著者
八幡 昌紀 永嶋 友香 大寺 佑典 杉浦 颯希 周藤 美希 富永 晃好 向井 啓雄 國武 久登
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.29-37, 2021 (Released:2021-03-31)
参考文献数
39
被引用文献数
1

カンキツ類の倍数性育種を効率的に進めるために,種子の形態と重さに着目し,二倍体ブンタン‘晩白柚’(Citrus maxima(Burm.)Merr.)と三倍体グレープフルーツタイプカンキツ ‘オロブランコ’(C. maxima × C. paradisi)との交雑を行い,得られた種子の形態および重さと,それぞれの種子から得られる実生の倍数性との関係を調べた.‘オロブランコ’ を交雑した場合,1果実当たりの総種子数は二倍体ナツミカン ‘川野夏橙’ を交雑した対照区より有意に少なくなり,不完全種子としいなが多く出現した.‘オロブランコ’ との交雑から得られた実生の倍数性をFCMで解析した結果,対照区と同様に完全種子のほとんどが二倍体であったが,200 mg未満の完全種子からは三倍体が高い頻度で出現し,500 mg以上の大きい完全種子からは四倍体の出現が認められた.不完全種子からは三倍体と異数体が多く出現し,さらに半数体も2個体得られた.以上より,これらの種子を選抜することにより効率的に様々な倍数体を獲得できると考えられる.
著者
杉浦 幸子 三澤 一実 米徳 信一 山口 真美
出版者
武蔵野美術大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

「超初期学習者」である乳幼児の心理的発達に、「美術館」環境、「アート作品」、それらに関わる「人」が寄与すると仮定し、それらが発する情報を乳幼児が取得する教育プログラムをデザイン・実施し、彼らの反応を映像記録し、保護者、主催者から聞き取りを行った。その結果、主に次の3点が観察できた。乳幼児は、1.色や線、形といった造形要素、照明、床、家具といった建築的要素、周囲の人的刺激に反応する、2.反応に個人差がある、3.過去の経験や記憶と受けた刺激を関連づけている可能性があるそこから、「美術館」は乳幼児の心理的発達に寄与する可能性があるとし、成果を印刷物にまとめ、国内の美術館、自治体に配布・共有した。
著者
星野 智 大川 真一郎 今井 保 久保木 謙二 千田 宏司 前田 茂 渡辺 千鶴子 嶋田 裕之 大坪 浩一郎 杉浦 昌也
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.130-135, 1992-02-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
17

悪性腫瘍の心転移はまれでないが生前診断は困難なことが多い.今回剖検例にて発見された転移性心腫瘍につき臨床病理学的検討を行った.1980年から1987年の連続剖検2,061例のうち肉眼的に転移性心腫瘍の認められた64例を対象とした.年齢は55歳から93歳(平均76.6歳),男39例,女25例であった.全悪性腫瘍は845例であり,心転移率は7.6%であった.原発巣は肺癌34例が最も多かった.心転移率は肺癌,胃癌などが高かったが,消化器癌では低かった.転移部位は心膜81.3%が最も多く,心内膜へ単独に転移した例はなかった.心膜へはリンパ行性転移が多く,心筋へは血行性転移が多かった.特に肺癌は心膜の転移,心房への転移が多い傾向にあった.心単独の転移はまれで55例は他の臓器へ転移が認められ,肺,肝,胸膜,骨に多かった.心電図異常所見は95%にみられたが,転移部位による特異性は認められなかった.しかし心膜転移例で心膜液量増加に伴い低電位差と洞頻脈が高率に出現してきた.悪性腫瘍を有する患者では常に心転移を念頭におき,注意深い臨床観察が必要である.
著者
大西 新介 小野寺 良太 杉浦 岳 高橋 宏之 近藤 統 岡本 博之 大城 あき子 清水 隆文 森下 由香 奈良 理
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.469-474, 2019-06-30 (Released:2019-06-30)
参考文献数
8

目的:消防覚知段階の情報から墜落外傷のトリアージが可能か検討する。方法:2003年4月からの4年間に当院へ救急搬送された墜落外傷症例を導出コホート,検証コホートに分けて後方視的に調査した。まず墜落高の重症外傷(ISS≧25)予測能についてROC解析を行った。次に重症予測にかかわる因子の多変量解析を行い,スコアリングを作成し検証した。結果:導出コホート111例において墜落高の重症予測能はAUCが0.65であり,墜落高の閾値は4mとなった。多重ロジスティック解析では高所,高齢,受傷時の意識障害が独立した重症予測因子であった。それぞれの因子を1点としたスコアリングを用いるとAUCが0.76となった。検証コホート128例においてもAUCは0.77であった。結論:墜落外傷においては,墜落高だけではなく高齢,受傷時の意識障害の情報を付加することでより正確なトリアージが可能となる。
著者
河村 尚登 杉浦 博明
出版者
一般社団法人 画像電子学会
雑誌
画像電子学会誌 (ISSN:02859831)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.935-943, 2006 (Released:2012-03-01)
参考文献数
15
被引用文献数
3
著者
杉浦 伸也 藤井 英太郎 藤田 聡 中村 真潮 伊藤 正明
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.SUPPL.3, pp.S3_86-S3_91, 2013 (Released:2015-01-09)
参考文献数
9

症例は36歳, 男性. 動悸を主訴に近医を受診した. 12誘導心電図にデルタ波はなく, ホルター心電図で心拍数150/分のlong RP'頻拍を認めた. 心臓電気生理学的検査で再現性をもって周期454msの頻拍が誘発された. 頻拍中の心房最早期興奮部位は左側壁で, 頻拍中にヒス束が不応期の時相に右室から加えた期外刺激にて早期心房補足現象が認められた. 頻拍中の室房伝導時間は220msと長く, 頻拍中の右室頻回刺激 (周期400ms) にて, 室房伝導にWenckebach blockを認めた. 以上の所見から本頻拍は左側壁に存在するslow Kent束を逆行性伝導とする房室回帰性頻拍と診断した. 同部位に対する通電にて副伝導路の離断に成功した. Slow Kentを介した房室回帰性頻拍の 1例を経験したため報告する.
著者
杉浦 佳奈 十代田 朗
出版者
一般社団法人 日本観光研究学会
雑誌
観光研究 (ISSN:13420208)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.59-68, 2022 (Released:2023-06-23)
参考文献数
21

近年、我が国ではアウトドアブームが再来し、キャンプ場とホテルの両方の利点を持つグランピングは特に開発が盛んである。一方で、本来のグランピングのあるべき姿からずれが生じている施設も見受けられる。本研究では、グランピングとはどのような特徴を持つのか知るために、英・米・日におけるグランピングの歴史や現在の施設の特徴を明らかにした。そして、豪華さ・地域振興・環境配慮のバランスのとれた施設を理想のグランピング施設と考え、計 578 施設を6つのタイプに分類した。各タイプにどのような特徴があるのかを明らかにしたところ、日本では〔豪華さ重視型〕と〔大型キャンプ場型〕といった贅沢志向の傾向が強いと言える。
著者
杉本 達哉 杉浦 聡志 高山 雄貴
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.9, pp.23-00091, 2023 (Released:2023-09-20)
参考文献数
46

本研究では,交通混雑を考慮したFujita and Ogawa (1982)型の定量的都市経済モデルを開発する.そのために,開発したモデルにポテンシャル関数が存在することを示したうえで,その性質を利用した効率的な数値解析手法を提示した.そして,開発したモデルを使った二次元格子状空間下での解析により,本モデルが複数都心の形成を表現できることを示した.さらに,1,656地点・11.7万リンクからなる金沢都市雇用圏を対象とした,具体的な解析例を通じて,本モデルが複雑な道路ネットワークを含む計算を効率的に実施できることを明らかにした.
著者
中川 理 赤松 加寿江 加藤 玄 野村 啓介 伊藤 毅 杉浦 未樹 大田 省一 岸 泰子 上杉 和央 中島 智章 坂野 正則
出版者
神戸女子大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

まず日本国内におけるテロワール調査として東京近郊における参照産品として、野田市の醤油工場見学および研究会を実施。ワイン以外にも「テロワール」の形成がどのようになされているのを検討する上で参照事例となった。将来的な成果発表を行う国際シンポジウムのため、シャンパーニュメゾンのドゥーツ社会長へプレゼンテーションを行い、11月には宇治茶の製茶会社である福寿園の担当者と研究交流会を開催した。1月には台湾調査を実施し、多様な茶生産が流通とともに変容しながらも、テロワールを構築している状況を調査することが出来た。2月には「テロワールと流通」を軸にテロワール報告会を実施。シャトー・クーテットに関する調査分析の進捗を確認し、「テロワール」形成の現場に触れ、研究を深化することができている。一方、2020年3月初めには、フランス・ボルドーのサンテミリオン調査を予定していたが、コロナ発生により断念することとなり、2020年度、2021年度に予算繰り越しにより、国外調査によらない研究活動を実施した。2020年度は研究会をオンライン中心で実施し、9月には東アジア環境史学会大会においてポスターセッション「テロワール研究」を立ち上げ、ボルドー大学のフレデリック・ブトゥル教授をコメンテーターにしたパネルディスカッションを実行することができた。2021年度には3回のオンライン中心の研究会を実施し、また2月に「若手研究セミナー」を京都で開催し、研究を深化することができた。また京都近郊和束町茶業集落および滋賀県のワイナリーの生産現場の調査を行い知見を深めることが出来た。また、国内におけるテロワールの現地調査として、九州における嬉野茶産地やワイン生産の現場の調査を実施することができ、国内外におけるテロワールの実態を把握することができた。
著者
川上 治 古池 保雄 安藤 哲朗 杉浦 真 加藤 博子 横井 克典 都築 雨桂
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.51-55, 2017 (Released:2017-05-31)
参考文献数
15

目的:脳梗塞後はじめて発作を発症した場合,てんかんと診断できるか検討するため,有事率とそのリスク,非誘発性発作の再発率等について多数例を後ろ向きに調査した.方法:当院に入院した脳梗塞急性期(transient ischemic attack;TIAを除く)患者2071名を対象に,けいれん発作発症例を抽出した.年齢,性,皮質病変,Oxford分類,MRIでの深部白質病変等を評価項目とした.結果:脳梗塞発症後,急性症候性発作(acute symptomatic seizure;ASS)は43例で過半数は発症当日であった.非誘発性発作(unprovoked seizure;US)は,100~300日でピークとなるがその後も増加を続け,5年間で73例であった.ASSのリスクは,皮質病変・total anterior circulation infarction;TACI(Oxford分類),USのリスクは,皮質病変・TACI・partial anterior circulation infarction;PACI(Oxford分類)・deep and subcortical white matter hyperintensity;DSWMH(グレード3・4)・75歳未満(多重ロジスティック回帰法)であった.再発性USは,US群74%,ASS群9%と有意にUS群で高かった.初発より抗てんかん薬(antiepileptic drugs;AEDs)を投与すると有意に再発率が減少した.非誘発性発作の重積発作発生率は,AEDs投与群19.6%,非投与群34.3%と有意にAEDs投与群が少なかった.結論:脳梗塞慢性期に初発発作を発症した場合は,てんかんと診断できる.AEDsは,US再発およびてんかん重積状態の予防に有効であり初発USより投与開始を検討する必要がある.
著者
雨宮 伸幸 水谷 美保子 梨本 友美 川口 絢美 岩谷 洋介 能木場 宏彦 山﨑 麻由子 杉浦 秀和
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.243-249, 2023 (Released:2023-06-28)
参考文献数
25

腹膜透析(PD)関連腹膜炎はPD患者にとって重要な合併症であり,セファロスポリン系抗菌薬は初期治療に選択され得る薬剤である.86歳女性,腎硬化症による慢性腎臓病のためPDを導入.PD導入5か月後に細菌性腹膜炎を発症し,セファゾリン(CEZ)1g,セフェピム(CFPM)1g/日の腹腔内投与を開始した.腹膜炎は改善傾向となるも第5病日から意識障害が出現した.頭部MRIで原因となる異常を認めず,脳波検査で三相波を認め,抗菌薬関連脳症(AAE)が疑われた.第5病日CEZ中止,第6病日CFPMをメロペネムに変更し,意識障害は徐々に改善し第16病日には清明となり,第29病日に退院した.PD患者に発症したAAEの報告は限られており,さらに推奨される腹腔内投与量でのAAEの既報はない.しかし,PD患者ではCFPMの除去効率は悪く,用量を調節し腹腔内投与を行った場合でもAAEには注意が必要である.
著者
井戸 洋旭 堀井 恵美子 洪 淑貴 杉浦 洋貴 山賀 崇
出版者
日本肘関節学会
雑誌
日本肘関節学会雑誌 (ISSN:13497324)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.82-84, 2017 (Released:2019-06-05)
参考文献数
6

Hume骨折に尺骨塑性変化を合併したとする報告を散見する.当院でも類似の症例を2例経験した.受傷時年齢は6歳と14歳,新鮮例の1例(6歳)は橈骨頭の安定化は容易ではなく,慎重なリハビリテーションを要した.陳旧例の1例(14歳)は尺骨矯正骨切り術を行ったが亜脱臼が残存した.肘頭骨折,尺骨塑性変化が近位橈尺関節の関節適合性に影響を与える症例においては,尺骨の矯正または過矯正を行いながら,慎重に橈骨頭の安定性を評価することが必要である.
著者
平沢 尚彦 本山 秀明 山田 恭平 杉浦 幸之助 栗田 直幸
出版者
公益社団法人 日本雪氷学会
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.67-77, 2021 (Released:2021-09-01)
参考文献数
19

超音波積雪深計を搭載したAWS(Automatic Weather Station)を,2016 年1 月から2019 年10 月 にかけて4 つの地点に新設した.それらの地点は,海岸域のH128,カタバ風が発達する大陸斜面域 のMD78,大陸斜面上部の内陸高地域のNRP,氷床頂上部のNDF である.この観測システムの目的 は,広域にわたる南極氷床の地域特性を把握しながら,総観規模擾乱や日変化による堆積の時間変化 を明らかにすることである.本論文はこれらの4地点で観測された雪面レベルの時間変動について調 べた.その結果以下のことが分かった.1)雪面レベルの時間変化には階段状の変動とパルス状の変 動がある.雪面レベルの上昇は主に階段状の上昇によりもたらされる.2)H128 及びNRP の比較に よって広域に同時に雪面レベルの変動が表れた4 つの事例が見いだされた.これらの事例では総観規 模擾乱に伴う雲域が氷床上に侵入していたことがNOAA の赤外画像から示唆された.3)雪面レベル の比較的大きな変動は異なる地点で同じ日に起こっていないことの方が圧倒的に多い.4)NRP 以外 の3地点において,暖候期にゆっくりとした雪面レベルの低下が観測された.