- 著者
-
工藤 昭彦
斎藤 健二
- 出版者
- 東京理科大学
- 雑誌
- 特定領域研究
- 巻号頁・発行日
- 2007
NiをドーピングしたZnS光触媒が,正孔捕捉剤存在下,可視光照射下でCO_2還元反応に活性を示す光触媒であることを初めて見いだした。NiドーピングZnS光触媒は,可視光照射下でほぼ定常的にH_2とHCOOHを生成した。一般に,光触媒反応ではPtなど助触媒が必要であるが,この反応において助触媒は不要であり,光触媒自身が活性点を有していることが特徴である。カットオフフィルターを用いたNiドーピングZnSによるHCOOH生成反応の波長依存性より,HCOOHが生成し始める波長と吸収スペクトルの立ち上がりが一致した。このことから,NiドーピングZnSによるCO_2還元反応は,Niのドナー準位から伝導帯へのエネルギーギャップ励起によって進行していることが明らかとなった。一方,(ZnGa_2S_4)-(Znln_2S_4)複合体が,正孔捕捉剤存在下,可視光照射下でのCO_2還元反応に活性な光触媒であることを初めて見いだした。主なCO_2還元生成物として,COとHCOOHの両方が得られた。CO_2還元反応の活性は用いる正孔捕捉剤の種類に大きく依存しており,NaPH_20_2を用いた場合に最も高い活性を示した。また,基盤となるZnIn_2S_4ではほとんどCO_2還元反応が進行しないが,それにGaを10%置換したZnGa_<0.2>In_<1.8><S_4>を用いた場合は,CO_2還元反応の活性が飛躍的に向上した。Znln_2S_4にGaが置換されることで,CO_2還元反応に対するドライビングフォースが増加し,活性点が形成されたため活性が飛躍的に向上したと考えられる。