著者
大江 祐一郎 神前 英明 松本 晃治 清水 猛史
出版者
日本頭頸部癌学会
雑誌
頭頸部癌 (ISSN:13495747)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.478-482, 2017-12-25 (Released:2018-01-25)
参考文献数
20
被引用文献数
1

唾液腺導管癌は局所再発や遠隔転移を生じやすいが,再発・転移例に対する確立した治療法はない。また,アンドロゲン受容体(AR)の発現が高率に認められる特徴を有する。今回,唾液腺導管癌の局所再発・多発骨転移に対し,抗アンドロゲン療法が奏功した1例を経験したので報告する。症例は64歳,男性。右顎下腺癌T3N2bM0に対し手術加療を行い,唾液腺導管癌と診断され,病理学的にARの過剰発現を認めた。術後に化学放射線療法を施行したが,6ヶ月後に局所再発を認めた。17ヶ月後には多発骨転移が出現し,ビカルタミド(80mg/日)内服投与を開始した。腰痛に対して30Gy/10Frの緩和照射も行った。ビカルタミド投与6ヶ月後のPET-CTで局所の腫瘍は消失し,7ヶ月後の腰椎造影MRIでも大部分で腫瘍の造影効果が消失した。遠隔転移から1年経過し,乳房腫脹を認めているが,その他大きな副作用はない。AR陽性の唾液腺導管癌に対して,抗アンドロゲン療法は有用な治療選択肢の一つである。
著者
妹尾 武治 清水 隆哉
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.553-556, 2017 (Released:2017-12-31)
参考文献数
14

We examined whether vection strength could be modulated by the difference in the conditions of observing eyes, i.e. monocular or binocular observations and also, dominant eye or non-dominant eye observations. The eyepatch was used for making the monocular observation. The dominant eye was determined using the Miles Method. Eleven naïve volunteers and the second author participated in this experiment. Three vection measures (latency, duration and magnitude) were obtained. Obtained vection latency was significantly longer in the non-dominant-eye observing condition, although there were no significant differences in vection duration and magnitude. We can conclude that vection can be affected by the conditions of observing eyes.
著者
川上 栄子 村上 陽子 高塚 千広 新井 映子 市川 陽子 伊藤 聖子 神谷 紀代美 清水 洋子 中川(岩崎) 裕子 竹下 温子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.31, 2019

<p>【目的】 静岡県に伝承されてきた家庭料理の中から,副菜(野菜・きのこ・芋・海藻料理)として食されてきた料理を県内の各地域別について明らかにすることを目的とした。</p><p>【方法】「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」の調査ガイドラインに基づき,静岡県東部(沼津市,富士市,伊東市),中部(静岡市,焼津市,藤枝市)および西部(袋井市,浜松市)の各地域において居住歴が30&#12316;81年の男女61人を対象に聞き書き調査を実施した。</p><p>【結果および考察】今回は歴史的,地理的にもそれぞれの特徴を持つ東部(伊豆),中部(駿河),西部(遠江)の3地域に分け,豊富な素材の生かし方や調理法について列挙する。温暖な気候に恵まれ,1年中野菜が採れるため,高塩蔵品は少なく,漬け物類も酸味を効かせたものや,野菜そのものの味を生かした薄塩のものが多い。東部のみずかけ菜の漬け物,わさびの茎の三杯酢漬け,大根の甘酢漬け,中部の大根のゆず漬け,しょうがの酢漬け,西部の子メロン漬けなどに代表される。また,地域の農産物の食べ方として,東部の落花生のなます,中部の自然薯のとろろ汁,西部の蒟蒻の味噌おでん,糸蒟蒻のくるみ和え,海老芋の煮物などがある。また,静岡県は,伊豆沖,駿河湾,遠州灘と海に囲まれていて海産物も豊富であることから,主菜だけではなく副菜にも海産物が使われていた。いわしのつみれ汁,なまり節のサラダ,潮汁,いわしの酢の物,ぼらの酢味噌和えなどである。しかし,お茶やみかんが静岡を代表する特産品にもかかわらず,昭和35〜45年頃は副菜としては利用されていなかったことが明らかとなった。</p>
著者
熊谷 誠治 佐々木 恵司 清水 良枝 武田 紘一
出版者
日本素材物性学会
雑誌
素材物性学雑誌 (ISSN:09199853)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.34-38, 2007-12-28 (Released:2010-10-28)
参考文献数
18
被引用文献数
4 4

Japanese rice husk was converted into an adsorbent for the removal of two types of aldehyde vapors. The rice husks carbonized at 250-800°C in N2 for 1h were exposed to vapors containing 1.0 vol. ppm formaldehyde or 100 vol. ppm acetaldehyde (both N2 carrier) in 5 L-gas sampling bags. Maximum adsorption rates of formaldehyde and acetaldehyde were observed for rice husks carbonized at 800 and 600°C, respectively. The adsorption rates of the aldehydes on the carbonized rice husks were higher than or comparable to those of the commercial granular coconut-shell activated carbon (GCSAC), whereas the specific surface area and the total pore volume of the carbonized rice husks were much lower than that of the GCSAC. The surface basic property of the rice husks carbonized at high temperatures was attributed to the intrinsic inorganic matters of K and Ca, which enhanced an uptake of the aldehydes on their surfaces.
著者
清水 哲哉 中津 亨 宮入 一夫 奥野 智旦 加藤 博章
出版者
日本応用糖質科学会
雑誌
Journal of Applied Glycoscience (ISSN:13447882)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.161-167, 2004 (Released:2008-03-24)
参考文献数
28
被引用文献数
1 2

エンドポリガラクツロナーゼ(EndoPG)は,inverting型の加水分解酵素であり,その触媒機構の詳細は不明であった。本研究では,リンゴ銀葉病菌(Stereum purpureum)の病徴発現蛋白として単離されたEndoPG Iを用いて触媒機構の解明を目的としてX線結晶構造解析を行った。イオンスプレー型質量分析装置を用いたEndoPG Iの糖鎖修飾の分析結果からEndoPG Iの結晶化には,3種のアイソフォーム,EndoPG Ia,Ib,Icのうち糖鎖の最も少ないEndoPG IaをEndoHで糖鎖切断した脱糖鎖型EndoPG Iaを用いた。この脱糖鎖型EndoPG IaをPEG 4000を沈殿剤に用いたハンギングドロップ蒸気拡散法により結晶化した。得られた結晶は,空間群P1に属し,格子定数はa=37.26 Å,b=46.34 Å,c=52.05 Å,α=67.17°,β=72.44°,γ=68.90°であった。この結晶を用いて大型放射光施設SPring-8によりX線回折実験を行った。結晶構造の決定は,多波長異常分散法で行った。SPring-8で収集したデータを用いて初期位相を決定し,最終的に0.96 Å分解能でR値11.4%,Rfree値14.0%という超高分解能のEndoPG Iの構造モデルを得た。得られたEndoPG Iの構造は,10回の完全ターンの平行β-へリックス構造であった。さらに反応生成物であるガラクツロン酸(GalA)を1分子を含むbinary複合体と2分子含むternary複合体の結晶構造を1.00 Åおよび1.15 Å分解能で決定した。binary複合体において1分子のピラノース型(GalpA)の結合がみられた。GalpAの結合位置は,活性残基と推定されているAsp153,Asp173,Asp174の還元末端側にあたることから,GalpAは+1サブサイトに結合していると考えられた。一方,ternary複合体においては,GalpAの他に,フラノース型のGalfAの結合がみられた。GalfAの結合位置は,活性残基の非還元末端側にあたる-1サブサイトと決定された。+1サブサイトでは,三つの塩基性残基,His195,Arg226,Lys228がGalpAのカルボン酸の結合に関与していた。一方,-1サブサイトでは,特異なcis型のペプチド結合がGalfAのカルボン酸の認識に関わっていた。そこで,二つのガラクツロン酸の結合状態を基に,基質の-1,+1結合した2量体部分のモデルを構築し,EndoPG Iの反応機構を検討した。まず,Asp173は切断される基質モデルのグリコシド結合と直接水素結合しうる位置にあった。したがって,Asp173はグリコシド結合にプロトンを供給する一般酸触媒残基と確認された。一方,Asp153とAsp174は,基質のアノマー炭素を求核攻撃すると考えられる水分子と水素結合していた。このことから,Asp153あるいはAsp174が水からプロトンを引き抜き活性化する一般塩基触媒残基と予想された。
著者
木田 耕太 林 健太郎 清水 俊夫
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.260-263, 2020 (Released:2020-04-24)
参考文献数
15

神経変性疾患を中心とした神経難病患者の栄養障害は疾患および嚥下障害,呼吸障害,運動麻痺,筋強剛,不随意運動,運動失調など種々の症状や疾患およびその病期によるエネルギー代謝の変容などのため患者ごとに多様である.神経難病患者の栄養療法には多専門職種の知識・経験の共有に基づいた個々の患者に対するオーダーメイドのサポートが必要である.しかしながら外科・内科領域と比して,脳神経内科領域では栄養管理のエビデンスの蓄積は未だ十分でない.神経難病専門病院における栄養サポートチーム(nutrition support team; NST)の活動,および活動を通じて得られた知見について述べる.
著者
清水 洋邦 松尾 紀子 増田 俊一
出版者
中央大学経済研究所
雑誌
中央大学経済研究所年報 = The annual of the Institute of Economic Research, Chuo University (ISSN:02859718)
巻号頁・発行日
no.50, pp.791-816, 2018

西多摩地域1)をひとつの地方自治体と仮定すると,行政規模が人口30万〜50万人未満の広域な都市(面積:500㎢以上)である中核市(10団体)とほぼ同水準となる。広域合併都市にみられるように都市的区域・郊外・農山村を内包し第2次産業を核として発展してきており西多摩地域は都市型社会と農村型社会が混在した地域といえる。中でも青梅線,五日市線に点在する住工混在地域は駅へのアクセシビリティが高い。また,西多摩地域は古くから歴史・文化・経済・生活など多くの面で共通性と結びつきを持ち,ひとつの生活圏・経済圏といえることから「西多摩をひとつに」するといった新たな行政圏域の形成が望まれる。
著者
清水 浩 小川 雄之亮
出版者
The Japanese Society of Intensive Care Medicine
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.193-201, 1998-07-01 (Released:2009-03-27)
参考文献数
54

肺サーファクタントの絶対的欠乏による新生児呼吸窮迫症候群(respiratory distress syndrome; RDS)に対する人工肺サーファクタント補充療法は,未熟児の救命率を飛躍的に向上させた。一方,肺サーファクタントが機能的に阻害された病態(胎便吸引症候群,肺炎,急性呼吸窮迫症候群,肺出血)に対しても,この補充療法が検討されている。また肺低形成では,RDS類似の肺の未熟性がみられ,出生後早期に人工肺サーファクタントを投与することによって,呼吸機能の改善が期待できる。最近,人工肺サーファクタント投与による免疫系細胞の機能抑制の問題が明らかにされており,また親水性肺サーファクタント蛋白質の肺局所免疫としての役割がクローズアップされて,次世代の人工肺サーファクタント開発にあたっての問題点を提起している。
著者
安田 憲二 竹生田 秀夫 宮川 隆 清水 保夫
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.183-187, 1997-06-15 (Released:2017-05-31)

1995年7月6日(木)午前9時59分ごろ,神奈川県内の秦野市伊勢原市環境衛生組合清掃工場の焼却炉において爆発事故が発生し,3名の職員が死傷した.事故の原因は,灰落としシュートおよび灰押し 出し機内で発生した水素を主成分とする可燃ガスが,シュート点検口から供給された空気と混合して爆発限界内の混合気体になり,クリンカー等の着火源によって発火し,燃焼爆発に至ったものと推定された.
著者
川本 利恵子 村瀬 千春 石原 逸子 生嶋 美春 中谷 淳子 原賀 美紀 清水 遵
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
産業医大誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.305-313, 2005
被引用文献数
2 10

本研究は, 快適職場環境の形成に香りの効果を有効的に活用するための基礎的なデータを得る目的で行われた. 実験は, 被験者である14名の女子学生おのおのに対して, レモンの香りのある実験室とレモンの香りのない実験室という2つの異なった環境下における単純加算作業の成績, 生理的変化, 気分変化を調べ, その差を比較検討した. 実験結果は, レモンの香りは作業効率を変化させないが, 疲労を軽減させ, 活力の低下を予防することを示唆した.
著者
平井 仁智 石黒 龍司 島原 直樹 岡田 彩 清水 慶子
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.29, 2013

&nbsp;オランウータンは,東南アジアのボルネオ島とスマトラ島のみに生息する樹上性の大型類人猿である.生息している島によって,ボルネオオランウータン <i>Pongo pygmaeus</i>とスマトラオランウータン <i>Pongo abelii</i>の 2種に分けられる.雌の寿命は,53歳以上で,霊長類の中では最長の 6.1~ 9.3年間隔で子どもを出産し,母親が単独で子を育てることが報告されている.このことが主要因となり,個体数の減少が始まると歯止めをかけるのが難しい.野生下では 50歳での出産報告があるにも関わらず,飼育下では,40歳を過ぎると年老いた個体とされているため繁殖に用いられない.この理由の一つとして,いつ繁殖不可となるのかの基礎データがないことがある.また,本種においては妊娠した個体や若い個体を対象とした生殖生理学的研究はあるが,老齢個体を対象とした研究はほとんどない.<br>&nbsp;現在,日本国内においてボルネオオランウータンは 12園館で 34頭( ♂ 19頭, ♀ 15頭),スマトラオランウータンは 5園館で 11頭( ♂ 5頭, ♀ 6頭)が飼育されているが,本研究では飼育個体数が多いボルネオオランウータンを研究対象とし,2012年 8月~ 9月に多摩動物公園にて,雌ボルネオオランウータン 4個体(推定 57歳,47歳,推定 42歳,39歳)を対象として糞尿の採取をおこなった.酵素免疫測定法により,糞尿中性ホルモン代謝産物を測定し,年齢不明の個体の生殖状況の推定が可能になり繁殖計画の基礎データとなることを目的として,加齢に伴い変化する生殖内分泌動態について考察をおこなったので報告する.
著者
酒井 勇一 斉藤 節雄 清水 幹博 山田 寿郎 湊 一郎
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.754-760, 1996-09-15 (Released:2008-02-29)
参考文献数
8
被引用文献数
6 8

The occurrence, chemical and crystallographic nature of the calculi, and their effects on the survivorship of larvae of Japanese flounder were investigated.Two types of calculi were distinguishied as to their colors and localities; most of calculi were a milk-white one found exclusively in the urinary bladder. Orange calculi, while comparatively few in number, were in both the kidney and the urinary bladder. Both types of calculi were mainly composed of calcium phosphate in amorphous forms, but the elements of each calculus was different. Calcium and phosphorus were detected in the milk-white calculi, while sulphur in addition to calciumand phosphorus were in orange calculi. The bladders containing milk-white calculi showed no histological changes in the kidney, but when orange calculi was observed in a proximal segment or a collecting tubule of the kidney, the lumen was abnormally expanded and the epithelium cells were flattened. But calculi-holding larvae did not show a specifically higher mortality compared to normal larvae.
著者
清水 貞夫 玉村 公二彦
出版者
奈良教育大学
雑誌
奈良教育大学紀要. 人文・社会科学 (ISSN:05472393)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.41-54, 2015-11-30

In this article we analyzed the sociological labeling theory, especially focusing on Jane R. Mercer and also including the social climate of 1960s. According to Mercer, there are two perspectives in which mental retardation can be considered: (1) the clinical perspective and (2) the social system perspective. The clinical perspective is characterized by the simultaneous use of a medical model and a statistical model though these two models are frequently confused. She contends it is not appropriate to apply a medical model to mild mental retardation, but it is more appropriate to adopt a social system model for analyzing problems that people with mild retardation would meet in a community. She argues that from a social system perspective, mental retardation is a sociocultural phenomenon, That means that mental retardation is an achieved status in a social system and persons holding that status plays the social role designated by the social system. From Mercer’s researches at Riversides, she found that there were a disproportionately large number of black persons and Mexican American persons labeled by community agencies. She also discovered that the schools were the chief labelers. From these and other findings Mercer came to three major conclusions. The first one is that clinicians and psychologists in the community were not measuring adaptive behavior only because there were no adaptive scales available for them to use. This meant that they judged persons as persons with mental retardation almost entirely on the basis of an IQ test score. The second one is that the cut-off point of an IQ score should be lowered to 2SD below, though public schools were using the cut-off point of IQ 79 or below. Third one is that tremendous cultural biases exists in the IQ test and the test is not appropriate when used with lower class persons who do not share the same cultural traditions as the dominant Anglo American society. These conclusions lead her to develop an improved assessment test called the System of Multicultural Pluralistic Assessment (SOMPA). SOMPA includes an extensive battery of measures. SOMPA has extensively reviewed and debated, so it has not recognized as a valid assessment tool for children yet. Mercer's social system approach, however, provides us with the new perspective about intellectual disability. According to Mercer intellectual disability is not mental defect or deficiency, but a kind of devalued deviancy which is determined to be deviant by other people in the social system.