著者
坂本 知昭 片山(池上) 礼子
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.11-19, 2019-06-01 (Released:2019-06-18)
参考文献数
33
被引用文献数
1 1

サツマイモ「兼六」は塊根にβ-カロテンを含む特徴がある良食味品種で,1930年代に石川県農事試験場で選抜された.苗条および塊根の形態的特徴が「安納いも」のそれらと酷似していたため,「安納いも」5品種・系統と「兼六」の比較を試みた.「兼六」,「安納3号」,「安納イモ4」,「安納紅」,「安納こがね」の成葉はいずれも波・歯状心臓形で,新梢頂葉にはアントシアニンが蓄積し紫色を呈していたが,「安納イモ1」の成葉は複欠刻深裂で頂葉は緑色だった.「兼六」,「安納3号」,「安納紅」の塊根皮色は紅であったのに対し「安納イモ4」と「安納こがね」は白であったが,これら5品種・系統の塊根にはβ-カロテンの蓄積が認められた.一方「安納イモ1」の塊根皮色は赤紫で条溝が多かったほか塊根にβ-カロテンは含まれていなかった.27の識別断片を用いたCleaved Amplified Polymorphic Sequence(CAPS)法によるDNA品種識別では「兼六」と「兼六」を交配親に作出された「泉13号」および「クリマサリ」さらにその後代品種「ベニアズマ」の識別はできたものの,「兼六」と「安納3号」,「安納イモ4」,「安納紅」,「安納こがね」の識別はできなかった.45の識別断片を用いたRandom Amplified Polymorphic DNA(RAPD)法によるDNA品種識別では「兼六」と「泉13号」,「クリマサリ」,「ベニアズマ」だけでなく「安納イモ4」および「安納こがね」の識別も可能となったが,「兼六」と「安納3号」,「安納紅」の識別はできなかった.以上の結果と「安納いも」が戦後の種子島で見出された在来系統であった経緯を考え合わせると,「安納いも」のルーツはかつて全国に普及していたとされる「兼六」ではないかと結論づけられた.
著者
石上 恵一 星野 浩之 武田 友孝 月村 直樹 高山 和比古 青野 晃 大岩 陽太郎 濱田 久 島田 淳 片山 幸太郎 大木 一三
出版者
社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会雑誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.481-487, 1992-06-01 (Released:2010-08-10)
参考文献数
17
被引用文献数
2 2

Recently, sports dentistry has attracted attention as a field of sportsmedicine. Since the stomatognathic system and the systemic condition closely affect with each other, we have studied both of them objectively, physiologically and scientifically.Archery is a sport requiring static concentration of thought, and it seems to be extremely important for this sport to control a basic posture at the time of aiming at a target.This study was carried out for the purpose of obtaining a fundamental data on how a bite raising for vertical position by a resin splint, which maintained stable occlusion, influenced gravity fluctuations in posture at the time of aiming at a target.
著者
尾崎 洋二 柴橋 博資 矢崎 紘― 大塚 孝治 関口 雅行 片山 武司 遠山 潤志 高瀬 雄一 今西 章 丸山 浩― 青山 惇彦 西田 生郎
出版者
東京大学大学院理学系研究科・理学部
雑誌
東京大学大学院理学系研究科・理学部廣報
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.4-17, 1999-03

理学部での40年/尾崎先生送別の辞/東大理学部での40年/矢崎紘一先生を送る/退官にあたって/関口雅行先生を送る/思い出と提言/遠山濶志先生を送る/おせわになりました/今西さんを送る/いろいろあった40年/青山さんを送る
著者
堤 純一郎 片山 忠久 石井 昭夫 西田 勝 北山 広樹
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文報告集 (ISSN:09108017)
巻号頁・発行日
vol.389, pp.28-36, 1988-07-30 (Released:2017-12-25)
被引用文献数
1 1

Passive utilization of natural energy is one of the most reasonable way to improve the urban thermal environment in the warm season. The sea-land breeze is an appropriate energy source for this purpose. Statistical method to extract and express the sea-land breeze component from the wind data and the relation between that and the solar radiation data are described in this paper. The AMeDAS and the SDP data, from 1980 to 1984, in 12 cities which are scattered in the whole country are used. The analysis period, which means the warm season, is fixed on condition that the 7-day moving average of daily mean air temperature is above 20℃. The sea-land breeze axis is decided from the wind rose in the analysis period. The sea-land breeze component means the wind vector component of this axis. Sea breeze hours and land breeze hours are fixed by the average sea-land breeze component at each time. The characteristics of the wind direction and speed in the sea and the land breeze hours correspond to the general nature of the sea-land breeze. The sea-land breeze intensity is defined as the difference between the average sea-land breeze component in the sea breeze hours and that in the land breeze hours. The sea-land breeze stability is defined as the ratio of the sea-land breeze intensity to the sum of the average scalar speed in these hours. The relation between the solar radiation and the sea-land breeze intensity or the sea-land breeze stability is examined.

1 0 0 0 OA 月面環境試験

著者
星野 健 松本 甲太郎 四宮 康雄 片山 保宏 藤原 勉 若林 幸子 岡田 達明 久保田 孝 大槻 真嗣 岩田 隆浩 Hoshino Takeshi Matsumoto Kotaro Shinomiya Yasuo Katayama Yasuhiro Fujiwara Tsutomu Wakabayashi Sachiko Okada Tatsuaki Kubota Takashi Otsuki Masatsugu Iwata Takahiro
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発資料 = JAXA Research and Development Memorandum (ISSN:13491121)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-RM-06-008, 2007-03-30

月の1日は地球の1日=24時間を単位とすると29.5日である。従って、月の昼は14.75日、夜は14.75日となり、月の赤道付近のレゴリスの温度は、昼は120度Cまで上昇し、夜は-180度C以下まで降下すると言われている。月面に軟着陸した探査機やローバが長期間その機能を維持するには、昼間の高温に耐えなければならないのは当然である。加えて、約15日間続く夜間を乗り越え、次の昼には活動を再開しなければならない。さて、現在我々が利用出来る機器は上記の厳しい温度環境に対し、どの程度の耐性を持っているのだろうか。高温側のデータは揃っていると言えるが、-180度Cという低温側のデータはほとんど無いというのが実情である。そこで、温度制御の出来る宇宙環境模擬装置を用いて、高真空の月面まで含めた月面環境試験を実施する事にした。
著者
土井 誠 中野 亮平 石川 隆輔 片山 晴喜
出版者
関東東山病害虫研究会
雑誌
関東東山病害虫研究会報 (ISSN:13471899)
巻号頁・発行日
vol.2017, no.64, pp.113-117, 2017-12-01 (Released:2019-03-01)
参考文献数
11

葉ネギのネギハモグリバエを対象に静岡県の主要産地で使用頻度が高い薬剤及び近年登録された薬剤あわせて8剤について,圃場での散布試験を行った。薬剤処理後のマイン増加数により防除効果を評価した結果,シアントラニリプロール水和剤とスピネトラム水和剤の効果が高かった。また,ネギハモグリバエとネギアザミウマに対する殺虫剤(チアメトキサム水溶剤,クロチアニジン水溶剤,スピネトラム水和剤,クロラントラニリプロール水和剤)と展着剤の加用および気門封鎖型殺虫剤(脂肪酸グリセリド乳剤)の混用による効果の違いを比較した。 両害虫が発生している圃場に薬剤処理したネギ苗を配置し,それぞれの寄生数を比較した結果,クロチアニジンでは一部展着剤で加用による両害虫に対する防除効果の向上が認められた。スピネトラムではネギハモグリバエに対していずれも無加用と差がなく,ネギアザミウマに対しては加用により防除効果が低下した展着剤が認められた。チアメトキサムでは両害虫に対して,無加用と展着剤加用で防除効果に差がなかった。クロラントラニリプロールでは評価対象としたネギハモグリバエに対して無加用と展着剤加用で防除効果に差がなかった。各殺虫剤と脂肪酸グリセリドの混用による防除効果の違いについては,クロチアニジンではネギハモグリバエに対して単用に比べて発生蛹数が有意に少なかったが,それ以外の殺虫剤では両害虫に対して単用と混用との防除効果の差は認められなかった。さらに,ネギハモグリバエを対象に各種展着剤等を加用した時のクロラントラニリプロール水和剤の効果について,室内試験を行った。薬剤処理後の成虫放飼および幼虫期の薬剤処理について試験を行った結果,加用する展着剤および処理時期によって効果が向上するものが認められた。また,本剤と脂肪酸グリセリドの混用では単用に比べ防除効果が向上した。
著者
横田 哲士 中村 浩 多田 弘幸 菖蒲 敬久 片山 聖二 川人 洋介 近藤 勝義 吉田 悟 今井 久志 川上 博士 富沢 雅美 中島 裕也
出版者
一般社団法人 溶接学会
雑誌
溶接学会全国大会講演概要
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.158-159, 2015

溶接における重大欠陥のひとつである割れの発生機構の解明は重要な課題である.大型放射光施設Spring8を用いてX線位相差法による透過観察およびレーザ溶接時における割れの発生過程の撮影を行い,割れの発生速度や割れ発生時に周辺で起こる溶融池の変化について報告する.
著者
池口 主弥 小林 正和 有浦 由紀 森 貞夫 高垣 欣也 石橋 千和 片山(須川) 洋子
出版者
Japanese Association for Dietary Fiber Research
雑誌
日本食物繊維学会誌 (ISSN:13495437)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.12-21, 2005-06-30 (Released:2010-06-28)
参考文献数
24
被引用文献数
1

The effects of young barley leaf powder(YBLP) on defecation frequency and fecal characteristics were studied in 61 healthy volunteers(34.1 ± 10.2 years old). The subjects were divided at random into 4 groups;non-dose control group(CG), low-dose group(LG), middle-dose group(MG), and high-dose group(HG). Total examination period was 4 weeks. After one week as the pre-test period, all groups were given a placebo diet for one week(placebo period). For the following 2 weeks(test period), CG, LG, MG and HG was given a placebo diet(not contained YBLP), a low-dose diet(1.5 g), a middledose diet(4.5 g) and a high-dose diet(6.0 g), respectively. In analysis, the subjects were screened under the condition that defecation frequency was below 7 times for one week of the pre-test period. This result showed that MG increased the defecation frequency and estimated fecal quantity significantly for the test period compared with those for the pre-test period, and HG increased them significantly for the test period compared with those for the pre-test period and placebo period. No clinical signs of toxicity recognized in the test period. These results suggest that YBLP has a fecal bulking effect and is useful for safety food material.
著者
大谷 弘 古田 徹也 一ノ瀬 正樹 片山 文雄 石川 敬史 乘立 雄輝 青木 裕子 佐藤 空 野村 智清
出版者
東京女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

現代のように多様な価値観や情報が溢れる時代においては、我々の実践的文脈を離れた理性の明証性に訴えるような(通俗的な)個人主義的啓蒙思想は説得力を欠く。個人主義的啓蒙思想の理念に訴えるのでもなく、また権威に盲従するのでもなく、我々の実践に根差した形で思考し行為することの意義を徹底的に考える哲学としての常識哲学は、今日ますますその重要性を高めている。本研究の目的は、これまで十分に検討されてこなかったこの常識哲学の展開を哲学と思想史の両面から明らかにし、その洞察と限界を見極めるとともに、それを通して現代の我々が様々な問題について思考する際に常識の果たすべき役割を明らかにすることである。
著者
片山 昇 鈴木 信彦
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第52回日本生態学会大会 大阪大会
巻号頁・発行日
pp.735, 2005 (Released:2005-03-17)

同所的に生育する花外蜜腺をもつカラスノエンドウと花外蜜腺をもたないスズメノエンドウにおいて、アワヨトウ幼虫を用いたbioassayにより化学的防御の強さを推定し、また両種の株上の昆虫群集を比較し、化学的防御とアリ防御による被食防衛の効果を推定した。 スズメノエンドウにくらべカラスノエンドウ葉中のC/N比は低く、アワヨトウ幼虫の摂食活性は高かった。したがって、スズメノエンドウよりもカラスノエンドウでは化学的防御が弱く、葉食性昆虫にとって良的な資源であると考えられた。野外のスズメノエンドウの株上にはほとんどアリはみられなかったが、カラスノエンドウ株上には、アミメアリやトビイロケアリ、クロヤマアリなどのアリ類がみられた。アリがいない場合にくらべ、アリが頻繁に訪れるカラスノエンドウ株上には葉食性昆虫やアリを随伴しないアブラムシの個体数が少なかった。さらにアリはカラスノエンドウの主要な植食者であるアルファルファタコゾウムシの幼虫を排除するため、カラスノエンドウの花外蜜腺はアリ防御の機能を持つと考えられた。しかし、アリの誘引効果はカラスノエンドウ生育地間で大きく異なり、全体の約66_%_のカラスノエンドウにしかアリはみられなかった。アリがいた場合でも、スズメノエンドウにくらべ植物上の植食性昆虫の個体数は多い傾向がみられた。このように被食防衛の側面からみると、他の防衛戦略にくらべ花外蜜腺によるアリ防御は、それほど効果的ではないと考えられた。これらの結果から、カラスノエンドウのアリによる被食防衛の意義について考察した。
著者
榎本 裕治 鈴木 啓介 沖田 誠治 江藤 昂平 片山 英二
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌D(産業応用部門誌) (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.141, no.5, pp.423-430, 2021-05-01 (Released:2021-05-01)
参考文献数
25
被引用文献数
6

We have been studying the application of amorphous metals, which have a significantly lower loss than electrical steel sheets, to motors. Thus far, we have studied simple-shaped iron cores that can be machined only by shearing for radial motors. However, it is considered that the loss can be further reduced if the iron core is entirely made of amorphous metal. Here in this report, we report the results of a trial evaluation of a motor in which an amorphous metal is punched using a press die to form a stator core.
著者
市川 啓之 櫻木 悟 藤原 敬士 西原 大裕 辻 真弘 横濱 ふみ 谷本 匡史 大塚 寛昭 山本 和彦 川本 健治 田中屋 真智子 片山 祐介
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.60-65, 2018-01-15 (Released:2019-03-28)
参考文献数
11

背景:急性冠症候群(ACS)の急性期には,糖代謝異常を認めることが多い.本研究ではACSの急性期に糖負荷試験を行い,糖代謝異常の経時的変化とその機序について検討した. 方法:対象は,ACSで当院に入院した患者のうち,糖尿病既往がなく,心不全などの合併症のない26名.急性期と亜急性期に75 gOGTTを施行し,インスリン分泌能および抵抗性の経時的変化を調査した. 結果:急性期には糖尿病型の割合が46%と多く存在したが,亜急性期には15%に低下した.急性期から亜急性期にかけて,Insulinogenic indexは有意に上昇した(0.50±0.46 vs 0.91±0.78,p=0.003).一方,HOMA-IRには変化がみられなかった. 結論:ACS患者では糖代謝異常が多く存在し,その原因として,インスリン抵抗性よりもインスリン分泌能の低下が大きく関与していると考えられた.
著者
片山 綾 佐伯 大輔
出版者
大阪市立大学大学院文学研究科
雑誌
人文研究 : 大阪市立大学大学院文学研究科紀要 = Studies in the humanities : Bulletin of the Graduate School of Literature and Human Sciences, Osaka City University (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.71, pp.129-142, 2020

「将来のために禁煙して健康な身体を手に入れるか、目の前の煙草を吸うか」といった、将来の目標達成と目先の快楽のどちらを選択するかの問題は、心理学の様々な分野において、セルフ・コントロールの問題として扱われてきた。本稿では、遅延される大きな利得を選択することをセルフ・コントロール、即時に得られる小さな利得を選択することを衝動性と定義し、これまで行われてきたセルフ・コントロール研究を概観する。まず、心理学におけるセルフ・コントロール研究の先駆けである満足の遅延パラダイムに基づいた基礎研究とその応用可能性、さらにそれに関連したセルフ・コントロールの強度モデルについてその概要を説明し、問題点を指摘する。次に、その問題点を解消するために、セルフ・コントロールを行動分析学の観点から扱う意義について考察し、これまで行動分析学で行われてきたセルフ・コントロールに関する基礎研究とその課題について整理する。最後に、それらの課題を踏まえて片山・佐伯(2018)によって新しく提案されたパラダイムを紹介し、基礎研究と応用研究の両方の側面から、今後の展望を述べる。
著者
片山 哲也
出版者
日経BP社
雑誌
日経MAC (ISSN:09188894)
巻号頁・発行日
vol.8, no.8, pp.128-131, 2000-08

Palm機へのアプリのインストールやバックアップは,通常Palm Desktopを使って実現する。しかし,多くのアプリをインストールしたり,後からインストールしたアプリのバックアップをしようとすると,Palm Desktopでは面倒だったりうまく実現できないケースもある。今回は,インストールやバックアップを簡略化/高機能化する便利ツールを紹介しよう。
著者
片山 望 三浦 利彦 本間 優希 石川 悠加
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.DbPI1367, 2011

【目的】<BR> 高位頸髄損傷の長期呼吸管理は、気管切開下での人工呼吸管理となることが多い。しかし、侵襲に伴う合併症が起こり得るだけでなく、様々なADL上のデメリットが生ずる。今回、当院で高位頸髄損傷における気管切開人工呼吸(TPPV)管理から、非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)へ移行した症例を経験したので報告する。<BR>【方法】<BR> 症例は45歳男性。ラグビーの試合中に受傷し、搬送先の病院でC3頸髄損傷(ASIA-A)と診断され、術後も自発呼吸無くTPPV管理となった。第41病日、人工呼吸器離脱と在宅療養移行目的で大学病院へ転院するが、離脱困難。第252病日、長期療養目的で転院。第411病日、気管カニューレによるトラブル、在宅ケアシステム確立困難にて家族・症例の希望と日本せきずい基金からの紹介により、NPPVへの移行目的で当院へ転院。当院よりDr・Nsが迎えに行き、民間航空や障害者移送サービスを利用し搬送となった。当院入院時は自発呼吸無く、C4以下の運動知覚麻痺の完全四肢麻痺。読唇にて意思伝達可能。カフ圧抜くとわずかに発声も可能。吸引時、気切孔からの出血あり。入院当日から気管切開チューブ抜去の準備として、カフ圧・酸素投与量の軽減、SpO2が確保できるように人工呼吸器の機種変更や設定を行った。頭頸部側方から撮影したX-Pで上気道狭窄がないことを確認し、気管カニューレをボタンで塞ぎ、NPPVの条件やインターフェイスの調整を行った。さらに、カニューレ抜去後、上気道の分泌物を喀出する為に器械的な咳介助(mechanical insufflation-exsufflation:MI-E)の導入も行った。<BR>【説明と同意】<BR> 症例とご家族へ事前に本報告の目的と内容を説明し、同意を得た。 <BR>【結果】<BR> 入院5日目、カフ圧なし、気切孔を塞いだ状態で、ナーザルマスクにてNPPV装着。胸腹部の呼吸運動、SpO2の維持を確認して気管切開チューブ抜去。気切孔には皮膚潰瘍治療用ドレッシング材を貼付。抜去直後、SpO2は98~99%(room air)、HR60bpm前後、PtCO2は40~44cmH2Oと安定した。その日の夜にSpO2が80%台まで低下。MI-EとPTによる徒手介助にて、血性粘調痰喀出し、SpO2は正常値となった。しかし、分泌物貯留によるSpO2の低下と呼吸苦が繰り返されるため、病棟NsかPTによる一時間毎と、モニター下でSpO2<95%になった場合にMI-Eを行った。抜管2日目には車いすに乗車し、食事もNPPV下で摂取可能となった。抜去後数日は、MI-Eの回数は平均10回/日と多かったが、抜去後2週間後からは、食事などでムセない限り3回/日で安定。抜去後18日目、気切孔は自然閉鎖。呼吸機能については、(1)肺活量、(2)最大強制吸気量(maximum insufflation capacity:MIC)、(3)咳の最大流量(cough peak flow:CPF)を計測。抜去直後(1)150ml(2)1,000ml(3)0L/min、抜去後2週間後(1)200ml(2)1,500ml(3)75L/minであった。<BR>【考察】<BR> TPPVはカニューレや頻回の吸引による気道の潰瘍、肉芽の形成、感染や気道分泌物の亢進、発声困難や嚥下障害などあらたな合併症を引き起こすことが多い。また、医療的ケアの困難さから、介護者の負担やケアシステムの構築に問題が多い。それらの問題点をNPPVでは回避することができるが、NPPVの安全で効果的な活用には、気道クリアランスの問題が挙げられる。本症例は呼吸筋の麻痺に加えて、約一年間の気管切開による喉咽頭機能の低下があり、徒手的な呼気・吸気介助では、排痰は困難であった。そこで、抜管時には気道クリアランスの維持として、MI-Eと徒手介助を集中的に行うことで再挿管に至らず、NPPVへの移行が可能となった。また、気道確保の手段が確立していることで、経口摂取を試みることができ、数日後には発話も聞き取りやすい程に喉咽頭機能の回復がみられた。本症例のように、痰の自己喀出が困難であっても、気道クリアランスが維持できる手段を確保していれば、高位頸髄損傷はNPPV管理下でも十分なQOLを維持できると考える。今後は、家族へのMI-E指導や、症例に胸郭や肺のコンプライアンスを維持するための深吸気練習の指導、また、呼吸器を使用せずに吸気を行なえる舌咽頭呼吸を獲得することで、人工呼吸器からの離脱が短時間でも可能になれば、食事や入浴などのADL、リスクマネジメントにも有用であり、在宅生活を可能にするケアシステムが構築される可能性も出てくると思われる。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 欧米では神経筋疾患の分野において、NPPVやMI-Eの使用により気道クリアランスを維持することで、気管内挿管の回避や抜管を促進し、QOLの維持、医療コストの削減になるという報告がある。しかし、本邦における理学療法の介入の報告はまだ少ない。本報告は、今後の頸髄損傷の医療的・社会的ケアシステムの構築について意義のある知見を提供できるものと思われる。
著者
石上 惠一 星野 浩之 武田 友孝 月村 直樹 高山 和比古 青野 晃 大岩 陽太郎 濱田 久 島田 淳 片山 幸太郎 大木 一三
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.481-487, 1992-06-01
被引用文献数
16 2

最近,スポーツ医学の一分野として,スポーツ歯学が注目されつつある.これは顎口腔系の状態と全身状態が,密接に影響しあっていることから当教室ではこれらを客観的,生理学的および科学的に探究することを目的とし,検討を行っている.本研究は,その1つとしてスポーツの中で,その種目により静的な基本姿勢,"゜構え"が要求されるアーチェリー競技において,レジンスプリントを装着し,そして咬合させることにより得られた状態とその挙上量の変化とが"的"′を捕らえるときの"構え"の安定性,すなわち重心動揺にどのような影響を与えるかを検討するため,まずその基礎的一資料を得る目的で行ったものである.
著者
田部 浩三 片山 明石
出版者
北海道大學觸媒研究所
雑誌
觸媒 (ISSN:05598958)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.1-6, 1957-02

原報
著者
片山 悠樹
出版者
愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学研究報告. 教育科学編 (ISSN:18845142)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.51-58, 2019-03-01

本稿の目的は、中学校教員の多忙感と子どもに対する理解との関連について、教員を対象とした調査データをもとに検討することである。近年、教員の多忙が社会的に問題視されるようになっており、政策的にもさまざまな対応策が提言されている。一方で、教師研究でも多忙問題は活発に取り上げられ、多忙の背景要因が検討されている。確かに、教員の多忙をもたらす要因にアプローチすることは重要である。しかしながら、多忙「を」招く要因に関心が集中する一方で、多忙「が」招く問題について実証的に検討した研究は必ずしも多くない。こうした認識から、本稿では教員の多忙感が教育活動にもたらす影響についての検討を試みる。具体的には、多忙感が子どもに対する理解(「子ども理解」)への不安にいかに影響するかについて検証する。また、分析に際しては、年齢を分析視点として取り上げる。教員のバーンアウトの研究の文脈では、年齢が重要な要素として取り上げられており、本稿で扱う多忙感と「子ども理解」への不安においても年齢による違いが観察されると想定するためである。分析の結果、教員の多忙感は「子ども理解」への不安を増長させる可能性があると解釈できる。しかも、そうした傾向は、30 代以降で顕著となる。こうした結果に基づき、教員の多忙「が」教育活動にどのような影響をもたらすのかを考察する。