著者
池本 良子 小森 友明 井出 康行 金井 一人
出版者
Society of Environmental Conservation Engineering
雑誌
環境技術 (ISSN:03889459)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.432-439, 1998-06-20 (Released:2010-03-18)
参考文献数
10
被引用文献数
3 4

2槽型上向流生物ろ床装置を用いて硫酸塩還元と硫黄脱窒を組み合わせた処理法の可能性について検討した.人工廃水を供給した第1槽で硫酸塩還元を優先して起こすことができた.第1槽流出水とともに硝化液循環を想定して硝酸を供給した第2槽では, 他栄養性脱窒と硫黄脱窒が同時に進行した.第2槽において硫酸塩還元活性が認められた.両槽に生育した硫酸塩還元細菌はプロピオン酸もしくは類似の有機物からの酢酸の生成に量論的に関与していた.第2槽中の硫黄脱窒細菌は硫酸塩還元によって第1槽から供給された硫化物を利用して量論的に脱窒を行った.第2槽中の他栄養性脱窒細菌は第1槽から供給された酢酸を利用して量論的に脱窒を行った.本処理槽の汚泥発生量は少なく, 運転期間を通じて汚泥の引き抜きの必要はなかった.装置内の微生物の反応について, 熱力学的に考察を行い, 処理槽内で微生物の住み分けが起こっていることを推定した.
著者
川上 憲司 望月 幸夫 森 豊
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

換気検査には従来より ^<133>Xeガス、 ^<81m>Krガスが使われているが、入手に予約を必要とし、緊急検査に間に合わない。 ^<99m>Tc-エロゾル吸入検査も換気検査の代用とされるが、エロゾルの粒子径が大きいため、疾患肺では換気分布を表さない。^<99m>Tc-テクネガスは、 ^<99m>Tcを炭素の微粒子に標識し、換気分布に近いガス分布を得る放射性医薬品として開発された。本研究では、テクネガスの粒子径、捕集効率、生体における挙動、および種々肺疾患における臨床応用などについて検討した。テクネガスの粒子径は、電顕で計測した結果、大部分が20〜30nmφであったが、一部これらの粒子が魂状となって、100〜200nmの粒子を形成していた。テクネガス発生装置内の炭素るつぼに、 ^<99m>Tc-パーテクネテート溶液(300MBq/0.1ml)を入れ「るつぼ」を高熱で昇華することにより、微細炭素粒子を作成、これに ^<99m>Tc-が標識される。テクネガス生成後、粒子は次第に沈澱するので10分以内に吸入することが望ましい。血液中放射能は吸入後2時間において、吸入量の0.2%/1血液、尿中放射能は、24時間後においても4.96%であった。肺におけるテクネガスの生物学的半減期は135時間で肺のイメージは、24時間後においても安定していた。肺の被曝量は0.04Gy/37MBqであった。肺疾患例におけるテクネガスの分布は ^<81m>Kr分布に類似していたが、閉塞性病変の強い症例では、中枢気道に過剰に沈着し、スポット形成がみられた。しかし、未梢気道にも分布しており、換気分布の評価は可能であった。
著者
田中 政信 中島 寿亀 森 欣也
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.72, no.6, pp.551-556, 2003-11-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
14
被引用文献数
3 4

日本在来のサトイモ14品種群,37品種を供試して,葉柄内のシュウ酸カルシウム結晶細胞の密度および大きさを調査し,以下の結果を得た.供試したすべての品種の葉柄中には防御的束晶細胞および非防御的束晶細胞の2タイプの束晶細胞が観察された.品種群の間で束晶細胞の密度に差異が認められた.また,いくつかの品種群の間では束晶細胞の密度や形状は類似していた.各品種群内における品種間の束晶細胞密度の差異は,一部の品種群以外は認められなかった.いずれの品種も集晶細胞密度は束晶細胞密度より高く,品種群内におけるそれぞれの細胞密度の差もかなり大きかった.14品種群は葉柄の束晶細胞密度により2グループに分類された.低密度グループには,みがしき群,溝芋群,薑芋群,唐芋群,八ツ頭群,蓮芋群,えぐ芋群および赤芽芋幹の8群が区分され,高密度グループには黒軸群,蓮菊芋群,石川早生群,土垂群,筍芋群および檳榔芯群の6群が区分された.葉柄用および芋・葉柄兼用品種群の葉柄内の束晶細胞密度は,芋用品種群のそれより低かった.また,葉柄用品種群の束晶細胞の大きさは比較的小さかった.以上の結果から,束晶細胞の密度および大きさは,サトイモ葉柄用品種の育種において"えぐ味"が少ない個体を選抜するための指標として利用することが可能と考えられる.
著者
中村笙子 廣森聡仁 山口弘純 東野輝夫 山口容平 下田吉之
雑誌
マルチメディア、分散協調とモバイルシンポジウム2013論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, pp.1995-2007, 2013-07-03

各世帯における節電やピークシフトの達成のため,電力の売買や蓄積,生成が可能なスマートホームが導入されつつあり,電力消費を伴う家庭行動を効率化することで,電力コストの削減が期待できる.しかし,居住者の都合を無視し,電力コストを削減するためだけにピークシフトを強いると居住者の生活の質を下げかねない.そのため,電力コストの削減と生活の質の維持を両立できるような節電方法を居住者に提示し,無理のない節電を実現できることが望ましい.本研究では,スマートホーム一世帯を対象とし,そこに居住する人や配置された家電の電力消費モデルを提案する.さらに,このモデルを利用し,人の行動と家電の稼働に対し,電力コストと生活満足度を最適化するような行動スケジューリング手法を提案する.加えて,ユーザの嗜好をより詳細に反映するためのフィードバックシステムと,ユーザが行った操作から,スケジュールに対する要望を汲み取るためのユーザインタフェースも提案する.評価実験では,電力コストを抑え,かつ生活満足度の高いスケジュールを導出した.また,フィードバック操作により,ユーザの意図を反映したスケジュールが導出されることを確認した.
著者
柴山 一仁 貴嶋 孝太 森丘 保典 櫻井 健一
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
pp.18120, (Released:2019-07-05)
参考文献数
19
被引用文献数
2

The present study aimed to define the phases of the 110m hurdle race and to clarify the relationship between the race pattern and performance of elite hurdlers. Seventy-six male hurdlers (groups: G1, 12.94–13.38 s, n = 24; G2, 13.40–13.68 s, n = 26; G3, 13.70–14.16 s, n = 26) participating in official competitions were videotaped using high-speed video cameras panning from start to finish (239.76 or 299.70 Hz). The landing step after hurdling was defined as the first step, and the take-off step was defined as the fourth step. The timing of each step and each interval (from touchdown on the landing step to the next landing step) were calculated. Intervals were divided into the acceleration phase (G1: from 1st to 2nd, G2 and G3: 1st), maximum velocity phase (G1: from 3rd to 5th, G2 and G3: from 2nd to 5th) and deceleration phase (G1, G2 and G3: from 6th to 9th). The results obtained were as follows: 1) Faster hurdlers sprinted with a shorter time and a larger mean interval velocity in all phases; 2) G1 had longer acceleration segments and larger acceleration from the acceleration phase to maximum velocity phase than G2 and G3 because of the larger increase in the frequency of the second step; however, deceleration from the maximum velocity phase to the deceleration phase showed no significant difference according to performance; and 3) the pattern of change in the mean interva3l velocity during the race was similar between G2 and G3. These results indicate that athletes in G2 need to improve their race pattern to achieve a larger acceleration in the 2nd interval by sprinting with a larger increase in the frequency of the second step. Improvement of the race pattern is less important for G3. Additionally, G2 and G3 need to improve their sprinting velocity to obtain a higher frequency at the fourth step.
著者
太田 祐子 Yuko Ota 独立行政法大森林総合研究所 Forestry and Forest Products Research Institute
雑誌
樹木医学研究 (ISSN:13440268)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.3-10, 2006-03-31

ナラタケ属菌は亜寒帯から亜熱帯にいたる世界中の森林に広く分布する菌であり,広葉樹および針葉樹に重大な根株腐朽病害をおこす病原菌を含むことが知られている.最近広く用いられるようになった分子生物学的手法によって,ナラタケ属菌の種間の系統関係や生態学的研究に新たな知見が得られた.本稿では,ナラタケ属菌の分類,系統関係,生態およびならたけ病の防除について概説する.また防除に関する話題として,近年緑地などでマルチ用資材として利用されている木材チップとナラタケ属菌について最近の研究を紹介する.
著者
森 悠一 工藤 進英 三澤 将史
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.116, no.11, pp.867-877, 2019-11-10 (Released:2019-11-11)
参考文献数
48

近年の内視鏡イメージング技術の発展により,大腸病変の検出率および病理診断予測能力は飛躍的に向上した.しかし同時に,高精度の診断はエキスパート内視鏡医しか実現できないという,ジレンマも明らかになりつつある.このような内視鏡診断能の限界に対する革新的な解決策として注目をあびているのが,人工知能(AI)による内視鏡診断支援システムである.本稿では,ここ数年で急激に研究が活性化した内視鏡AIの世界的動向について概観するとともに,内視鏡AIを実臨床で使用する上で,必須とされる薬事承認の実施状況についても紹介する.
著者
森田 茂
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.79, no.10, pp.1230-1236, 1958-10-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
37

第1報で報告したように, ブチルベンゼンの異性体を気相空気酸化すると, n-およびsec-プチルベンゼンは安息香酸, 無水マレイン酸のほかに無水フタル酸を生成し, tert-ブチルベンゼンは無水マレイン酸だけを生成する。この特異な反応の機構を調べ, つぎのことがわかった。1. n-ブチルベンゼンは大部分がまず側鎖のC4が酸化されてγ-フェニル酪酸となり, つぎに閉環してテトラロンとなりさらに酸化されて無水フタル酸を生成する。すなわち, 第2報で報告したn-プロピルベンゼンの気相空気酸化機構と同様で, 液相空気酸化や無触媒気相酸化機構と全く異る経路をとるものである。2. tert-ブチルベンゼンは, 反応中ブチル基とベンゼン核とに熱分解するため, 無水マレイン酸だけしか生成しない。3. ブチルフェノン, ベンジルエチルケトンは空気酸化で無水フタル酸を生成しないが, ベンジルアセトン, γ-フェニル酪酸は無水フタル酸を生成する。
著者
津田 彰 堀内 聡 金 ウィ淵 鄧 科 森田 徹 岡村 尚昌 矢島 潤平 尾形 尚子 河野 愛生 田中 芳幸 外川 あゆみ 津田 茂子 Shigeko Tsuda
出版者
久留米大学大学院心理学研究科
雑誌
久留米大学心理学研究 = Kurume University psychological research (ISSN:13481029)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.77-88, 2010-03-31

ストレスへの対応といった受身的な対策を越えて,よりよく生きるための健康開発につながる効果的なストレスマネジメント行動変容を促すプログラムが求められている。とくに対費用効果を考えた場合には,集団戦略として,大勢の人たちを対象にしながら個々人の行動変容に対する準備性に応じたアプローチが必要となる。これらのニーズに応える行動科学的視点に立つ理論と実践モデルとして,行動変容ステージ別に行動変容のためのやり方(変容のプロセスと称する)を教示し,動機づけを高める意思決定のバランスに働きかけながら,行動変容に対する自己効力感を高め,行動変容のステージを上げていく多理論統合モデル(transtheoretical model, TTM)にもとづくアプローチが注目されている。筆者らは,TTM にもとづくインターネットによるストレスマネジメント行動変容の介入研究において,対象者が自ら効果的なストレスマネジメント行動に取り組むためのセルフヘルプ型のワークブックを作成し,その有効性を検証している。本稿では,効果的なストレスマネジメント行動を促すために,これらのワークブックをより有効に活用するための実践ガイドについて解説を加える。
著者
児玉 高有 阿部 貴恵 兼平 孝 森田 学 舩橋 誠
出版者
北海道歯学会
雑誌
北海道歯学雑誌 (ISSN:09147063)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.52-61, 2010-12-15

近年,唾液中のアミラーゼ,コルチゾール,クロモグラニンAをストレスマーカーとして用いることが注目されている.しかし,これらの物質の経時的動態変化については不明な点が多い.そこで生体への刺激に対する唾液中のストレスマーカーの変動を定量し,その動態について調べた.さらに,これを歯科治療の術中や予後の評価に応用出来るかどうかについて検討を行った.外科的,内科的疾患のない成人男性61名から任意の時期に唾液採取管を用いて唾液を採取した.これらの被験者は,1)前腕肘部の静脈から真空採血管と注射針を用いて採血を行った者(30名),2)抜歯を施術した者(5名),3)抜歯を伴わない一般的な歯科治療のみを施術した者(26名)がいた.各被験者群において,採血前後および施術前後の唾液中のアミラーゼ,コルチゾール,クロモグラニンAの変動比の経時変化を分析した.アミラーゼとクロモグラニンAは採血前の時点においてすでに有意な増加を示し,心理的ストレスに対して反応することが示唆された.被験者は採血前の基準日におけるストレスマーカー量について高濃度群と低濃度群に大別された.このうち高濃度群は低濃度群と比べて,すべての上記ストレスマーカーの変動が少なく,ストレス応答系の活動が高まりにくい可能性が示唆された.歯科治療を行った場合,アミラーゼとコルチゾール濃度は初診時に比べ再診時には有意な低下を認め,また抜歯による有意な増加が観察された.これらの結果は,初診時の不安や恐怖が再診時には緩和されることによりストレスが減少したことを示し,一方,抜歯は強いストレスとして作用したことを示していると考えられた.本研究により唾液中のアミラーゼ,コルチゾール,クロモグラニンAは採血によるストレスに対してそれぞれ反応速度が異なり,さらにその変化率はもともとの唾液中ストレスマーカー量が多いか少ないかによって異なることが明らかとなった.また,これらのストレスマーカーは歯科治療の内容や受診回数によって動態が変化し,歯科治療の術中や予後の評価に応用出来ることが示された.
著者
赤木 里香子 森 弥生 山口 健二
出版者
日本美術教育学会
雑誌
美術教育 (ISSN:13434918)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.289, pp.8-15, 2006-03-01 (Released:2010-10-20)
参考文献数
5
被引用文献数
2

In this paper we give a typology designed for classifying art appreciation instructions in secondary schools. Two dichotomies are set. The first is to ask how instruction is made; do teachers get the appreciation of art works based on historical and cultural knowledge or students' own judgment? The second is to ask what the aim of instruction is; is it a preparation for making art works or a step for other kinds of broad activities. Combining the two dichotomies art appreciation instructions are divided into four types. The benefit of the typology does not reside in categorizing function itself but in making clear what the point of each instruction is. We also give an example in which a certain art appreciation lesson unit is designed properly with the typology.
著者
森 裕紀子 鈴木 邦彦 及川 哲郎 花輪 壽彦
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.250-255, 2015 (Released:2015-11-05)
参考文献数
29
被引用文献数
1

白朮附子湯は『傷寒論』に「風湿相摶身體疼煩」1)と記載があるが報告は少ない。今回梅雨時に発症した四肢の痛みの再発例に対して白朮附子湯が著効した症例を経験した。症例は45歳女性。X-1年6月に,両手足の痛みとしびれが出現し暖まると痛みは改善し,疲れると痛みは増し筋肉痛のようなだるさがある。1年半前に同じ症状で主に駆瘀血薬を1年間服用し症状が消失していた。前回同様に瘀血所見が強く駆瘀血薬を処方したが症状は消失しなかった。以前の痛みの発症も梅雨時だったことに注目し,表湿に冷風が加わり生じた痛みと考え白朮附子湯に転方したところ2週で痛みは消失した。翌年6月も痛みが再発し白朮附子湯を処方し11日で治癒した。痛みの性質と発症時期から初診時の痛みも湿による痛みだったと推測する。梅雨時に発症する痛みは,冷房設備の整った環境で生活する現代において今後増える病態であり,白朮附子湯は考慮すべき処方の1つである。