著者
田辺 由幸 中山 貢一
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.124, no.5, pp.337-344, 2004 (Released:2004-10-22)
参考文献数
27
被引用文献数
8 10

肥満は様々な循環器病や糖尿病などの生活習慣病の危険因子であり,その予防と解消は極めて重要である.肥満の解消には,エネルギー需給バランスの改善が第一であるが,一方で,痩身効果を期待した脂肪組織へ局所的マッサージなどは日常的に経験することである.このような脂肪組織の局所的な運動,例えば圧迫,伸展(ストレッチ),揺動などは,組織を構成する脂肪細胞への機械的な力学刺激になり得よう.『脂肪細胞に対して,力学刺激がどのような効果を示すのか?』意外なことに,この疑問について科学的に検証された例はこれまでにほとんど見あたらない.肥満は成熟・肥大化した脂肪細胞が増え過ぎることによる脂肪組織の過形成が原因である.その際には前駆脂肪細胞の増殖・分化と分化後の細胞の脂肪の蓄積による肥大化のいずれもが重要な位置を占めると考えられる.我々は,株化培養前駆脂肪細胞を用いたin vitro脂肪細胞分化系において,ERK/MAP-kinase系が伸展刺激により持続的に活性化されることにより,脂肪細胞の分化に重要な転写制御因子PPARγ2の量が減少し,成熟脂肪細胞への分化が強く抑制されることを明らかにした.この結果は,脂肪細胞に対して力学刺激を与えることの生理的意義として,脂肪組織における脂肪細胞の更新・再生(リニューアル)の抑制を示唆するとともに,既存薬物との併用も含めた力学刺激の生活習慣病への適用の可能性をも期待させるものと考える.
著者
関 奈緒 関島 香代子 田辺 直仁 鈴木 宏
出版者
Japanese Society of Public Health
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.252-256, 2004

<b>目的</b> 成人式における喫煙率調査を試行し,未成年者喫煙防止対策の基礎値把握および長期評価指標としての実用性を考察する。<br/><b>対象および方法</b> 学校・地域保健連携による包括的地域たばこ対策を推進している新潟県 A 村(人口約6,500人)とその近隣の B 町(同12,000人)を対象地区とした。平成14年度に 2 地域の公的行事である成人式に出席した新成人(A 村69人,B 町118人)を対象に,現在の喫煙状況,初喫煙年齢,喫煙常習化年齢(A 村のみ),出身小学校等を無記名自記式アンケートにより調査した。<br/><b>結果</b> A 村の男女別新成人喫煙率は,男性68.0%,女性48.6%,かつその約 9 割は毎日喫煙者であり,喫煙者の 7 割以上が未成年期で常習化を来していた。B 町の新成人喫煙率もほぼ同様の結果であった。なお,高校生を対象とした喫煙率調査のみでは未成年者喫煙率が20%程度低く見積もられる可能性が示唆された。<br/><b>結論</b> 成人式を活用した喫煙率調査は,未成年者喫煙防止対策の基礎値把握および長期評価の簡便な指標として実用可能である。
著者
太田 貴久 南 拓也 山崎 祐介 奥野 好成 田辺 千夏 酒井 浩之 坂地 泰紀
出版者
人工知能学会
雑誌
2018年度人工知能学会全国大会(第32回)
巻号頁・発行日
2018-04-12

本研究では,発明の新たな用途先を探す手法を提案した.提案手法では,はじめに,技術的特徴とそれに対応する効果を抽出する.その後,ユーザが指定した発明と,技術的特徴が類似し,かつ効果が類似しない他の特許を検索する.このような手法によって,発明の新たな用途先を探索する.提案手法に対して実験を行った結果,実際に別用途へ展開された特許の例を再現することでできた.
著者
田辺 義次 赤松 徹 前田 哲哉 岡本 昭二
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.755-759, 1975-10-01 (Released:2012-03-24)
参考文献数
15

本症の報告は少ないが, けつしてまれなものではない。著者らは, 19, 24, 38才の男子例を経験した。臨床像は3例ともほぼ同様で, 軟骨様硬の索状硬結が陰茎包皮の冠状溝への移行部に蛇行状に認められた。性病歴なく, そのほかの既往歴にも本症との関連性が疑えるものはなかつた。また外国の症例で強調されている性交渉との関係は認められなかつた。組織学的特徴はリンパ管壁の肥厚ないし硬化である。肥厚した壁は結合織が大部分を占め, これに浮腫性変化とわずかのリンパ球および組織球が混在している。内腔は壁の高度肥厚のため, また肥厚に加えて内壁に付着した血栓様構造ないしその器質化のため狭小化, ときに閉塞状態になつている。きらに電顕的に内皮細胞を観察し, 光顕像とあわせて硬化性リンパ管炎と考えた。とくに治療せずに経過観察, 6~8週で略治の状態になつた。病名および「異所性モンドール病」について若干の文献的考察を行なつた。
著者
小林 博人 田辺 俊英 鈴木 薫 石崎 宏 井上 久美子 中島 啓雄
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association
雑誌
皮膚 (ISSN:00181390)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.240-244, 1990 (Released:2010-08-25)
参考文献数
10

症例1: 52歳, 女性。瘢痕性類天疱瘡。ニコチン酸アミド800mg/日4週間で口腔粘膜疹は消失, 56日間投与。その後の1年間に粘膜疹の出現なし。症例2: 66歳, 女性。水疱性類天疱瘡。ベタメタゾン3mg/日で水疱は消失。ベタメタゾン1mg/日に減量時よりニコチン酸アミド1000mg/日の併用を開始した。ベタメタゾンを6カ月間で中止, ニコチン酸アミドをステロイド離脱後6カ月間投与した。ニコチン酸アミド中止後の6カ月間に水疱の出現なし。両症例においてニコチン酸アミドによる副作用はみられず, 本療法は両疾患に対して有用な治療法と思われた。
著者
田辺 茂 小林 淳男
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌B(電力・エネルギー部門誌) (ISSN:03854213)
巻号頁・発行日
vol.117, no.7, pp.1024-1031, 1997-06-20 (Released:2008-12-19)
参考文献数
10

We have been developing thyristor valves for high-voltage dc transmission systems for more than 20 years. During this period, the size, power loss and reliability are dramatically improved and one of the technical advancements which support the improvements is to increase the voltage and current rating of thyristors. However when thyristor voltage rating becomes higher than 6kV, increasing the voltage rating does not lead size and power loss reduction of the valve because of turn-off characteristic deteriorations. This paper describes the method which can optimize the thyristor characteristics in such a way that the size and power loss of valves are minimized. Two different approaches for HVDC and back-to-back systems are presented.
著者
田辺 実 常盤 匡 小泉 忠由
出版者
The Japan Society of Mechanical Engineers
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.80, no.817, pp.DSM0274-DSM0274, 2014

The relationship between the elements included in materials and the fire ball obtained by spark test, that is simple, has been examined by using SEM photographing of the fire ball. From experimental results, the kind of steel material could be estimated from fireballs image of SEM. The following contents would be pointed out as the results. The size of fire ball becomes large with the increase in the contained carbon. The size of alloy steels becomes about the double of fire ball of carbon steel. When nickel element is contained in a material, the surface of fire ball shows the delamination. When the many chromium components are contained the size of fire ball becomes large, and many holes occur in the fireball. The presence of molybdenum element in the steel shows the smooth texture at the surface of the fireball. The wrinkles appear at the surface of the fireball by the presence of tungsten element, and the many holes occur in the fireball. Whether the material is ductile or brittle we would be estimated from the pattern of deformation of the hole of the fire ball. The kind of material would be able to distinguish from the qualitative properties of the fire ball.
著者
福田 朋子 松本 高利 田辺 和俊 長嶋 雲兵 青山 智夫
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Computer Chemistry, Japan (ISSN:13471767)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.1-8, 2002 (Released:2003-04-08)
参考文献数
13
被引用文献数
2 1

新規フロン代替物質探査のために、フロン類に特有なC-Fの強い吸収が観測される1500-500cm-1付近の含フッ素化合物44分子の赤外吸収強度とそれらの分子の8種類(C=C, C-C, C=O, C-O, C-H, C-F, C-Cl, O-H)分子内結合数との相関を3層のパーセプトロンタイプニューラルネットワークに学習させ、8種類の分子内結合数の赤外吸収強度への影響を3層パーセプトロン型ニューラルネットワークの入力パラメータの感度解析(パラメータスキャン)[2]と偏微分係数解析[3, 4]を用いて解析した。ニューラルネットワークは、Leave-one-outテストで誤差が10%以下の予測を行うよう学習を行った。感度解析の結果、C=C, C-C, C=O, C-O, C-H, C-F, C-Cl, O-Hの8種類の分子内結合のうち C=O, O-Hが多いと赤外吸収強度が大きくなることが判った。C-Fもその結合数が多い場合は赤外吸収強度が大きくなるが、相対的に少ない場合はむしろ吸収強度を小さくする。C-Oは全く吸収強度に影響を与えない。偏微分係数解析では、C-C, C=O, C-Cl, O-Hの数が大きな吸収強度に寄与することが判った。C-OとC-Fの影響は小さいことが示唆された。両者の結果は不飽和炭素アルコール系より飽和炭素エーテル系のフロンの方が赤外吸収強度の小さな代替フロンができる可能性の大きいことを示唆している。
著者
水川 葉月 前原 美咲 横山 望 市居 修 滝口 満喜 野見山 桂 西川 博之 池中 良徳 中山 翔太 高口 倖暉 田辺 信介 石塚 真由美
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.43, pp.P-6, 2016

ポリ塩化ビフェニル(PCBs)の水酸化代謝物であるOH-PCBsは、肝臓内で薬物代謝酵素より生成され、その後体外へ排泄される。しかしながら、一部の水酸化代謝物は甲状腺ホルモン(TH)と類似の構造をもつため、THの恒常性を撹乱することが危惧されている。これまでに、多様な陸棲哺乳類の血中OH-PCBsを分析したところ、種間でOH-PCBsの組成に差異が認められ、中でも、ネコのOH-PCBs残留パターンは他種と大きく異なることから、本種は特異な代謝機能を有することが示唆された。しかし、ネコの異物代謝能の研究は僅かであり、化学物質暴露による毒性影響も不明な点が多い。本研究では、ネコにおけるPCBs <i>in vivo</i>暴露試験を実施し、体内動態および代謝に関与する酵素活性や遺伝子を解析するとともに、化学物質の暴露評価に繋がる基盤的情報の収集を目的とした。<br>コーン油に溶解した12異性体のPCBsを腹腔内投与し、経時採血した血清中PCBsおよびOH-PCBs濃度について同条件で実施したイヌの<i>in vivo</i>試験と比較した結果、異性体の残留パターンや体内動態にイヌとネコで種差が観察された。とくにネコでは低塩素化体の残留が顕著であった。また、代謝酵素活性および遺伝子解析の結果、PCBs暴露によりEROD、MROD、PROD活性は上昇するものの、第2相抱合酵素(UGTやSULT)活性は変化せず、PCBs暴露による抱合酵素活性への影響もみられなかった。また、<i>CYP1A1</i>および<i>CYP1A2</i>遺伝子の発現量の上昇も認められた。<br> 本研究により、ネコのPCBs吸収・代謝・排泄能はイヌと異なることが示唆され、とくに低塩素化OH-PCBsの毒性リスクは高いことが予想された。低塩素化OH-PCBsは血中でTH輸送タンパクとの競合結合や、THの硫酸抱合排泄の阻害、TH起因性遺伝子の転写抑制などが報告されており、ネコの甲状腺機能障害が懸念される。
著者
森 千与 酒井 隆全 矢野 玲子 田辺 公一 後藤 伸之 大津 史子
出版者
一般社団法人日本医薬品情報学会
雑誌
医薬品情報学 (ISSN:13451464)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.261-269, 2017-02-28 (Released:2017-03-17)
参考文献数
24

Purpose: The purpose of this study is to elucidate the characteristics of adverse events in pregnant women, the offending drugs, and patient backgrounds from reports of adverse events.  We performed a case series study.Methods: We used CARPIS, a database of adverse events and toxication reported in Japan spanning from 1987 to 2014 and created by the Drug Information Center, Meijo University.  We extracted cases of adverse events in pregnant women, their fetuses, and newborns and investigated the age, primary disease, and history of allergies of the women and the intended use of/offending drugs, therapeutic category, and names for adverse events.Result: We collected 434 cases of adverse events in pregnant women, and 251 pediatric cases with adverse events.  The most frequent offending drug in both groups was ritodrine hydrochloride.  The most frequent adverse event in pregnant women was pulmonary oedema due to the administration of ritodrine hydrochloride.  The most frequently reported adverse events in pediatric cases were transient hypothyroidism and withdrawal symptoms in newborns and birth abnormalities in fetuses and newborns, all of which were caused by drugs given for the underlying diseases of their mothers.Discussion: We elucidated serious adverse events in pregnant women caused by the administration of ritodrine hydrochloride.  Frequent factors for adverse events were the onset of physiological factors in pregnant women and complicated factors of the mechanism of action of ritodrine hydrochloride.  We need to monitor both mothers and fetuses during the drug administration.  It is suggested that adverse events in pediatric cases are associated with drugs given for underlying diseases in mothers.  Thus, it is necessary to give appropriate information and communicate the risks of taking these drugs before pregnancy.  We believe the results could be helpful in the early detection of adverse events in the future.