行われているのか,原子力にかかわっている方々にわかりやすく紹介するという機会をいただいた。地球は水の惑星といわれるが,それは地球の表面の2/3が海水で覆われているばかりでなく,固体地球の内部にも水の循環があり,そして巨大な山脈もかつては海の底だったからである。研究の分野は広く,専門分野が異なれば,なかなか理解も難しい。しかし分野が異なっても共通するのは人の情熱と努力である。自然の不思議に魅せられて科学するのは人である。科学技術を研究開発するのも,機器を操作し,データを管理するのも,また必要な予算を獲得して業務を管理するのも人である。さらに成果を享受し,評価するのも人である。人は国により,時代により,状況によってさまざまに異なる。しかし人を抜きに科学技術を語ることも,理解することも,役に立てることもできはしない。海洋研究開発機構(JAMSTEC)が進めている海洋の科学と科学技術を,研究開発にたずさわる人たち(ここではアトムと呼ぶ)の目線で解説していくことにしたい。

13 0 0 0 OA 海の国のアトム

著者
工藤 君明
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.52, no.7, pp.409-413, 2010 (Released:2019-09-06)
参考文献数
5

現代の地球科学における重要なキーワードは地球内部の水循環である。水を含んだ海洋地殻が大陸地殻の下にもぐりこんでいくときに,水は絞りだされて循環する。熱水現象も,地殻内微生物の存在も,また地震発生のメカニズムも地殻内水循環が重要な役割を果たしている。今回は私たちの生活に極めて身近な存在である微生物の利用と生物の進化,そして海溝型の巨大地震の研究と防災について考える。
著者
工藤 和輝 二階堂 泰隆 浦上 英之 佐浦 隆一
出版者
一般社団法人 大阪府理学療法士会生涯学習センター
雑誌
総合理学療法学 (ISSN:24363871)
巻号頁・発行日
pp.2023-002, (Released:2023-01-17)
参考文献数
38

【はじめに】脳卒中後の姿勢定位障害の1つであるLateropulsion(以下,LP)は,主に前庭機能の障害が関与するとされている。今回LPを認めた症例に対し,前庭リハビリテーションとして,対象者自身が頭部と眼球の運動を行うGaze Stability Exercise(以下,GSE)を試みた。【症例紹介】脳梗塞(左視床・左中脳赤核近傍)を発症した80歳代女性である。初期(発症3–5日目)にはめまい症状があり,Head Impulse Test(以下,HIT)が陽性であった。身体症状としては,右側へのLPを認め(重心動揺計で測定した開脚立位時の左右荷重比[開眼:左38%/右62%,閉眼:左36%/右64%]),Functional Gait Assessment(以下,FGA)は11点と歩行中の動的バランスの低下を認めた。病巣部位と評価結果から,前庭感覚の上行路の損傷による前庭機能の障害が原因と考え,GSEを3日間実施した。【結果】最終(発症11日目)にはめまいが軽減し,HITは陰性となった。さらに,開眼時のみLPが消失し(開眼:左46%/右54%,閉眼:左35%/右65%),FGAスコアが21点と歩行中の動的バランスも改善した。【まとめ】脳卒中後のLPやめまい,動的バランスに対して,GSEが有効である可能性が示唆された。
著者
香川 靖雄 小松 文夫 金子 嘉徳 川端 輝江 渡邊 早苗 佐久間 充 工藤 秀機 金子 嘉徳 川端 輝江 渡辺 早苗 佐久間 充 工藤 秀機
出版者
女子栄養大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

モンゴル人は日本人に比べ平均寿命が男女とも15 年以上短い。その理由を知るためにモンゴル人の健康調査を行った。モンゴル人は食生活に偏りがあり、肉食が主で野菜や果物は少なく、酸化ストレスが高く、老化の訪れが早かった。彼らの短寿命を解決するにはこれらの改善が重要であり、日本人の老化を考える上でモンゴル人の食生活と高い酸化ストレス度は重要な警鐘と思われた。
著者
工藤 大介 中谷内 一也
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.35-44, 2014-08-18 (Released:2015-06-06)
参考文献数
42
被引用文献数
3

This study investigated why the restrained buying called reputational risk occurred after The Great East Japan Earthquake, focusing on the psychological factors influencing consumers. A preliminary investigation (N=112) identified affective (System 1) factors—“negative affect,” “association with Fukushima,” “support for quake-hit areas,” and “radiation anxieties”—and reason (System 2) factors—“knowledge-based judgment” and “rational decision”—based on the dual-process theory. Initially, the results of structural equation modeling (SEM) conducted on the main survey data (N=310) indicated the influence of multi-collinearity. Accordingly, the factors “negative affect,” “association with Fukushima,” and “radiation anxieties” were integrated as “anxiety over radiation and nuclear power.” The result of SEM on the refined model suggested this factor causes restrained buying while “support for quake-hit areas” is effective in its mitigation. Finally, future contingency plans to combat reputational risk were discussed based on the findings of this study.
著者
藤盛 真樹 鳥谷部 純行 角 伸博 嶋﨑 康相 宮澤 政義 宮手 浩樹 北田 秀昭 佐藤 雄治 三澤 肇 山下 徹郎 中嶋 頼俊 針谷 靖史 小林 一三 西方 聡 太子 芳仁 杉浦 千尋 笠原 和恵 浅香 雄一郎 榊原 典幸 岡田 益彦 柴山 尚大 末次 博 鈴木 豊典 阿部 貴洋 谷村 晶広 工藤 章裕 道念 正樹 川口 泰 野島 正寛 牧野 修治郎
出版者
公益社団法人 日本口腔外科学会
雑誌
日本口腔外科学会雑誌 (ISSN:00215163)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.168-183, 2022-04-20 (Released:2022-06-20)
参考文献数
38

Tooth extraction is reported as the main trigger of bisphosphonate (BP) -related osteonecrosis of the jaw (BRONJ). A method to prevent BRONJ has not been scientifically proven. The American Association of Oral and Maxillofacial Surgeons (AAOMS) differs from the International Task Force on Osteonecrosis of the Jaw with regard to the prevention of BRONJ via prophylactic withdrawal before tooth extraction. We performed a multicenter prospective study regarding the development of BRONJ after tooth extraction in BP-treated patients for the purpose of determining factors associated with the frequency of BRONJ. We extracted teeth from patients with a history of current or prior treatment with BP preparations; teeth were extracted using a common treatment protocol. The presence or absence of BRONJ and adverse events were evaluated. A total of 1,323 cases were targeted for this study; 2,371 teeth were extracted. The overall incidence of BRONJ was 1.74%; in the prophylactic withdrawal group it was 1.73%, whereas in the prophylactic non-withdrawal group it was 1.75%. Factors associated with the onset of BRONJ were sex, preparation adaptation classification, oral hygiene state, site of tooth extraction, and Denosumab usage. From analysis that considered the effect of confounding using the propensity score, prophylactic BP withdrawal did not result in a reduction of BRONJ (onset odds ratio with withdrawal: 1.13, 95%CI 0.36-3.57).
著者
工藤 浩 井出 浩希 中林 玄一 後藤 貴宏 若栗 良 岩田 尚宏 黒木 嘉人
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.59-66, 2019-01-25 (Released:2019-02-13)
参考文献数
14
被引用文献数
3

目的:重度嚥下機能障害を有する高齢者診療における完全側臥位法の有用性について検討した.方法:2015年2月から2017年10月に当院に入院し,嚥下機能障害が疑われNSTが介入した142例(全例嚥下内視鏡検査(VE)施行)中,従来の誤嚥予防対策では安全な経口摂取は困難な重度嚥下機能障害と診断された65歳以上の高齢者47例に完全側臥位法を導入した.完全側臥位法導入が安全な経口摂取と転帰に及ぼす影響について,完全側臥位法未実施群(対照群)と比較検討した.結果:平均年齢は85±8.3歳,男女比は32:15,初回VEで全例に重度の嚥下機能障害(兵頭スコア8.16±2.0点)を認めた.完全側臥位法導入後,栄養療法,リハビリテーションの併用により,血中Alb値,Barthel indexの改善も認め,対照群と比較し,経口栄養での退院が有意に増加(26.5→53.2%)した.退院症例25例中13例は再び座位姿勢でも安全に食事摂取が可能となった.死亡退院21例の死因病名は老衰10例が最も多かった.完全側臥位群では老衰による終末期の症例でも安全な経口摂取が可能となり,対照群と比較し死亡までの平均欠食期間が有意に短縮(17.3→7.3日)した.退院後に在宅でも完全側臥位法を継続し,再入院することなく1年後に自宅で穏やかな最期を迎えられた症例も経験した.結論:完全側臥位法は重度嚥下機能障害をもつ高齢者の安全な経口摂取に高い効果を認めた.安全な食事摂取が栄養状態の改善,リハビリによる機能強化にもつながり,経口栄養での退院増加に寄与した.完全側臥位法は特別な器具,手技を必要とせず簡便で負担の少ない手法であり,言語聴覚士が不在の市中病院や在宅,重症患者でも容易に継続できることが確認された.本手技が嚥下機能障害を有する高齢者診療におけるブレイクスルーとなり得る可能性が示唆された.
著者
小倉 英里 工藤 真代 柳 英夫
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告デジタルドキュメント(DD) (ISSN:18840930)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.5, pp.1-8, 2010-11-19

グローバル経済が加速する中で,英語版ドキュメントは海外市場進出の要となる.しかし,多くのメーカー企業では,英語版ドキュメントの言語品質の低さに悩まされている.英語のネイティブライターが関与していないことも原因のひとつだが,それ以上に,英訳を視野に入れて日本語版ドキュメントが作られていないことが,その最大の原因である.この研究では,英訳しづらい日本語の表現パターンを洗い出し,そのような日本語表現を規制できるかを検証し,規制された日本語は,その英訳の品質が改善することを明らかにした.Creating content in English plays an important role for globalizing businesses. However, the quality of English documents is an obstacle in many Japanese companies. This situation can stem from limited resources, such as the number of in-house English-native proofreaders. But the root cause of the problem is that the Japanese source documents are not ready for translation into English. In this research, we identify the patterns of problematic Japanese expressions in Japanese-English translation in order to determine whether these expressions can be controlled in the source language. Our analysis reveals that controlling the source language can improve the quality of English translation and reduce the time and the cost of translation tasks.
著者
太田 若菜 櫻田 大也 小林 江梨子 平舩 寛彦 千葉 健史 富田 隆 工藤 賢三 佐藤 信範
出版者
一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会
雑誌
レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.95-102, 2018 (Released:2018-05-31)
参考文献数
14

後発医薬品への 「変更不可処方箋」 について調査を行った. 2017年1~3月の任意の1週間における, 岩手県薬剤師会に所属する233店舗の薬局で受け付けた処方箋75,513枚のうち, 変更不可処方箋は7,926枚 (10.50%) であった. 変更不可の指示件数は合計17,536件であり, 当該医薬品は1,714品目であった. そのうち後発医薬品のある先発医薬品が52.70%, 後発医薬品の銘柄指定が14.86%であった. 薬効分類別にみると, 循環器官用薬, 中枢神経系用薬, 消化器官用薬が上位を占めた. 変更不可の理由としては, “患者の希望” が最も多く, “医師の意向”, “薬剤変更により疾病コントロール不良・副作用の発現” などが続いた. 後発医薬品のさらなる使用推進には, 変更不可処方箋を減少させていくことが必要である. そのためには, 後発医薬品の品質向上や適切な情報提供だけでなく, 処方箋発行システムや診療報酬の面においても対策が必要である. 今後, 複数の地域で一定期間の処方箋抽出調査などを行い, 変更不可処方箋が後発医薬品の使用推進に与える影響についてさらに検討していく必要があると考えられる.