著者
伏島 あゆみ 内山 伊知郎 原井 宏明 大矢 幸弘 漆原 宏次 坂上 貴之 村井 佳比子
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第85回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.SS-001, 2021 (Released:2022-03-30)

古典的条件づけの発見が学習理論と行動療法に与えた影響の大きさは繰り返すまでもない。一方,古典に過ぎず,その影響は認知心理学などの新たな発見に置き換えられたと思っている人がいるかもしれない。そうではない。不安や強迫,アレルギーのようにありふれた病気の治療においても条件づけの概念は新しい示唆を与えてくれている。このシンポジウムではアレルギー疾患の専門家,不安や強迫の専門家,学習理論の専門家を招き,行動科学学会のミッションである基礎と臨床をつなぐことを目指す。アレルギーの予防や克服にはアレルゲンを回避するのではなく,早くからエクスポージャー(食べること)を通じて免疫寛容を誘導した方が良い(潜在制止)や,強迫に対するエクスポージャーと儀式妨害(ERP)において一般的な不安階層表に従った段階的な刺激ではなく,期待違反効果を狙った予想外の刺激を使う方が効果が高いことなどを示す。パブロフが残した影響は条件づけだけではない。ドグマに毒されず,事実だけを重視することを若手に説き続け,科学者をスターリンから守ろうとした。科学することはどういうことなのか? もこのシンポジウムの中で取り上げれれば幸いである。
著者
吉田 賢大 村井 亮介 佐野 新 多田 毅 門田 一繁
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.1302-1307, 2018-12-15 (Released:2020-01-17)
参考文献数
9

症例は64歳女性.来院1カ月前に感冒症状を自覚した.来院2週間前に発熱と吸気時胸痛に対して,近医にて解熱鎮痛薬の処方を受けたが,症状の消失は得られず,精査加療目的に当院を紹介受診した.経胸壁心臓超音波検査で心嚢水貯留を認め,急性心膜炎と診断した.入院後も解熱鎮痛薬とコルヒチンの投与を行うも,炎症反応の再上昇や吸気時胸痛の再増悪が認められた.入院2週間後に抗核抗体陽性,抗DNA抗体陽性,直接クームス試験陽性が判明し,全身性エリテマトーデス(SLE)の診断基準を満たした.プレドニゾロン30 mg/日の投与を開始し,炎症反応の低下と自覚症状の寛解を認めた.比較的高齢発症(50歳以上)のSLEでは典型的でない初発症状(胸膜炎,心膜炎,間質性肺炎など)が多いとされており診断に難渋する.今回,漿膜炎症状のみを呈した高齢発症SLEの1例を診断し得た.急性心膜炎の治療においては原疾患の有無を詳細に精査し,原因の特定に努めることが重要と考えられた.
著者
中村 祥吾 村井 源
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022)
巻号頁・発行日
pp.1P1GS1005, 2022 (Released:2022-07-11)

物語の自動生成では計量的な構造分析に基づく手法などが試みられてきた.しかし従来の対象は短い物語パターンのみであり,複数の起承転結のパターンを複合した複合的構造の分析とその応用は,ロールプレイングゲーム(RPG)のジャンルを除きほとんど行われておらず,また複合的構造の多様性や時系列的変化は明らかになっていない. 本研究では,高評価のRPGシリーズを対象として,物語構造分析と並行して物語中の複数の起承転結のパターンの連続・入れ子・並列関係のデータ化を行った.シリーズ間を比較した結果,ドラゴンクエストは、人物変化、世界設定開示など冒険型の展開が多く,ポケットモンスターは能力向上、障害撤去、戦いなど戦闘型の展開が多かった。一方でファイナルファンタジーは能力低下、逃亡、災難などネガティブイベントが多く対象年齢の高さがうかがわれた。 複合的構造の時系列的変化はシリーズ共通で序盤・中盤・終盤に3構造に分かれ,中盤では多段の入れ子や並列構造によって複雑かつ自由度の高い物語を提示する特徴が明らかになった.本研究の成果はユーザー層に合わせた長編作品の自動生成などの基盤として活用可能と考えられる.
著者
宮脇 裕 村井 昭彦 大谷 武史 森岡 周
出版者
一般社団法人 日本基礎理学療法学会
雑誌
基礎理学療法学 (ISSN:24366382)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.50-55, 2022 (Released:2022-10-17)
参考文献数
25

運動主体感(Sense of agency)とは,自分が自分の運動を制御しているという感覚を指す。この感覚は,運動の感覚フィードバックに対しフィードバック制御を駆動する役割をもち,感覚入力と運動出力を紐付けるMediator の役割を担っていると考えられている。運動主体感の誘起には,運動に伴う内的予測などを含む感覚運動手がかりと,運動に直接関連しない知識や信念などの認知的手がかりが関与する。手がかり統合理論によると,状況に応じたこれら手がかりの信頼性に基づき,運動主体感への貢献度を決める重み付けが変化する。この理論に基づき,我々は運動制御時に感覚運動手がかりと認知的手がかりがどのように利用され運動主体感が導かれるのか,その重み付け変化(i.e., 手がかり統合戦略)の実態について検証を進めてきた。これらの研究成果を中心に,本稿では,運動主体感について運動制御との関係性を概観し,手がかり統合理論の観点からそのメカニズムを議論する。
著者
村井 史香 岡本 祐子 太田 正義 加藤 弘通
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.121-131, 2019 (Released:2021-09-30)
参考文献数
31
被引用文献数
1

本研究の目的は,自認するキャラを対象とし,キャラ行動をすることによって,キャラを受容していくという過程が成立するかどうかを検討すること,さらにキャラ行動およびキャラの受け止め方と承認欲求,評価懸念との関連を明らかにすることであった。質問紙調査によって,中学生434名と大学生219名のデータを得て分析を行った結果,以下の3点が示された。第1に大学生は中学生よりも自認するキャラを有する者が多く,学校段階に関わらず,賞賛獲得欲求はキャラのある者の方が高かった。第2に,因子分析の結果,自認するキャラの受け止め方は“積極的受容”,“拒否”,“無関心”の3つが得られ,キャラ行動をすることでキャラを受容する過程が成立することが明らかとなった。第3に,賞賛獲得欲求だけがキャラ行動と正の関連を示し,賞賛獲得欲求に基づくキャラ行動が,キャラの積極的受容を促進することが示された。一方,評価懸念はキャラの積極的受容には負の関連を示し,キャラへの拒否には正の関連を示した。この過程は学校段階に関わらず,成り立つことが示された。賞賛獲得欲求に基づくキャラ行動は,“見られたい自分”を主体的に演出する行為であり,以上の結果はキャラが持つ肯定的な側面にも目を向けるべきであることを示唆するものであると考えられる。
著者
加藤 俊介 野城 智也 村井 一
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.293-298, 2022-08-01 (Released:2022-09-22)
参考文献数
6

災害時などの迅速な建築設備の故障箇所推定のために,全体構成と構成要素の状況の2 種類の情報を集約して全体状況を把握する仕組みが必要である.また,その情報を用いた点検計画作成をコンピュータで支援することは,限られた人的リソースで対処するために有効である.そのような考えに則り,自律分散型の機能ネットワークモデルを構想し,データ構造アーキテクチャと,モデルを用いた故障時の点検箇所の絞り込み支援のアルゴリズムを検討した.そして,大学施設の給水設備を例に,モデルの作成とアルゴリズムの適用の検証を行った.
著者
村井 源
雑誌
じんもんこん2020論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.157-164, 2020-12-05

複雑な物語構造をもった物語ジャンルに対して,基本的な物語のパターンの重ね合わせとして物語構造をデータ化する手法を提案した.また提案手法を用いてブラック・ジャック98話の構造を43種類のパターンで記述し,パターンの共起から7つの因子を抽出した.さらにこれらの抽出結果に読者の人気投票を合わせて用いることで,読者の評価に強く影響する物語の要素を計量的に特定した.
著者
大熊 燦雨 松尾 牧則 村井 友樹
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究は、東アジアに跨る武文化の固有性と相似性の解明に向け、文禄・慶長の役(萬暦朝鮮之役、壬辰倭乱:1592~1598年)を通して披露された日本・中国・韓国武術が、近世東アジアの武文化に与えた影響を実証的に検討することを目的としている。そのために、2019年度には、以下のような研究活動を行いに、主に日中韓武文化の交流の痕跡を物語る資料を網羅的に検討・収集した。1.先行研究の検討及び関連資料収集:400年前に起きたアジア最大の戦争であった文禄・慶長の役に関しては、その歴史や波及力の故に多方面で数多くの研究が行われてきた。そのため、前年度に引き続き多岐にわたり先行研究を含めた文禄・慶長の役に関する膨大な2次史料を検討し、本課題と関連する日本側の史資料の収集に努めた。また、それを基に、文禄・慶長の役にまつわる武に関する1次史料の範囲を絞り、その収集に努めた。2.史資料の分析:収集した日本側の関連史資料の整理・解読を進めながら、先行研究で言及された既存史料との比較検討を行い、当該戦争に対する全体像の把握に努めながら日韓武文化交流の痕跡を浮き彫りにした。3.台湾側の情報収集及び史料調査:台湾の台東大学・高雄大学等を訪問し、研究者と意見交換しながら情報収集に努め、また、台湾における武術研究の現在把握と中国武術に関する史料・情報を収集した。4.情報収集及び成果発表:東北アジア体育・スポーツ史学会、体育史学会、日本体育学会、国際体育・スポーツ史学会、筑波大学体育史研究会などの国内・国際学会に参加し研究協力者との情報交換を行い、また、Northeast Asian Society for History of Physical Education and Sport学会の定例Conferenceにて研究成果の一部を発表し、学会会員との意見交換など更なる情報収集に努めた。
著者
村井 潤一郎
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.92-100, 2005 (Released:2005-11-11)
参考文献数
24
被引用文献数
6 2

本研究は,質問紙を用い,強調語が発言内容の欺瞞性認知に及ぼす影響について検討するものである.強調語を含む発言内容は,そうでない発言内容よりも欺瞞度が高い,と予測された.この点について検討するために,強調語を含む発言内容と強調語を含まない発言内容の2種類が,各々3つ構成された.質問紙の実施に先立ち,必要なサンプルサイズを算出するため,コンピュータプログラム“GPOWER”を用いた.研究参加者は202名の女子大学生であり,2条件のいずれかに割り当てられ,呈示された発言内容について欺瞞性の評定を7件法にて求められた.その結果,予測に反し,欺瞞性は強調語の影響を受けなかった.さらに,欺瞞性は,一般的信頼尺度と弱い負の相関が認められた.以上,顕著な結果が認められなかった原因などについて論じ,今後の展望を述べた.
著者
伊藤 尚弘 安冨 素子 村井 宏生 森岡 茂己 石原 靖紀 小倉 一将 谷口 義弘 大嶋 勇成
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.217-223, 2022-08-20 (Released:2022-08-22)
参考文献数
10

【目的】福井県では医療圏によって専門医への受診が困難であり,専門的診療を行う施設は限られる.今回,アレルギー診療の均霑化を進めるため実施しているオンライン勉強会の有用性と問題点を検証した.【方法】アレルギーの勉強会はオンライン会議システムを利用し,平日夕方に月1回開催した.勉強会に参加したことがある医師22名と小児アレルギーエデュケーター5名に対し,アンケートを行った.【結果】アレルギー専門医9名,非専門医10名,小児アレルギーエデュケーター4名から回答が得られた.参加した医師の73.7%が診療内容を変えたと回答した.大学病院への紹介に変化があったと解答したのは26.3%であった.従来現地開催で実施していた日本小児科学会福井県地方会と比較して女性医師の参加割合は有意に多かった.【結論】オンライン勉強会は子育て世代の女性医師にとっても参加しやすく,参加者の診療内容に変化をもたらしており,アレルギー診療の均霑化に繋がることが示唆された.