著者
池田 慎之介
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第20回大会
巻号頁・発行日
pp.52, 2022 (Released:2022-11-24)

COVID-19の影響によりマスクを付ける機会が増加しているが,マスクを付けた表情からの感情推測の正確さの個人差についての検討はまだ不足している。本研究では,日本人(n = 123)を対象として,社交不安と社会的感受性がマスクを装着した表情からの感情認識の正確さに及ぼす影響について検討した。その結果,日本人においてはマスクを装着すると悲しみと恐れの感情が読み取りづらくなる一方で,喜び表情は影響を受けず,怒り表情の読み取りはむしろ正確になることが示された。また,マスクを付けていない表情からの感情推測が得意であると,マスクを付けた表情からも正確に感情を読み取ることができるが,そうした関係とは独立して,社会的感受性の高さがマスクを付けた表情からの感情推測の正確さを予測していた。本研究の結果から,マスクを付けた表情からの感情推測は文化によって異なる可能性,そして微妙な手がかりから他者の複雑な心的状態を推測できる人はマスクの影響を受けづらい可能性が示唆された。
著者
池田 修一
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.969-973, 2013-11-01 (Released:2013-11-29)
参考文献数
7
被引用文献数
6 6

神経痛性筋萎縮症(neuralgic amyotrophy; NA)は一側上肢に激烈な痛みに続いて麻痺と高度な筋萎縮が起る病態であり,その原因は特発性腕神経叢炎と考えられている.本疾患は従来,自然軽快することから予後良好であると位置付けられてきた.しかし罹患肢の実際の機能予後は半数以上が不良である.その最大の原因は確定診断にいたるまでの期間が長く,多くの患者は発病後2~3ヵ月後にやっとNAの診断が下されている.このため急性期の疼痛抑制治療,その後の運動機能改善に向けてのリハビリ治療などがほとんどなされていないのが実情である.本疾患が正確かつ早期に診断されるためには一般医家,とくにNA患者が最初に受診する可能性の高い整形外科領域の医師にNAの疾患概念を理解してもらうことである.またNA の成因として腕神経叢における免疫関連の末梢神経炎が推測されており,免疫調整療法は本疾患の有望な治療法になりうる.すでに副腎皮質ステロイドホルモンはNA急性期の疼痛緩和に有効なことが実証されている.それに加えてわれわれは免疫グロブリンの大量静注療法(IVIg)とステロイドパルス療法の併用がNAの運動麻痺に対して有用であることを最近提唱している.
著者
高倉 有二 高橋 忠照 貞本 誠治 豊田 和広 池田 昌博 中谷 玉樹
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.1428-1432, 2006-06-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

症例は69歳の女性で,右鼠径部の膨隆を主訴に受診した.右大腿ヘルニアの嵌頓にて緊急で嵌頓解除,ヘルニア根治術を施行した.ヘルニア内容は腫瘤性病変であったが,壊死状であり,確定診断がつかなかったため,悪性腫瘍の腹膜播種を疑って再手術を施行した.腹腔内には回盲部や骨盤を中心に多数の腫瘤を認めた.両側卵巣は正常大であった.切除不能と判断し腫瘍生検のみ行い手術を終了した.組織学的には卵巣の漿液性乳頭状腺癌に類似しており腹膜原発漿液性乳頭状腺癌と診断した.腹膜原発漿液性乳頭状腺癌は腹膜原発の稀な疾患で,多くの場合腹水貯留による腹部膨満感が初発症状となる.腫瘍のヘルニア嵌頓で発見されることは稀であり,ヘルニア内容がはっきりしない場合は本症例のような腹膜原発の悪性疾患も考慮すべきである.
著者
池田 貴儀
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.119, 2023-04-01 (Released:2023-04-01)

多くの図書館では,○○文庫や○○コレクションと称する特定のテーマに基づいて収集された資料群を所蔵しています。これらは一般コレクションとの対比から特別コレクションと呼ばれます。資料的,学術的に価値のあるものや,オリジナルが一点しかなくて失われると二度と入手できない貴重な資料も含まれていることも多くあります。さらに個々の価値に加え,ひとまとまりの資料群として構築されたことで生まれる価値も大きいものです。そこで本特集では,コレクションの成り立ち,寄贈資料の収集・整理,デジタル保存,連携・協力,資金調達・広報など,多角的な視点から特別コレクションについて取り上げることで,その意義,役割,価値,もたらす可能性について改めて考えてみたいと思います。まず,牧野元紀氏(東洋文庫)には,モリソン文庫や岩崎文庫などを所蔵する東洋文庫の事例から,複数にわたるコレクションの成り立ちを紹介いただくとともに,特別コレクションの特色をさらに強化する収集方針,モリソン文庫受入時からの資料保存の理念,整理・利用について概説いただきました。次に,森川嘉一郎氏(明治大学)には,寄贈資料の受入・整理・活用の観点から,大規模な個人コレクションを中核とした2館のマンガ専門図書館を並行して運営するに至るまでの流れと,マンガという資料の特性について,明治大学での教育研究の位置づけや施設構想にも触れながら解説いただきました。続いて,瀬川結美氏(東京学芸大学)には,大学全体の教育デジタルコンテンツを収集・公開する東京学芸大学教育コンテンツアーカイブについて,学内他部署と連携して構築することの意義や背景,多様なコンテンツの共存による効果,システム面における対応についてご紹介いただきました。次に,小嶋悦子氏(名古屋大学)には,名古屋大学附属図書館における特定基金やクラウドファンディングなどの外部資金獲得の取り組みを中心に,広報活動,外部資金を活用したコレクションの修復やデジタル化事業についてご紹介いただきました。最後に,杉本重雄氏(筑波大学)には,図書館などにおける文化的資源の長期保存について,デジタルアーカイビングの重要な要素であるデジタル保存の観点から,基本的な特性,機能や要素などの技術的な側面,メタデータの役割や国際標準について解説いただきました。今日,特別コレクションの資料群は,紙媒体,デジタルコンテンツ,そして両者の共存という状況にあります。今後さらなるデジタル化が進むと,資料の在り方とともに,収集,整理,保存などの在り方も変化していくのではないかと考えます。多種多様な取り組みを取り上げた本特集が,今後の特別コレクションについて考えるうえでの一助となれば幸いです。(会誌編集担当委員:池田貴儀(主査),安達修介,鈴木遼香,野村紀匡,水野澄子)
著者
池田 耕一
出版者
日本エアロゾル学会
雑誌
エアロゾル研究 (ISSN:09122834)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.5-13, 2000-03-20 (Released:2009-04-14)
参考文献数
19
著者
園山 大祐 小山 晶子 丸山 英樹 林 寛平 二井 紀美子 島埜内 恵 池田 賢市 菊地 かおり 有江 ディアナ 見原 礼子 辻野 けんま 本所 恵 布川 あゆみ 斎藤 里美 中田 麗子 福田 紗耶香
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2019-04-01

第1にEUの教育政策目標に対して各国の予防、介入、補償がどこまで達成されているか明らかにした上で、第2にセカンド・チャンス教育およびノンフォーマル教育にみるグッド・プラクティス校を中心に質的調査を経年比較する。これらを通じて、公教育における課程主義による資格取得を目指す欧州と、就学義務によって卒業資格を目指す日本との比較から、教育と職業訓練の学校教育化のメリットと、学校嫌悪、不登校、不本意入学による進路変更や中退問題等にみる学校教育化のデメリットとノンフォーマル教育のメリットについて検討する。
著者
池田 達哉
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.171-176, 2017-03-15 (Released:2017-03-25)
参考文献数
16
被引用文献数
2 3

Glutenin subunit composition, amylose content, and grain hardness are critical determinants for the end-use properties of wheat. Glutenin composition determines gluten strength, which is important for bread-making. Lower amylose content increases springiness, which is important in white salted noodle production. Grain hardness affects the damaged starch content in flour ; a high damaged starch content increases water absorption and facilitates dough fermentation. These qualtiy attributes are genetically determined. Here, I review these genetic traits based on their allelic variation in imported wheat classes and domestic wheat cultivars. It is thus potentially possible to optimize the allelic compositions of these traits in order to improve the end-use properties of domestic wheat cultivars.
著者
宗 祐人 小山 洋一 中林 正一 八尾 恒良 佐々木 悠 池田 稔 二宮 健
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.79, no.8, pp.1083-1084, 1990-08-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
3

多くの内分泌疾患が受容体異常症の概念で捉えられ注目されている.症例は20才男子.著明な女性化乳房,尿道下裂手術既往,染色体46XY,血中テストステロン, 5αジヒドロテストステロン,エストラジオール高値, LH・RH負荷正常,睾丸生検組織像などよりアンドロゲン不応症のReifenstein症候群と考えられた1例を報告した.本症の本邦報告例は十数例を認めるに過ぎない.
著者
池田 幸恭 葉山 大地 高坂 康雅 佐藤 有耕
出版者
日本青年心理学会
雑誌
青年心理学研究 (ISSN:09153349)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.111-124, 2013-02-15 (Released:2017-05-22)
被引用文献数
7

This study aimed to clarify undergraduate students' styles of sharing with close friends at their university. Participants were 972 undergraduate students who responded to a 75-item questionnaire relating to styles of sharing, satisfaction, and depth of relationship with university friends (acquaintances, good friends, or best friends). The results were as follows. (1) Six styles of sharing with friends were identified: sharing relationships, places, feelings, intentions, items, and sensitivity. (2) Scores for all six styles of sharing were higher in the order of best friends, good friends, and acquaintances. (3) Irrespective of level of intimacy, sharing in relationships increased satisfaction and depth of relations. On the other hand, sharing worries or negative feelings decreased satisfaction with all three types of friends, but stimulated deeper relations with both good and best friends. In addition, sharing items decreased satisfaction with good friends and depth of relations with best friends. Results show that close friendships among undergraduate students involving sharing relationships, places, feelings, intentions, and sensitivity was based on psychological bonds, and such sharing might decrease satisfaction but deepen relations with close friends.
著者
池田 昌代 秋山 聡子 鈴野 弘子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.63-75, 2023 (Released:2023-03-04)
参考文献数
37

大量調理における省エネルギーを考慮した調理機器の選択を行うために, フライパンとスチームコンベクションオーブン (200℃) を用いて鶏肉 (70 g×100切) を加熱する際のガス消費量を測定すると共に加熱後の鶏肉の品質評価を行った. 鶏肉10切から50切を加熱する際のガス消費量はフライパン加熱が最も少なかったが, 60切以上の加熱ではフライパン加熱がスチームコンベクション加熱を上回った. フライパン加熱した鶏肉の重量保持率は, スチームコンベクション加熱と比較し有意に低く, 破断荷重及び破断エネルギーは有意に高かった. 分析型官能評価では, 鶏肉の焼き色 (P<0.01) と硬さ (P<0.05) に有意差が見られ, フライパン加熱した鶏肉は焼き色が濃く硬いと評価された. 嗜好型官能評価ではフライパン加熱の焼き色が有意に好ましい (P<0.01) と評価されが, その他の項目ではフライパンとスチームコンベクション加熱に有意差は無かった. 給食施設においては調理する食材の量やメニューに適した調理機器を選択することで厨房内のエネルギー消費量の削減ができると考える.
著者
増田 悠紀子 伏木田 稚子 池田 めぐみ 山内 祐平
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.3_31-3_40, 2023-01-31 (Released:2023-02-15)
参考文献数
31

本研究では,デザイン産学連携プロジェクトに参加した学生の経験とクリエイティブ・コンピテンシー(CC)の獲得実感との関係を明らかにするため,質問紙調査を行なった。78名の学生から回答を回収し,因子分析と相関分析を行った結果,学生のグループとの関わりである「グループでの制作に必要な情報収集」と「グループメンバーとの相互協力」,連携先との関わりである「連携先による制作へのフィードバック」「連携先からの導入の情報提供」「連携先とのコミュニケーション」の経験がCCの獲得実感と関係していた。一方で,教員との関わりはグループ・連携先との関わりと比較すると,CCの獲得実感との関係が弱かった。このことから,産学連携プロジェクトの活動において学生のCCの獲得実感を高めるためには,グループ・連携先との関わりが重要であることが示唆された。
著者
池田 由起 石塚 譲 入江 正和 亀岡 俊則 石渡 卓 鈴木 孝彦 松田 行雄
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物学会論文誌 (ISSN:18831648)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.246-255, 2004-07-31 (Released:2010-05-31)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

都市域で発生する多様な食品残渣の中から, おから, 寿司残渣, 練り製品残渣を原料として選択し, これらを気流乾燥機で乾燥した後, 回収魚アラから造られたアラミール等を添加して, マダイ用ペレット飼料を製造し, その成分を把握した。この食品残渣配合マダイ用ペレット飼料 (以下, リサイクル飼料と略す) の効果を調べるために, 63日間養殖マダイに給与して, マダイの成長等に及ぼす影響について, 市販マダイ用配合飼料と比較検討した。その結果, リサイクル飼料は, 市販配合飼料に劣らない効果を持ち, マダイの養殖に利用可能であることがわかった。食品残渣の乾燥・ペレット製造工程を最適化した食品残渣配合マダイ用ペレット飼料化システムにおける製造コストを試算し, 本システムの事業採算性を検討した。リサイクル飼料生産量6 ton/日において, IRR (Internal Rate of Return) =10%となるリサイクル飼料の販売価格は, 市販ペレット飼料と同程度となった。
著者
竹下 祐二 衣川 優希 池田 結
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.22-00215, 2023 (Released:2023-02-20)
参考文献数
7

時間雨量に基づいて算出される実効雨量の時系列を用いて,降雨浸透により河川堤防のり面内に生じる土中水分動態の簡便な推定方法を検討した.一級河川堤防裏のり面において計測された128の降雨事例に対して,堤防のり面上の位置や深度ごとに土中水分動態と実効雨量の時系列パターンとの相似性を評価し,両者の相関係数が最も高くなる実効雨量の半減期を最適半減期として算出した.最適半減期の短期的または長期的な極値として,対象堤防のり面に固有な短期最適半減期と長期最適半減期を提案した.これらの最適半減期を用いた実効雨量の時系列と土中水分動態との相似性を累加雨量や最大時間雨量の異なる降雨事例に対して確認し,堤防のり面内の土中水分動態を推定するための雨量指標として,実効雨量の有用性を検討した事例を報告した.
著者
窪田 亜矢 田中 大朗 池田 晃一 森川 千裕 李 美沙 砂塚 大河
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住総研研究論文集 (ISSN:21878188)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.97-108, 2016 (Released:2017-08-10)

千葉県浦安市は,1960年代まで小さな漁村集落であった。水害を避けるため限定的な地形を有効に活用する必要があり,密度の高い住空間が展開されていた。工場汚水,地下鉄開通,首都圏の巨大化など多様な影響を強く受けて,漁業は完全になくなり,物理的環境も社会的関係も激変した。木造密集市街地は,大震災時の火災などの突発性リスクからも,高齢化や日中の活動低下という進行性リスクからも,行政の立場からは改善すべき特性となった。しかし,浦安の「ガワ・アン街区」と「ロジ空間」は地域の住文化を支えている。市有地を空地としたまま活用することで,リスクを軽減しつつ,ガワ・アンやロジという空間構造とそれに依る住文化を継承できる可能性がある。