著者
堀内 昶 池田 清美
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.38, no.11, pp.836-844, 1983-11-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
52

原子核のクラスター模型は, はじめは殻模型を補完するものとして, 最近では広い質量数及びエネルギー領域に適用しうるものとして用いられ, 軽い核の構造とその動的性質を記述するに不可欠な模型の一つとなっている. クラスター模型は"原子核内で核子が局所的に強く相関しあう部分的小集団"であるクラスターを単位とし, そのクラスターの集合体で取扱う模型である. それ故クラスター相関が強く現れる際には, クラスター間相対運動が原子核の運動様式の基本となるとする立場の模型である. この意味で, 殻模型とは立脚点が質的に異なる模型である. この解説は, 原子核の分子的 (クラスター) 構造の我国を中心とする研究について概説し, 近年活発となって来ている周辺研究分野との結びつきについて紹介するものである.
著者
LAI SHANGYU 于 濰赫 池田 真利子
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2023年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.233, 2023 (Released:2023-04-06)

日本統治時代を経験した台湾・韓国には,現在でも数多くの有形・無形の関連遺構が存在する。戦後,両地域の政府は戦後体制の確立のなか,日本統治時代の遺構の撤去・破壊を行った。一方で,1990年代にはこの撤去・破壊に対する市民運動が発生し,これを機に日本統治時代の遺構を文化財として認識する機運が高まり,以降,これらの遺構は「遺産化」されるようになった。また,2000年代以降の登録文化財制度の新設により,日本統治時代の遺構の文化財指定・登録は一層進み,工場や旧官僚社宅のような「大型の日本統治時代遺産」を中心に積極的な活用が行われるようになった。台湾ではイギリスの文化創造政策の影響を受けた「文化創意園区」が統治時代遺産で発展し(于・池田,2020),また群山・木浦・大邱等を例とし,韓国の地方都市では観光資源として積極的に活用される場合もある。これらの文化遺産を巡る視点は,双方の国の戦後体制において流動的に変化し,また1990年代の台湾本土化運動では台湾のアイデンティティの一部として受容され,新たに意味付けられる側面も確認される。 さて,日本統治時代遺産に関する文献や先行研究は複数あるが,これらは大型の日本統治時代遺産に注目したものが主体であり,また,地権者が民間・個人に帰属するため,保存・活用の難しい「リトルビルディング遺産」を扱った文化遺産学的研究はない。また,文化遺産を巡る視点が絶えず変化し,せめぎあうなかで,「リトルビルディング遺産」の利用者は,なぜ,どのような視点に基づき,どのようにそれらを利用しているのか等,関係主体へのヒアリング調査が極めて意味を有する一方で,台湾・韓国においてもこれらの研究は不足する。 したがって本稿の研究目的は,台湾・韓国における日本統治時代遺産を対象として,その形成背景と保存の経緯を概観するとともに,なかでも延べ面積が100坪以内であり,住宅用途以外で使用される「リトルビルディング遺産」に焦点を当て,利用の現状を明らかにすることである。 本研究は,文献調査(先行研究や報告書の現地入手),データベース作成(各文化省データベースのほか,書籍,Web情報),現地調査の順に行った。また現地調査では,計14件の半構造化インタビュー調査(所要時間40分~1時間程度)を行った。本研究対象地域は,いずれも旧日本人高級住宅街として形成された台北の旧御成町・旧幸町,およびソウルの厚岩洞(以下,旧三坂通)である。 本研究では,台湾,次に韓国で日本統治時代遺産の保存・活用の体制が整備されたこと,そしてこれらは大型の日本統治時代遺産に顕著であるのに対し,リトルビルディング遺産は民間において都市開発の回避や景観条例の制限等の結果,消極的かつ偶発的に残されていること,またこれらを使用する動機として日本統治時代の遺構であることは弱く,同様に流動的な対日感情がこれらの利用に影響を与えてはいないこと等が明らかとなった。論争的な側面を有する植民地遺産の一例は,保存・活用を自明のものと捉える態度に疑問を投げかける。他方で,これら有形の遺構は,日常的に使用されることで結果的に残され,過去の歴史的記憶の参照を可能とする。
著者
池田大作著
出版者
聖教新聞社
巻号頁・発行日
1988
著者
シュエ ジュウシュエン 池田 心
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2023論文集
巻号頁・発行日
vol.2023, pp.131-138, 2023-11-10

囲碁の問題集はプレイヤが上達するための勉強によく使われている.市販の問題集はたくさん存在するが,問題数が限られているし,個人ごとの弱点や好みに合わせて提供することも殆ど不可能である.そこで本研究はプレイヤの要望に応じた囲碁問題の自動生成を目指す.まずは囲碁問題の自動生成に向ける第一歩として,本稿では問題の局面と正解手が与えられると仮定するうえで,不正解手の自動生成を行う.本稿での調査対象を布石問題とする.具体的には市販の布石問題集を,ヒューリスティック特徴量と強い囲碁プログラムによる特徴量で分析し,不正解手が選ばれる条件を明らかにする.また,調査の結果に基づき,ルールベースの方法で不正解手の自動生成も行う.
著者
石濱 崇史 池田 匠
出版者
関西理学療法学会
雑誌
関西理学療法 (ISSN:13469606)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.18-25, 2022 (Released:2022-12-23)
参考文献数
12

In physical therapy for patients with central nervous system disorders, the goal is often the acquisition of walking movement. Physical therapy is required to always consider the risk of falls in hospitalized life and to judge the degree of independence for each individual. The authors believe that it is necessary not only to rely solely on the determination of gait independence, but also to supplement it by observing movement, which is a necessary clinical ability required of a physical therapist. In this paper, we focus on the movement of initiating gait and present approaches for improving lower limb dysfunction while deepening the understanding of normal movement.
著者
池田 幸夫 酒井 啓雄 古川 博
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.17-18, 2007 (Released:2018-04-07)

潮汐現象は高校地学で学習する身近な自然現象の一つである。高校地学の教科書では、潮汐は次のように説明されている。①潮汐は主に月の引力と地球の公転による遠心力の合力によって起こる、②月に面した側とその反対側で満潮となる。③満月と新月の時に干満差が最大になる(大潮)。④満潮と干潮は一日にほぼ2回起こる。このうち満潮と干潮の時刻については、問題があるのである。満月の日に月が南中するのは真夜中の 0 時である。したがって、①が正しいならば、大潮の日の満潮は真夜中と真昼に起こらなければならない。ところが、実際には朝と夕方に満潮となり説明と矛盾している。この矛盾は、潮汐の波の速度(約 200 ㎞/s)が地表面に対する月の移動速度(約 470 ㎞/s)に比べてはるかに遅く、月の動きについて行けないことが原因である。本研究では、潮汐を単振動モデルで表し、月の引力の変動に対する海水の運動を力学的に考察して、月の運動に対して潮汐波の位相が 180 °のときに周期的に安定した運動になると考えれば、この矛盾を説明できることが明らかになった。
著者
阿部 稚里 池田 彩子 山下 かなへ 市川 富夫
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.187, 2005 (Released:2005-12-08)

【目的】私達は、日常摂取しているビタミンEの約半分を植物油から摂取している。サフラワー油、サンフラワー油、オリーブ油などに含まれるビタミンEは、生理活性が最も高いα-トコフェロールがほとんどであるが、コーン油、大豆油、ゴマ油などには、α-トコフェロールよりもγ-トコフェロールが多く含まれる。そこで、本研究では、ビタミンEとしてα-トコフェロールのみを摂取した場合と、α-およびγ-トコフェロールを同時に摂取した場合の体内のα-トコフェロール濃度を、ラットを用いて比較した。【方法】ビタミンE無添加飼料を4週間摂取させたラットに、α-またはγ-トコフェロールのみを各10mg、あるいはα-およびγ-トコフェロール各10mgの混合物をそれぞれ胃内に経口投与し、8または24時間後に屠殺した。血清および組織のα-およびγ-トコフェロールを、HPLC法で定量した。【結果】α-トコフェロールの摂取によって、8時間後には血清、肝臓、肺、副腎のα-トコフェロール濃度は著しく上昇したが、心臓、筋肉、脂肪組織、皮膚などでは、24時間後でもその上昇の程度は小さかった。α-トコフェロールのみを摂取した場合と、α-およびγ-トコフェロールを同時に摂取した場合で、血清および肝臓のα-トコフェロール濃度に変化は見られなかったが、肺、心臓、大動脈などのα-トコフェロール濃度は、γ-トコフェロールの同時摂取によって有意に低下した。以上の結果から、体内のα-トコフェロール濃度は、γ-トコフェロール摂取によって低下することが明らかになり、ビタミンE同族体の摂取量によっては、ビタミンE要求量が増加する可能性が示された。
著者
相澤 俊洋 池田 実
出版者
アクオス研究所
雑誌
水生動物 (ISSN:24348643)
巻号頁・発行日
vol.2023, pp.AA2023-5, 2023-03-01 (Released:2023-03-01)

Hippocampus haema Han, Kim, Kai & Senou 2017 has been found along the coast of the Sea of Japan from Akita Prefecture to Yamaguchi Prefecture in Honshu, the Yatsushiro Sea in Kyushu, and the southern coast of the Korean Peninsula. However, there were no records of this species from the Pacific side of the Japanese Archipelago, with the exception of an example of a partial mitochondrial DNA sequence recently deposited in the DNA data bank. We collected a seahorse specimen from the seagrass bed at Koyadori Fishing Port in Onagawa Town, Miyagi Prefecture, on the Pacific Ocean side on 29 August 2022. Based on morphological characteristics and mitochondrial DNA analysis, this specimen was identified as H. haema. This study provided detailed morphological information and the DNA sequences of the specimen and compared them with previous morphological and DNA data on H. haema and the related species. The values for the 16 morphological characters examined were within the range of previously reported values for H. haema, except for the coronet height from the mid-point of the cleithral ring (CHMC). Small but substantial number of nucleotide substitutions were found between this specimen and previously reported H. haema in Japan, and phylogenetic analysis showed that this specimen belonged to the Korean clade.
著者
城戸 楓 池田 めぐみ
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.579-587, 2022-09-10 (Released:2022-09-15)
参考文献数
31
被引用文献数
1

昨今,これまで多くの研究分野において最も強力なツールの一つとして研究のエヴィデンスを支えてきた帰無仮説有意性検定に疑問が投げかけられている.本稿では,こうした帰無仮説有意性検定の際に信頼性を高めるために報告が求められる効果量を取り上げ,『日本教育工学会論文誌』において過去10年間でどの程度効果量が論文に記載されていたのかについて調査を行った.この結果,『日本教育工学会論文誌』では,2016年ごろより効果量について論文内で掲示される比率が増加していたが,海外での掲載比率ほど高まってはおらず,また近年では少し下落している傾向が見られた.また,教育システム論文では特に効果量が記載されない比率が高かったことが分かった.
著者
柳澤 亮爾 池田 隆徳 米良 尚晃 星田 京子 三輪 陽介 宮越 睦 阿部 敦子 石黒 晴久 塚田 雄大 柚須 悟 吉野 秀朗
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.42, no.SUPPL.2, pp.S2_113-S2_119, 2010 (Released:2012-08-21)
参考文献数
12

致死性不整脈の発症直前に, 肉眼的に識別可能なT-wave alternans(TWA)を認めることがある. われわれは, 重症心疾患で入院となり, 経過中に高度なQT時間延長を呈し, その後にTWAが生じることで, 突如としてtorsade de pointes(TdP)をきたした2症例を経験した.
著者
池田 菊苗
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
東京化學會誌 (ISSN:03718409)
巻号頁・発行日
vol.30, no.8, pp.820-836, 1909 (Released:2009-02-05)
被引用文献数
15
著者
池田 朋子 田口 玲奈 北小路 博司
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.230-241, 2020 (Released:2021-10-28)
参考文献数
13

【目的】全国の不妊クリニックを対象に、不妊治療における鍼灸の認識やその導入の実態を明らかにし、今後の不妊鍼灸における問題点を考察する。 【対象と方法】2015年9月現在、(公社)日本産科婦人科学会ホームページ上で「体外受精・胚移植の臨床実施に関する登録施設」、「ヒト胚および卵子の凍結保存と移植に関する登録施設」、「顕微授精に関する登録施設」の全てに該当する547施設を対象に、郵送による無記名のアンケート調査を行った。 【結果】有効回収率は28.5% (156/547通) で、回答者の82.7%を医師が占めた。不妊治療における鍼灸は55.1%で認知されていた。しかし、実際に鍼灸を導入している施設は8.3%で、72.0%では今後も導入予定はなかった。鍼灸を導入している施設は婦人科医院が最も多く、鍼灸導入状況と病院形態に関連性がみられた(p=0.037)。また、鍼灸導入と情報源の有無には関連性がみられた(p=0.0009)。鍼灸の導入目的には、「精神的ストレスの緩和」が75.9%と最多であったが、導入しない理由としては、「鍼灸治療に十分なエビデンスがあると感じられないため」が59.3%と多かった。 【結論】現在、鍼灸を導入しているクリニックは少数であるが、今後、比較研究などエビデンスに基づいた、医師や患者にも分かりやすい鍼灸治療の有効性を示す必要があると考えられた。また、鍼灸師が他の医療従事者と同等のレベルで不妊治療について意見・情報交換ができるようになれば、クリニック内での導入や、クリニックと提携して治療を行う鍼灸院が増える可能性があり、鍼灸師のレベル向上が求められる。
著者
玉田 克巳 池田 徹也
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.349-355, 2019-10-25 (Released:2019-11-13)
参考文献数
20

北海道においてスズメPasser montanusを対象とした鳥類標識調査を実施して,8か月以上経ってから成鳥3羽を再捕獲した.嘴基部の色は,1羽が黒色で,2羽が黄色であった.野外観察の結果から,6月から7月までの間,幼鳥の嘴基部の色は黄色であったが,成鳥は黒色であった.9月から12月は,ほとんどすべて個体が黄色になり,1–2月には黒色の個体の割合が増加し,3–5月にはすべて黒色であった.このことから嘴基部の色は,季節変化することが考えられた.オスの計測値は,体重,自然翼長,尾長で有意に大きかった.自然翼長は67.7 mmを境界値として性判定ができ,誤判別率は90%であった.
著者
秋本 眞喜雄 池田 光里 中野 慎也 ボーマン サムエル 早津 勇一 畑 三恵子 前田 憲寿
出版者
自動制御連合講演会
雑誌
自動制御連合講演会講演論文集 第57回自動制御連合講演会
巻号頁・発行日
pp.1115-1118, 2014 (Released:2016-03-02)

皮膚色の違いを定量的に評価する方法はCIELAB空間の色差式が利用されているが,色差式から予測される色差と視感で感じられる色差とは必ずしも一致しない.この問題を解決するために,CIEはCIEDE2000色差式を推奨しているが,十分に活用されていない.我々は皮膚色の評価に新しい色差式を利用した場合の有用性について検討した.CIEDE2000色差式はCIELAB色差式に色相,明度,彩度に対応する係数を付加して色差を算出する方法である.CIE2000色差式は視感的な評価と比較的よく対応することが示唆され,皮膚色評価の標準化に寄与できると考える.
著者
池田 敬 野瀬 紹未 淺野 玄 岡本 卓也 鈴木 正嗣
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.141-149, 2022 (Released:2022-08-10)
参考文献数
33

To reduce the population size of sika deer, efficient operation of snare traps is necessary. However, there have been few studies on the sika deer’s response to snare trap capture. We aimed to compare sika deer’s vigilance behavior and stay time at the trap sites before and after snare trap captures. We also monitored the frequency of appearance at trap sites and in the surrounding area. This study was conducted from August 2019 to February 2020 to collect data on the vigilant behaviors, stay time, and frequency of appearance in photographs. We found that vigilance behavior during the capture phase was higher than before the capture phase and remained high afterwards. Although the frequency of appearance in photographs at the capture sites was highest before the capture phase, no significant differences were detected in the frequencies at the surrounding sites throughout the study period. This result indicates that it would be desirable to relocate snare traps and bait from trap sites to the surrounding areas after capturing sika deer in the target area. Consequently, it is possible that snare traps can continue to be used to capture sika deer and effectively reduce their population.
著者
岡 真一郎 新郷 怜 濱地 望 池田 拓郎 光武 翼
出版者
一般社団法人 日本基礎理学療法学会
雑誌
基礎理学療法学 (ISSN:24366382)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.1-9, 2022 (Released:2022-10-17)
参考文献数
39

腰部への持続的圧迫刺激(以下,CPS)後の自律神経活動が腸音(以下,BS)の変化に与える影響を検討した。対象者は健康な若年成人男性10 名とした。BS は,左下腹部に聴診器をあて録音し,周波数解析により音圧を算出した。自律神経活動の評価は,心電図RR 間隔を用いて心拍変動解析を行った。循環動態は血圧を測定した。CPS は,T12 からL2 棘突起の3.5 cm 外側に50 mmHg で押圧を開始し,10 分間持続した。CPS 後10 分で313 Hz のBS の音圧が上昇した。CPS後5分のBS,LF/HF,DBP の変化がCPS 後10分のBS の上昇に影響していた(CMIN =1.214,p =0.750,GFI =0.941, RMSEA <0.001)。これらの結果は,CPS が心臓や末梢血管の副交感神経活動を修飾し,腸の蠕動運動を促進することを示唆している。
著者
池田 俊也 山田 ゆかり 池上 直己
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.27-38, 2000-12-15 (Released:2012-11-27)
参考文献数
31
被引用文献数
3 2

抗痴呆薬ドネペジルの経済的価値を評緬するため,マルコフモデルを用いて,軽度・中等度アルツハイマー型痴呆患者に対するドネペジル治療の費用-効果分析を実施した。分析の立場は支払い者の立場とし,費用は診療報酬点数および介護保険における在宅の給付限度額を参考に推計した。薬剤の有効性データは国内臨床第III相試験の成績を基にしたが,わが国における自然予後のデータは入手できなかったため米国の疫学データを用いた。薬剤の有効性,自然予後ならびに各病態における平均QOLスコアを組み合わせて質調整生存年(QALY)を算出し, 効果指標とした。2年間を時間地平とした分析では,軽度・中等度アルッハイマー型痴呆患者に対するドネペジルの投与により,既存治療に比べて患者の健康結果が向上するとともに,医療・介護費用が節減されることが明らかとなった。但し,ドネペジルの長期的効果やわが国におけるアルッハイマー型痴呆患者の予後に関するデータが不充分であることから,今後,これらのデータが蓄積された際には本分析結果の再評価を行うことが望ましいと考えられる。
著者
鈴木 賢二 黒野 祐一 池田 勝久 保富 宗城 矢野 寿一
出版者
日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会会誌 (ISSN:21880077)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.193-211, 2020-11-20 (Released:2020-11-20)
参考文献数
20

三学会合同抗菌薬感受性サーベイランス委員会の事業の一つとして行われた耳鼻咽喉科領域サーベイランスの結果とともに,我々が行ってきた過去のサーベイランスの成績と合わせて第6回耳鼻咽喉科領域感染症臨床分離菌全国サーベイランス結果として報告する.参加施設は,全国12大学の耳鼻咽喉科教室とその関連施設並びに開業医院の36施設で,対象患者は2015年12月から2017年6月までに参加施設を受診した急性中耳炎(6歳以下の小児のみ)および急性増悪を含む慢性中耳炎,急性副鼻腔炎および急性増悪を含む慢性副鼻腔炎,急性扁桃炎及び扁桃周囲膿瘍(20歳以上の成人のみ)の患者で,採取した検体は,患者背景調査票と共に北里大学抗感染症薬センターに郵送し,同所にて培養同定及び検出菌の薬剤感受性の一括測定を行った.検査対象菌種は経費削減も考慮し,グラム陽性菌,グラム陰性菌各3菌種ずつ,嫌気性菌4菌種群のみとした.肺炎球菌の莢膜型別も検討した.