著者
清水 公男 上滝 圭介 古宮 照雄
出版者
木更津工業高等専門学校
雑誌
木更津工業高等専門学校紀要 (ISSN:2188921X)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.157-175, 2009-01

筆者クウィラ=クーチは、『ヴェニスの商人』のテキスト、材源、モチーフ、ユダヤ人問題、アントーニオ、ヴェネツィアの性格、バッサーニオ、バッサーニオの友人、ポーシャ、劇の結末などについて詳細な分析を行っている。材源の改変によって、ポーシャの性格が大きく変わる。また、マーロウの『マルタ島のユダヤ人』のバラバスと比較してシャイロックの特性を考察し、この劇を実に多面的に分析していて見事である。
著者
大島 慶一郎 小野 純 清水 大輔
出版者
日本海洋学会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.115-124, 2008-02-29

オホーツク海の陸棚上の流速場をよく再現している3次元海洋循環モデルを用いて,粒子追跡実験を行った.モデルは日々の風応力と月平均の海面熱フラックスで駆動されている.アムール川からの汚染物質等の漂流・拡散を想定して,アムール河口に起源を持つ海水の0m層と15m層における粒子追跡実験を行った.15m層では,粒子を投下する月・年に拘らず,10月一気に東樺太海流が強まるのに伴って粒子はサハリン東海岸沖を南下し始め,12〜1月に北海道沖に到達する.表層0mでは,海流だけでなく風によるドリフトの効果が加わり,粒子の挙動は年によって異なる.沖向きの風が強い年ほど,粒子は東樺太海流の主流からはずれてしまい,北海道沖までは到達しない傾向が強くなる.2006年2〜3月に知床に漂着した油まみれの海鳥の死骸の起源を探るため,後方粒子追跡実験を行った.その結果,海鳥は北方から,おそらくはサハリン東岸のどこかから東樺太海流に乗って知床に漂着したであろうことが示唆された.
著者
森山 重治 宇高 徹総 宮出 喜生 清水 信義
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.80-86, 1994-01-15

症例は55歳,女性.咳嗽,労作時呼吸困難を主訴に近医で胸部異常陰影を指摘された.画像診断上前縦隔に腫瘍を認め,穿刺針生検で線維性胸膜中皮腫の診断を得た.24ヵ月前の検診時の胸部X線で右上縦隔に約3cm大の腫瘤を認めた.1992年4月22日胸骨正中切開で開胸.右縦隔胸膜と心嚢に強固に癒着しており,これを剥離して腫瘤を摘出した.腫瘤は重量545g,大きさ12.8×10.0×7.3cmで心嚢に癒着した部位に被膜欠損を認め,右腕頭静脈付近に一致する部位に茎が存在した.病理学的に腫瘍細胞に悪性所見は見られなかった.術後前縦隔に急速に再発し,同年7月15日再手術を施行した.腫瘤は心嚢内腔に浸潤しており,心嚢を合併切除した.再発腫瘤は重量160g,大きさ9.0×7.0×5.0cmであった.患者は再手術後約3ヵ月で心嚢内に腫瘤を形成し,心タンポナーデのため死亡した.縦隔内に有茎性に発育し,急速に増大発育した稀な症例であった.
著者
水井 真治 笹 健児 日比野 忠史 永井 紀彦 清水 勝義 富田 孝史
出版者
広島商船高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

港湾計画においては構造強度や海洋環境など様々な観点から多面的に検討されるが,その中でも最も重要な指標の一つに港内静穏度,特に波浪や風による影響の検討がなされる.瀬戸内海など外洋に面していない海域の港湾の場合,波浪条件が静穏であることから外洋性港湾ほど詳細な安全性の検討がなされているとは言い難い.しかし,著者らは瀬戸内海における港湾において,強潮流時にも船舶が運用困難となる事例から潮流による運用困難な影響も詳細に検討する必要性を示した.当初は潮流による船体運動への影響評価として,静止した船舶が潮流を受けた場合に移動する距離を潮流条件ごとに比較検討した.しかし,実際には船体が桟橋に着桟する局面では舵とプロペラの力を用いて姿勢制御を行う操船方法であり,これらの影響を考慮した船体運動の数値解析法は検討できていない.潮流が卓越する中で運用せざるを得ない港湾の運用限界を定量的に評価するため,舵とプロペラによる操船制御の動作を考慮した船体運動の解析手法へ改良する必要があると考えられる.瀬戸内海の船舶運航者を対象に潮流下での運用の困難度をアンケート調査で把握し,港湾運用の現状を改めて整理した.これをもとに前報で対象とした潮流影響が顕著な離島航路のフェリー港湾まわりの潮流・水質調査を大潮日に数回実施した.さらに潮流中における着桟操船時の船体運動について,舵力,プロペラ推力,ポンツーン衝突時のエネルギー吸収などの影響を再現できる数値計算法の開発を実施し,再現精度を検証するとともに強潮流下における港湾での新たな運用限界の検討方法を提案した.この結果,実際の着桟局面での船体運動を定量的に評価することが可能となり,強潮流が卓越する港湾での運用の困難度を評価する一手法を確立することができた.
著者
原 實 川崎 信定 木村 清孝 デレアヌ フロリン ユベール デュルト 落合 俊典 岡田 真美子 今西 順吉 木村 清孝 末木 文美士 岡田 真美子 ユベール デュルト 田辺 和子 落合 俊典 デレアヌ フロリン 松村 淳子 今西 順吉 津田 眞一 北田 信 清水 洋平 金子 奈央
出版者
(財)東洋文庫
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

平成18年度より3年間、「古代インドの環境論」と題し、同学の士を誘って我々の専攻する学問が現代の緊急課題とどの様に関連するかの問題を、真剣に討究する機会を持ち得た事は極めて貴重な体験であった。外国人学者を交えて討論を重ねる間に、我々の問題意識はインド思想や佛教の自然観、地球観にまで拡がって行ったが、それらは現代の環境破壊や無原則な地域開発に警告する所、多大なるものがあった。「温故知新」と言われる所以である
著者
桂華 淳祥 浅見 直一郎 松川 節 松浦 典弘 藤原 崇人 井黒 忍 加藤 一寧 清水 智樹 福島 重
出版者
大谷大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

仏教関係碑刻を詳細に検討するため定期的に研究会を行った。また現地調査を実施し、碑刻の実物を検証して研究会で問題となった事柄を補足するとともに新たな史料の入手に努めた。これらの活動の成果を纏めたものが、27の碑刻の全文を正確に録文・読解し、そこに記される重要な語句に注を付した「金元代石刻史料集-華北地域仏教関係碑刻(一)-」である。
著者
大貫 繁雄 大塚 友彦 清水 昭博 城石 英伸 西村 亮 小坂 敏文
出版者
東京工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,技術者を目指す学生のモチベーションを向上させるため,15歳という低年齢から学生の意識を「頑張ること=達成感を得るための第一歩」が「嬉しい(さらなる向上へ)」という状態に遷移させる仕組みを提案する.まず,現行の新入生専門導入科目「ものづくり基礎工学」の現状分析を学生意識調査により,入学当初から,複合・融合的視点を修得する意義を認識する学生が多いことが明らかになった.次に、社会ニーズ(環境やエネルギー等)の高い分野の基礎実験テーマを組み込み、社会で望まれる技術者像の理解向上を試みた.学生の意識調査から社会ニーズの高い分野への関心や社会で望まれる技術者像についても高い認識を持っていることが明らかになった.最後に,社会人技術者から構成される人材バンクを立上げ,外部教育力を活用して,「ものづくり基礎工学」の授業の一環として設計・製作物の発表会(競技会),講演会等を実施し,学生の自発的な発想力や行動力向上のための新しい授業形態を検討した.学生意識調査から,現場技術者から実務能力について講演を受けることで、技術者意識について共感する学生が多い結果となった.
著者
清水 厚志
出版者
慶應義塾大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

1)データベースの構築1000個のカオナシ遺伝子についてデータベースを構築し相同性のある遺伝子および他の生物種の相同遺伝子のデータをBLASTを用いて集積するシステムを立ち上げた。ヒトカオナシ遺伝子に関しては、cDNAの増幅のために必要なゲノム構造の入力を行いプライマーの設計も自動で行うシステムを構築した。設計した20個のモルフォリノアンチセンスオリゴ(MO)の配列データおよび位置の登録を行った。RT-PCRの結果やメダカ胚の画像、条件などをインジェクション機器に付属したPCからデータベースにアップロードするシステムを構築した。さらに、これらのデータをウェブブラウザーで表示できるシステム構築を行った。2)カオナシ遣伝子に対するRT-PCR及びWhole mount in situ法による発生初期ステージの発現解析メダカの発生ステージごとに受精卵を100-1000個採取しmRNAを抽出しcDNAを合成した。これらのcDNAライブラリーを用いて130個のヒトカオナシ遺伝子のメダカオルソログのRT-PCRによる発現解析を行った。これらの発現情報をもとにMOが有効な初期胚から発現している遺伝子20個をノックダウン解析の対象遺伝子とした。3)ノックダウン法による機能解析2)で選択した20個のカオナシ遺伝子についてMOを作製しメダカ初期胚に対しノックダウンを行った。その結果、脳室の肥大、発生阻害、アポトーシスなどを引き起こすMOを得ることができた。これらのことから機能推定が全くできず逆遺伝学の対象から外れているカオナシ遺伝子の中に発生に関与する遺伝子が含まれていることが確認できた。一方で、より安価にノックダウン解析を進めるためMOの他に市販されているアンチセンスオリゴであるGripNAやLNAなどを用いてノックダウン解析を行ったがMOと同様の表現型を得ることができなかった。
著者
金子 隆之 清水 智 板谷 徹丸
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大学地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.p299-332, 1991-06
被引用文献数
5

信越高原は,中部日本北東部に位置する.この地域には数多くの第四紀火山が,第三紀の火山岩を基盤に密に分布し,浅間火山から北へ約70Kmに渡って南北の火山列をつくる.このような新旧の火山岩が複雑に分布する地域では正確な時代区分を行うことが難しく,個々の火山に至っては,形成史がほとんど解明されていないものも多い.本論では, K-Ar年代測定を行った55個のサンプルの産地,岩石について記載し,得られた年代値と,現時までに公表されている地質図,層序関係を総合的に検討することによって,各火山の活動年代,形成史を明らかにすることを試みた。各火山の推定された活動年代は以下の通りである.関田火山:1.7-1.2 Ma,毛無火山:1.6-1.0 Ma,班尾火山:0.7-0.6 Ma,鳥甲火山:0.9-0.7 Ma,苗場火山: 0.6-0.2 Ma,カヤノ平火山:1.5-0.7 Ma,高社火山:0.3-0.2 Ma.焼額火山: 1.1-0.8 Ma,東舘火山:0.9 Ma前後,志賀火山:0.25-0.05 Ma,横手火山:0.7前後,草津白根火山:0.6-0.0 Ma,御飯火山:1.1 Ma前後,四阿火山:0.9?-0.4 Ma,烏帽子火山:0.4-0.2 Ma,浅間火山:0.1-0.0 Ma,鼻曲火山:1.1-0.7 Ma.Seventeen Quaternary volcanoes are distributed in the Shin-etsu highland area situated in the north-eastern part of central Japan. They occur forming a volcanic chain (about 70km) from the Asama volcano in the south to the Sekita volcano in the north, and convering the Tertiary volcanics. In the southern area, geological approaches in field have been unsuccessful both in distinguishing the Quaternary volcanic edifice and the basement volcanics and in revealing their ages of volcanic activity.
著者
小林 誠 日笠 健一 萩原 薫 湯川 哲之 清水 韶光 菅原 寛孝 大川 正典
出版者
高エネルギー物理学研究所
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

トリスタン加速器による電子・陽電子衝突実験は昭和62年度より本格化した. 昭和62年中に, ビームエネルギー25.0, 26.0, 27.5GeVでの実験を終え, 28.0GeVでの実験が進行中である.こうした状況のもとで, 本課題ではトリスタン・エネルギー領域での現象論を種々の観点から行ったが, 特に輻射補正と超対称性理論に基づく現象論に力点を置いた.輻射補正では, 電子・陽電子衝突における軽粒子対生成, 光子対生成, トップ・クォーク対生成, ジェット生成などの過程に対する補正の計算を行ったほか, ニュートリノの種類数を調べるのに有効なニュートリノ対+光子の過程に対する補正の計算を行った. これによって, トリスタンにおける基本的な過程の輻射補正の計算は一応完成した.またこの研究の一環としてファイマン図の計算機による自動生成, 自動計算の開発を行った.超対称理論の関連では, トリスタンにおいて超対称性を検証する可能性について種々の検討を行った. 超重力理論ではスカラー・トップが特別に軽く, トリスタン領域に存在する可能性が指摘されている. 従ってその性質を調べることは重要であるが, 本課題では軽いスカラー・トップ・クォークの崩壊幅の計算を行い, その結果, 従来のスカラー・トップの崩壊幅の計算にはいくつかの重要な見落としがあることが判明した. そのほか, 超強理論から予想される新しいタイプの相互作用の検証の可能性について検討を行った. また陽子・反陽子衝突器による実験との関連を調べた.
著者
鷹野 和美 横山 孝子 古田 睦美 清水 貞夫 鷹野 和美
出版者
長野大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

異なる社会層からなる地域コミュニティの助け合いのしくみづくりにおける、地域通貨の果たす役割を実証的に研究した。具体的には学生および卒業生からなるNPO組織「学生地域暮らしづくり考房こみっと」の交流施設「縁舎」を拠点都市て、長野大学の学生という若い世代の新住民と、長野大学が位置する上田市下之郷地区において住民の主要な構成要素である65歳以上の老人の組織「双葉会」との交流活動が行われたが、そこにおいて、同NPO団体が発行する地域通貨「イクタル」の導入実験が行われた。1.高齢者、地域住民、学生に対するニーズ調査が行われ、その結果に基づいて交流活動および定期的な「御用聞き訪問」、夏野菜の提供による野菜市、脳いきいきテストなどが「イクタル」を媒介として行われた。2.3年間の実験を通して、地域通貨イクタルの周知度、地域通貨の流通量が増大し、これまで交流のなかった異世代間の交流が促進された。交流活動や脳いきいきテスト、かなひろいなどを通じて、高齢者の引き込むりを予防し、助け合いを行うしくみが模索された。3.3年間の実験を終えて、高齢者が、継続的に若い世代と関わる場合の地域通貨のあり方について、利用者調査から考察をいった。異なる社会層が助け合う地域コミニティの形成に、地域通貨の導入が好意的に受け入れられ、威力を発揮することが実証されるとともに、地域通貨システムの改善点や課題も抽出された。
著者
上原 徹三 清水 由美子 荒井 秀一
出版者
武蔵工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

コンピュータによる自然言語研究で辞書とコーパス(文例集。文法情報を付加したものは特に有用)が重要である。単語辞書には読み・品詞情報の他に概念情報が望まれる。現在の日本語については、概念情報を与える単語辞書と文法情報を付加したコーパスが電子化データとして存在する。しかし、古典文に関してはそのような単語辞書もコーパスも存在しない。そこで、単語辞書とコーパスの整備とその応用に関する機能の試作と実験を行ない次の成果を得た。1.総索引からの品詞タグ付きコーパス変換作成機能の試作とそれによる古典文品詞タグ付きコーパスの試作紫式部日記などの日記文学および伊勢物語などの物語文学に関する市販の総索引から、品詞タグ付きコーパスに半自動変換を行った後、人手による修正で古典仮名文コーパスを完成した。2.品詞タグ付きコーパスによる確率的形態素解析上の古典仮名文コーパスを学習・評価データとする確率的形態素解析の実験と評価を実施した。評価においては、学習データとテストデータを順次ずらした繰返し実験により信頼度を求める等の配慮を行った。3.対訳辞書の見出し語の概念推定法訳語の概念が既知の対訳辞書を用いて、訳語からの見出し語概念の推定とその評価を実施した。本技術は、古語辞典(古典語見出しに対し現代語訳語を与える)による古典語の概念獲得の基礎技術となり得るものである。ただし、古語辞典から古語の概念を取得するという研究開始当初の目的は実現できなかった。これに関しては概念辞書の整備、概念推定法の改良など、さらに検討すべき課題がある。
著者
清水 実嗣 山田 俊治 村上 洋介 両角 徹雄 小林 秀樹 三谷 賢治 伊東 伸宜 久保 正法 木村 久美子 小林 勝 山本 孝史 三浦 康男 山本 輝次 渡辺 一夫
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.389-391, 1994-04-15
被引用文献数
31

ヘコヘコ病発病豚の病原学的検索を行った.その結果,血清と肺よりPRRS ウイルスが,また肺よりMycoplasma hyorhinis(Mhr)が高率に分離された.無菌豚に分離ウイルスChiba92-1株を接種したところ,全葉性の増殖性間質性肺炎が再現され,ウイルスが長期間回収された.肺炎はMhrとの重感染例において重度化する傾向にあった.以上の成績から,わが国にPRRSウイルスが存在し,本病の発生に同ウイルスが関与することが明らかとなった.
著者
清水 康裕 鈴木 亨 才藤 栄一 村岡 慶裕 田辺 茂雄 武満 知彦 宇野 秋人 加藤 正樹 尾関 恩
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.46, no.8, pp.527-533, 2009
被引用文献数
8 16

対麻痺者の歩行再建には骨盤帯長下肢装具が用いられている.装具は,関節の自由度を制限することで立位や歩行の安定を得る.しかし起立・着座の困難や歩行時の上肢への負担が大きく,実生活での使用に限界があった.股・膝・足関節に屈曲伸展自由度と力源を有する歩行補助ロボットWPAL(Wearable Power-Assist Locomotor)を開発中であり,予備的検討として,従来装具であるPrimewalkと比較した.1)対麻痺者3名において,歩行器を用いての起立・着座の自立度と歩行距離を比較した.装具では介助や見守りを要した例を含め,WPALでは3 名とも起立・着座と歩行が自立した.連続歩行距離はPrimewalkの数倍であった.2)練習期間が最長であった対麻痺者1名でトレッドミル上の6 分間歩行における心拍数,PCI,修正ボルグ指数,体幹の側方方向の動揺を比較した.心拍数,PCI,修正ボルグ指数が有意に低く,体幹の側方動揺が有意に少なかった.下肢に自由度と力源を付与したWPALは対麻痺歩行再建の実現化を大きく前進させるものと考えられた.