著者
梁 広石 姜 奕 浜野 慶朋 鶴井 博理 橋本 博史 広瀬 幸子
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.293-303, 1997-09-16 (Released:2014-11-18)
参考文献数
21

T細胞やB細胞の過剰免疫反応の抑制や免疫寛容の維持にFas-Fasligand (FasL) を介した活性化細胞のアポトーシス死機構が重要な役割を担っているが, 自己免疫疾患における自己抗体産生B細胞の発生にFas-FasL系の異常が関与しているか否かは明らかでない. この点を明らかにする目的で, われわれはSLEモデル系であるNZB×NZW (NZB/W) F1マウスを用いて, B細胞におけるFas発現と自己抗体産生との関係を解析した. 未刺激の正常Balb/cマウスおよび2ヵ月齢NZB/W F1マウスの脾臓および腹腔B細胞には, B1およびB2細胞ともにFas発現細胞はほとんど見られなかった. 一方, これらの細胞を抗CD40モノクローナル抗体 (mAb) ・LPS・抗IgM抗体で刺激すると, 抗CD40mAbによってのみ強いFas発現の増強が見られた. この際, B2細胞は全てがFas高発現を示したのに対して, B1細胞は低発現と高発現の2群に分けられた. これらの細胞に抗Fas mAbを添加すると, Fas高発現B1およびB2細胞はアポトーシス死を起こしたが, Fas低発現B1細胞はアポトーシス抵抗性であった. 既に疾患を発症した加齢NZB/W F1マウスの脾臓には, 低レベルのFasを自然発現したB細胞の出現が見られ, これらの細胞はアポトーシス抵抗性であった. これらの結果から, B細胞におけるアポトーシス死はFasの発現レベルに依存した現象であることが明らかとなった. また, 抗CD40mAb刺激後のFas低発現B1細胞の形質は, 加える抗体濃度や反応期間を増しても変化しなかったので, B1細胞には今まで知られていなかつたFas発現レベルで区別される2つの亜集団が存在することが示唆された. 抗DNA抗体産生との関係を調べたところ, 抗DNA抗体はそのほとんどがFas低発現B細胞から産生された. 得られた結果から, B1細胞におけるFas発現レベルを規定している機構の解明を通し, 自己免疫疾患におけるB細胞免疫寛容の破綻の機序が明らかになるものと考えられた.
著者
黒川 洸 谷口 守 橋本 大和 石田 東生
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.121-126, 1995-10-25 (Released:2018-12-01)
参考文献数
13
被引用文献数
2

SPRAWL AREA HAS FORMED BY RAPID URBANIZATION IN METROPOLITAN SUBURBAN AREA. INFRASTRUCTURE IMPROVEMENT, SUCH AS PROVIDING ROAD, PARK AND SEWERAGE BECOME VERY DIFFICULT AND INEFFICIENT, IF SPRAWL AREA HAS ONCE FORMED. THIS RESEARCH AIMS TO CALCULATE THE EFFECT OF COST REDUCTION BY EXECUTING PRE-INFRASTRUCTURE IMPROVEMENT BEFORE OUTBREAKING URBAN SPRAWL. INCREASE OF PROPERTY TAX BY PRE-INFRASTRUCTURE IMPROVEMENT IS ALSO CALCULATED. IT IS CLARIFY THE COMPENSATION COST ACCOUNT FOR LARGEST PART OF ALL COST REDUCTION.
著者
赤澤 宗俊 橋本 和法
出版者
一般社団法人 日本周産期・新生児医学会
雑誌
日本周産期・新生児医学会雑誌 (ISSN:1348964X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.451-456, 2020 (Released:2020-12-10)
参考文献数
20

覚醒剤の乱用は一般の人々にも広がっており,本邦でも妊娠中に覚醒剤を使用した症例が複数報告されている.その周産期管理については,医学的のみならず社会的,法的にも対応に苦慮したとの報告が多い.今回われわれは医学中央雑誌を用いて文献レビューを行い,覚醒剤使用妊婦について国内13症例を集約し,管理上の問題点について検討した.患者背景では全症例が未受診妊婦であり,児は多くの症例で乳児院入所となっていた.母体の重篤な合併症として頭蓋内出血(脳幹)と,産後に甲状腺クリーゼ,心不全を来した症例を認めた.新生児経過としては,4症例で易刺激性,振戦,呼吸障害といった薬物離脱症候群の発症を認めた.法的な問題としては,①薬物の尿検査の施行に本人の了承が必要か,②警察への通報は医師の守秘義務違反になるのか,の2点が議論されていた.覚醒剤使用妊婦の管理は稀であるが,法的な問題も含有するため,治療指針の作成が望まれる.
著者
坂本 憲治 掃本 誠治 橋本 洋一郎 榛沢 和彦 辻田 賢一
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.648-654, 2022 (Released:2022-12-22)
参考文献数
13

2016年4月,2度の地震(震度7)が熊本地方を襲った.本震から2日後,車中泊の51歳女性が急性肺塞栓症(pulmonary thromboembolism: PTE)により死亡し,我々は避難所巡回での深部静脈血栓症スクリーニング検診を開始した.車中泊者を中心に要入院重症VTE患者が多数発生する中,のべ136会場で4,135名に下肢静脈エコー検診を行なった.急性期検診(発災後45日間)のDVT陽性率は9.5%.予後調査で健診による3名の要入院者を同定できたが,死亡例はなかった.慢性期検診の検討では,DVT陽性率の検診時期毎の低下傾向を認めなかったが,高齢者を除くと経時的な陽性率低下が確認できた.急性期に同定されたDVTの慢性期推移を検討した結果,56%に消失が確認できた.血栓消失群における消失時期について検討したところ,49%は2ヶ月以内,87%は6ヶ月以内の追跡で血栓の消失が確認できており,発災直後からの予防啓発活動の重要性が示唆された.
著者
橋本 唯子 山中 節子 藤井 亜希子
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.118, pp.2109, 2021-08-31 (Released:2021-09-16)

平成27年5月に和歌山大学図書館において発生したシバンムシによる虫害について, 発生から緊急対応・燻蒸処理とその後の点検などといった実施項目の概略を示し,以後虫害を防ぐための対策として研修・環境整備・殺虫およびクリーニング作業などを進めてきた経緯を紹介する。成果として職員の意識向上・資料保存環境の改善があげられると同時に, 記録の不足・消毒用エタノールなど必要物品の不足などの課題についてまとめ, 被災時に図書資料をどのように救出すべきか, 意識を共有する意義について言及する。
著者
長坂 聡子 橋本 秀紀 坂本 静男 田口 素子
出版者
独立行政法人 日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター
雑誌
Sports Science in Elite Athlete Support (ISSN:24322091)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.45-54, 2016 (Released:2019-02-15)
参考文献数
20

The purpose of this study was to investigate the effects of postexercise carbonated high-carbohydrate beverage (Carbonated Trial: CT) compared with non-carbonated high-carbohydrate beverage (Non-Carbonated Trial: NCT) on gastrointestinal (GI) problems and physiological indexes during 4 hours of recovery period in athletes. Eight Japanese collegiate athletes (age : 21±1yr ; height : 170.8±6.0cm ; body weight(BW) : 68.70±8.29kg ; percent body fat : 11.7±2.7%) participated in the cross-over designed study. Immediately after the exhaustive exercise, subjects consumed 3.5ml/kg BW of 1) water, 2) high-carbohydrate beverage : NCT (1.8gCHO/kg BW/h), and 3) carbonated high-carbohydrate beverage : CT (1.8gCHO/kg BW/h) every 30 min during 4 hours of recovery period. No difference was observed in blood concentration of glucose, insulin, free fatty acid, and subjective GI problems between CT and NCT. However the rate of vomiting was significantly higher in the NCT compared with CT (p < 0.05). These results suggest that ingesting carbonated beverage during recovery period may help digestion and absorption in the stomach of athletes.
著者
岩屋 遼 吉田 亮 橋本 忍 森河 由紀弘 太田 敏孝
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.22-00335, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
16

本研究では,コンニャク石に可撓性や衝撃吸収性能をもたらすインターロッキング構造について,遊間をもち三次元にゆるく連結したブロック集合体として提案した.このブロック集合体は,3Dプリンティングにおける付加製造の特性を生かし,ブロックと遊間を同時に作製することで,組立てを不要とし,いかなる方向にも外れずに可動する単純な幾何モデルであり,可撓性や衝撃吸収性能が確認された.また,直接基礎として用いた振動試験においても,一体型のブロックに比べて,加速度を1/3程度まで低減する免振効果が確認できた.そして,このブロック集合体をコンクリートの打設によって製造するための施工方法についても考案した.
著者
橋本 真基 日比野 直彦 森地 茂
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.22-00182, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
19

働き方改革の推進,新型コロナウイルス感染症拡大を背景に,テレワークが急速に進展し,通勤行動が大きく変化した.この行動変化を把握することは,今後の鉄道サービスを検討する上では重要であるものの,実行動に基づく定量的な分析は少なく,実態が明らかにされていない.そこで,本研究では,筆者らの先行研究を踏まえ,自動改札データを用い,鉄道利用者の通勤行動の変化を分析する.コロナの影響により,対象路線をほぼ毎日利用していた約86万人のうち,約8万人が在宅テレワークに,約8万人が利用頻度を大きく減少させたことを明らかにした.また,OD別の変化,通勤頻度と定期券利用の関係,性・年齢階層別の変化,出発時間帯の変化,定期券保有と立ち寄り行動との関係等についても定量的に明らかにしている.
著者
飯島 渉 橋本 雄太 市川 智生 五月女 賢司 中澤 港 井上 弘樹 高橋 そよ 後藤 真
出版者
青山学院大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2023-04-01

COVID-19のパンデミックの歴史化をめぐっては、個人的な記録や記憶など、感染症対策への反応を示す資料群の整理・保全が必要である。そのための仕組みとして、国立歴史民俗博物館が運用しているクラウドソーシング・デジタル・プラットフォームを援用し、「コロナ関係資料アーカイブズ」(仮称)を構築・運用する。COVID-19のパンデミックの感染状況などの基本的な状況を示すデータを組み込む。中澤港(神戸大学)が整理・公表してきた時系列的な感染の推移データを基本とし、国別の状況も組み込む。持田誠(浦幌町立博物館)、五月女賢司(大阪国際大学)、高橋そよ(琉球大学)の収集資料などを、デジタル化して組み込む。
著者
橋本 幸成 三盃 亜美 上間 清司 宇野 彰
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.356-364, 2022-09-30 (Released:2022-11-24)
参考文献数
24

左被殻出血によって軽度の表層失読を呈したと考えられた失名辞失語例を報告する。本例の障害機序を検討するため, 漢字刺激を用いた実在語と非語の音読課題, 同音擬似語を含む語彙性判断課題, 読解課題, 呼称課題を実施した。その結果, 漢字の非同音非語の音読成績は正常範囲内であり, 漢字から音韻へ変換する機能は保存されていると思われた。一方, 実在語の音読課題では低頻度かつ非典型読みの実在語の音読において基準値以下の成績を示した。誤反応はすべて LARC (legitimate alternative reading of components) エラーであり, 表層失読の特徴を認めた。また, 同音擬似語を用いた語彙性判断課題の成績が低いことから, 文字単語の同定過程に障害があると考えられた。二重経路モデルを用いた分析では, 意味システムの障害では本例の障害機序を説明できず, 文字列レキシコンや音韻列レキシコンの障害によって軽度の表層失読を呈したのではないかと考えられた。
著者
橋本 直也 山下 晃司 首藤 淳 中西 章仁
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.147-152, 2021-09-29 (Released:2021-09-29)
参考文献数
5

X線撮影は,胸腹部及び椎体部や四肢部などあらゆる部位に対して撮影を行うことが出来る。また,形態的な異常を発見し,初期診断や定期的な経過観察に用いられている。今回新しく開発されたデジタルX線動画撮影システム(動態撮影装置)は,連続するパルス状のX線をある一定時間(~20秒間)照射することにより連続したX線画像(X線動画像)を比較的低線量(約1.5mGy)で撮影ができる。従来のX線撮影同様に低侵襲・低被ばくで,簡便にX線動画像を撮影することが可能である。更に,X線動画像専用の動画解析ワークステーションに搭載された胸部動態解析アプリケーションを用いることで肺換気や肺血流を反映する画像を作成することが可能であり,形態情報のみだけではなく肺機能の可視化も可能となっている1)。 当院では,2020年5月に動態撮影装置が導入され主に胸部を対象として撮影を行っている。 本稿では,動態撮影装置の機能を紹介し,専用ワークステーションの特徴や臨床の取り組みについて述べる。
著者
板倉 七海 酒匂 一世 原田 利宣 橋本 唯子
雑誌
研究報告コンピュータグラフィックスとビジュアル情報学(CG) (ISSN:21888949)
巻号頁・発行日
vol.2016-CG-165, no.19, pp.1-6, 2016-11-02

本研究では絶滅したニホンオオカミをはじめとした 8 種の動物の頭蓋骨と剥製や写真上の頭部形状に現れる曲線の比較 ・ 分析を行った.次に,その結果に基づいて和歌山大学が所蔵するニホンオオカミの頭蓋骨から正確な頭部形状を推定した.さらに CG で頭部形状を 3D モデル化し,再現するとともにニホンオオカミの全身形状も CG 上で創成して,“歩く”,“走る” といったモーション付けを行い,展示のための検討を行っている.
著者
志和 亜華 米田 真康 大野 晴也 小武家 和博 上村 健一郎 首藤 毅 橋本 泰司 中島 亨 中川 直哉 村上 義昭
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.149-155, 2016-03-30 (Released:2016-03-30)
参考文献数
29
被引用文献数
3

膵疾患加療目的に施行された膵頭十二指腸切除術(PD)18例および尾側膵切除術(DP)18例に対し,インスリン分泌能,膵体積量と耐糖能異常の頻度を比較検討した.インスリン分泌能評価はグルカゴン負荷試験を用い,膵体積量は造影CTを施行し計測した.術前の膵体積量,インスリン分泌能および糖尿病有病率に有意差を認めなかった.両群ともに術後インスリン分泌能は残膵体積量と有意な正の相関を認めたが,残膵体積量当たりのインスリン分泌能はDP群がPD群に比べ有意に低下していた.術後糖尿病有病率は術後3ヶ月時点でPD群33.3 %,DP群72.2 %とDP群で有意に高率であり,新規発症は術後12ヶ月時点でPD群14.3 %,DP群63.6 %とDP群で有意に高率であった.DPはPDよりも残膵体積量当たりのインスリン分泌能が低く,耐糖能が悪化する可能性が高いため,慎重な経過観察が必要である.
著者
鈴木 信孝 橋本 慎太郎 許 鳳浩 上馬塲 和夫
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.61-65, 2019-03-31 (Released:2019-04-10)
参考文献数
6
被引用文献数
4 4

ハトムギの外殻・薄皮・渋皮を含む全粒熱水抽出エキス(Coix-seed Reactive Derivatives;CRD)摂取が有用であった両手指の難治性貨幣状湿疹の1例を経験したので報告した.患者は52歳,女性.2012年3月に湿疹が多数出現し,全身に広がった.貨幣状湿疹の診断のもとにステロイド軟膏と抗ヒスタミン薬の内服を受けるも,好転しないため,発症から3年目の2015年に薬を中止した.2017年10月からCRDを1包あたり2.2 g含有する栄養補助食品を1日当たり2包摂取し始めたところ,急速に病変は改善し始め,摂取1ヶ月目には完治し,現在に至っている.本例は,発症から5年半という長期にわたって,とくに両手指に発疹と強い掻痒感が続いていたが,CRD摂取により,約1ヶ月という短期間に根治をみた例である.