著者
井碩 孝博 池田 優
出版者
近畿大学医学会
雑誌
近畿大学医学雑誌 = Medical Journal of Kindai University (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.115-124, 2017-12-20

[抄録]本邦では,近年寄生虫疾患は稀な疾患となっているが,近年のコールドチェーンの発達,グルメ志向そして海外旅行者の増加に伴って海産性の寄生虫症の増加が認められる.小児においても同様の傾向にあり,臨床において注意すべき疾患となっている.今回我々は,日本海裂頭条虫症の4歳男児例を経験した.肛門からの虫体の排出を主訴として来院し,虫体検査の結果,日本海裂頭条虫の成熟受胎片節であることが確認され,駆虫目的で入院となった.検査所見からビタミンB12の減少・貧血は認められなかった.プラジカンテル及び下剤の1回内服により虫体の排出を認め,頭節の排出も確認でき,プラジカンテルによる副作用は認められず,有効で安全であった.その後の虫卵検査は陰性であり,6か月の経過観察中虫体の排出も認めず駆虫できたものと考えられた.プレロセルコイドが寄生している第2中間宿主であるサケ属魚類の生食歴は確認できなかったが,最近の子供の食事の嗜好からスーパーマーケットや回転ずしでの,サケ属魚類からの感染が考えられた.近年プレロセルコイドの感染がウラル山脈以東のロシア各地の沿岸で確認され,2017年にアラスカ湾から北太平洋沿岸でプレロセルコイドの感染が報告され,これらの地域が日本海裂頭条虫の感染源ではないかと考えられる.今回,本症例の考察に加え,日本海裂頭条虫の2009年以来の小児症例,生活環,治療,鑑別,感染源の最新の知見を網羅した.
著者
井口 貴文 井口 守丈 手塚 祐司 青野 佑哉 池田 周平 土井 康佑 安 珍守 石井 充 益永 信豊 小川 尚 阿部 充 赤尾 昌治
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.50, no.10, pp.1102-1107, 2018-10-15 (Released:2019-12-06)
参考文献数
10

先天性アンチトロンビンⅢ(AT-Ⅲ)欠損症は比較的稀な常染色体優性の遺伝性疾患である.AT-Ⅲ欠損症においては静脈血栓塞栓症(VTE)が多発することが知られている.VTEの治療には従来からヘパリンが使用されていたが,ヘパリンの抗凝固作用は血中のAT-Ⅲレベルに依存するため,AT-Ⅲ血栓症に伴うVTEに対しては,ヘパリンの単独治療では十分な抗凝固作用が期待できず,AT-Ⅲ製剤の補充が必要とされる.近年,VTEの治療に対しては,ヘパリンに代わって直接型経口抗凝固薬(DOAC)が有効であるとの報告が相次いでなされている.DOACはAT-Ⅲを介さずに抗凝固作用を発揮するため,AT-Ⅲ欠損症に伴うVTEに対しても効果があると考えられるが,AT-Ⅲ欠損症に伴うVTEに対してDOACが有効であったとの報告は極めて限られている.今回われわれは,AT-Ⅲ欠損症に伴うVTEの症例に初期からDOACの1つであるリバーロキサバン単剤で加療し,比較的速やかに症状の改善,D-dimerの低下,および画像上の血栓の消退が認められた症例を2例経験した.2例ともその後リバーロキサバンを継続することでVTEの再発なく経過している.AT-Ⅲ欠損症に伴うVTEに対してリバーロキサバンの有効性を示唆する貴重な症例であると考え,ここに報告する.
著者
池田 晋平 西村 恭介 鈴木 武志 佐藤 美喜 野尻 裕一 芳賀 博
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.195-203, 2021-04-15 (Released:2021-04-15)
参考文献数
27

地域在住高齢者の余暇的生活行為と社会関係の関連を明らかにすることを目的に,神奈川県綾瀬市在住の高齢者に質問紙調査を実施した.回答の不備を除いた1,587名の分析から,結束型ソーシャル・キャピタルは鑑賞活動,音楽活動,観光活動の実施ならびに娯楽活動の非実施に,橋渡し型ソーシャル・キャピタルは文化的活動,観光活動の非実施に関連があり,近隣住民との交流頻度はスポーツ活動,文化的活動,自然と触れ合う活動の実施に関連していた.以上の結果から,社会関係と余暇的生活行為の関係性は異なる様相を呈しており,作業療法士が地域在住高齢者の余暇的生活行為を促進するためには,対象地域での高齢者の社会関係の特徴に着目する必要がある.
著者
池田 俊雄
出版者
Japan Society of Engineering Geology
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.135-144, 1990-09-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
8
著者
池田 光良 阪田 義隆
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学研究発表会 発表講演集
巻号頁・発行日
vol.39, pp.1169-1170, 2004

キタサンショウウオの生息環境は過去に十分な調査が行われておらず,釧路湿原国立公園など自然環境が残されている地域に生息していると漠然と思われていた。近年,キタサンショウウオは湿地と乾燥域の接している部分や,未開発地域と開発地域の境界付近に生息していることがわかってきた。開発行為によるインパクトを評価するための基礎資料を得る目的で詳細な地下水位観測を行い,地下水収支を検討した結果,融雪期の2mm/日に達する涵養量による地下水位急上昇→地下水マウンドの形成→地下水面>地表で産卵→地下水位低下→凍結深より深い地下水面=冬眠可能な空間の形成,というサイクルを繰り返していることが明らかになった。
著者
仲山 慶 池田 踏青 黒川 大輔 北條 裕也 宇野 誠一
出版者
日本環境毒性学会
雑誌
環境毒性学会誌 (ISSN:13440667)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.1-9, 2022-02-22 (Released:2022-02-22)
参考文献数
24

The present study tested the early life stage toxicity of 3,5-dichlorophenol (3,5-DCP) on grass puffer, Takifugu niphobles, in order to evaluate its potential use as a marine fish model. The pufferfish embryos at 1-day post fertilization (dpf) were exposed to serially diluted 3,5-DCP at 20°C or 25°C until 14- or 10-dpf, respectively. Exposure to 3,5-DCP caused inhibition of pigmentation, of swimming, and of yolk absorption. The EC50 of morphological abnormality and the LC50 at the end of test were 0.97 and 1.4 mg/L at 25°C. The EC50 and LC50 values estimated at 20°C (0.75 and 0.79 mg/L, respectively) were generally similar to those at 25°C. The sensitivity to 3,5-DCP in the grass puffer was equivalent to those observed in other marine fish species. Because of the ease of handling and observation of embryos, and the high hatching and survival rates, we consider the grass puffer to be an ideal model for early-life stage toxicity testing.
著者
清水 修 花房 一義 新崎 晃大 郡司 大輔 酒井 優人 池田 広盛 松岡 史倫
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌D(産業応用部門誌) (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.142, no.2, pp.146-154, 2022-02-01 (Released:2022-02-01)
参考文献数
22

Laborsaving is a major issue in production. In an automotive production line, a yard that is used as a temporary storage for vehicles before shipping. The vehicle-loading robot that operates autonomously has been proposed to automate the alignment of vehicles in the yard instead of human driving. In this study, the dynamic wireless power transfer system that includes the structure of the roadside for the vehicle-loaded robot is proposed. It is proven that the transmitter coil has enough durability for the load of the robot weight using simulation and actual measurement. It is also shown that the reinforcement bars of the road structure cause considerable eddy current loss even with stainless steel. This is similar to loss by coil resistance. This system achieves a 1.8kW dynamic wireless power transfer with an automated coil detection system and a frequency control system, under factory conditions.
著者
中谷 光良 月野 光博 髙橋 良輔 池田 昭夫
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.504-507, 2016
被引用文献数
1

<p>81歳女性で高血圧,サルコイドーシス,慢性腎不全で透析中の患者.右胸背部に出現した皮疹に対し帯状疱疹と診断され,バラシクロビルの内服が開始された.3日後より見当識障害,歩行障害が出現し救急搬送された.意識障害,および下肢優位の左右対称の安静時ミオクローヌスを認めた.脳波検査で周期性同期性放電(periodic synchronous discharges; PSDs)を認め,経過と所見よりバラシクロビルによる薬剤性脳症と診断した.保存的加療により意識レベルは改善し,脳波所見も軽快した.バラシクロビルはPSDsと薬剤性脳症をきたし,特に高齢者および腎機能障害患者では注意を要する.</p>
著者
池田 道正 叶 季文 貫名 学
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要 農学 (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.p849-852, 1989-01
被引用文献数
1

【要旨】本論文はニンギョウタケ子実体のメタノール抽出から得られる脂溶性区分に含まれている植物生長阻害物質の化学的研究結果をまとめたものである.本区分の分画・精製で得た植物生長阻害活性を有する二種の化合物について,種々のスペクトル分析と化学反応によって化学構造の解析を行い,これらがネオグリフォリンおよびグリフォリンであることを明らかにした.ネオグリフォリンはハクサイ発芽種子のその後の根の生長を, 50PPMの濃度でコントロール区の根長に比べ50%阻害した.一方,グリフォリンは100PPMの濃度でネオグリフォリンと同程度の阻害を引き起こした.
著者
床井 良徳 井山 徹郎 池田 富士雄 宮田 真理
出版者
独立行政法人 長岡工業高等専門学校
雑誌
長岡工業高等専門学校研究紀要 (ISSN:00277568)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.49-61, 2018

本報告では,高専ロボコン2017にて,史上初となるAとBの両チームともに全国大会に出場した長岡A「新鮮組」と長岡B「ベアLINK"」の関東甲信越地区大会と全国大会の模様とロボティクス部の2017年の活動について報告する.長岡A「新鮮組」は,地区大会にて19年ぶりの優勝を勝ち取り,全国大会出場を決めた.一方,長岡B「ベアLINK"」は,地区大会にてアイデア賞を受賞するも全国大会を逃したが,その後,競技委員会推薦チームとして全国大会を果たした.全国大会では,長岡A「新鮮組」がベスト4と検討し,長岡B「ベアLINK"」は競技で自分たちの持ち味を上手く生かすことができなかったが「アイデア倒れ賞」を受賞した.
著者
岡本 晃 池田 宏史
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.75-78, 2013 (Released:2013-07-04)
参考文献数
6

毛髪は濡れている時に、毛表皮が開いた状態になるので、ヘアドライヤーをかけすぎると毛髪が損傷しやすい。本研究では、これまでの熱風が吹き出し、髪の毛を乾かすものではなく、吸引して髪を乾かす形式のドライヤーの開発を行った。吸引式ヘアドライヤーは、毛髪を吸い込むことにより乾燥させ、カールまたはストレートに形成させることを目的としている。螺旋状の空間に、濡れた毛髪を熱風と共に吸い込み、毛髪の水素結合をカール状、もしくはストレート状に再結合させる。特徴として、ブラシやコームを使用しないため、毛髪を摩擦抵抗などで傷めない。吸引による風が、コームやブラシの役目を行い、摩擦抵抗なしで毛流を整えることができる。ブラシなどで巻きこめない曲毛や短い毛も、馴染ませることができる。また、片手で頭髪を整えることでき、毛髪が飛散せず熱風が顔や頭皮に晒されることがない特徴がある。
著者
上村 宗弘 中川 尭 脇屋 桃子 池田 長生 田守 唯一 山本 正也 伊藤 信吾 田中 由利子 岡崎 修 廣江 道昭 原 久男 諸井 雅男
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.683-688, 2012 (Released:2013-11-28)
参考文献数
9

目的: 冠動脈の石灰化スコアが冠動脈CTによる有意狭窄病変の診断精度に与える影響について検討した.方法: 64列冠動脈CT(64SCT)と侵襲的冠動脈造影を行った連続25名について, 64SCTの感度と特異度を冠動脈石灰化スコア(Agatston score)別に検討した. 評価対象とした冠動脈は主要3枝で内径が2mm以上とした. また, 最も高度な狭窄部位をその枝の評価対象とした.結果: 64SCTによる狭窄評価が侵襲的冠動脈造影と一致したものが, 49血管(65.0%), 過大評価は20血管(26.0%), 過小評価は6血管(8.0%)であった. 石灰化スコア1,000以上の患者では, それぞれ10血管(41.7%), 10血管(41.7%), 4血管(16.7%)であり, 400以上1,000未満の患者では8血管(53.3%), 5血管(33.3%), 2血管(13.3%), 400未満の患者では31血管(86.1%), 5血管(13.9%), 0血管(0%)であった. 侵襲的冠動脈造影で75%以上の狭窄に対する64SCTの感度および特異度は, 全患者では91.3%および78.8%であり, 石灰化スコア1,000以上では87.5%および56.3%, 400以上1,000未満では85.7%および75.0%, 400未満では100%および92.9%であった.考察: 石灰化スコア400未満では感度と特異度は十分であり, 400以上1,000未満でも特異度は比較的高い. このことは, 64SCTの結果の評価の一助となり得る.
著者
池田 幸恭
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.11-31, 2021-03-30 (Released:2021-11-16)
参考文献数
150
被引用文献数
2

本稿の目的は,2019年7月―2020年6月までの1年間に国内で刊行された国内学会誌5誌と2020年9月にオンラインで開催された日本教育心理学会第62回総会で発表された青年期から成人期,老年期までの発表を概観し,その現状と課題を明らかにすることである。中学生,高校生,大学生他,青年期の複数時期,成人期以降,多世代の発達時期について,自己,対人関係,学習,キャリア発達,生活という5つの研究領域に関する観点から分類し,研究内容の概要と動向をまとめた。分析の結果,青年期以降の発達研究は,高校生の研究は少ないが,研究対象の発達時期,領域,方法は多様であり,生涯発達に関する知見が着実に蓄積されていると考えられた。研究対象の偏り,研究方法の発展,研究成果の理解という問題について,オープンサイエンスに基づくデータの共有,マクロレベルとミクロレベルの多水準の時間単位の接続,発達観の明示に伴う科学コミュニケーションの必要性と可能性を論じた。これらの展開をとおして,発達研究が一人ひとりの多様な発達の理解に貢献することが期待できる。
著者
菱木 光太郎 秋山 優 軽部 紀代美 本間 隆志 保延 美紀子 宮後 とも子 池田 勇一 海渡 健
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.456-464, 2021

<p>今回我々は2019年にアークレイ社で開発された未染色画像解析法を原理とする尿沈渣分析装置AUTION EYE AI-4510について性能評価を行ったので報告する。1,369検体を対象として検討した結果,併行精度,室内再現精度をはじめとする基礎性能は良好であった。鏡検法との相関では,基本的な5項目の感度,特異度はそれぞれ赤血球69.0%,95.1%,白血球60.9%,99.4%,扁平上皮細胞34.1%,99.6%,硝子円柱52.6%,77.4%,細菌48.5%,93.8%であった。鏡検法との乖離理由として,類似した形状における判別が困難であることや特殊な形状の認識が不足していることが考えられ,院内導入までに2回の改良を重ねた結果,基本的な5項目の解析能は向上し鏡検法との相関も改善された。尿沈渣分析装置には業務効率の向上,検査時間の短縮,正確な尿沈渣成分の解析などが求められているが,本機器は鏡検法と比較しても遜色のない基本的性能を有しており,日常検査への導入が可能な機器であると考えられた。</p>