著者
古林 知哉 松井 孝典 宮内 達也 町村 尚
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第28回 (2014)
巻号頁・発行日
pp.1B2OS02a5, 2014 (Released:2018-07-30)

日本ではニホンジカの増加や生息域拡大により,生態系や農林業への被害が増加している.アメリカではオオカミの再導入により植生の回復がみられたが,日本での活用のために定量的な解析が必要である.本研究ではマルチエージェント化した個体群動態モデルと生態系プロセスモデルBiome-BGCの結合し,ニホンジカの採食がC3grass植生へ与える影響の緩和に対してオオカミ再導入が与える効果を定量的に評価した.
著者
松井 剛
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.105-115, 1999 (Released:2022-07-27)

本稿では,1993年~95年にかけて国内で発行された雑誌の内容分析を行い,ポケットベルについて複数の社会集団が当時共有していたと思われる捉え方(これを本稿では「社会的定義」と呼ぶ)を測定する.そこで明らかになったのは,接触・使用経験がより深い社会集団ほど,ポケットベルの社会的定義の多様性がより高い,ということである.本稿では,こうした違いが生じる理由を考察する.
著者
秋山 秋梅 細木 彩夏 松井 亜子 橋口 一成 野村 崇治 近藤 隆
出版者
一般社団法人 日本放射線影響学会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集 日本放射線影響学会第51回大会
巻号頁・発行日
pp.65, 2008 (Released:2008-10-15)

電離放射線の生体分子に対する作用は、主に、周辺の水分子の放射線分解によって生成する活性酸素(O2-、H2O2、•OH)を介した反応によって起こる。この場合、それらの活性酸素がDNA、タンパク質、脂質などと反応し、それらを非特異的に酸化する。したがって、放射線照射によって生じる活性酸素を迅速かつ効率よく消去できれば、放射線による細胞の障害は軽減できると考えられる。本研究の目的は、活性酸素を消去する酵素、superoxide dismutase(SOD)および細胞の酸化還元状態を維持する酵素、thioredoxinやglutaredoxinの細胞内での高発現によって細胞の放射線感受性を軽減(防護)すること、およびその機構を明らかにすることである。まず、ヒトのSOD遺伝子をcloningして、HeLa S3細胞にtransfectionし、安定した高発現細胞株を作成した。これらの細胞を用いて、放射線に対する細胞の感受性と応答について検討した。細胞質に存在するSOD1(Cu/Zn-SOD)の高発現細胞株は HeLa S3 と同程度の感受性を示したが、mitochondriaに局在するSOD2(Mn-SOD)の高発現株は HeLa S3 細胞より放射線抵抗性を示した。SOD1、SOD2 の高発現によって放射線照射24 時間後の細胞内の酸化ストレスレベルは HeLa S3 より抑制された。SOD2による放射線防護の機構は、生成した活性酸素の効率的な消去による細胞内の酸化防御と細胞応答の制御によるものの二つが考えられる。事実、SOD2高発現株では、放射線apoptosisの抑制や特定の遺伝子発現の誘導など興味深い現象が観察された。さらに、SOD2の高発現によって、核DNAにも損傷の減少が起こり、放射線に対する細胞の応答の複雑で巧妙なネットワークが存在することが分かった。
著者
松井 元英
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.162-167, 2016 (Released:2019-07-22)

レールは鉄道の重要部材であるが,その材料劣化要因の一つである転がり疲労のメカニズムは十分に 解明されたとは言い難く,国内外でその解明に向けた取り組みが精力的に実施されている.本稿では, その取り組みの一つとして検討している X 線フーリエ解析について,車輪との繰り返し接触による転が り疲労がレール表層部の金属組織に与える影響と併せて,実物レールに適用した例について紹介する. X 線フーリエ解析は転位密度等の塑性ひずみに関連の深い指標を見積もることが可能である.使用履歴 の異なる実物レールを解析したところ,転がり疲労を受けたそれぞれの金属組織の相違を反映するよう に転がり疲労の影響が小さいと思われるものについてはX線フーリエ解析からも同様の結果が得られた. また,総じて転がり疲労層の最表面から内部に向かって転がり疲労による材料劣化が和らいでいくこと が確認された.このようなことから,レール転がり疲労層の最表面から急激に深さ方向に変化していく 材料劣化状態の定量化への適用が期待される.
著者
小山 博史 柏木 公一 中口 俊哉 黒田 嘉宏 金井パック 雅子 井野 秀一 藤原 道隆 足立 吉隆 江頭 正人 松井 邦彦
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2020-04-01

研修医や新人看護師など医療者のリアリティショックによるPTSDや早期離職が社会問題となっている。その理由の一つに臨床現場における多重課題に対する訓練不足が指摘されている。本研究では、現実世界での経験が困難な多重課題の臨床現場をバーチャルリアリティ(以下VR)技術を用いて仮想世界に再現し、多重課題シナリオを被験者(熟練者と初心者)に体験させ、その際の被験者の観察箇所や判断データを取得し、ヒューマンファクターデータとともにデータマイニング手法を用いた解析により多重課題における意思決定要因の解明と今後の臨床現場でのナビゲーションの基礎となる意思決定支援モデルの作成に関する研究を行う。
著者
松井 利郎 桑原 滋 伊福 靖 下田 満哉 筬島 豊
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.116-121, 1991-02-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
12
被引用文献数
2

柑橘果皮油のテルペンレス化を目的として,減圧(4~5mmHg)の蒸留法の適用を試みた.モデル系を用いて,以下のことを明らかにした.1) リモネンとシトラール2成分系で,リモネンの分別蒸留を試みたところ,沸点はリモネン濃度の低下とともに上昇し,特に体積分率が0.4以下で顕著であった.2) リモネン,リナロール,シトラール3成分系においては,リモネンの濃度は60℃まで顕著に減少し,それ以上ではほぼ一定となった.一方,リナロールの沸点は61℃であったことから70℃付近までは含有率が顕著であったが,それ以降では含有率は急激に低下した.従って,目的とする組成のテルペンレスオイルを作製するには抽出温度の設定が重要となることが明らかとなった.つぎに実試料のテルペンレス化を試み,以下のことを明らかにした.3) レモン果皮油のテルペンレス化は60℃, 30分間で最大となり,リモネン含量は約1/26に減少した.一方,シトラールは50℃でテルペンレス化を行ったとき最も効率よく濃縮され,全体の約27%を占めた.4) バレンシアオレンジ果皮油においては,香気寄与の高いリナロールの含量が50℃, 30分間の蒸留で約7倍となり,より芳香性に富むオイルを得ることができた.
著者
松井 美帆
出版者
防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

慢性心不全は主として高齢者の疾患であり、高齢化のさらなる進展により心不全患者の顕著な増加が見込まれている。心不全の緩和ケアについては十分に実施されているとは言い難く、医療従事者を対象とした教育が必要であるが、教育ニーズや教育効果を検討した報告はなく、研修プログラムについてもその内容は確立していない。本研究では、診断時からの心不全緩和ケアの普及へ向けた研修プログラムの効果を検討することを目的として、1)循環器病棟に勤務する看護師を対象に緩和ケアに関する教育ニーズを明らかにする、2)心不全の疾患特性を踏まえた緩和ケアについて看護師を対象とした研修プログラムを実施、その効果を検証する。
著者
佐藤 竜馬 森 義治 松井 理紗 沖本 憲明 山元 淳平 泰地 真弘人
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.116-118, 2022 (Released:2022-05-25)
参考文献数
10

DASH型クリプトクロムは発見当初,紫外線損傷DNAを光回復できると推定された.しかし,現実にはその機能を発現せず,その明確な理由は明らかではない.本稿では,紫外線損傷DNAの光回復に欠くことのできない電子移動反応および基質の認識・結合の観点から機能の非発現の理由について調べた研究について紹介する.
著者
松井 彦郎 太田 英仁 内田 要 林 健一郎 犬塚 亮
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.232-238, 2020-10-01 (Released:2020-12-04)
参考文献数
10

背景:小児重症例の約半数を占めている小児循環器疾患の集中治療は歴史的に小児循環器医および小児心臓外科医が中心で診療してきた一方で,社会的に集中治療の専門性整備の必要性が増加している.目的:小児循環器診療における集中治療専門性に関する現状調査・解析を行うことで,集中治療専門性の整備状況を評価し,今後の重要な課題を明確にする.方法:本研究では2019年10月現在の公的ホームページに掲載されている利用可能の専門医・研修施設・厚生労働省保険算定・人口統計の情報を用いて,全国における①小児科医・小児循環器医の集中治療専門医取得状況・分布,②小児循環器診療施設の集中治療専門研修施設状況,③集中治療室管理料算定数と専門医数の比較を行い,小児循環器領域における集中治療専門性の課題を描出した.結果:集中治療専門医を有する医師は小児科専門医の0.6%(99/16,545名),小児循環器専門医の1.1% (6/538名)であり,地方21県においていずれも不在であった.小児循環器関連施設(170施設)中,集中治療専門医研修施設認定は56%(96/170名)と低値であり,大学病院・総合病院においては専門医取得困難な環境が推察された.都道府県別の小児年齢の特定集中治療室算定数と集中治療専門医を有する小児科専門医の医師数との比較では都市部に医師が多く,小児特定集中治療室管理料は全国の約20%の普及にとどまるのみであった.結語:日本の小児循環器領域の集中治療専門診療環境は,専門医診療と診療報酬算定において施設・地域間格差があり,集中治療体制の整備は小児循環器診療の重要な課題と考えられる.
著者
久原 丈司 笠原 啓二 嶋田 格 松井 宏
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.33-40, 2017 (Released:2017-03-22)
参考文献数
8

デオドラント剤の防臭効果の持続性向上(ロングラスティング化)を目的として,臭いの原因となる皮膚常在菌の繁殖を抑えるために,デオドラント剤に配合されている殺菌剤4-イソプロピル-3-メチルフェノール(IPMP)と2,4,4′-トリクロロ-2′-ヒドロキシジフェニルエーテル(トリクロサン)について,腋窩上での経時残存性を評価した結果,トリクロサンはIPMPよりも有意に経時残存性が高いことが示唆された。次に,殺菌剤の腋窩上での経時的な減少要因の解明として,殺菌剤の揮発性,皮膚内部への浸透性,皮膚表面での拡散性,衣服への移行性を評価した結果,皮膚内部への浸透および衣服への移行が主要因であることが示唆された。また,殺菌剤の腋窩での残存性を高める成分(デオドラントキーパー)の探索を行った結果,デオドラントキーパーの要件としては,皮膚内部への浸透を抑えるため分子量が大きいこと,耐水性が高い必要があるためオクタノール/水分配係数(Log P)が大きいこと,殺菌剤との親和性(結合性)が高いことが必要であり,今回評価したIPMPのデオドラントキーパーとしては,分極部位を有しIPMPと水素結合等の双極子相互作用を起こしやすい構造であることが,残存性向上に有利に働くことが見出された。
著者
山﨑 達枝 桑原 裕子 松井 豊
出版者
一般社団法人 日本災害医学会
雑誌
日本災害医学会雑誌 (ISSN:21894035)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.80-88, 2022-04-13 (Released:2022-04-13)
参考文献数
11

【目的】東日本大震災を体験した看護管理職が、災害にどのような点で苦労したのかを把握し、看護管理職の退職意向との関係を探索的に検討する。【方法】同震災発生から4年後に、被災地域内13医療施設77名の看護管理職を対象に個別配布・郵送回収による質問紙調査を実施した。調査期間は2015年6–7月であり、68名から有効回答(88.3%)を得た。【結果】多くの看護管理職が業務多忙による苦労を経験していた。退職したいと思った人は61.8%であり、退職意向に影響する要因として、震災後の職場の雰囲気の悪化や職場の人間関係の板挟みになることによる苦労が影響していた。しかし、看護管理職に行われた心理支援は11.8%にとどまっていた。【考察】被災した看護管理職の苦労として「人間関係の問題」があり、この問題が退職意向に結びついていた。
著者
梅枝 愛郎 松井 茂 色川 正貴 片貝 重之 中沢 次夫 飯塚 邦彦 三浦 進 笛木 隆三 小林 節雄 北市 正則
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.24, no.7, pp.804-809, 1986-07-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
17

「蚕 (カイコ)」体成分の吸入に起因する過敏性肺炎 (養蚕者肺症) の1例を報告した. 症例は48歳女性, 養蚕農家の主婦で咳, 痰, 労作時息切れ等が「繭かき」「ケバ取り」などの養蚕作業と関連して出現. 初診時軽いチアノーゼを認め, 胸部で捻髪音聴取. 血沈亢進, CRP (2+), 白血球増多, 低酸素血症, 胸部レ線でスリガラス様陰影を認め, 肺機能で拘束性障害と拡散能の低下がみられた. 免疫学的検査ではツベルクリン反応陰性で, 蚕体成分の一つである熟蚕尿に対する沈降抗体陽性であった. 肺組織には胞隔炎, 類上皮細胞肉芽腫, マッソン体が認められた. 入院後症状の自然改善が見られ, 血沈等が正常化し, ラ音の聴取されないことを確認して熟蚕尿による吸入誘発試験を行った. 吸入後捻髪音が出現し, 拡散能は前値に比し30%低下したため, 誘発試験陽性と判定した. 以上より本症例は蚕体成分である熟蚕尿に起因する過敏性肺炎 (養蚕者肺症) と診断した.
著者
原 貴洋 松井 勝弘 鈴木 達郎 手塚 隆久 森嶋 輝也
出版者
国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
農研機構研究報告 (ISSN:24349895)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.9, pp.25-36, 2021-11-30 (Released:2022-02-01)
参考文献数
21

「NARO-FE-1」は,九州沖縄農業研究センター(以下,九沖研とする)において育成された春まき栽培でき穂発芽しにくいソバ新品種である.「NARO-FE-1」は,九沖研選抜の5 系統の交配後代から集団選抜法により選抜固定して育成された.「NARO-FE-1」は春まき品種「春のいぶき」と比較し穂発芽しにくく,春まき栽培において多収で,容積重が大きい.夏まきの標準期播種栽培では,「さちいずみ」と比較し成熟が早く低収であるが,遅播栽培では同等の収量があり経済栽培が成り立つ.成熟期,草丈,倒伏程度と食味は「NARO-FE-1」と「春のいぶき」で同程度である.なお,品種名「NARO-FE-1」は,各地域等で育成したブランド名はそのままに品種を置換できる「地域農産物ブランド化における品種と商標との知財ミックス戦略」を想定し命名したものである.本品種は暖地,温暖地,北陸の春まきソバ栽培地域での普及が見込まれる.
著者
松井 利樹 橋本 剛 橋本 隼一 野口 陽来
雑誌
情報処理学会研究報告ゲーム情報学(GI)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.59(2008-GI-020), pp.9-15, 2008-06-20

本研究ではボナンザメソッドに進行度を用いた評価関数の学習法を提案する。将棋では一般的に序盤は駒の損得、終盤では寄せの速度が重要と言われており、ゲームの進行に応じて適切な値が変動していると考えられる。しかし、序盤から終盤まで単一な局面評価ではどうしても値が平均化されてしまうので良い値を得られないことがしばしばある。そこで従来の将棋プログラムで使われてきた局面の進行具合を表す変数(進行度)を使って表現し、より精度の高い評価関数を設計した。自己対戦の結果より提案した手法の有効性を確認した。
著者
松井 勇起
出版者
情報メディア学会
雑誌
情報メディア研究 (ISSN:13485857)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.1-20, 2022-05-31 (Released:2022-05-31)
参考文献数
72

本論文では,中公新書の「刊行のことば」を執筆した加藤秀俊に着目し,そのメディア戦略を分析 する.その手がかりとして,加藤の執筆した文章を参考にしながら,「刊行のことば」を解釈する.加藤は周囲の研究者や環境からプラグマティズムの強い影響を受けてきた人物である.加藤は「中間文化論」で,大衆文化的である講談社文化と高級文化的である岩波文化の違いを説明し,両者の接近による中間文化化を,新書を事例に説明した.しかし,加藤にとってカッパ・ブックスと岩波新書は中間文化として不十分であり,より理想的な中間文化を目指した.加藤はプラグマティズムの具体と抽象を媒介する機能を応用し,他者同士をつなげつつ,読者に自ら考える力をつけさせることで,大衆社会を全体主義に転じさせにくくすることを意図し,中公新書のメディア戦略を構築した.