著者
菊池 幸恵 樋口 比登実 増田 豊 橋本 誠 岡本 健一郎 八代 亮 細山田 明義
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.19, no.10, pp.609-612, 1999-12-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
10

要旨 レーベル遺伝性視神経症(以下Leber病)の診断にて眼科的治療を受けるも回復せず,星状神経節ブロック(以下SGB)を施行し,両眼視力回復が認められた症例を経験した.症例は20歳男性.当科初診時視力(以下すべて矯正視力)は右眼0.07,左眼0.02,視野上大きな中心暗点を認めた.急性期の右眼に対し,1日2回のSGBによる治療を開始し,治療開始7ヵ月後(左右SGB合計約200回),視力右0.6,左0.2,視野上も中心暗点が縮小し,中心視力も出現,週1回の外来通院となっている.眼疾患に対するSGBの作用機序は未知の部分も多いが,副作用なく長期にわたって治療可能なSGBは,治療法の一つとして選択されうると考えられた
著者
酒井 章次 洪 淳一 山本 修美 橋本 光正 細田 洋一郎 椎名 栄一 川村 貞夫
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.975-979, 1990-05-25 (Released:2009-04-21)
参考文献数
17

後天性食道気管支瘻は食道癌に伴って起こることはよく知られているが,憩室に伴う食道気管支瘻は比較的まれである.本症例は66歳,女性で,55歳時に嚥下困難があったが肺化膿症および食道アカラシアの診断で放置していた.66歳になり嚥下困難,発熱,体重減少,背部痛があり当院に入院した.食道鏡により上部食道に発生した食道憩室を認めた.食道憩室造影から食道憩室と右肺上葉との連絡がみられた.この食道憩室造影所見から上部食道憩室の胸腔内破裂により生じた後天性食道気管支瘻と考えられた.
著者
橋本 健二
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.127-139,en308, 1984-09-30 (Released:2011-03-18)

The purposes of this paper are to outline Marxist approaches in the sociological study of education taken initiative by S. Bowles in 1971, to point out problems to be solved in them, and to find direction to overcome them.There are three major question in the theory of Bowles and H. Gintis:(1) Instrumentalist view of public educational institutions, (2) Underestimation of economic functions of them, (3) Overestimation of reproductive functions of them. They dealt with the problems of reproduction of capitalist mode of production as far as public educational institutions took part there, and failed to locate them in the whole processes of the reproduction. Furthermore, they regarded public educational institutions as instruments of ruling classes which they could operate arbitrarily. And they concentrated on only noneconomic, political and ideological functions of them.There have been many critiques of their theory. And some have been proposed attempts to overcome them in two directions:(1) integration of “micro” and “macro” sociology, (2) investigation of structural mechanisms and contradictions.Relative to the second direction, I try to locate “Marxist sociology of education” as a branch of the theory of the capitalist state. That is, “Marxist sociology of education” must, based on more general theories of the state and social classes, (1) analyse functions of public educational institutions as a part of the state, (2) investigate factors influencing these functions, (3) locate these functions in the whole processes of reproduction of capitalist mode of production including both economic and non-economic.
著者
橋本 雅行 高橋 修 小野 秀一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.9, pp.23-00031, 2023 (Released:2023-09-20)
参考文献数
15

橋面舗装の打換え工事において,舗装切削が既設の防水層や床版コンクリートに少なからずダメージを与える要因となっており,既設の防水層は,健全な状態であっても橋面舗装の基層と同時に再施工されるのが実状である.本研究ではこれらを課題として挙げ,防水層上の基層を薄層状態で残存させる切削工事を想定し,残存層を再利用することについて検討した.この残存層は,ひび割れなどの損傷が生じている可能性が高いものの,既設の防水層と床版コンクリートが健全であれば,新設時に近い状態まで不透水性を回復させることで,中間層として再利用できる可能性がある.このことから,残存層の不透水性の回復手法について検討し,有効性を評価した.その結果,アスファルト乳剤浸透工法は,残存層のひび割れを閉塞し,不透水性を回復できることを確認した.
著者
橋本 和孝 高橋 一得
出版者
関東学院大学[文学部]人文学会
雑誌
関東学院大学文学部紀要 (ISSN:02861216)
巻号頁・発行日
no.129, pp.65-79, 2013

21世紀に入って、日本は"ベトナム・ブーム"ともいうべき現象を経験してきた。大量の日本人観光客がホーチミン市に群がる構図である。一方、日本企業はベトナムへの投資を増加させ、他方、ベトナム政府は、日本のODAや民間資金に期待している。ベトナムの大都市では、日本語学校や大学における日本語学科が増加し、日本人のためのビジネスが活発化してきた。ホーチミン市には、「リトル・ジャパン」と語るに相応しい界隈も登場した。今日では、2000年代前半にはなかった日本人会も存在し、ベトナムおよびホーチミンの日本商工会の会員数は激増を見せている。論文は、"ベトナムの中の日本"が、ベトナムの経済、社会、文化にいかなる影響を及ぼすかを探究しようとしたものであり、2005年発表した Japan in Vietnam: A Case Study of Japanese Globalization について再考したものである。
著者
橋本 まき 小谷口 美也子 松本 裕貴 琴浦 聡 湯浅 浩気 青木 基 中根 正人 北村 進一
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
pp.NSKKK-D-23-00058, (Released:2023-09-27)

機能性表示食品の機能性関与成分のルーチン分析で求められるスループット性を考慮して, 構築したNP-HPLC簡易法の定量値の妥当性を検証した. ソフトカプセル2粒当たりのプラズマローゲン量をNP-HPLC簡易法と2D-HPLC法で分析し, 得られた定量値と比較したところ, 有意差はみられず定量値の妥当性が確認できた. NP-HPLC簡易法はソフトカプセルやその他の食品中プラズマローゲン含有量について日々のモニタリングに活用できると考える.
著者
橋本 厚生
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.22-33, 1980-03-31 (Released:2017-07-28)
被引用文献数
1

肢体不自由児を持つ家族と精神薄弱児を持つ家族の障害児出生によるストレスを、障害の診断時頃から小学部入学前後時頃までの間について、アンケートにより遡及的に調査した。ストレス、特に心理的ストレスと家族内部の相互行為によるストレスの大きさとその時間的推移パターンは、両親年令、社会的地位、経済的地位、障害程度の各階級間に相違を示した。社会的地位もしくは経済的地位の高い家族のストレスは初期に小さく、次第に増大していくパターンを示すことが比較的多く、この両属性が低い家族の初期のストレスは大きく、次第に減少してパターンを示すことが比較的多い。
著者
松村 英之 橋本 光靖 浪川 幸彦 向井 茂 大沢 健夫 四方 義啓
出版者
名古屋大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

1.橋本は局所環の重複度の研究,ことに交差の重複度が零にならないというセール予想の研究に取り組んだが,大問題なのでまだ結果が出ていない.2.岡田はフィボナッチ半順序集合に関係した半単純代数の増大列とその既約表現などについて研究したが,平成5年9月からM.I.T.に留学中である.3.吉田はlinear maximal Buchsbaum modulesを定義してその性質を研究した.局所環(A,m)上の有限生成加群Mが,e(M)+l(M)個の元で生成されるとき,Mをlinear maximal Buchsbaum moduleと呼ぶ.ただしl(M)=sup(length(M/qM)-e(q,M):q is a parameter ideal of M)Aがmaximal embedding dimensionをもつとき,剰余体A/mのsyzygyがすべてlinear maximal Buchsbaum moduleになるなど,多くの興味ある結果が得られた.この研究は38ページの論文にまとめられたが,なお推敲中である.4.松村は局所環の合成によって非ネーター環を簡単に作る方法を考案した外,留学生鄭相朝の博士論文(一般化された分数の加群とクザン複体),修士2年生の志田晶の修士論文(局所環の準同型のDGファイバーに関するもの)を指導した.
著者
鬼塚 健一郎 星野 敏 橋本 禅 九鬼 康彰
出版者
農村計画学会
雑誌
農村計画学会誌 (ISSN:09129731)
巻号頁・発行日
vol.31, no.Special_Issue, pp.261-266, 2012-11-20 (Released:2013-11-20)
参考文献数
9
被引用文献数
3 3

An availability of the Internet in rural area is now close to that in urban area in Japan. But generally, it is still considered that it's difficult for inhabitants in rural area, who are mostly elderly, to use the Internet. But communication via the Internet is very important for rural inhabitants to recognize what matters in their areas and how to solve it themselves, cooperating with various kinds of stakeholders. In this research, we identified the current condition of digital divide in 3 small regions in Kyoto prefecture and discussed what the causes of it are and how to improve such condition from now on.
著者
塩崎 大輔 橋本 雄一
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2020年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.301, 2020 (Released:2020-03-30)

1.研究目的 高度経済成長期以降,日本では大規模リゾート施設や大型保養地が各地で開発され,北海道や東北,本州内陸部といった積雪地域ではスキー場を中心としたスキーリゾート開発が進められた.しかしバブル経済の崩壊とともに,スキーリゾート地域は長らく低迷の時代を迎えた(呉羽,2017).しかし,2000年代後半から一部スキー場は外国人からの注目を集め,スキー場周辺の再開発が見られるようになった.北海道虻田郡倶知安町に位置するニセコグランヒラフスキー場もその一つである.グランヒラフスキー場が位置する倶知安町字山田はバブル経済とともに開発が活発化し,また開発エリアも泉郷や樺山といった隣接エリアにまで拡大していった.しかしバブル経済の崩壊とともに開発行為が停滞し,2000年代後半から外国人による開発が急拡大した(塩崎・橋本,2017).現在では6階以上の高層階を有する分譲型の建物が建築されているが,こうした不動産の実態は未だ不明である.そこで本研究は不動産登記情報をもとに,ニセコヒラフ地区における建物および不動産所有の実態を明らかにし,空間特性および課題を議論することを目的とする.2.研究対象地域及び研究方法 研究対象地域は北海道虻田郡倶知安町字山田,道道343号からグランヒラフスキー場にかけてのエリア(以後ヒラフ北部地区と称す)とする.本研究はまず,不動産の登記情報723件をデータベース化する.登記情報を収集するにあたっては,ZENRIN住宅地図の2017年度版に記載されているヒラフ北部地区の建物を対象とした.次に登記に記載されてある建物情報及び所有者情報から,不動産及び不動産所有の実態を明らかにする.さらに建物の立地及び建物情報,所有者情報からニセコヒラフ地区における現在の不動産及び不動産所有の空間特性を議論する.最後に当該地区の不動産と災害リスクについて考察し、これらの分析結果を総合し本研究はニセコエリアにおける地域開発を議論する。3.研究結果まず登記情報を集計した結果,ヒラフ北部地区の専有部種類は12種類登録されており,最も多いのが「居宅」で451件であった.次いで多いのが「ホテル」で114件であり,「物置」47件,「店舗」27件と続いた.建物毎に集計すると,建物内に50件以上の「居宅」を有する建物は4棟存在した.これらの建物は一般的な宿泊予約サイトにも掲載されており,「居宅」で登録された部屋が宿泊施設としても利用されている. 次に各専有部の所有者の変化を見ると,表題部に記載された所有者の所在が,倶知安町で236件と最も多かった.次に札幌市が213件と多く,東京都が85件,オーストラリアが85件,神奈川県が49件,マレーシアが4件であった.しかし売買などを経た最終的な所有者は,最も多いのが中華人民共和国で210件,次にオーストラリアが101件,シンガポールが82件とアジア圏の所有者が増加している一方で,倶知安町が32件,札幌市が19件と激減している.これにより北海道のディベロッパーがヒラフ北部地区を開発し,専有部をアジア圏の富裕層に販売している実態が明らかとなった. 各建物の立地時期を年代別に分けて表示すると,多くの建物が2010年代に開発されたものということが見てわかる(図1).また西側から南側にかけて沢が存在するが,この沢に沿う形で建物が並んでいる様子もわかる.もともとヒラフスキー場は沢に挟まれた狭矮な土地であり,地形的制約から開発が拡大しにくいため,飛び地的に泉郷や樺山エリアが開発されてきた.しかし近年ではこの沢付近でも開発が行われる傾向があり,そうして開発された建物を多くの外国人が所有する実態が明らかとなった. こうした地形は災害リスクも伴う.ヒラフ地区は沢地形のような急傾斜地が多いため,土砂災害エリアが設定されており,図1で示された多くの建物がこのエリア内に存在する.またこれらの建物には外国人オーナーはもちろん,宿泊施設としても多くの外国人が来る.こうした人たちに災害情報をどのように伝達するのか,また災害発生時にどのようにアプローチするべきなのかを検討する必要があると考えられる.
著者
塩﨑 大輔 橋本 雄一
出版者
北海道地理学会
雑誌
地理学論集 (ISSN:18822118)
巻号頁・発行日
vol.96, no.1, pp.1-6, 2021-05-12 (Released:2021-05-21)
参考文献数
9

本研究はスキーリゾート開発が著しい北海道倶知安町のひらふ地区を対象とし,開発の経緯を施設建設によって概観した後,各施設に関する土砂災害の危険性を空間的に検討することで,スキーリゾート開発と災害リスクとの関係を明らかにした。 そのために建築確認申請計画概要書から作成したデータベースで開発を年代別に分析し,当該地区の土砂災害リスクを国土数値情報の災害関連情報とあわせて検討した。ひらふ地区の開発はバブル崩壊前後と2000 年代後半に拡大した。特に海外からの不動産投資が急増した2000 年代後半からの開発では,スキー場に近接した施設建設の適地が不足したことにより,バブル期の開発に比べ,その開発範囲は河川沿いの急傾斜地にきわめて近い場所まで広がっていた。ここには高級コンドミニアムなど比較的規模の大きい建築物が複数立地しており,近年の観光施設集積地の縁辺部における大型開発が,土砂災害の危険性を高めていた。これらの結果から,対象地域では好景気の時期に開発が進んでいることや,開発の時期が新しいほど土砂災害の危険性が高い場所で施設建設が行われていることが明らかになった。
著者
陣崎 雅弘 秋田 大宇 橋本 正弘 山田 稔 山田 祥岳 稲本 陽子 秋田 恵一 大竹 義人
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2021-04-01

これまでのCTは患者さんが仰向けに寝た臥位の静止撮影で、器質的疾患の定量・定性評価を担ってきた。それにより、生命予後の改善に貢献してきたが、動態である機能の定量・定性評価はほとんどできていなかった。現在は、超高齢化社会であり、生命予後と同時に健康長寿であることもとても重要である。我々は、立位や座位での4次元画像が可能なCT(立位/座位CT)を開発した。これを用いて、健康長寿に必須である嚥下機能・排尿機能・歩行機能を健常人および患者さんにおいて3次元・4次元的に解明し、機能障害の機序と重症度分類、機能改善の指標になる所見を明らかにしていきたい。
著者
高柳 明夫 小林 皇 橋本 浩平 加藤 隆一 舛森 直哉 伊藤 直樹 塚本 泰司
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.99, no.7, pp.729-732, 2008-11-20 (Released:2011-01-04)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

症例は32歳, 男性. 両側精巣萎縮と性欲減退を主訴に2006年2月9日に当科を初診した. 問診より1999年からのアナボリックステロイド (AAS) の濫用が判明した. 身体所見では両側精巣容積が13mlと萎縮していた. 内分泌的検査では黄体化ホルモン, 卵胞刺激ホルモン, 総テストステロンは低値であり, 遊離型テストステロン (Free T) は高値だった. また, 後日判明した sex hornomne binding globulin (SHBG) も低値であり, 算出された calculated Bioavailable testosterone (cBAT) も低値だった. 以上の所見からからAASの濫用による低ゴナドトロピン性性腺機能低下症と診断した. AASの中止のみで経過観察を行ったが改善を認めなかったため, 5月18日より週1回のヒト絨毛性ゴナドトロピン (hCG) 3,000単位筋肉注射を開始した. その後6月22日に内分泌学的検査を施行したが自覚症状, 内分泌検査所見ともに改善は認めていない. AASの濫用により低ゴナドトロピン性性腺機能低下症となることが知られており, 一部の患者ではAAS中止後も性腺機能低下症が改善しないことが報告されている. 本症例においてはhCG注射を早期に開始したことが早期に精巣機能を改善するかどうかについて今後の注意深い観察が必要である. また, 本症例の病状を把握する上では free T よりもcBATを用いることが有用だったと考えられた. AASには多くの重篤な副作用があり安易な使用は控えるべきである. またAASの副作用に関しての広い啓発により濫用を防ぐことが必要と考えられた.
著者
橋本 和典
出版者
公益財団法人 天理よろづ相談所 医学研究所
雑誌
天理医学紀要 (ISSN:13441817)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.118-122, 2021-12-25 (Released:2021-12-24)
参考文献数
14

高齢者における睡眠障害の影響として,心血管系リスクの上昇,高血圧の発症,耐糖能の低下,抑うつ症状の惹起に関連するとの報告があるが,認知機能低下や認知症発症への影響はどうだろうか.Tsapanouらの報告では睡眠不足と認知症発症との関連が示されており,その機序として,睡眠障害により脳脊髄液中のアミロイドβ(Aβ)のクリアランスが低下することによりAβの増加や沈着が生じ,アルツハイマー型認知症のリスクが高まると考えられている. また,ベンゾジアゼピン系薬剤が認知機能に与える影響についての研究も多数報告されている.Billioti de Gageらのベンゾジアゼピン系薬剤の服用と認知症リスクの関連についての10報の研究をレビューした報告では,ベンゾジアゼピン系薬剤の服用により認知症のリスクが1.5–2倍程度高まるという結果であった.しかし,Grayらの報告では,ベンゾジアゼピン系薬剤の使用量が低用量,中等量の時は認知症発現リスクの上昇が見られたが,高用量では上昇しないことが示された.また,Imfeldらの報告では,ベンゾジアゼピン系薬剤が認知症発症の前駆期使用されたとき,そのリスクが上昇する傾向が示され,認知症発症の前駆期に出現する睡眠障害に対して,睡眠薬を使用していることが,認知症発症に睡眠薬が関連しているように捉えられる可能性が考えられた.この様にベンゾジアゼピン系薬剤の使用による認知症リスクの上昇については明確な結論は出ていない. 睡眠障害の治療にはベンゾジアゼピン系,非ベンゾジアゼピン系睡眠薬,メラトニン受容体作動薬,オレキシン受容体拮抗薬などの薬物治療と睡眠習慣の見直しなどの非薬物的なアプローチがある.睡眠障害と認知症の関連を考慮すると、それぞれをバランスよく組み合わせた不眠治療が必要である.
著者
北川 貴之 橋本 憲幸 吉田 和樹 位野木 万里
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.3_93-3_98, 2010-07-27 (Released:2010-08-07)
被引用文献数
1

高品質な要求定義のためには,要求の抽出,仕様化,検証のノウハウが必要になる.しかし,そのようなノウハウは,ベテラン技術者の暗黙知となっている.そこで,本稿では,要求定義ノウハウを形式知化し,組織の資産(アセット)として共有する手法を提案する.本手法では,成功事例の要求仕様書の分析とベテラン技術者へのインタビューを通して,要求定義ノウハウを抽出した.これらのノウハウを,要求仕様メタモデル,要求仕様テンプレート,要求仕様プロダクトおよびプロセス検証ルールに分類して,形式知化した.