著者
工藤 大介 中谷内 一也
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.35-44, 2014-08-18

This study investigated why the restrained buying called reputational risk occurred after The Great East Japan Earthquake, focusing on the psychological factors influencing consumers. A preliminary investigation (N=112) identified affective (System 1) factors - "negative affect," "association with Fukushima," "support for quake-hit areas," and "radiation anxieties" - and reason (System 2) factors - "knowledge-based judgment" and "rational decision" - based on the dual-process theory. Initially, the results of structural equation modeling (SEM) conducted on the main survey data (N=310) indicated the influence of multi-collinearity. Accordingly, the factors "negative affect," "association with Fukushima," and "radiation anxieties" were integrated as "anxiety over radiation and nuclear power." The result of SEM on the refined model suggested this factor causes restrained buying while "support for quake-hit areas" is effective in its mitigation. Finally, future contingency plans to combat reputational risk were discussed based on the findings of this study.
著者
工藤 和俊 岡野 真裕 紅林 亘
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.78, no.7, pp.390-398, 2023-07-05 (Released:2023-07-05)
参考文献数
66

神経細胞を含む多様な細胞の集合体であるヒトの身体は,身体をとりまく地球環境がそうであるように,外界との間にエネルギーの移動があり,要素同士が複雑に相互作用し,束の間の秩序を保ちながら時間発展し自己組織化する非線形・非平衡開放系である.この非線形・非平衡開放系を解析し記述する方法論としての力学系アプローチはこれまで,身体におけるミクロな神経細胞の相互作用から,よりマクロな個体の振る舞い,さらには個体集団の集合的な振る舞いを共通の数理によって記述することに成功してきた.その具体例の1つは,身体運動の揺らぎの構造に関する研究である.絶えず変化し続ける身体ゆえに,たとえ立位で静止しようとしても姿勢を固定して留め置くことはできず,同一の運動を正確に再現しようとしても常に変動が付きまとう.これらの運動の時系列は,しばしば自己相似性(フラクタル性)を示すとともに,運動の学習段階や制御特性に応じてそのスケーリング指数が変化していく.また,このスケーリング指数は立位,歩行,会話を含むさまざまな運動や行為において,個人のダイナミクスすなわち個性を反映する指標になりうる.近年ではさらに,複数の人々が関わる場面を解析対象とすることで,対人間(たいじんかん)におけるダイナミクスレベルでのグローバルな協調関係を定量化する試みが進められている.もう1つの具体例は,ヒトの周期的な身体運動における協調パターンに関する研究である.ヒトの身体運動においては,歩行,ダンス,音楽演奏など,様々な周期的運動の協調パターン変化を,非線形力学系の秩序パラメータ変化に伴う分岐現象として記述できることが明らかになった.これにより,運動の学習プロセスを力学系の時間発展として理解することが可能になるとともに,「無秩序(試行錯誤)から秩序へ」という学習進展だけでなく「既存の秩序から新たなる秩序へ」という種類の学習プロセスを数理的に記述することが可能になった.これらの数理モデルはまた,パフォーマンスの急激な向上や学習停滞(プラトー)など運動の学習プロセスにおける様々な現象が,力学系の時間発展に伴い自発的に生じうることを示唆している.ヒト同士の社会的相互作用についても,対人間の運動協調課題において個人単独とは異なる振る舞いの創発が報告されており,結合振動子系モデルによってこの現象が再現されている.また,対人間における運動の協調がヒトの向社会行動を促進することが明らかにされており,ヒト社会において時代や地域を問わず普遍的に存在する音楽やダンスの社会的機能や役割について,定量的な解析が可能になりつつある.以上のとおり,身体を非線形力学系として捉えるという立場から,ヒト個体のみならず,ヒト集団の社会的振る舞いを含めた幅広い時空間スケールの現象を統一的に捉えることが可能になる.このような物質・生命・社会の境界を越えたスケールフリーの法則性を見出そうとするアプローチは,ヒトの振る舞いを微視的な物質要素から説明しようとする立場に対する相補的な方法論として,今後さらなる発展が期待される.
著者
工藤 雄大 千葉 親文 長 由扶子 此木 敬一 山下 まり
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 57 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.PosterP63, 2015 (Released:2018-10-01)

[背景・目的] テトロドトキシン (tetrodotoxin, TTX, 1) は、電位依存性ナトリウムチャネルを強力かつ選択的に阻害する神経毒であり、致死性の食中毒を引き起こす。TTXはフグ、巻貝、カニなどの海洋生物、および陸棲の両生類であるイモリやカエルに含まれ、世界中に分布する。この特異な構造が自然界でどのように構築されるかは予測が困難であり、TTXの生合成経路は未だ解明されていない。既に我々も含めた複数の研究グループが海洋由来のバクテリアによるTTXの生産を報告しており1)、TTXは食物連鎖により海洋生物へと蓄積されると考えている。一方、陸上におけるTTXの生産生物は未同定である。唯一のラベル化合物の投与実験として、清水らによるイモリへのarginine, acetate等の投与例があるがTTXはラベル化されず2)、遺伝子解析からTTXの生合成経路に言及した研究もこれまでない。そこで我々は、TTX類縁体の化学構造が生合成経路を反映していると考え、新規TTX類縁体(生合成中間体)を得るために質量分析器を駆使した網羅的な探索を実施してきた3)。そして最近、有毒のオキナワシリケンイモリ (Cynops ensicauda popei) から、TTXのC5-C10が直接炭素-炭素結合した10-hemiketal-typeの類縁体の4,9-anhydro-10-hemiketal-5-deoxyTTX (2) を発見した。化合物2は国内外の複数の有毒イモリに共通して存在していたため生合成中間体であると考え、2の特徴的な骨格構造からモノテルペンを出発物とする新たな生合成経路の可能性を考えた (Fig. 1)4)。本研究では、推定した経路を基に更なる生合成中間体を探索したので報告する。また未解明であるイモリにおけるTTXの起源を追及した。Figure 1. Proposed biosynthetic pathway towards TTX based on the structure of 2.4) 1. 新規環状グアニジン化合物群とTTX生合成経路の考察 質量分析器を用いて推定した生合成経路における中間体を探索した。これまで我々は水溶性の高いTTX類縁体の探索法として、希酢酸加熱抽出、活性炭による前処理、HILIC-LC-MS/MS3c, 5)による解析を行ってきた。しかし、本研究のターゲットとなる生合成中間体はTTX類縁体よりも親水性が低いことが予想されたので、探索のステップをそれぞれメタノール抽出、ODSによる前処理、逆相カラムによるLC-MSへと変更し、より初期の生合成中間体に焦点を当てた探索法を新たに構築した。この疎水性化合物用の探索法と従来の親水性化合物用の探索法の二つの方法で予想生合成中間体の発見を目指した。1-1. Cep-210, Cep-212の構造解析疎水性化合物の探索では、C. e. popeiのメタノール抽出物から[M+H]+ m/z 210.1606 (C11H20N3O, err. 2.2 ppm, ESI-TOF-MS) の微量新規成分 (Cep-210, 3) を検出した。その分子式から、化合物3は予想生合成中間体に相当する可能性が考えられたため、大量抽出および単離・構造決定を試みた。化合物3をC. e. popeiの身体組織 (415 g、約70匹) からメタノールで抽出して分配操作を行った後、数種の逆相カラムと弱酸性陽イオン交換カラムを用いて単離した。得られた3(69 nmol、マレイン酸を内部標準として1H NMRの積分値より算出)をCD(View PDFfor the rest of the abstract.)
著者
工藤 君明
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.468-472, 2010 (Released:2019-09-06)
参考文献数
4

地球温暖化というと,暑い夏がさらに暑くなることだと思われがちであるけれども,どちらかというと寒い冬が暖かくなって年間平均で気温が高くなるなど,年々の長期的変化に伴い,様々な現象の変動パターンがこれまでになく激変するということである。地球環境の変動をこれまでに蓄積してきたデータから単純に予測することはますます困難になっている。予測もつかないようないことを予測することが求められており,その予測技術を確立していくために,全球における高精度,広域,そして継続した観測がますます必要とされている。
著者
三木 文雄 小林 宏行 杉原 徳彦 武田 博明 中里 義則 杉浦 宏詩 酒寄 享 坂川 英一郎 大崎 能伸 長内 忍 井手 宏 西垣 豊 辻 忠克 松本 博之 山崎 泰宏 藤田 結花 中尾 祥子 高橋 政明 豊嶋 恵理 山口 修二 志田 晃 小田島 奈央 吉川 隆志 青木 健志 小笹 真理子 遅野井 健 朴 明俊 井上 洋西 櫻井 滋 伊藤 晴方 毛利 孝 高橋 進 井上 千恵子 樋口 清一 渡辺 彰 菊地 暢 池田 英樹 中井 祐之 本田 芳宏 庄司 総 新妻 一直 鈴木 康稔 青木 信樹 和田 光一 桑原 克弘 狩野 哲次 柴田 和彦 中田 紘一郎 成井 浩司 佐野 靖之 大友 守 鈴木 直仁 小山 優 柴 孝也 岡田 和久 佐治 正勝 阿久津 寿江 中森 祥隆 蝶名林 直彦 松岡 緑郎 永井 英明 鈴木 幸男 竹下 啓 嶋田 甚五郎 石田 一雄 中川 武正 柴本 昌昭 中村 俊夫 駒瀬 裕子 新井 基央 島田 敏樹 中澤 靖 小田切 繁樹 綿貫 祐司 西平 隆一 平居 義裕 工藤 誠 鈴木 周雄 吉池 保博 池田 大忠 鈴木 基好 西川 正憲 高橋 健一 池原 邦彦 中村 雅夫 冬木 俊春 高木 重人 柳瀬 賢次 土手 邦夫 山本 和英 山腰 雅宏 山本 雅史 伊藤 源士 鳥 浩一郎 渡邊 篤 高橋 孝輔 澤 祥幸 吉田 勉 浅本 仁 上田 良弘 伊達 佳子 東田 有智 原口 龍太 長坂 行雄 家田 泰浩 保田 昇平 加藤 元一 小牟田 清 谷尾 吉郎 岡野 一弘 竹中 雅彦 桝野 富弥 西井 一雅 成田 亘啓 三笠 桂一 古西 満 前田 光一 竹澤 祐一 森 啓 甲斐 吉郎 杉村 裕子 種田 和清 井上 哲郎 加藤 晃史 松島 敏春 二木 芳人 吉井 耕一郎 沖本 二郎 中村 淳一 米山 浩英 小橋 吉博 城戸 優光 吉井 千春 澤江 義郎 二宮 清 田尾 義昭 宮崎 正之 高木 宏治 吉田 稔 渡辺 憲太朗 大泉 耕太郎 渡邊 尚 光武 良幸 竹田 圭介 川口 信三 光井 敬 西本 光伸 川原 正士 古賀 英之 中原 伸 高本 正祇 原田 泰子 北原 義也 加治木 章 永田 忍彦 河野 茂 朝野 和典 前崎 繁文 柳原 克紀 宮崎 義継 泉川 欣一 道津 安正 順山 尚史 石野 徹 川村 純生 田中 光 飯田 桂子 荒木 潤 渡辺 正実 永武 毅 秋山 盛登司 高橋 淳 隆杉 正和 真崎 宏則 田中 宏史 川上 健司 宇都宮 嘉明 土橋 佳子 星野 和彦 麻生 憲史 池田 秀樹 鬼塚 正三郎 小林 忍 渡辺 浩 那須 勝 時松 一成 山崎 透 河野 宏 安藤 俊二 玄同 淑子 三重野 龍彦 甲原 芳範 斎藤 厚 健山 正男 大山 泰一 副島 林造 中島 光好
出版者
Japanese Society of Chemotherapy
雑誌
日本化学療法学会雜誌 = Japanese journal of chemotherapy (ISSN:13407007)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.526-556, 2005-09-25

注射用セフェム系抗菌薬cefozopran (CZOP) の下気道感染症に対する早期治療効果を評価するため, ceftazidime (CAZ) を対照薬とした比較試験を市販後臨床試験として実施した。CZOPとCAZはともに1回1g (力価), 1日2回点滴静注により7日間投与し, 以下の結果を得た。<BR>1. 総登録症例412例中最大の解析対象集団376例の臨床効果は, 判定不能3例を除くとCZOP群92.0%(173/188), CAZ群91.4%(169/185) の有効率で, 両側90%, 95%信頼区間ともに非劣性であることが検証された。細菌性肺炎と慢性気道感染症に層別した有効率は, それぞれCZOP群90.9%(120/132), 94.6%(53/56), CAZ群93.3%(126/135), 86.0%(43/50) で, 両側90%, 95%信頼区間ともに非劣性であることが検証された。<BR>2. 原因菌が判明し, その消長を追跡し得た210例での細菌学的効果は, CZOP群89.5%(94/105), CAZ群90.5%(95/105) の菌消失率 (菌消失+菌交代) で, 両群間に有意な差はみられなかった。個々の菌別の菌消失率は, CZOP群91.1%(113/124), CAZ群90.8%(108/119) で両群問に有意な差はみられなかったが, 最も高頻度に分離された<I>Streptococcus pneumoniae</I>の消失率はCZOP群100%(42/42), CAZ群89.5%(34/38) で, CZOP群がCAZ群に比し有意に優れ (P=0.047), 投与5日後においてもCZOP群がCAZ群に比し有意に高い菌消失寧を示した (P=0.049)。<BR>3. 投薬終了時に, CZOP群では52,4%(99/189), CAZ群では50.3% (94/187) の症例において治療日的が達成され, 抗菌薬の追加投与は不必要であった。治療Il的遠成度に関して両薬剤間に有意な差は認められなかった。<BR>4. 随伴症状の発現率はCZOP群3.9%(8/206), CAZ群5.0%(10/202) で両棊剤間に有意な差はなかった。臨床検査値異常変動として, CAZ群に好酸球増多がCZOP絆より多数認められたが, 臨床検査値異常出現率としては, CZOP群31.6% (65/206), CAZ群32.2% (65/202) で, 両群間に有意な差は認められなかった。<BR>以上の成績から, CZOPは臨床効果においてCAZと比較して非劣性であることが検祉された。また<I>S. pneumoniae</I>による下気道感染症に対するCZOPの早期治療効果が確認された。
著者
小林 宏行 武田 博明 渡辺 秀裕 太田見 宏 酒寄 享 齋藤 玲 中山 一朗 富沢 麿須美 佐藤 清 平賀 洋明 大道 光秀 武部 和夫 村上 誠一 増田 光男 今村 憲市 中畑 久 斉藤 三代子 遅野井 健 田村 昌士 小西 一樹 小原 一雄 千葉 太郎 青山 洋二 斯波 明子 渡辺 彰 新妻 一直 滝沢 茂夫 中井 祐之 本田 芳宏 勝 正孝 大石 明 中村 守男 金子 光太郎 坂内 通宏 青崎 登 島田 馨 後藤 元 後藤 美江子 佐野 靖之 宮本 康文 荒井 康男 菊池 典雄 酒井 紀 柴 孝也 吉田 正樹 堀 誠治 嶋田 甚五郎 斎藤 篤 中田 紘一郎 中谷 龍王 坪井 永保 成井 浩司 中森 祥隆 稲川 裕子 清水 喜八郎 戸塚 恭一 柴田 雄介 菊池 賢 長谷川 裕美 森 健 磯沼 弘 高橋 まゆみ 江部 司 稲垣 正義 国井 乙彦 宮司 厚子 大谷津 功 斧 康雄 宮下 琢 西谷 肇 徳村 保昌 杉山 肇 山口 守道 青木 ますみ 芳賀 敏昭 宮下 英夫 池田 康夫 木崎 昌弘 内田 博 森 茂久 小林 芳夫 工藤 宏一郎 堀内 正 庄司 俊輔 可部 順三郎 宍戸 春美 永井 英明 佐藤 紘二 倉島 篤行 三宅 修司 川上 健司 林 孝二 松本 文夫 今井 健郎 桜井 磐 吉川 晃司 高橋 孝行 森田 雅之 小田切 繁樹 鈴木 周雄 高橋 宏 高橋 健一 大久保 隆男 池田 大忠 金子 保 荒川 正昭 和田 光一 瀬賀 弘行 吉川 博子 塚田 弘樹 川島 崇 岩田 文英 青木 信樹 関根 理 鈴木 康稔 宇野 勝次 八木 元広 武田 元 泉 三郎 佐藤 篤彦 千田 金吾 須田 隆文 田村 亨治 吉富 淳 八木 健 武内 俊彦 山田 保夫 中村 敦 山本 俊信 山本 和英 花木 英和 山本 俊幸 松浦 徹 山腰 雅弘 鈴木 幹三 下方 薫 一山 智 斎藤 英彦 酒井 秀造 野村 史郎 千田 一嘉 岩原 毅 南 博信 山本 雅史 斉藤 博 矢守 貞昭 柴垣 友久 西脇 敬祐 中西 和夫 成田 亘啓 三笠 桂一 澤木 政好 古西 満 前田 光一 浜田 薫 武内 章治 坂本 正洋 辻本 正之 国松 幹和 久世 文幸 川合 満 三木 文雄 生野 善康 村田 哲人 坂元 一夫 蛭間 正人 大谷 眞一郎 原 泰志 中山 浩二 田中 聡彦 花谷 彰久 矢野 三郎 中川 勝 副島 林造 沖本 二郎 守屋 修 二木 芳人 松島 敏春 木村 丹 小橋 吉博 安達 倫文 田辺 潤 田野 吉彦 原 宏起 山木戸 道郎 長谷川 健司 小倉 剛 朝田 完二 並川 修 西岡 真輔 吾妻 雅彦 前田 美規重 白神 実 仁保 喜之 澤江 義郎 岡田 薫 高木 宏治 下野 信行 三角 博康 江口 克彦 大泉 耕太郎 徳永 尚登 市川 洋一郎 矢野 敬文 原 耕平 河野 茂 古賀 宏延 賀来 満夫 朝野 和典 伊藤 直美 渡辺 講一 松本 慶蔵 隆杉 正和 田口 幹雄 大石 和徳 高橋 淳 渡辺 浩 大森 明美 渡辺 貴和雄 永武 毅 田中 宏史 山内 壮一郎 那須 勝 後藤 陽一郎 山崎 透 永井 寛之 生田 真澄 時松 一成 一宮 朋来 平井 一弘 河野 宏 田代 隆良 志摩 清 岳中 耐夫 斎藤 厚 普久原 造 伊良部 勇栄 稲留 潤 草野 展周 古堅 興子 仲宗根 勇 平良 真幸
出版者
Japanese Society of Chemotherapy
雑誌
日本化学療法学会雜誌 = Japanese journal of chemotherapy (ISSN:13407007)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.333-351, 1995-07-31
被引用文献数
2

新規キノロン系経口合成抗菌薬grepafloxacin (GPFX) の内科領域感染症に対する臨床的有用性を全国62施設の共同研究により検討した。対象疾患は呼吸器感染症を中心とし, 投与方法は原則として1回100~300mgを1日1~2回投与することとした。<BR>総投与症例525例のうち509例を臨床効果判定の解析対象とした。全症例に対する有効率は443/509 (87.0%) であり, そのうち呼吸器感染症432/496 (87.1%), 尿路感染症11/13 (84.6%) であった。呼吸器感染症における有効率を疾患別にみると, 咽喉頭炎・咽頭炎19/22 (86.4%), 扁桃炎17/18 (94.4%), 急性気管支炎53/58 (91.4%), 肺炎104/119 (87.4%), マイコプラズマ肺炎17/19 (89.5%), 異型肺炎5/5, 慢性気管支炎117/133 (88.0%), 気管支拡張症48/63 (76.2%), びまん性汎細気管支炎17/19 (89.5%) および慢性呼吸器疾患の二次感染35/40 (87.5%) であった。<BR>呼吸器感染症における細菌学的効果は233例で判定され, その消失率は単独菌感染では154/197 (78.2%), 複数菌感染では22/36 (61.1%) であった。また, 単独菌感染における消失率はグラム陽性菌48/53 (90.6%), グラム陰性菌105/142 (73.9%) であり, グラム陽性菌に対する細菌学的効果の方が優れていた。呼吸器感染症の起炎菌のうちMICが測定された115株におけるGPFXのMIC<SUB>80</SUB>は0.39μg/mlで, 一方対照薬 (97株) としたnornoxacin (NFLX), onoxacin (OFLX), enoxacin (ENX) およびcipronoxacin (CPFX) はそれぞれ6.25, 1.56, 6.25および0.78μg/mlであった。<BR>副作用は519例中26例 (5.0%, 発現件数38件) にみられ, その症状の内訳は, 消化器系18件, 精神神経系13件, 過敏症3件, その他4件であった。<BR>臨床検査値異常は, 490例中49例 (10.0%, 発現件数61件) にみられ, その主たる項目は, 好酸球の増多とトランスアミナーゼの上昇であった。いずれの症状, 変動とも重篤なものはなかった。<BR>臨床効果と副作用, 臨床検査値異常の安全性を総合的に勘案した有用性については, 呼吸器感染症での有用率422/497 (84.9%), 尿路感染症で10/13 (76.9%) であり, 全体では432/510 (84.7%) であった。<BR>以上の成績より, GPFXは呼吸器感染症を中心とする内科領域感染症に対して有用な薬剤であると考えられた。
著者
工藤 雅文 片岡 剛 白神 幸太郎
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.211-215, 2023-07-15 (Released:2023-08-02)
参考文献数
14

[背景]エホバの証人信者は宗教的信条に基づき輸血治療を受け入れない.エホバの証人信者に心臓血管手術を行うにあたり,当院では絶対的無輸血の立場をとっている.[目的]エホバの証人信者に対して当院で行った心臓血管手術における治療戦略は妥当であったか後方視的に検討した.[方法]2013年1月から2020年12月までの間に,7例のエホバの証人信者に対して心臓血管手術を行った.年齢は64±10(49~78)歳であった.術前Hb値が13 g/dl以上になることを目標に,赤血球造血刺激因子製剤と鉄剤の投与を行った.初回外来受診時と術前のHb値はそれぞれ12.3±2.2(7.5~14.5)g/dl,14.1±1.4(11.1~15.2) g/dlであった.術中は入念な外科的止血を重視し,加えて希釈式自己血輸血と回収式自己血輸血を施行した.術後は必要に応じて赤血球造血刺激因子製剤と鉄剤の投与を行った.[結果]全例,無輸血で入院死亡は認めなかった.手術時間は307±103(157~478)分,体外循環時間は137±28(115~178)分,大動脈遮断時間は90±27(68~136)分であった.術後に心筋梗塞,脳血管障害,出血再開胸,急性腎障害,手術部位感染は認めなかった.追跡期間は3.7±2.6(0.3~7.4)年であり,全例生存を確認できた.[結論]エホバの証人信者に対する心臓血管手術において,絶対的無輸血の立場をとる当院での治療戦略は許容できるものと考えられた.
著者
兵藤 健志 工藤 絵理子 越戸 陽子 牧瀬 ゆかり 井川 友利子 大村 武史 片岡 真 星子 奈美 寺田 良司
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.311-326, 2010 (Released:2010-09-01)
参考文献数
41
被引用文献数
1

次世代OPACは,表紙画像やフォーマット等のビジュアル化,内容・目次など豊富な情報の提供,適合度によるソート,絞り込み検索,スペルチェック/サジェスト機能,ユーザー参加型機能など,ユーザー目線のインターフェースにより注目を集めてきた。また最近では,従来からの冊子資料に加え電子ジャーナルや電子ブックなどeリソースへのアクセス,機関リポジトリやデジタル化したコンテンツ等,図書館が提供する多様なコンテンツを集約し,それらの検索機能を提供することから,海外を中心にディスカバリ・インターフェースと呼ばれ始めている。九州大学附属図書館では,海外のオープンソース・ソフトウェアであるeXtensible Catalog(XC)によってディスカバリ・インターフェースCute.Catalogの導入を実現し,2010年4月に試験公開した。本稿では,XC選定までの過程とXCソフトウェアの概要について説明するとともに,本学での導入プロセスや課題の解決,そして今後の展望について紹介する。
著者
工藤 絵理子 片岡 真
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.51, no.7, pp.480-498, 2008 (Released:2008-10-01)
参考文献数
52
被引用文献数
5 4 6

「Web 2.0」の概念が主流になりつつある現在,図書館の世界でも,ビジュアル化,情報の表紙イメージや内容情報によって情報を強化した「次世代OPAC」が注目を集めている。スペルチェック/サジェスト機能,絞り込み検索,適合度によるソート,利用者参加型機能,統合検索機能などを備えたシステムが注目され,世界各国で開発・運用され始めている。本稿では,まず現在一般的な大学図書館で導入されているOPACの現状を述べ,次に海外での導入事例をもとに,次世代OPACの特徴を具体的に説明する。さらに,現在開発されている主な次世代OPACシステムについてレビューを行う。最後に,これらのシステムを日本の大学図書館で導入する際の課題と,課題解決に向けたいくつかの方法を提示する。
著者
工藤 俊
出版者
駒沢女子(短期)大学 学長 光田督良
巻号頁・発行日
no.26, pp.63-74, 2019-12-25

This paper presents a descriptive analysis of Japanese teen slang mazi-manzi “マジ卍” or manzi “卍” in comparison with yabai “やばい.” One of their significant characteristics is that they can describe either positive or negative situations: Tesuto goukaku, mazi-manzi! “I passed the exam, woo-hoo!” (positive) or Ame-ni nure-ta, mazi-manzi. “I got wet in the rain, shoot.” (negative), and Kono wan-piisu yabai-yo-ne! “This dress is super cute!” (positive) or Kaoiro yabai-yo.“ You look so pale.”( negative).While yabai has often been discussed in terms of syntax, phonology, semantics, andpragmatics in previous studies (Takeuchi(2007), Horasawa and Iwata (2009), Sano (2012), Konno( 2015) etc.), mazi-manzi has not because of its specificity and temporality.The interpretational similarity given above might lead us to consider that they share the same or similar linguistic features. A closer look at these two, however, reveals that they are to be distinguished. In particular, I would like to claim that (i) while yabai shows adjective-like behavior, mazi-manzi displays adjectival noun-like behavior, (ii) while yabai has adverbial use, mazi-manzi does not, and (iii) mazi-manzi imposes more burden of inference in the discourse than yabai.
著者
柏木 征三郎 工藤 翔二 渡辺 彰 吉村 功
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.74, no.12, pp.1044-1061, 2000-12-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
25
被引用文献数
27 29

リン酸オセルタミビル (Ro64-0796) は, A型およびB型インフルエンザウイルスの増殖に必須の酵素であるノイラミニダーゼ (NA) に対する強力で選択的な阻害剤オセルタミビル・カルボン酸 (Ro64-0802) のプロドラッグで, 経口投与後速やかにRo64-0802に変換される. 今回, 我々は, 16歳以上のインフルエンザウイルス感染症患者を対象に, リン酸オセルタミビル (Ro64-0796) 1日2回朝・夕食後5日間経口投与時の本剤の有効性および安全性を検討する目的で, プラセボを対照とした第III相二重盲検並行群間比較試験を実施した. 本試験に登録された患者数は316例で, プラセボ投与群162例, Ro64-0796投与群154例であった. このうち治験薬が投与され, かつインフルエンザウイルスの感染が確認された症例 (ITTI: Intent-to-treat infected population) は, プラセボ投与群130例, Ro64-0796投与群122例の計252例であった.その結果, Ro64-0796は, 有効性の主要評価項目であるインフルエンザ罹病期間を約1日 (23.3時間) 短縮させ (p=0.0216, 一般化ウイルコクソン検定), 投与3日目の鼻・咽頭ぬぐい液中のウイルス力価を有意に低下させた (p=0.0009, 共分散分析). さらに, 平熱までの回復時間 (36.9℃以下になるまでの期間) をプラセボに比べ約45%短縮させ, インフルエンザ症状の改善に要する時間の短縮ならびに症状の重症度軽減をもたらした. 一方, 安全性については, 有害事象として, 嘔気, 嘔吐, 腹痛などの胃腸障害が多くみられたが, 副作用の発現率は, プラセボ投与群40.9%, Ro64-0796投与群33.1%と, 両群で有意な差は認められず (p=0.155, x2検定), 臨床的に問題となる臨床検査値異常変動およびバイタルサインの異常も認められなかった.以上の成績から, Ro64-0796は, 臨床的に有効かつ安全な経口インフルエンザ治療薬であると考えられた.
著者
工藤 龍太 志々田 文明
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.453-469, 2010 (Released:2010-12-28)
参考文献数
50
被引用文献数
2

The main purpose of this study was to verify the process of formation and development of the concept of aiki used by Morihei Ueshiba, the founder of Aikido, and his disciples. The main points can be summarized as follows: 1. The term aiki has been used to refer to particular martial arts techniques and to a spiritual state that can be experienced by practicing Aikido. Morihei taught aiki as a technique, as shown in the memorandum of the Japanese Imperial Navy Admiral Isamu Takeshita around 1930. Kisshomaru Ueshiba, Morihei Ueshiba's son, also introduced these techniques in his book, “Techniques of Aikido” (1962), etc. However, neither Morehei Ueshiba nor his son explained about aiki in detail. Kenji Tomiki and Gozo Shioda used aiki as a term of technique, but they do not seem to have taught techniques under the name of aiki. 2. Onisaburo Deguchi, the head of Omoto-kyo, used the expressions “the union between a kami and a mortal” in 1921 and “the great love of the kami” in 1935, which Morihei later emphasized in relation to aiki. Omoto-kyo heavily influenced the building of Morihei's thoughts on aiki and Aikido. Aiki was likened to the great love of the Universe, Heaven and Earth, or the kami who nurtures all nature and mortals. In short, a) aiki is the union between the kami as love, and mortals, hence the practice of aiki is the purification of mind and body; b) the practice of Aikido creates a paradise for mortals on earth; c) because the kami does not oppose anyone, a practitioner does not oppose in Aikido. Morihei's thought influenced the policy of the succeeding organization of Aikido through Kisshomaru. 3. Morihei's four main pupils inherited his thoughts through several arrangements. Shioda explained aiki as “a technique for following the laws of nature”. Tohei insisted that aiki is “the union between the ki in heaven and earth and a mortal”. Sunadomari interpreted aiki as a combative technique and a divine work. Tomiki understood the term in two ways: one is a technique that falls into the category of kuzushi (balance-breaking), and the other is the unity of ki (energy) between nature and man. As to the way that Aikido should develop in the future, we need to study further Morihei's thoughts and their development under his pupils.
著者
仲本 桂子 渡邉 早苗 工藤 秀機 ノパラタナウォン サム 蒲原 聖可 ラダック ティム 土田 満 宮﨑 恭一 サーシャン ディリープ 田中 明
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.267-278, 2013 (Released:2013-04-18)
参考文献数
36

ベジタリアンの研究によると、ベジタリアンは、ビタミン B 12、 ビタミンD の摂取量が非ベジタリアンより有意に低く、カルシウム、鉄、亜鉛、ビタミンA、ビタミンB 2 、n-3 系多価不飽和脂肪酸(以下、n-3 系脂肪酸)の低摂取が懸念される。そこで、日本人用ベジタリアンフードガイド(JVFG)を用いて、日本人ベジタリアン男性(n=24)と女性(n=60)を対象に、栄養教育を行い、栄養状態の改善を試みた。 JVFG の栄養教育の介入前と後に、食事記録法による食事調査を行った。うち、16 名に対し、身体計測および血糖、尿酸、アルブミン/グロブリン比(A/G)、ナトリウム、カリウム、カルシウム、無機リン、鉄、総コレステロール、高比重リポたんぱくコレステロール、中性脂肪、ヘモグロビン(Hb)、プレアルブミンの血液生化学検査も行った。 結果、ベジタリアンで低摂取が懸念された栄養素のうち、女性において、ビタミンB 2(p<0 . 05)、亜鉛(p<0 . 01) の摂取が有意に増加した。しかし、ビタミンA、ビタミンD、ビタミン B 12、カルシウム、n-3 系脂肪酸の摂取量に有意な増加は見られなかった。身体・血液生化学成績では、女性においてA/G(p<0 . 01)、カルシウム、Hb(p<0.05)が有意に増加し、血糖(p<0.01)、尿酸、上腕三頭筋皮下脂肪厚(p<0.05)は有意に低下した。 以上より、日本人ベジタリアン、特に、女性において、JVFG の栄養教育介入により、栄養状態が変化することが示唆された。
著者
工藤 裕子
出版者
日本華僑華人学会
雑誌
華僑華人研究 (ISSN:18805582)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.7-27, 2021 (Released:2023-09-27)
参考文献数
62

This study focused on Hakka merchants in Batavia (now Jakarta) in the Dutch East Indies, with the aim of examining their position within Chinese society, which has been overlooked in previous studies of Indonesian Chinese history. In addition, this study explored the characteristics of their economic activities across colonial territories and East Asia, including China and Japan. At the beginning of the 20th century, several Hakka merchants who were appointed Chinese officers by the colonial government played a major role in the Chinese nationalist movement. Their social status was based on the success of the trading business since the mid-19th century, and with the development of liberal economics and intra-Asian trade, they became wealthy merchants who established large trading houses in the Chinese quarter. They mainly handled inexpensive daily goods from China and Japan, and formed a distribution network that involved import, wholesaling, and retailing, and incorporated newcomers from their area in China. Their network predated the arrival of Japanese retailers and brought light industrial goods from East Asia to the local market in place of expensive European goods. In terms of political orientation, they were strong supporters of the Republic of China and Kuomintang. These Hakka leaders were clearly key actors in the mobilization of people, goods, money, and information that increasingly circulated throughout Asia. The influence of the Hakka Chinese merchants on Indonesian society was not insignificant, as they were active at a time when the Dutch East Indies were being integrated into the international economy.
著者
工藤 雅樹
出版者
一般社団法人 日本考古学協会
雑誌
日本考古学 (ISSN:13408488)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.139-154, 1994-11-01 (Released:2009-02-16)
参考文献数
122

古代蝦夷については,アイヌ説と非アイヌ説の対立があることはよく知られている。戦後の考古学研究の成果は,東北北部でも弥生時代にすでに稲作が行なわれていたことを証明し,近年の発掘調査によって奈良,平安時代の東北北部の集落が基本的には稲作農耕をふまえたものであることも確実とされるに至っている。このようにして蝦夷日本人説は一層の根拠を得たと考える人もいる。しかし蝦夷非アイヌ説の問題点のひとつは,考古学的にも東北北部と北海道の文化には縄文時代以来共通性があったし,7世紀以前の東北北部はむしろ続縄文文化の圏内にあったと考えられ,アイヌ語地名が東北にも多く存在することなど,蝦夷アイヌ説が根拠とすることのなかにも,否定しえない事実があることである。もうひとつの問題点は,蝦夷非アイヌ説が稲作農耕を行なわない,あるいは重点を置かない文化を劣った文化と見なす考えを内包していることである。この点を考え直し,古代蝦夷の文化の縄文文化を継承している側面を正当に評価する必要がある。従来の蝦夷非アイヌ説は地理的には畿内に,時間的には稲作農耕の光源で東北の文化を見た説,蝦夷アイヌ説は地理的には北海道に,時間的には縄文文化に光源を置いて蝦夷の実体を照射した説,と整理しなおすこができる。しかし二つの異なる光源でそれぞれに浮かびあがるものは,どちらも東北の文化の実体の一側面にほかならない。北海道縄文人が続縄文文化,擦文文化を経過して歴史的に成立したのがアイヌ民族とその文化であると見るならば,これは東日本から北日本にかけての典型的縄文文化の担い手の子孫のたどった道のひとつということになり,早くから稲作文化を受容し,大和勢力の政治的,文化的影響を受けた,もうひとつの典型的縄文文化の担い手の子孫のたどった道と並列させることができる。古代蝦夷は両者の中間的な存在で,最後に日本民族の仲間に入った人々の日本民族化する以前の呼称とも,北海道のアイヌ民族を形成することになる人々と途中までは共通の道をたどった人々とも表現できる。このように考えると,現段階では蝦夷がアイヌであるか日本人なのかという議論そのものが,意味をなさないといっても過言ではないのである。
著者
工藤 充 秋谷 直矩 高梨 克也 水町 衣里 加納 圭
出版者
北海道大学高等教育推進機構 高等教育研究部 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.107-122, 2014-06

This practice report raises some questions of dialogical workshop design about science and technology policy topics. Focusing participant’s talk, we analyze relationship between presenting participant’s identity and facilitator’s practice of consolidation of opinions. As a result, we find following points. (1) Presenting identity when particular participant express his opinions make/form relationship with other participant’s identity.( 2) Participant’s identity changes at each time, and relies on course of interactional context. These results provide the resource when we rethink relationship between conservation of opinions diversity and methods of gathering various opinions, and design workshop that oriented deliberative communication in public.