著者
小河 孝夫 清水 志乃 戸嶋 一郎 神前 英明 清水 猛史
出版者
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
雑誌
耳鼻咽喉科免疫アレルギー (ISSN:09130691)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.221-227, 2011 (Released:2011-09-30)
参考文献数
41
被引用文献数
1

近年,好酸球性副鼻腔炎などの難治性上気道炎症の病態形成に凝固線溶系が深く関与していることが明らかになり,凝固線溶因子を標的とした治療法の開発が注目されている。一方,ヘパリンは抗凝固作用を有し,臨床上も血栓症治療などに古くから使用されてきたが,同時に抗炎症作用も有することが知られている。ヘパリンは陰性荷電とその特異な分子構造により炎症過程における多くの生理活性物質と結合することが作用機序として考えられている。実際の臨床においても,気管支喘息,炎症性腸疾患,熱傷などで有効性が報告され,様々な疾患モデル動物においてもヘパリンの抗炎症作用が報告されているが,鼻副鼻腔疾患に対する検討はほとんどない。筆者らはヘパリンの持つ抗凝固作用と抗炎症作用の両者に期待して,難治性上気道炎症に対する治療薬としての可能性を検討している。 ラット鼻粘膜炎症モデルを使用した未分画ヘパリンや低分子ヘパリンの点鼻投与の検討では,LPS刺激やアレルギー性炎症により生じたラット鼻粘膜の杯細胞化生や粘液分泌,炎症細胞浸潤はヘパリン投与により有意に抑制された。培養気道上皮細胞を用いた検討でも,TNF-α刺激や好酸球性細胞株との共培養によるムチンやIL-8分泌を有意に抑制した。これらの結果より,ヘパリンはステロイド以外に有効な薬物療法のない好酸球性副鼻腔炎などの難治性上気道炎に対する新たな局所治療薬としての可能性が期待できる。
著者
清水 学
出版者
日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
中東レビュー (ISSN:21884595)
巻号頁・発行日
no.6, pp.99-119, 2018-03

Azerbaijan, a land locked country in South Caucasia, gained independence in 1991 after the break-up of the USSR. It is surrounded by Russia, Iran, Armenia, Georgia, and Turkey and is compelled to depend on a balancing act in its diplomacy to protect its sovereignty and survive. In April 2018, it reiterated its intention to host the 2019 Summit of the Non-Aligned Movement (NAM) in Baku and take on the position of chairmanship of NAM for a 3-year term. It is to be noted that Azerbaijan took this decision at a time of heightened tensions in the region when the US unilaterally withdrew from the Joint Comprehensive Plan of Action, popularly known as the Iran nuclear deal. Azerbaijan has a border with northwestern Iran and has had a complicated relationship with it based on historical, ethnic, and religious ties. At the same time, Azerbaijan is the major supplier of oil to Israel, which is increasingly antagonistic to Iran. For the last decade, Israel and Iran have tried to gain Azerbaijan's favor by offering arms or adjusting their diplomatic stance to take into account the geopolitical importance of Azerbaijan. Iran switched from its tacit support to Armenia on the Nagorno Karabakh conflict to a more sympathetic understanding of Azerbaijan's position.The Nagorno Karabakh issue has been the focal point of security and sovereignty for Azerbaijan, which claims that Nagorno Karabakh and its neighboring areas have been occupied illegally by Armenia. Since the latter half of 2018, Israel has raised the level of military cooperation with Azerbaijan by supplying more advanced arms, such as drones, while Iran strengthened its military links with Azerbaijan by enhancing its military contacts and cooperation. For Azerbaijan, the simultaneous deepening of military cooperation with the two influential and mutually antagonistic regional powers—Israel and Iran—is not inconsistent because it seeks to upgrade its own military capacity.The NAM has not been given serious attention in the world politics since the end of the cold war. At the same time, the objective reality that the number of member states has increased cannot be denied. The purpose and definition of the NAM is still vague and allows member states to arrive at different versions of its objectives. The mediating capacity of the NAM to solve conflicts among the member states is, at best, marginal. However, the NAM is a forum where the participants—most of whom experienced colonial rule—can express strong or mild dissatisfaction with the present world regime, dominated by the West. In this sense, the role of NAM could be still flexible and effective under certain conditions in the fluid world political system. Azerbaijan utilizes the NAM to achieve a balance in its diplomatic relations in the present turbulent situation and strengthen its political position on the Nagorno Karabakh issue.
著者
清水 潮 相磯 和嘉 清水 亘 望月 篤
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.109-115, 1969-01-25 (Released:2008-02-29)
参考文献数
4
被引用文献数
1

Microbiological examination of a curing brine of Kusaya showed that a species of halophilic corynebacteria which was given the name Corynebacterium kusaya predominated in the brine. A description of the species was given. An experiment with an artificial Kusaya brine suggested that the preserving effect of the Kusaya brine could be ascribed to the presence of this organism.
著者
山口 真有美 瀬戸 奈津子 清水 安子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.176-183, 2018
被引用文献数
1

<p><b>目的:</b>初期・二次救急外来で勤務する救急看護認定看護師の入院せず帰宅する患者に対する看護実践を構造化することである.</p><p><b>方法:</b>近畿圏内の救急看護認定看護師12名に半構造化面接を実施し,質的統合法(KJ法)を用いて分析した.</p><p><b>結果:</b>救急看護認定看護師は入院せず帰宅する患者に対し【医師が診察したあとの看護としての観察とアフターフォロー】,【援助を必要としている患者を見捨てない最後の砦となる】,【入院が必要か否かを探りつつ,帰宅後の生活も想像する】,【救急患者の不安や緊張を思いやり共感しながらも入院不要の納得を得る】,【短時間で帰宅後のリスク回避の方法を説明する】,【重症化の危険に備え,多職種との連携をはかる】,【医療・介護スタッフ,地域住民への救急対応教育】を実践していた.</p><p><b>結論:</b>患者の健康回復のみならず患者を元の生活に戻すことに責任を負う救急看護認定看護師の実践が明らかになった.今後は救急看護師の介入による救急外来再受診や一般外来への定期受診への影響について検討を要する.</p>
著者
清水 真人
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1589, pp.12-15, 2011-05-02

4月22日、首相官邸。首相の菅直人は経済財政相の与謝野馨、国家戦略相の玄葉光一郎ら主要閣僚に、日銀総裁の白川方明もオブザーバーとして加わった「経済情勢に関する閣僚会合」で「重要政策の再出発」の号令を発した。 「東日本大震災を次の日本と世界にどうつなげるか。
著者
李 家華 周 紅傑 清水 圭一 坂田 祐介 橋本 文雄
出版者
農業生産技術管理学会
雑誌
農業生産技術管理学会誌 (ISSN:13410156)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.73-79, 2008-11-15 (Released:2019-04-15)
参考文献数
18
被引用文献数
1

製造発酵過程における雲南プーアル茶のポリフェノールとカフェイン含量について,発酵期間を設定するため,雲南省鎮康県,双江県および景谷県の3地域で収集した日干しした緑茶(晒青緑茶)を発酵処理開始後10日毎に茶葉サンプルを採取し,分析を行った.(-)-エピガロカテキン3-ガレート(EGCG),(-)-エピカテキン3-ガレート(ECG),テオガリン(TG),ストリクティニン(STR),1,4,6-トリ-O-ガロイル-β-D-グルコース(1,4,6-tri-O-G-β-D-G)の5種の含量は発酵に伴って有意(1%レベル)に減少したが,40日以降のそれらの含量の減少の程度は小さくなった.また,(-)-エピカテキン(EC)と(-)-エピガロカテキン(EGC)含量は発酵開始後10日目までに増加し,その後急激に減少に転じた.これに対して,没食子酸(GA)含量は発酵40日目まで有意(1%レベル)に増加し,その後有意(1%レベル)に減少した.この結果,従来から報告されている,発酵中に微生物の産生するエステラーゼによってエステル類が加水分解を受けてGAが生成することを追認し,併せて加水分解型タンニンの加水分解もGA含量の増加に関係していることを初めて明らかにした.一方,紅茶の紅色色素であるテアフラビン類は検出されなかったことから,発酵によりプーアル茶に生成している色素類は紅茶のものとは異質のものであることが明らかとなった.カフェイン含量は発酵に伴い徐々に増加し,発酵開始後60日目には最高値となった.以上の結果から,プーアル茶製造における発酵期間は40日間で十分であると結論づけられた.
著者
松原 聰 宮脇 律郎 横山 一己 重岡 昌子 原田 明 山田 隆 川島 和子 清水 孝一 宮島 浩
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本鉱物科学会 2010年年会
巻号頁・発行日
pp.77, 2010 (Released:2011-04-06)

長野県茅野市向谷鉱山の熱水脈からヘドレイ鉱、ピルゼン鉱、都茂鉱、Bi3Te2のようなBi - Te系鉱物が産する。鉱脈は三波川変成岩に属する石英ー白雲母ー滑石片岩中に見られる。Bi - Te系鉱物はゲルスドルフ鉱、硫砒鉄鉱、磁硫鉄鉱、黄銅鉱を伴う。ヘドレイ鉱、ピルゼン鉱、都茂鉱は、直径2 mm以下の六角板状結晶として見られる。
著者
今川 弘 滝野 慶則 清水 正夫
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.138-144, 1976-03-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
8
被引用文献数
2 4

(1) 紅茶製造中における核酸成分の変化に関与する核酸分解酵素系を検討するために,茶葉から調製した粗酵素をDEAE-セルロースカラムで分別し,主要画分についてRNAの分解作用を調べ, 5′-ヌクレオチドを生成するエンドヌクレアーゼと2′,3′-環状ヌクレオチドを生ずるRNaseの存在を認めた。(2) RNase含有画分をセファデックスカラムで分別し, PMase, PDase両活性を含まないRNaseを得た。本酵素は至適pH5.5で熱安定性が高く, RNAを分解して2′,3′-環状ヌクレオチドとオリゴヌクレオチドを生じ,その際G>pの生成が最も顕著であった。また環状ヌクレチドを3′-ヌクレオチドに加水分解するが,その速度は非常におそい。これらの結果から,紅茶に含まれている2′-および3′-ヌクレオチドは茶葉RNAからRNaseの作用によって生じた2′,3′-環状ヌクレオチドが母体となり,これらがRNase, PDaseの作用および非酵素的分解をうけて生成したものと考えられる
著者
清水市次郎 編・和解
出版者
清水市次郎
巻号頁・発行日
vol.巻1-3, 1884
著者
高取 千佳 長谷川 泰洋 藤原 望 清水 裕之 宮脇 勝
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.1232-1239, 2017-10-25 (Released:2017-10-25)
参考文献数
16
被引用文献数
1

都市に残存する里山起源の二次林は、都市環境の向上に寄与する様々な緑地機能の発揮が期待されている。特に近年は、国民の余暇の増大や量から質への価値観の変化を背景に、雨水涵養や大気浄化等の従来の物理的機能に加え、景観やレクリエーション等の心理的機能が注目を集めている。しかしながら、近年では里山的利用の衰退による質の低下が進んでおり、緑地機能の適切な保全が求められている一方、財政難を抱える行政だけで積極的に緑地管理を行うことは難しく、行政・市民の協働による新たな緑地管理の在り方が模索されている。そこで、本研究では、名古屋市名東区藤巻町を対象に、(1)里山起源の二次林を類型化した上で、(2)景観選好性と管理労力の両方を定量的に評価し、(3)地域における提供しうる管理量を制約条件とし、景観選好性を最大化する管理労力の配分による空間計画の手法構築を行う。これにより、行政・市民の協働による緑地管理の在り方について計画的知見を得ることを目的とする。
著者
石谷 太 岡田 雅人 清水 誠之 佐久間 恵 石谷 閑 原岡 由喜也 龝枝 佑紀 小神野 翔平 Zou Juqi 古家 博信 梶原 健太郎 北野 圭介 大倉 寛也 河瀬 直之 Chen Ping-Kuan
出版者
群馬大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2014-07-10

本研究では、SrcとWnt経路の活性化が誘発する細胞競合の機序と、その脊椎動物における機能的意義、および腫瘍進展における役割の解明を目指している。まず、ゼブラフィッシュにおいて細胞競合可視化解析系を確立した。また、Wnt経路駆動性細胞競合の研究を行う過程で、発生プロセスで自然発生したシグナル異常細胞が細胞競合により排除されること、すなわち、細胞競合が発生プログラムのエラーを防ぐ発生ロバストネス制御機構であることを発見した。また、新たに構築した培養細胞系を用いた解析により、Src誘発性細胞競合におけるSrc活性化細胞の逸脱の方向性が細胞の種類によって変化することを発見し、その機序を明らかにした。
著者
陳之内 将志 小野 武也 沖 貞明 梶原 博毅 金井 秀作 長谷川 正哉 坂口 顕 島谷 康司 清水 ミシェル・アイズマン 大塚 彰
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.169-173, 2008 (Released:2008-04-05)
参考文献数
15
被引用文献数
5 5

本研究は,関節可動域制限発生の予防に必要な持続的伸張運動時間を関節角度と筋の形態学的な変化から検討した。実験動物には9週齢のWistar系雌ラット35匹を正常群7匹と足関節を最大底屈位で1週間ギプス固定した固定群7匹,1日1回ギプスを除去し持続的伸張運動を実施した伸張群21匹に振り分けた。さらに伸張群は10分,30分,60分の伸張時間の違いによって7匹ずつ振り分けた。結果は,関節角度の変化から見ると,30分の持続的伸張運動が最も効果的に関節可動域制限の発生を抑制することができた。また筋の形態学的な変化から見ると,30分を超える持続的伸張運動では筋線維を脆弱化させる可能性が示唆された。
著者
柴垣 直孝 猪爪 隆史 安藤 典子 北村 玲子 水谷 三記子 長阪 晶子 清水 顕 島田 眞路
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.152-159, 2005 (Released:2005-10-25)
参考文献数
22
被引用文献数
4 3

ジアミド誘導体を配合した入浴剤のアトピー性皮膚炎患者に対する有用性を検討するために,合成擬似セラミドなどの油性保湿成分とユーカリエキスおよびオーツ麦エキスを配合した入浴剤を対照処方とし,この対照入浴剤処方にジアミド誘導体を配合した入浴剤処方を用いて二重盲検法による入浴での使用試験を行った。対象はアトピー性皮膚炎患者21例(ジアミド誘導体配合入浴剤使用群13例,対照入浴剤使用群8例)で,入浴剤を3~6週間使用させ,身体部位の乾燥症状や痒みに対する効果を検討した。その結果,1.対照入浴剤使用群では「乾燥」および「落屑」において有意な改善効果が認められたのに対し,ジアミド誘導体配合入浴剤使用群では「乾燥」,「落屑」に加え,「そう痒・そう破痕」および「角層水分量」において有意な改善効果が認められた。2.特に高頻度(毎週4回以上)の使用患者では,ジアミド誘導体配合入浴剤使用群(7例)において「入浴中のかゆみスコア」の改善傾向と「入浴後のかゆみスコア」の有意な改善が認められたのに対し,対照入浴剤使用群(7例)においてはいずれも有意な改善を認めなかった。また,「入浴後のかゆみスコア」の改善を示す症例数は,ジアミド誘導体配合入浴剤使用群の方が対照入浴剤使用群と比較し,有意に多かった。以上の結果より,ジアミド誘導体を配合した入浴剤の使用は,アトピー性皮膚炎の治療において一つの有用な補助療法となる可能性が示唆された。