著者
西山 忠男 池田 剛
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

インドネシア・スラウェシ島南部のビリビリアルカリ層状貫入岩体の産状を調査し,岩体内部に発達する火成層状構造の成因を検討した.その結果以下のことが判明した.(1)岩体内部には貫入面から内部に向かって120mの範囲に渡り,197枚の層が確認された.全ての層の厚さを計測した結果,層の厚さは貫入面近くで薄く,岩体内部に向かって徐々に厚くなるスペース則に従うことがわかった.(2)一枚の層は,有色鉱物(カンラン石・単斜輝石)に富む堅い部分と,無色鉱物(斜長石・アルカリ長石・リューサイト・沸石)に富む柔らかい部分の互層よりなる.堅い部分の全岩組成は柔らかい部分に比してNa2Oに富み,K2Oに乏しい.その他の成分については顕著な差は認められない.(3)貫入面から岩体内部に向かって5m間隔で(堅い部分,柔らかい部分に無関係に)試料を採取し,その全岩化学組成を求めた.その結果,それらの組成の範囲は一枚の層の中の組成範囲とほぼ同じであることが分かった.このことは,マグマが貫入した後,マグマ溜まり内部で対流が起こり,マグマの化学組成が均一化したこと,ならびに化学組成の変化は層状構造の形成に伴って起こったことを示す.(4)堅い部分の長石の化学組成は,Or-Ab-Anの3成分図において,約900℃のソリダスに沿う全組成範囲に幅広く分布するのに対し,柔らかい部分の長石は組成範囲が狭く,アノーソクレースやサニディンは出現しないか,出現頻度が非常に小さい.このことは堅い部分が結晶化する際にメルト中の拡散が十分進行せず,全体的に非平衡な状態であったことを示す.柔らかい部分は非平衡の度合いが小さく,ゆっくり冷却したことを示す.(5)以上の事実から,層状構造は対流によって良く撹拌されているマグマ溜まりの境界部(母岩との接触部)において,熱境界層が形成され,その内部でソーレー効果によって形成されたと考えられる.
著者
小野 尋子 清水 肇 池田 孝之 長嶺 創正
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.72, no.618, pp.49-56, 2007-08-30 (Released:2017-02-25)
参考文献数
19

This paper aims to clarify the today's OKINAWAN folksy disciplines, at OROKU district which has been requisition by Army in NAHA City. Research methodologies are interview, document analysis and interpretation of an aerial photograph. The evaluate the appropriateness for case study, first, we draw a comparison between requisitioned settlements and others in folkways. Accordingly, there are really not much difference between two kinds of settlements. Second, we trace requisitioned settlements' history of sacred spots and colonial morphology. Results are followings; 1.Inhabitants has been regarded hilly land as a sacred cow. 2. Settlement's meeting house has been recognized as important facilities. 3. 'Utaki' and other Okinawa's sacred spots has been treasured, but change in shape and quality. 4. The hierarchy between head family and cadet family is decreesing. 5. The south facing street pattern was changed back to back pattern
著者
池田 紘士
出版者
弘前大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

本研究は、外来土壌動物の一般的な侵入及び分布拡大パターンを明らかにするために、日本からアメリカに侵入したとされるハタケミミズをモデルとした研究を行った。日本とアメリカのハタケミミズの遺伝子解析を行った結果、ハタケミミズが日本からアメリカに侵入したことを支持する結果が得られたが、日本国内およびアメリカ国内で遺伝的な分化が認められなかったため、日本のどの地域から侵入し、どのように分布を拡大したかについてはわからなかった。これについては、今後さらに研究を進めて明らかにする必要がある。また、本研究により、これまで知られていなかった別種のミミズも日本からアメリカへ侵入していたことが明らかにされた。
著者
池田 寛二
出版者
環境社会学会
雑誌
環境社会学研究 (ISSN:24340618)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.21-37, 1995-09-01 (Released:2019-03-27)

今日、環境問題を研究するうえでもっとも重要な課題のひとつは、地球環境問題を地域環境問題と相互に関連づけて解明できる枠組みを構築することである。そのためにはまず、世界の諸地域において人々はどのように環境に働きかけているのか、という基本問題に立ちかえる必要がある。この問題にアプローチするために有効な枠組みとなるのが所有の概念である。所有とは環境をめぐる社会関係を意味している。従来の環境問題のとらえ方は、「コモンズの悲劇」論のように、所有を社会関係として理解する視点を欠いていたため、私的所有対共同所有という二項対立を絶対視し、環境と人間社会とを結びつけている所有の多様性と複合性を捨象する傾向があった。本稿は、所有の地域的・歴史的多様性を幅広く把握し得る類型論を試み、それが地球環境問題と地域環境問題とを関連づけて理解するために有効であることを例証することによって、環境問題研究における所有論の欠落を補おうとするものである。類型論では、環境問題を所有の視点から理解するには、自然人所有と法人所有の対立を軸にして得られる共同占有・共同所有・私的占有・私的所有・専有・個体的所有・私的法人所有・公的法人所有・管理の9つの所有類型が有効な分析枠組みになることを明らかする。そして、現代の地球環境問題は「グローバル・コモンズの悲劇」ではなく、世界の諸地域において、国家や企業を主体とする法人所有がグローバルな市場システムと結びついて自然人の多様な所有の可能性を排除することによって連動的にひき起こされている社会問題にほかならないことを、主にインドネシアの森林問題を取り上げて例証する。
著者
池田 秀敏 吉本 高志
出版者
東北大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
2000

民族進化の歴史と家族性モヤモヤ病の地誌的分布とに共通項があるか否がを明らかにすることを研究目的とした。民族の進化の跡を追跡する手段として、ミトコンドリアDNAの塩基変化を比較検討を行なった。これは、ミトコンドリアDNAが、主に母系遺伝をするがために、母系のルーツを探ることができるためである。また、Y染色体の染色体多型を用いて、父系系譜よりルーツを探った。家族性モヤモヤ病患者58名(男性16名、女性42名)と、モヤモヤ病がないと判断された健康人60名を対象とした。Y染色体の解析は、DYS287(YAP)locusと、DYS19locusとを行った。この解析結果から、父系には、大きく2つのルーツからの流れがあることが判明し、コントール集団と比べ、集積性があることが判明した。また、ミトコンドリアD-ループ領域のhypervariable region IIの(MT3)の検討を行った。ヌクレオチドは、Cambridge Reference Sequence(CRS)の93-110番及び、326-307番に相応している。家族性モヤモヤ病患者群では、MT3の塩基配列の違いがら見て10個のハプロタイプが存在したのみであったが、コントロール群では、30個のハプロタイプが見られた。また、平均塩基置換数を見ると、家族性モヤモヤ病群とコントロール群とでは、有意差が見られた(P<0.0001)。以上から、家族性モヤモヤ病には、ルーツがあり、モンゴロイドの移動進化とともに地球上に分布したと考えれた。
著者
池田 貴儀
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.219-223, 2005-05-01 (Released:2017-05-25)
被引用文献数
2

会議録は, 研究者が最新の研究動向を知るための情報源であり, 図書館が収集すべき重要な資料にもかかわらず入手が困難とされている。その会議録について, 日本原子力研究所図書館では, 現在, 約1万9千件を収集し研究者に提供している。本稿では, 主として, 学協会からの会議情報の入手, 国際原子力情報システム(INIS)データベースの利用, 研究者からの情報入手といった会議録の収集手法を紹介した。また, 日本原子力研究所が研究報告書として刊行する会議録JAERI-Confのシリーズについても触れている。
著者
池田 譲
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究では、イカ類の共感性を、ツツイカ目のアオリイカを主対象に読み解くことを試みた。その結果、アオリイカは捕食者、餌生物などの対象に対してボディパターン(体色変化)により情動を表出し、それらボディパターンを介した情動表出は同種個体間で伝染すること、情動伝染は生後発生的な過程であることを明らかにした。さらに、コウイカ目のトラフコウイカについても調べ、ボディパターンを介した情動伝染を確認した。
著者
上田 三穂 小林 裕 吉森 邦彰 高橋 由布子 近山 達 池田 元美 魚嶋 伸彦 木村 晋也 田中 耕治 和田 勝也 小沢 勝 近藤 元治 河 敬世 井上 雅美
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.38, no.8, pp.657-662, 1997 (Released:2009-04-28)
参考文献数
15

Chronic active Epstein-Barr virus infection(以下CAEBV)の経過中にEBV感染T細胞の腫瘍化を起こした1例を経験した。症例は20歳女性で発熱,陰部潰瘍,口腔内潰瘍などのベーチェット病様症状で来院した。頚部リンパ節腫脹を認め,生検では炎症性変化であった。EBV抗体価よりCAEBVと診断し,PSL, acyclovirの投与をおこなった。一旦症状は改善したが,発症約10カ月後に汎血球減少を呈し,骨髄にて異常細胞を35%認めた。TCR-β遺伝子の再構成を認めT細胞腫瘍と診断した。化学療法にて骨髄は寛解となったが,全身のリンパ節の再腫脹を認め,約3カ月の経過で治療抵抗性のため死亡した。骨髄中の腫瘍細胞でのEBVのterminal probeを用いたSouthern blottingにてsingle bandが検出され,単クローン性が証明されたことより,EBV感染T細胞の腫瘍化と考えられた。本邦の成人例では稀であり,報告した。
著者
宮井 輝幸 秋山 正行 中川 稔 矢野 陽一郎 池田 三知男 市橋 信夫
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.591-594, 2012-11-15 (Released:2012-12-31)
参考文献数
16
被引用文献数
1

コーヒー,紅茶および緑茶の各種試料に,Bacillus属細菌(B. cereus, B. subtilis, B. coagulans) 芽胞を接種し,85℃30分間(食品衛生法におけるpH 4.6以上の清涼飲料水の殺菌基準) 加熱処理した後,その試料の保存中における生育挙動を調べた.コーヒー,紅茶試料では,牛乳を添加した場合,B. cereusとB. subtilisの菌数の増加がみられたが,牛乳を添加していないコーヒー,紅茶および緑茶の各種試料(pH調整の有無;コーヒーの焙煎度;紅茶の抽出温度;コーヒー,紅茶への砂糖添加) では,Bacillus属3菌種の菌数の減少がみられた.これらのことより,85℃30分間の加熱殺菌条件で製造した牛乳無添加の各種飲料中にBacillus属3菌種が生残していたとしても,コーヒー,紅茶および緑茶の抗菌性により商業的な無菌性が保証される可能性が示唆された.
著者
山内 大輔 川村 善宣 本藏 陽平 小林 俊光 池田 怜吉 宮崎 浩充 川瀬 哲明 香取 幸夫
出版者
一般社団法人 日本耳科学会
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.159-166, 2020 (Released:2021-04-05)
参考文献数
25

上半規管裂隙症候群は,1998年マイナーによって最初に報告され,これまでいくつかの手術法について報告されてきた.正円窓閉鎖術はいわゆる“third window theory”に基づいた術式であるが,その効果は限定的であることが報告されている.一方,中頭蓋窩法によるpluggingまたはresurfacingの場合は,ほとんどの症例で裂隙部を直接確認できる.しかし,裂隙部が上錐体静脈洞に位置している場合は困難となる.さらに頭蓋内合併症のリスクのため,安易には手術を勧められないジレンマがある.そのため,耳鼻咽喉科医にとって中頭蓋窩法よりも経乳突洞法によるpluggingの方が容易な術式であるが,下方からでは裂隙部を確認しづらく,また感音難聴の合併症のリスクが潜んでいる.著者らは経乳突洞法によるpluggingに水中内視鏡を用いることで安全性を高める方法に改良した.乳突削開術後,浸水下に内視鏡を用いることで,膜迷路と裂隙部を明瞭に観察することが可能であった.たとえ裂隙部が上錐体静脈洞に位置していても,内側からアプローチできるので有用であった.本術式の方法や適応,術後成績について報告する.
著者
大村 直人 本多 佐知子 白杉 直子 原 真衣子 池田 和哉 GHOBADI Narges
出版者
神戸大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、主に調理における人間の撹拌動作の中の暗黙知に着目した。5人の熟練者と2人の非熟練者の撹拌動作を観察した。生クリームの状態は、生クリームの気泡巻き込み量を示すオーバーランとレオロジー特性を用いて評価した。動作解析においては、被験者の肘、手首、泡だて器の柄の3点にマーカーを設置して、その動きを記録した。生クリームの混合過程を、食紅をトレーサーとして可視化した。5人の熟練者はいずれも、非熟練者よりも約半分の時間でオーバーランのピーク値に到達し、その値も100を超えた。動作解析より、熟練者は非熟練者の動きに比べ、肘、手首、泡だて器の運動は同期しておらず、複雑でカオス的であることがわかった。
著者
池田 学 一美 奈緒子 橋本 衛
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.304-309, 2013-09-30 (Released:2014-10-02)
参考文献数
21
被引用文献数
2

進行性失語の概念と診断について,脳前方部に原発性の変性病変を有する認知症の枠組みの中で特徴的な進行性失語症を主症状とする臨床症候群を捉える流れと,Mesulam が当初は全般的認知症を伴わない緩徐進行性失語症(slowly progressive aphasia without generalized dementia)として報告し,その後も発展させてきた(脳血管性失語に対しての)変性性失語症という流れを辿り,概念の変遷と診断基準の特徴を紹介した。そして,各々の診断基準を実際に自験例に当てはめた場合,進行性失語の各サブタイプの診断がどのように変化するかを示すことにより,各々の診断基準の特徴と課題を検討した。
著者
石田 開 廣瀬 稔 池田 憲昭
出版者
一般社団法人日本医療機器学会
雑誌
医療機器学 = The Japanese journal of medical instrumentation (ISSN:18824978)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.13-21, 2013-02-01
参考文献数
29

Cell-phones have a possibility to interfere with medical equipment, and using a cell-phone is restricted in some or all areas in many medical institutions. Cell-phone jamming equipment (CJE) has been introduced in critical areas to prevent cell-phone use. The CJE that were developed for medical use will not interfere with medical equipment nor other communication systems. There are many such devices that one can easily get on the internet or by mail order. This study investigated the malfunction of irradiated medical equipment and Wireless LAN (WLAN) by that type of CJE. We investigated 20 medical devices and 3 WLAN routers. The CJE interfered with four types of medical equipment and all WLAN routers that were investigated. One syringe pump raised an occlusion alarm and stopped infusion at a maximum distance of 22 cm from the CJE. One WLAN router was disconnected at a maximum distance of 6.2 meter. The maximum interference distance of medical equipment was comparatively smaller than that of the WLAN routers. Therefore, serious malfunction of medical equipment by CJE is probably not threatening. However, the malfunction of WLAN might affect clinical work using networks, because some WLAN routers or communication systems were susceptible to interference by CJE.
著者
石川 琢也 池田 裕一 布山 正貴 小川 玲 藤本 陽子
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.81, no.6, pp.564-570, 2022 (Released:2022-03-23)
参考文献数
22

ヒトの腸管内には多くの細菌が生息しており腸内細菌叢を形成している.近年,腸内細菌叢の変化とさまざまな疾患との関係性が報告されている.今回,われわれは機能性便秘症を伴う下部尿路障害の児における腸内細菌叢の分布を調査することとした.機能性便秘症を伴う下部尿路障害の児10名(男児8例女児2例,平均年齢8.1歳)と健常児10名(男児10名,平均年齢7.1歳)の腸内細菌を検索した.検索は培養法で行い,4菌種を評価項目とした.その結果,機能性便秘症を伴う下部尿路障害の児ではClostridium属とLactobacillus属が有意に増加しており(p<0.05),その他の菌種や総菌数では有意差は認めなかった.腸内細菌叢の変化が排尿排便機能に何らかの影響を及ぼしている可能性が示唆され,プロバイオティクスによって基礎疾患とともに下部尿路障害の改善に期待がもたれる.