著者
村上 聖一
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.40-57, 2021

太平洋戦争下、日本の陸海軍は「南方」と呼ばれた東南アジアの占領地に30以上の放送局を開設した。これらの放送局の活動については、1950年代にNHKによる資料収集や聞き取り調査が行われ、成果が取りまとめられたが、その後の軍政全般に関する研究も踏まえ、改めて検証を行う余地があると考えられる。このため、今号から3回シリーズで南方放送史について再考することにした。南方地域で行われた放送の目的は、▽日本人向けの情報伝達、▽対敵宣伝、▽現地住民の民心安定の3つに分けられるが、本シリーズは、大東亜共栄圏構想を浸透させるうえで放送が果たした役割を検証する観点から、現地住民向け放送に焦点を当てる。シリーズでは、放送の概要を確認したうえで(第1回)、地域別に蘭印(第2回)、フィリピン・ビルマ(第3回)で行われた放送について検討する。このうち今回は、放送実施までの過程を中心に、陸海軍、日本放送協会の文書に基づきつつ検証した。その結果、南方地域を軍事占領する構想が現れたのが1940年以降だったこともあり、放送に関しても開戦数か月前になって放送協会が南方の放送事情の調査を本格化させるなど、戦前にはほとんど検討がなされていなかったことがわかった。また、開戦後も、運営主体を軍にするか放送協会にするかで議論になるなど実施の枠組みが定まらず、番組内容も放送局の設置と並行して検討が進むなど、準備不足の中で放送が始まったことが資料から浮かび上がった。長期的展望に立った計画が存在しない中、南方での放送が始まっていったことになる。
著者
村上 淳
出版者
一般社団法人 日本人工臓器学会
雑誌
人工臓器 (ISSN:03000818)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.214-217, 2021-12-15 (Released:2022-03-15)
参考文献数
1
著者
久保田 恭行 西山 哲 矢吹 信喜 福田 知弘 手塚 仁 尾畑 洋 村上 治
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F3(土木情報学) (ISSN:21856591)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.I_77-I_88, 2021 (Released:2021-03-15)
参考文献数
37

トンネル工事での肌落ち災害を防止するため,作業中は切羽の状態を常時継続的に監視する必要がある.切羽での大規模な崩壊の予兆として,崩壊までの時間に差はあるものの小規模な落石が見られる場合があるが,目視では落石の確認が困難であるため,大規模崩壊に巻き込まれ,重大災害に繋がる可能性がある.そこで,筆者らはAIにより切羽のみに解析範囲を制限し,背景差分法を軸に面的に落石を検出するシステムの開発を検討した.本研究では,落石検出の処理の解析範囲を切羽に制限することや,粉塵といった微小な物体や映像のノイズ除去等について検討した.次に切羽の大規模崩壊の前兆となる落石を想定した映像を用いて画像解析を行った.その結果,小規模な落石を検出でき,肌落ち災害の発生リスクを軽減する可能性を示した.
著者
川村 比呂志 山地 博介 村上 充 日名 一誠 喜多 利正 津島 義正
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.521-526, 2009 (Released:2013-05-27)
参考文献数
6

当院では心室再同期療法へのアップグレード手術を18例経験した. 18例のうち以前植え込まれていたペースメーカもしくは植込み型除細動器(implantable cardioverter defibrillator; ICD) 本体側の鎖骨下静脈が閉塞していたものが3例, 狭窄していたものが3例, そのうち狭窄のために冠静脈洞用シースの操作が困難であったものが1例あった. 鎖骨下静脈の閉塞があっても両室ペースメーカへのアップグレードの場合, 反対側への植え込みで対処可能であるが, その場合皮下トンネルを用いたリード延長を考慮する. また右側ペーシング機能付きICDへのアップグレード症例では除細動閾値の点でやや不利となる. 症例を呈示しそれぞれの手技上の問題点を検討する.
著者
村上 雄一 服部 達彦 内田 〓
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.72, no.9, pp.1945-1948, 1969-09-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
8
被引用文献数
5

エチレンと酢酸から酢酸エチルを常圧気相流通法で直接合成する反応において数種の触媒を検討した。活性の順序は多孔性イオン交換樹脂(Amberlyst15)>ケイタングステン酸-シリカゲル>リン酸-ケイソウ土>ゲル型イオン交換樹脂(AmberliteIR-120)であった。ケイタングステン酸触媒は200℃ではかなりの活性をもつが,活性の経時低下が著しかった。200℃以上ではかえって酢酸エチル収率は低下し,代ってアセトンの生成が急激に増加した。多孔性イオン交換樹脂触媒ではほとんど副反応なしに,140℃,SV175hr-1,エチレン対酢酸モル比5以上でほぼ平衡収率(59%)で酢酸エチルを生成した。エチレン対酢酸モル比の影響が大で,この比が大きいほど酢酸エチル収率が大きく,酢酸の反応抑制作用が見られた。原料中の水の抑制作用はさらに強く,エステル収率を低下させた。140℃では10時間までこの触媒の劣化はほとんどないが,150℃ではかなりの劣化が観測された。通常のゲル型樹脂は活性を示さず,使用後は完全に崩壊していた。
著者
奥田 知明 村上 道夫 内藤 航 篠原 直秀 藤井 健吉
出版者
一般社団法人 日本リスク学会
雑誌
リスク学研究 (ISSN:24358428)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.207-212, 2021-06-25 (Released:2021-06-23)
参考文献数
32
被引用文献数
1

Since airborne transmission has been considered as a possible infection route for the novel coronavirus in addition to contact and droplet infection routes, ventilation is an important measure against airborne route. In this paper, we describe the history of setting regulatory standard values and the interpretation of CO2 concentration as a measure against infectious diseases. Although the standard value of 1,000 ppm is not intended originally for infection control, it is practically useful as a guide value for potential infection risk management.
著者
村上 穣 小松 裕和 高山 義浩
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.18-23, 2011-05-30 (Released:2011-08-18)
参考文献数
12

本邦ではいまだ感染症科のない医療機関が多く,そうした医療機関では院内感染への対応は各科の担当医師に委ねられている。とくにカンジダ血症のような重篤な感染症では必ずしも適正な診療が行なわれていないことが考えられる。我々は感染症科のない地域基幹病院である佐久総合病院において,2004年から2008年までに血液培養陽性でカンジダ血症と確定診断された全43例を対象に,カンジダの菌種,背景因子,治療の内訳,合併症,予後,米国感染症学会 (IDSA) ガイドラインの遵守率についてretrospectiveに検討した。カンジダの菌種はCandida albicansが最多であった。背景因子としては患者の84%に抗菌薬が投与され,79%に中心静脈カテーテル (CVC) が留置されていた。経験的治療としてはfosfluconazoleとmicafunginがそれぞれ35%を占めていたが,23%の患者は抗真菌剤が投与されていなかった。CVCが留置されていた34例中,診断後に抜去されたのは23例であった。カンジダ眼内炎の検索目的で眼科紹介が行なわれたのは42%であった。IDSAガイドラインの遵守率は42%で,カンジダ血症発症から28日後の死亡率は33%であった。本調査結果により当院ではカンジダ血症の診療について課題が多いことが明らかになったが,このような状況は感染症科のない地域基幹病院の一般的な現状と考えられる。今後はカンジダ血症に対するガイドラインに沿った適正な診療が行なわれる体制を,感染症科のない地域基幹病院でも定着させてゆくことが必要である。
著者
広瀬 雅一 井上 真 村上 信行 佐藤 英治 長崎 信浩 吉冨 博則
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.2020-017, 2021 (Released:2021-02-19)
参考文献数
10

改訂された薬学教育モデル・コアカリキュラムの実務実習では,「代表的な8疾患」に対する実践的な臨床対応の基本を,患者との関わりを通して修得することが求められている.しかしながら,実習施設によって体験できる疾患が限られることもあるため,薬局実習から病院実習を通して,代表的な8疾患を学習できるよう配慮する必要がある.そこで,薬局実習の期間中に,より広範な疾患を体験して病院実習に引き継ぐため,実習の受入薬局では体験が困難な疾患を,他の薬局(以下,協力薬局)で体験する薬局間連携実習を試行した.協力薬局で学ぶ疾患を予め選定し,1日ずつの実習を3週間程度の間隔で計3日間行った結果,対象者(13名)全員が服薬指導と薬歴の記入を体験(のべ患者数:3–23例,中央値5例)し,患者での薬学的管理を実践することができた.この薬局間で連携する実習は,より多くの疾患を薬局実習で体験する手段の一つになり得ることが示された.
著者
上岡 玲子 廣瀬 通孝 増田 敦士 村上 哲彦
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では複数の周波数帯のRFIDタグを糸にして布に織り込んだハイブリッドRFIDテキスタイルの自動織技術を実現し,広域空間内において人および移動体の位置検出を効率的に実現するため,布の特性を活かしたインタフェースの設計,位置検出システムを効率的に実現するためのマッピング生成装置の開発,およびハイブリッドRFID環境での位置検出の評価を行い,実用化の実現可能性について知見を得た.
著者
村上 宣寛 村上 千恵子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
性格心理学研究 (ISSN:13453629)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.29-39, 1997
被引用文献数
2 17

本研究の目的は, 主要5因子を測定する質問紙を作成することである. 予備調査では, 試作版の95項目, GoldbergのSD尺度, MINI性格検査を大学生236名に実施した. SD尺度は5因子モデルのよいマーカーであることが分かった. また, 試作版の因子分析から69項目が選択された. 本調査では, 試作版に, MINIの43項目, 新たに執筆した項目を加え, 合計300項目の質問紙を作成した. その質問紙と, GoldbergのSD尺度, MINIを大学生496名に実施した. MINIの結果から洞察力に問題がある被験者を除き, 443名を分析の対象とした. 最初に暫定版質問紙300項目とSD尺度の各次元の合計点との相関を求め, 合計150項目を選出した. グループ主軸法による分析を行い, 60変数を抽出し, 最終的に, 主因子法と因子パーシモニー基準による直交回転を行った. その後, MINI性格検査の建前尺度12項目を追加し, 並ベ換えを行った. 基準関連妥当性としてSD尺度の各次元の合計点との相関を算出すると, 0.510から0.774の範囲に分布していた. 信頼性をみるために, 主要5因子性格検査(決定版)を大学生227名に1週間間隔で2度実施した. 結果は0.853から0.953の範囲であった. 主要5因子性格検査(決定版)の妥当性, 信頼性はともにかなり高いと考えられる.
著者
森 慶太 越川 真男 明石 健吾 西倉 哲司 嶋津 啓二 高折 光司 西口 健介 村上 徹 依藤 壮史 江口 恵梨子 田中 敬雄 仙崎 英人 桑原 隆
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.43, no.10, pp.853-857, 2010-10-28 (Released:2010-11-17)
参考文献数
11
被引用文献数
1

透析患者に用いるリン(P)吸着剤として,従来からの沈降炭酸カルシウム(Ca)や非Ca性である塩酸セベラマーに加え,新たなP吸着剤として炭酸ランタン(La)が用いられるようになった.炭酸Laは非Ca性で,炭酸Caやアルミニウムゲルと同等のP吸着能力があるとされ,さらにほぼ体内に吸収されないため安全性が高いといわれている.しかし,少量ではあるが複数の臓器に沈着することが知られており,長期投与における安全性が課題となっている.今回われわれは,炭酸Laの使用を開始したPコントロール不良の末期腎不全患者が,虚血性腸炎を起因として急変し死亡した症例を経験した.生前の腹部X線および腹部CTでは円形の高濃度の陰影を4個認め,噛まずに内服した炭酸Laチュアブル錠が疑われた.病理解剖では著明な肥大型心筋症と広範な虚血性腸炎を認めたほか,ほぼ原型をとどめた炭酸Laチュアブル錠が消化管内に計4個確認された.死因は肥大型心筋症および虚血性腸炎と考えられたが,炭酸Laチュアブル錠自体と虚血性腸炎との直接的な因果関係は不明であった.炭酸Laチュアブル錠は崩壊剤を含まないため噛み砕かずにそのまま内服すると溶解しにくく,十分なP吸着能を発揮できないことが予想された.より良いPコントロールのため,内服に関しては充分な患者教育が必要と考えられる.
著者
村上 千鶴子
出版者
学校法人 開智学園 開智国際大学
雑誌
日本橋学館大学紀要 (ISSN:13480154)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.15-26, 2009-03-01 (Released:2018-02-07)

統合失調症犯罪者の認知について、ロールシャッハ検査の分析を用いて検討した。方法:司法精神鑑定に付された40 名の統合失調症犯罪者の精神鑑定時のロールシャッハ検査所見を統計学的に分析した。結果・考察:片口の修正BRS が、病型によって有効度が異なることが分かった。また、形態の崩れは解体群で顕著であり、形態の崩壊が言語連合の弛緩につながる可能性も示唆された。統合失調症素因は、のちの形態の崩れを予測する因子としては有効ではないことが示唆された。さらには、明確な誘因なく生起した犯罪においては、明らかな質的論理構造変化(思考障害)が存在し、統制の欠如した感情反応性が犯罪生起の間接誘因となった可能性が示唆された。情性欠如の進んだ群では、発達水準の低さ、衝動性、知的水準の貧困、共感能力の貧困が示唆され、先行研究の知見に矛盾しなかった。また、病識が欠如した場合には、感情的に不安定になり、一方、病識がある程度ある場合には適応的であることが示唆され、適切な病名告知とフォローアップが犯罪防止に有効に作用する可能性を示した。また、病的体験型の場合には、人格的未熟は関係なく、まさに病的体験に支配されていることを示していた。認知心理学的に最も興味深い質的論理構造変化では、思考障害の高度群が未熟さや衝動性を示さず、やや不安が高かった。これは、統合失調症者が被害関係妄想に陥った場合、それが継続すると、その妄想的気分に合わせた認知の枠組みの変化が生起し、不安をもたらす方向で固定され強化され続ける可能性を示唆している。ここに統合失調症の認知行動療法の可能性が示された。

2 0 0 0 OA 我五十年

著者
村上浪六 著
出版者
加島虎吉
巻号頁・発行日
1914