著者
武藤 朋也
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.64, no.9, pp.962-969, 2023 (Released:2023-10-05)
参考文献数
46

骨髄系腫瘍は,複数のクローン性造血器腫瘍で構成される疾患群であり,骨髄異形成症候群,骨髄増殖性腫瘍,急性骨髄性白血病などが含まれる。炎症は幅広い悪性腫瘍の病態において重要な役割を果たしていることが既に知られており,骨髄系腫瘍においてもその意義が注目されてきた。具体的には,細胞内在性および外来性シグナル物質による自然免疫シグナル経路活性化,さらには自然免疫シグナルの下流シグナル伝達による炎症性サイトカインの上昇が明らかとなっている。また,血液腫瘍細胞を取り囲む炎症性シグナル物質に富んだ骨髄内環境は炎症性微小環境と呼ばれ,骨髄系腫瘍各疾患の病態における役割や分子基盤が近年精力的に解析されている。本稿では,骨髄系腫瘍における自然免疫シグナル活性化や炎症性骨髄微小環境がどのように骨髄系腫瘍発症に寄与しているのか,最新の知見を紹介しながら考察する。
著者
安部 昌宏 前田 泰宏 本田 隆文 安川 久美 武藤 順子 髙梨 潤一
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.275-278, 2017 (Released:2017-07-12)
参考文献数
10

臨床経過および特徴的なMRI所見から可逆性脳梁膨大部病変を有する軽症脳炎・脳症 (clinically mild encephalitis/encephalopathy with a reversible splenial lesion; MERS) と診断した2症例に対し, 急性期および回復期に脳梁膨大部をMR spectroscopyにて解析した. 2例ともにcholine/creatine比が回復期に比して急性期に高値となり, 髄鞘代謝に何らかの変化が生じていることが示された. みかけの拡散係数の低下が一過性であることと合わせ, MERSの病態として髄鞘浮腫が示唆された.
著者
武藤 久慶
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.64, no.8, pp.391, 2023-07-15

2022年 4月,必履修科目「情報I」の全面実施をうけ,文部科学省では,授業で使える解説動画を作成・公開しました.これらは教師の研修教材に,現役の高校生の予習・復習に,また社会人の学び直しにも活用されています.この1年を振り返って我々学校デジタル化プロジェクトチームメンバが感じるのは,産官学民の「協働の価値」です.教科情報を愛する先生方や有識者を始め,誰一人取り残されないデジタル社会を推進しようという多くの方々の熱い想いが,プロジェクトの成功に不可欠な要素でした.日本の未来を支える生徒の「もっと学びたい!」を支援し,デジタル社会 Society 5.0の構築に向けて頑張りたいと思います.
著者
大橋 真也 武藤 学
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.113, no.11, pp.1857-1867, 2016-11-05 (Released:2016-11-09)
参考文献数
66

食道扁平上皮癌は,飲酒や喫煙などに含まれる有害な化学発がん物質の摂取が原因で発症し,特に世界では東アジア・東アフリカに好発する.飲酒と喫煙は食道発がんの最も重要な環境因子であるが,近年はそれに加えいくつかの遺伝的要因,すなわちアルコール関連代謝酵素およびたばこに含まれる化学物質に対する代謝酵素の遺伝子多型が食道発がんに深く関与することが明らかとなっている.つまり,有害な化学発がん物質に対する解毒作用の低下した体質の人がこれらの摂取を続けると,食道にさまざまな遺伝子異常を生じ発がんに至るリスクが高まると考えられる.このように食道扁平上皮癌は外因的,内因的な要因に基づく化学発がんにより生じる疾患であるといえる.
著者
木下 奈緒子 大月 友 酒井 美枝 武藤 崇
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.225-236, 2012-09-30 (Released:2019-04-06)
参考文献数
11

本研究の目的は、木下ら(2012)の実験手続きに新たな刺激を加え、複数の範例を用いた分化強化の手続きが、刺激の物理的特徴にもとづく刺激機能の変換に対する文脈制御の般化に与える影響を再検討することであった。9名の大学生を対象として、4つのメンバー(線形、円形、三角形、四角形といった異なる物理的特徴を有する図形で構成される)からなる3種類の刺激クラスを形成した。そして、複数の範例を用いて、特定の物理的特徴をもつ刺激のもとで、刺激機能の変換にもとづく反応を分化強化した。その結果、分析対象となった7名の実験参加者に、刺激の物理的特徴にもとづく刺激機能の変換に対する文脈制御が示された。その後、新奇刺激を用いて新たな3種類の等価クラスを形成した。その結果、4名に文脈制御の般化が示され、先行研究と同様に、複数の範例を用いた訓練によって、刺激の物理的特徴にもとづく文脈制御の般化が示されることが確認された。
著者
平森 朋子 眞鍋 治彦 久米 克介 有川 智子 武藤 官大 武藤 佑理
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
pp.12-0061, (Released:2013-09-30)
参考文献数
13

発作性片側頭痛は,群発頭痛と同様に激しい片側痛とともに自律神経症状を呈するが,インドメタシンが著効することが特徴の,まれな疾患である.今回,群発頭痛からの移行,三叉神経痛との合併例を含む発作性片側頭痛の3 例を経験したので報告する.症例1 は31 歳,男性.突然5~6 回/時の頻度で,右後頭部痛が出現した.発作時に同側の流涙,眼瞼下垂,鼻閉を伴った.発作性片側頭痛を疑いインドメタシンの投与を開始したところ,痛みは消失した.症例2 は63 歳,女性.反復性群発頭痛として発作期のプレドニゾロンと予防薬としての炭酸リチウム,ベラパミルの投与を行っていたが,寛解期が短くなり,発作時にジクロフェナクで痛みが軽減したことから,インドメタシンを定期投与した.その後,発作は消失した.症例3 は77 歳,男性.特発性三叉神経痛としてカルバマゼピンの投与中であった.痛み発作時に同側の流涙,結膜充血,眼瞼下垂を伴うことがあったため,インドメタシンを併用投与した.その後痛みは軽減消失した.頭部・顔面痛は長期的な治療を要することが多いが,その経過中に痛みの性状が変化したり治療に抵抗性を示す場合には,他の疾患の合併を念頭に置く必要がある.
著者
伊藤 剛 武藤 俊 宇都宮 正志
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.93-101, 2022-10-26 (Released:2022-10-29)
参考文献数
65
被引用文献数
1

房総半島の上総層群の下部更新統東日笠層に挟在する礫岩中のチャート礫から,放散虫及びコノドントが産出した.放散虫(Praemesosaturnalis sp. cf. P. heilongjiangensis)とコノドント(Mockina sp.)の同定に基づくと,このチャート礫は後期三畳紀(中期~後期ノーリアン期)の年代を示す.本チャート礫は当時後背地に分布していたジュラ紀付加体に由来すると考えられる.
著者
武藤 正彦
出版者
日本時間学会
雑誌
時間学研究 (ISSN:18820093)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.23-28, 2018 (Released:2019-05-01)

わが国の現代社会は少子高齢化時代を迎え、加齢に伴うがんなどの難病と対峙していかなければならない状況に追い込まれている。死を目の前にした患者を対象とする臨床医学の現場で働く医師にとっては、患者およびその家族にどのように対処していくべきかの難題が横たわっている。本稿では、著者の40年間におよぶ臨床医学の経験をとおして出会った死を覚悟した患者の生き様を紹介し、医師としてどのように患者と向き合えばかよいのか、その処方箋について哲学的視点から問うてみる。
著者
山村 喜之 梅本 一史 鈴木 友啓 加藤 航平 武藤 潤 中西 喜嗣 吉岡 達也 村川 力彦 大竹 節之 大野 耕一
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.933-937, 2015 (Released:2016-10-31)
参考文献数
15
被引用文献数
2 2

再発直腸癌に対するmFOLFOX6療法により,高アンモニア血症を経験したので報告する.症例は73歳,男性.直腸癌に対してハルトマン手術を施行した.術後補助化学療法としてUFT/UZELを6カ月間内服した.術後9カ月に腹膜播種を認めたため,バイパス手術施行後にmFOLFOX6療法を施行した.治療開始2日目に意識障害を認め,MRIを施行したが,異常所見は認めなかった.血液検査では高アンモニア血症を認めた.5-FUに起因する高アンモニア血症による意識障害と診断し分岐鎖アミノ酸投与と持続的血液透析を施行した.翌日には意識障害および血中アンモニア値は改善した.mFOLFOX6やFOLFIRI療法など高容量の5-FUを投与した際に,意識障害を認めた場合は,高アンモニア血症に留意すべきである.
著者
後藤 浩志 武藤 正樹 池田 俊也 百瀬 泰行
出版者
一般社団法人 日本老年薬学会
雑誌
日本老年薬学会雑誌 (ISSN:24334065)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.7-15, 2022-06-30 (Released:2022-07-22)
参考文献数
16

Objective: This study aimed to clarify the actual prescription status of patients covered through the “Screening Tool for Older Person’s Appropriate Prescriptions for Japanese” (STOPP-J).Methods: Patients aged ≥ 75 years who received oral medications for chronic diseases were classified into two groups: multidrug and non-multidrug groups. The number of drugs according to the drug class and the number of STOPP-J drugs prescribed were examined.Results: This study included 8,192 patients. The average number of medications was 4.1, and its percentage in the multidrug group was 26.4%. The multidrug group presented a higher number of physicians and percentage of STOPP-J prescriptions than the other group. The highest percentage of prescribed multidrug use included antithrombotics (82.5%), digitalis (76.2%), and diuretics (73.2%).Conclusion: The multidrug group presented a higher percentage of STOPP-J prescriptions than the non-multidrug group.
著者
武藤 真弘 櫻井 彰人
雑誌
第78回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, no.1, pp.141-142, 2016-03-10

近年、様々な手段により料理のレシピを手に入れることができる。しかし膨大なレシピ数の中からユーザーの好みの料理を選ぶのは難しく、結果口にあわないことが起きてしまう。同様に複数の酒や飲料から作るカクテルも組み合わせが膨大であるため、満足しない結果が起こってしまう。そこでユーザーにとって有益な情報を提供するためにレシピ情報から味を推定する。本研究では、一般の料理よりもレシピが単純であるカクテルに注目し、カクテルに関する事前知識を必要とせずに、機械学習を用いて約2200種類のカクテルレシピからカクテルの味を推定する。
著者
菅原 尚子 武藤 泰明
出版者
Japan Society of Sports Industry
雑誌
スポーツ産業学研究 (ISSN:13430688)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.3_363-3_375, 2022-07-01 (Released:2022-07-23)
参考文献数
6

The sports participation rate, which indicates the exercise habits of people, has increased significantly in the last 30 years. According to the survey of household economy, the ratio of sports admission fees to education and entertainment expenses is on the rise. Then, how much has the sports spectating rate, which indicates whether or not a person spectated at sports events at least once a year, increased? In this study, we investigated whether the increase in the spectating rate could be confirmed by macro data. The data was secondarily obtained from the “National Sports-Life Survey” and “National Sports-Life Survey of Children and Young People” conducted by the Sasakawa Sports Foundation, and the ratios of respondents who had spectated some kind of sports in the last year were aggregated and compared by survey year. To evaluate the significance of difference in each survey year, Kruskal-Wallis test and Bonferroni correction were used. As a result of the investigation, a significant increase in the spectating rate was observed from 1994 to 2010 for adults excluding students, and no significant decrease was confirmed thereafter. On the other hand, for professional baseball (NPB) and soccer (J-League), there was no increasing trend in the spectating rate. This suggested that the absolute number of spectators is small compared to the whole population in Japan. Although sports admission fees have increased due to the repeaters, from the viewpoint of the spectating rate, even if the number of spectators at one event increases, it gives small impact on the spectating rate of the whole, as long as the venues are in a biased location. In order to increase the number of spectators, it is important that various events be held in various areas.
著者
伊藤 雅隆 武藤 崇 Masataka Ito Takashi Muto
出版者
心理臨床科学編集委員会
雑誌
心理臨床科学 = Doshisha Clinical Psychology : therapy and research (ISSN:21864934)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.83-94, 2015-12-15

本稿の目的は,過敏性腸症候群(IBS:Irritable Bowel Syndrome)に対しての認知・行動療法(CBT:Cognitive Behavior Therapy)について展望を行うことであった。有病率が約11%とされるIBSは機能性の消化器障害で,患者の多くがうつ病や不安症などを併発している。薬物療法で軽快しない事例などに,心理療法が適用され,その中でもCBTがその有効性を示している。IBSに対するCBTプログラムについて4種類に分類した。(a)認知療法を用いたもの,(b)ストレスマネジメントを中心にしたもの,(c)腸症状への不安を中心にしたもの,(d)マインドフルネスを用いたものに分類され,それぞれの特徴が示された。今後の課題として,併発症状やQOL改善を見据えた治療プログラムが必要であること,IBS の心理面の基礎的な研究が少ないこと,本邦での治療研究が必要であることが指摘された。