著者
川島 啓嗣 諏訪 太朗 村井 俊哉 吉岡 隆一
出版者
一般社団法人 日本総合病院精神医学会
雑誌
総合病院精神医学 (ISSN:09155872)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.168-174, 2014-04-15 (Released:2017-06-03)
参考文献数
24

電気けいれん療法の刺激を構成する個々のパラメータは,それぞれ固有の神経生物学的効果を有し,有効性や認知機能障害に大きく影響するが,本邦においてそれらのパラメータについて十分な注意が払われているとは言い難い。本稿ではパルス波治療器で調節可能なパラメータである刺激時間,パルス周波数,パルス幅に焦点を当ててこれまでの議論を概観し,刺激時間が長いこと,周波数が低いこと,そしてパルス幅が短いことが効率的な発作誘発に有利であることを確認した。最後にパルス波治療器の最大出力で適切な発作が誘発できない場合に,刺激パラメータ調節が有効な場合があることを特にパルス幅に注目して論じ,その理論的な手がかりについて考察した。
著者
村井 史樹 高木 治雄 村里 恵理子 高村 彰子 新堂 喬
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 第30回九州理学療法士・作業療法士合同学会 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
pp.215, 2008 (Released:2008-12-01)

【はじめに】 今回、脊髄梗塞により両下肢麻痺を呈した症例に対して、Gait solution長下肢装具(以下GS長下肢装具)を使用する機会を得たので、従来の長下肢装具との歩容の違いについて症例を通して、ここに報告する。GSとは、足継手の油圧シリンダーにより、前頚骨筋の遠心性収縮を補助し歩行の手助けをする装具である。【方法・対象】 症例:67歳 男性 1月25日発症 評価 3月12日 Br-s下肢 右IV 左V MMT 体幹 3 殿筋 2/4 腸腰筋 3/4 大腿四頭筋 3/4 ハムストリングス2/4 基本動作 寝返り~座位:自立 移乗動作:監視 立ち上がり:物的支持にて自立歩行 平行棒内 装具なし 軽介助。右の初期接地~立脚中期にかけて膝の過伸展、左の遊脚期~初期接地に右の膝折れが観察される方法:GS長下肢装具と長下肢装具での平行棒内歩行(遠位監視)装具の条件:長下肢装具・・・底屈をとめての背屈フリーダブルクレンザックGS長下肢装具・・底屈制動の背屈フリー 初期屈曲角度 0° 設定は本人に教えていない。 歩行条件:事前に長下肢装具での歩行練習は行っていない。装具の種類・設定は教えていない。 動画による歩行分析 【結果】 観察によるGS長下肢装具と長下肢装具の違い(GS長下肢装具/長下肢装具)・体幹の前傾が少ない ・健側の振り出しの歩幅が広い ・患側の遊脚期の振り出しがスムーズ 歩行速度(m/s)0.223/0.23 ケイデンス(steps/min)42/43 ストライド長(m) 0.64/0.64右立脚期 2.19/2.06 右単脚支持期 0.5/0.4【考察】 今回、歩行について、歩行速度、ケイデンス、ストライド長ともに変化は見られなかった。歩容に関して、GS長下肢装具は、GSの特徴である前脛骨筋の遠心性収縮の補助が可能となり、重心の前方への移動がスムーズになった。そのため、初期接地~立脚中期までの股関節伸展がしっかり行えるようになり体幹の前傾も軽減し、健側の振り出しが上手く行えていた。さらに、その後、健側の立脚期の重心移動もスムーズになることで患側の振り出しも円滑に出来たのではないかと考える。通常の長下肢装具に比べ股関節伸展を上手く発揮できたことが一歩行周期において重心の移動を円滑に行うことができたのではないかと思われる。しかし、通常との長下肢装具との歩行速度などに変化が見られなかったこととして、上肢支持を行っていたこと、歩行が、平行棒の中と限定されており、歩行距離が短かったことなどにより変化がなかったのではないかと考えられた。【まとめ】 今回、脊髄梗塞に対し、GS長下肢装具を使用したところ、客観的データには変化は見られなかったが、主観的に歩きやすいとの返答も得られ・歩容の改善も見られた。GS長下肢装具は早期から歩行時の重心移動獲得を目的とした治療用装具としても従来の長下肢装具より有効ではないかと考える。
著者
村井 良介
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

室町期において幕府の裁定や守護による施行は、人々が共通に参照点とする相対的な卓越性を有している。したがって、人々は幕府や守護に文書の発給を求めると考えられる。しかし、戦国期になると幕府や守護の卓越性が低下し、幕府や守護の保証では十分ではないと見なされるようになり、将軍や守護以外の地域権力による判物発給が見られるようになる。判物は発給者と受給者の一対一の関係性の中だけで機能するものではなく、周辺の第三者群の反応を整序する。その秩序を共有する人々の関係性が「私」に対する「公」である。文書なしの知行給与から、判物による知行給与への変化は、この「公的」秩序が意識されることによる。
著者
中川 暢彦 阪井 満 村井 俊文 末岡 智 篠塚 高宏 藤田 恵三 露木 琢司 中島 広聖
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.113-117, 2018 (Released:2018-08-01)
参考文献数
14

症例は74歳の男性.深夜に急激に生じた腹痛を主訴に当院救急外来を受診した.腹部膨満を認め,上腹部に腹膜刺激症状を認めた.腹部造影CT検査では,横行結腸に著明な浮腫性肥厚と周囲脂肪識の濃度上昇を認めた.NOMIによる腸壊死を疑い,緊急手術を施行した.術中所見では,肝彎曲部からの横行結腸および間膜に著明な浮腫と発赤を認めたが,壊死や穿孔の所見は認めなかった.肉眼的に正常な回腸末端から横行結腸中央部までの右半結腸切除術を施行した.病理組織学的検査では静脈を主体にリンパ球浸潤を認め,一部では静脈閉塞も認めた.動脈には炎症所見を認めず,enterocolic lymphocytic phlebitis と診断した.術後経過は良好で術後第9病日に退院し,以降再発は認めていない.今回,稀なenterocolic lymphocytic phlebitis を経験したので報告する.
著者
関根 涼太 大黒 義之 村井 まどか 野々村 美宗
出版者
一般社団法人 色材協会
雑誌
色材協会誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.96, no.5, pp.163-170, 2023-05-20 (Released:2023-05-27)
参考文献数
27

近年,木材の見た目と物理的特性を向上させる植物油脂由来の塗料が注目されている。そこで本研究では,植物油脂由来の塗料またはポリウレタンを塗布したスギ(白太・赤身),ヒノキ,カラマツ,オークの色彩・光沢と摩擦ダイナミクスを評価した。植物油脂は木材表面の色彩と光沢を大きく変えずに,自然な仕上がりとなった一方で,ポリウレタン塗料は木材表面の光沢を強めた。また,2種類の塗料とも動摩擦係数を小さくする潤滑効果が確認された。レーザー顕微鏡およびX線コンピュータ断層撮影による観察により,植物油脂由来の塗料は一部の液体成分が浸透,表面にも固形分が残るため,木材本来の表面の凹凸構造が残るが,ポリウレタンの場合は木材表面が完全に覆われて平滑になったことから,表面形状の違いがこれらの特性に関係していることが示唆された。
著者
村井信平[絵と文]
出版者
私製
巻号頁・発行日
1955
著者
和田 麻友美 山崎 裕 村井 知佳 中村 裕介 佐藤 淳 秦 浩信 北川 善政
出版者
北海道歯学会
雑誌
北海道歯学雑誌 (ISSN:09147063)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.106-113, 2014-03

非定型歯痛(Atypical Odontalgia: AO)は,明確な原因がないにもかかわらず歯やその周囲に疼痛を訴える疾患であり,歯科医師は診断や治療に苦慮することが多い.当科で診断したAO症例の臨床経過および治療効果を明らかにする目的で後ろ向き研究を行った. 対象は2010年1月から2012年5月の期間に,当科で最終的にAOと診断した22例(男性:5例,女性:17例,平均年齢:54歳)であった.主訴は歯痛9例・抜歯後疼痛6例・歯肉痛5例・インプラント術後疼痛1例・上下顎の顎骨疼痛1例であった.病悩期間は半年未満9例(41 %)・半年~1年3例(14 %)・1年以上10例(45 %)であった.全例が当科受診前に他の歯科医療機関を受診していた.前医で行われた治療は,歯内療法・歯周療法・レーザー照射・スプリント療法・補綴療法・薬物療法など多岐にわたっていた. AOの臨床診断のもと,13例に対して当科で薬物療法を行った.使用した薬物は,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(selective serotonin reuptake inhibitor, SSRI:10例),ベンゾジアゼピン系抗不安薬(benzodiazepine derivative, BZD:9例)の順に多く,これらのうち7例が両者の併用例であった.治療効果は13例中7例(54 %)で疼痛の改善が認められた.改善した7例のうち,6例はSSRIとBZDとの併用療法であった. SSRIとBZDの併用による薬物療法はAO症例に有効である可能性が示された
著者
小林 孝 阿部 栄二 阿部 利樹 菊池 一馬 木下 隼人 木村 竜太 村井 肇 小西 奈津雄 岡本 健人 井野 剛志 大屋 敬太 福井 伸
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.26-30, 2019 (Released:2019-07-20)
参考文献数
5

増え続ける高齢者肺炎の過重な負担で疲弊していく呼吸器内科医師の負担を減らすため,当院では2010年2月より高齢者肺炎症例を全科で分担して診療している。今回,このような状況で整形外科医が行なった肺炎治療の成績を他科での治療成績と比較し,当院のシステムの検証を行なった。2017年11月1日から2018年10月30日までに当院に肺炎のため入院した70歳以上の症例を対象とした。データベースから肺炎の患者を抽出し,これらの症例の転帰,入院日数を科別に比較・検討した。上記期間内に当院に入院した372例を対象とした。年齢は平均85.6歳(70歳~100歳),男214人,女158人,平均在院日数は20.7日(1~107日),288例が軽快して退院したが,84例(29.2%)が死亡退院していた。CAPは143人,NHCAPは229人で診療科間で差はなく(ピアソンカイ二乗検定,p=0.19),A-DROPで評価した重症度にも診療科間で有意差は認めなかった(ピアソンカイ二乗検定,p=0.25)。整形外科入院患者数は30人,年齢は平均86.1歳(71歳~99歳),在院日数は平均19.1日(1~107日)で,27人は軽快して退院したが3人(10.0%)が死亡退院していた。平均在院日数を診療科間で比較すると有意差を認め(ANOVA,p=0.0001),t‒テストを用いたペアワイズ比較では,循環器内科と外科(p=0.03),腎臟内科と脳神経外科(p=0.01),腎臟内科と外科(p=0.0005)の間で有意差を認めた。転帰を診療科間で比較したが有意差を認めなかった(ピアソンカイ二乗検定,p=0.15)。医師の偏在と医師不足の状況下で増え続ける高齢者肺炎に立ち向かうため,専門外の全科が連携して肺炎治療にあたることが重要である。
著者
村井 亜希子 錦織 良 神 光一郎
出版者
大阪歯科学会
雑誌
歯科医学 (ISSN:00306150)
巻号頁・発行日
vol.83, no.2, pp.68-75, 2020-09-25 (Released:2020-12-25)
参考文献数
29

本研究は,わが国における歯科衛生士の就業実態や医療・介護現場で歯科衛生士が行っている処置・指導の状況などの歯科衛生士の需給に関する実態について明らかにするとともに,将来的な歯科衛生士の需給バランスについて検討することを目的として行った.分析データには,厚生労働省が実施している国家統計調査の結果および本学附属歯科衛生士専門学校に応募があった求人票を用いた. その結果,全国の歯科衛生士養成学校数は2010年から2019年の10年間で9校増え163校であった.就業歯科衛生士数を年度ごとに累積人数で推計したところ,ほぼ半数の者が歯科衛生士として就業していない実態が明らかとなった.一方,30歳以上では就業者数が増加しており,特に50歳以上ではその傾向が顕著であった.歯科衛生士の就業状況では90%の者が歯科診療所に従事していたが,一般病院や介護保険施設における歯科衛生の従事者数および保険点数の算定回数が大幅に増加している傾向が示唆された.求人票のデータ分析では,求人応募機関数が2010年度の443施設から2017年度には944施設と2倍以上に増え,特に病院からの求人が2010年度の6施設から2017年度には31施設と急増していた. 本研究により,歯科衛生士の需要が経年的に増していることが窺え,今後も周術期や介護現場等での専門的口腔管理の重要性が浸透し,歯科衛生士の需要は高まることが推測される.一方,歯科衛生士国家試験合格者のほぼ半数が歯科衛生士として就業しておらず,20歳代の就業歯科衛生士数が他の年齢層の就業歯科衛生士数と比べて減少傾向を示していることが明らかとなった.今後歯科衛生士の需給を検討する上では,歯科衛生士が生涯を通じて資格を活かすことのできるワークライフバランスや待遇の改善,医科歯科連携や高齢者の口腔機能管理などに係る教育カリキュラムの充実など,有資格者が歯科保健医療に貢献できる就業の在り方を検討することが課題であると考えられる.
著者
下関 正義 村井 忠史 藤沼 平一
出版者
Japan Society of Spring Engineers
雑誌
ばね論文集 (ISSN:03856917)
巻号頁・発行日
vol.1979, no.24, pp.46-58, 1979-03-25 (Released:2010-02-26)
参考文献数
8
被引用文献数
2
著者
大田 翔貴 村井 源
雑誌
じんもんこん2022論文集
巻号頁・発行日
vol.2022, pp.85-90, 2022-12-02

怪談作品は古くから存在し、 怪談にまつわる研究もまた古くから存在している. 本研究は, 怪談 を読むことで感じる奇妙さや怖さの要因を解明するため, 怪談に登場する怪異という特徴的なキャラ クターに着目して怪異の特徴分析を行った. また, 分析の一つとして怪異特徴について Web上に投稿 されている怪談と書籍として販売されている怪談の比較も行った. 分析には,N-gram 統計や因子分析 を利用し、結果として怪異の行動パターンやメディア間で生じる怪異特徴の差異が明らかになった.
著者
村井 亮介 伊藤 克亘
雑誌
第82回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, no.1, pp.337-338, 2020-02-20

娯楽の発展によって人々が歌う機会が増えてきた。カラオケの採点の登場などから上手に歌いたいと思う人が多いことも事実である。そこで本研究では裏声を出すことができ、音痴ではない男性を対象にした歌唱力向上メソッドを提案する。歌唱力は大きく分けて「音程」「リズム」「発声」と3つの要素に分けることができる。その中でも「発声」はカラオケの採点でもあまり重視されていない。そのことからJPOPの歌唱発声において必要不可欠であるミックスボイスの習得を目的とする。ミックスボイスは表声と裏声のコントロールが自由にできることが前提であることから、表声と裏声を上手に扱えるようになるための練習メソッドを考案し、メソッドに沿って練習を進めていく。メソッドごとの可否判定についてはスペクトル及びスペクトルグラムから判定できるようなシステムを提案する。
著者
春日 遥 大橋 真智子 山本 将隆 小西 祐輔 北村 春菜 池田 宥一郎 村井 貴
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究作品集 (ISSN:13418475)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.1_30-1_35, 2021-03-31 (Released:2021-03-19)
参考文献数
11

「アニマルめがねラボ」は小学3年生から中学3年生までを対象にした、バーチャル・リアリティ映像作品を用いたサイエンスコミュニケーションイベントである。子どもには難しい「動物の視覚」を題材に、バーチャル・リアリティによる直感的理解だけではなく、場のデザインにより教育効果を高める工夫を行った。多様な動物に実際に会える動物園という場の相乗効果を狙った開催場所の選定や、架空の研究所「アニマルめがねラボ」としてディティールにこだわった場の演出を行った。イベントに参加した子ども達は「リクガメとヌマガメの視力」、「イヌとネコの色覚」、「ヤモリとカエルの動体視力」の3つのブースを通して、多様性に富む生き物の視覚を学習し、更なる学習への意欲や動物への関心を得た。
著者
村井 剛 猪俣 公宏
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.28-36, 2010 (Released:2010-08-19)
参考文献数
21
被引用文献数
2 2

リーダーシップは集団メンバー個々の行動と集団活動に決定的な影響をあたえるものとして一般に理解されている。本研究では,勝利志向型のスポーツチームの理想のキャプテン像の特徴を質問紙調査によって明らかにすることを目的とした。116項目のキャプテンの理想像に関する質問紙を808名,9競技種目のチームスポーツの選手を対象として調査を行った。項目の因子分析の結果,「目標志向性」,「人間関係の維持発展」,「メンバーへの激励」,「競技知識」,「競技能力」の5つの因子を抽出した。これらの結果は概ね先行研究で得られた見解と類似していた。 信頼性を検討するため,Cronbachのα係数の算出と,再検査法によるピアソンの相関係数を算出した。 α係数,再検査法による相関はともに比較的高い値であった。従って今回得られた結果はある程度の信頼性を有していると考えられる。 妥当性は基準関連的妥当性,内容的妥当性について検討した。また,性差の観点から比較を行った。