著者
田中 節雄
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.99-110,en232, 1980-09-20 (Released:2011-03-18)

There are two fundamental problems on the socialization in the school. First, the old socialization theory has tried to understand the change of human attitude with the concept of socialization. But has it succeeded? Second, it is said that school is the agency of socialization, but we cannot identify what in the school is the agency of socialization.The task of this article is to understand the socialization from a new point of view, and to make clear what in the school is the agency of socialization. What I state in this article is as follows:1. Socialization is usually regarded as a process. I tried to consider it on two dimensions, “the social relations” and “the change of human attitude as result”.2. By doing so I made clear the difference and the resemblance between education and socialization.3. The old socialization theory has neglected the conflict in the socialization: there is not consensus among all members in the society on what sort of the change of human attitude should be regarded as socialization.4. The old socialization theory neglects the change of the attitude in terms of the gratification of human desires, but it is inadequate.5. In the school the social relations are as follows:(1) The teaching-learning relation(2) The cooperative relations(3) The conditions in which children foresee their class in the future (the anticipatory class relation)6. In contemporary schools the anticipatory class relation regulates the teaching-learning relation and the cooperative relations. Teachers are the gatekeepers. Pupils show various kinds of pathologies.
著者
古川 聡子 河口 勝憲 加瀬野 節子 前田 ひとみ 末盛 晋一郎 通山 薫
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.648-654, 2014-09-25 (Released:2014-11-10)
参考文献数
3
被引用文献数
1

溶血・混濁は測定値に影響を与えるため,血清情報(溶血・混濁)を臨床側に報告することは病態把握および検査値を解釈する上で必要である.しかし,血清情報に関しては各施設任意の判定基準を採用しており,標準化が行われていないのが現状である.そこで,現状把握のため調査を実施した.調査内容はアンケート調査,溶血・混濁の希釈系列を用いたコメント付加開始点の調査(岡山県近隣施設の施設間差と目視判定の個人差)および測定値への影響について行った.アンケート調査では,約7割の施設が自動分析装置で血清情報の測定を行っており,報告形態は定性値の軽度(弱または微)・中度・強度の3段階が最も多く使用されていた.溶血のコメント付加開始点の調査ではヘモグロビン(Hb)濃度40~50 mg/dLでの設定が多く,Hb濃度50 mg/dLにおける測定値の変化はLD:53.0 U/L(+29.7%),K:0.16 mEq/L(+4.2%),AST:2.5 U/L(+10.2%)の上昇であり,その他の項目では影響(変化率:4%未満)は認めなかった.混濁のコメント付加開始点はイントラリポス濃度0.02%前後の設定が多く,イントラリポス濃度0.02%では測定値の変化は認められなかった(変化率:4%未満).また,溶血・混濁のコメント付加開始点は施設間で異なり,目視判定も個人の認識に差があることが明らかとなった.
著者
高野 純 伊集院 俊郎 佐久間 大輔 前田 昌隆 東郷 泰久 小倉 雅 永野 聡 瀬戸口 啓夫 小宮 節郎
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.447-450, 2016-09-25 (Released:2016-12-06)
参考文献数
8

第4.5手根中手関節(以下CM関節)は,第4.5中手骨長軸方向への外力が加わった時に脱臼骨折を起こしやすい.2010年から2015年までの6年間に当院にて治療を行なった第4.5手根中手関節の脱臼骨折は6例であった.そのうち保存治療1例,フォローアップ出来なかった1例を除外し手術を行った4例を対象とした.脱臼骨折の原因として,右尺側Rolando骨折1例,左尺側Bennett骨折1例,有鈎骨体部骨折1例,有鈎骨体部骨折と有頭骨骨折,第3中手骨基部骨折を合併するもの1例であった.観察期間は平均2年8ヶ月(9ヶ月~5年1ヶ月)であった.結果は,整復位は良好で全例に骨癒合が得られた.尺側Bennett骨折や尺側Rolando骨折は優位に握力低下がおこりやすいと言われているが,当院の症例でも尺側Rolando骨折1例で握力低下を認めた.解剖学的正確な整復と手術による強固な固定が必要である.
著者
平野 康之 藤田 佳男 鈴木 浩子 飯島 節
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.705-710, 2010 (Released:2010-11-25)
参考文献数
8
被引用文献数
1

〔目的〕5つの運動機能検査を用いて運動能力に関する自己認識が適切に行えているかどうかの評価(以下適切度)を実施し,転倒との関連について検討した。〔対象〕デイサービス利用高齢者76名とした。〔方法〕日常動作に関連が深い5つの運動機能検査(Functional reach test,立ち上がりテスト,またぎテスト,台昇降テスト,最大歩幅テスト)について対象者自身による予測値と実測値を測定した。得られた予測値と実測値の一致の程度をもとに適切度を評価し,適切評価群と不適切評価群の2群に分類して転倒との関連について検討した。〔結果〕「立ち上がりテスト」と「またぎテスト」に基づく評価では,不適切評価群の転倒経験者の割合が適切評価群のそれに比して有意に多い結果を示した。また,5つの運動機能検査の適切度を総合して判断した評価(以下5P適切度)においても同様の結果を示した。さらに転倒予測指標としての感度と特異度の検討では,単一検査の適切度に比して複合検査による5P適切度の方が感度ならびに特異度ともに比較的良好な値を示した。〔結語〕本研究で用いた運動能力に関する自己認識評価は転倒予測として臨床応用できる可能性があり,単一検査の適切度よりも複合的な適切度を用いる方がより転倒予測精度を向上できる可能性が示唆された。
著者
近藤 久 谷口 節子
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本微生物學病理學雜誌
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.211-219, 1942

京都ハ傅染性牛流産菌ノ汚染地帯ナルヲ以テ, 罹患牛, 汚染牛乳等ニ接觸スル機會多キ牧夫並ニ牛乳處理者間ニハ<I>Bang</I>氏病患者ガ潜在スルニ非ズヤトノ豫想ノ下ニ京都市近郊ノ21牧場116名ニ就キ血清反應試驗ヲ施行セルニ, 豫期ニ反シテ2名ノ感染容疑者ヲ發見セルニ止マレリ.
著者
藤村 節夫
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.587-594, 2001-11-15 (Released:2009-02-19)
参考文献数
44

遊離鉄の量が絶対的に少ない宿主内で, この必須元素を病原細菌がどのように獲得しているのかはシデロフォアを中心に調べられてきた。シデロフォアを持たない細菌の鉄獲得方法についての検討が始められてまだ日も浅く, また分からない点が多いが, その知見は確実に蓄積している。しかし一つの事実が明らかになるとさらに次なる疑問も生まれてくる段階でもある。この稿では歯周病原菌とくに Porphyromonas gingivalis の鉄の取り込み, およびその周辺の若干の知見について紹介する。
著者
山崎 康男 増田 昭夫 清水 節夫
出版者
工業化学雑誌
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.72, no.6, pp.1323-1326, 1969

硫酸存在下でのトルエンとアセトアルデヒド(Baeyer反応,以後B反応と略す)またはアセチレン(Reichert-Nieuwland反応,以後R-N反応と略す)の反応における生成物は,1-(o-トリル)-1-(p-トリル)エタン(OPD)および1,1-ジ(p-トリル)エタン(PPD)であるが,これらの生成比は両反応においてまったく逆になっている。すなわちB反応ではOPD:22%,PPD:78%であるのに対し,R-N反応ではOPD:73%,PPD:27%(反応温度はいずれも15℃)。そこで,この相違がいかなる反応段階にあるかを明らかにするために,反応の中間生成物がB反応ではメチルトリルカルビノール(MTC)類,またR-N反応ではビニルトルエン(VT)類であると考え,各段階にわけて,生成物の異性体組成を測定した。その結果,両反応におけるOPDとPPDの生成比の逆転はB反応ではMTC類,そしてR-N反応ではVT類が生成される段階にあることがわかった。これはR-N反応において,触媒として用いられる硫酸水銀が配向性に対して特異な影響を与えているために生じたものと考えられる。
著者
大竹 伝雄 東稔 節治 久保井 亮一 高橋 保夫 中尾 勝実
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.366-373, 1979-07-10 (Released:2009-10-21)
参考文献数
16
被引用文献数
3 1

液体エジェクターをガス分散器として用いたときの, スロート内の流動状態, 生成気泡径, 槽内ガスホールドアップについて実験的に検討した.スロート内の流動状態は, スラグ流, 環状流, 気泡流, ジェット流に大別でき, これら各領域を気液流量比 G/L 対スロート内液流速 uLT 基準のFroude 数, Fr (=uLT2/gDT) の線図で示した.気泡径分布, ガスホールドアップ εG, 体面積平均気泡径 dBvs の Fr や G/L に対する依存性は, 遷移 Froude 数 Frc を境に大きく変化する. Fr≦Frcのスラグ流-環状流領域では, 気泡径分布の幅は広く, G/Lを増加するとその標準偏差は増加し, εG も同一ガス流量の条件下の気泡塔における値 εG0 と変わらない. Fr>Frc の気泡流-ジェット流領域では, 1~4 mm の小気泡が均一に分散した流れとなり, Frを増加またはノズル-スロートロ径比 DN/DTを減少すると, εG は増加し, dBυs は減少する.各領域における平均気泡径, ガスホールドアップは, Fr, G/L および DN/DT を含む実験式で相関された.
著者
三島 憲一 徳永 恂 木前 利秋 山口 節郎 細見 和之
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

アドルノの後期思想について、当初は『美の理論』『否定弁証法』などの公刊されている著作から出発して検討を開始した。研究期間中にアドルノの書簡集の一部、また50年代、60年代の講義のノートや速記録の公刊が進み、研究に大いに寄与した。それにより、アドルノの後期においては、<限定否定>の概念がデモクラシーの基本的な思考としてますます重要性を帯びてきたこと、一見エリート的な彼の思想が、実は思想の道具化、イデオロギー化を避ける手段であったことが解明され、今後の社会理論のあり方に重要なヒントとなった。また、主観による認識の構成という点で近代の主観性の哲学の推進者であるように見えるカントが、実は<客観の優位>、<物質性>の重要性を意識していたことを述べ、カントの中に密かに形而上学的救済への夢が宿っていることを指摘するアドルノの議論が、彼にとっていかに重要であるかが、カントについての講義録などからも浮かび上がってきた。また、アドルノとハイデガーの同型性と異形性の問題も論じられた。この点は、現代哲学のあり方を考える上で重要な認識であった。また、後期アドルノにとって、アメリカ時代の権威主義的家族に関わる共同作業が、社会学的思考という点で重要な役割を持ち続けたことも、解明された。
著者
赤松 利恵 林 芙美 奥山 恵 松岡 幸代 西村 節子 武見 ゆかり
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.225-234, 2013 (Released:2013-11-08)
参考文献数
24
被引用文献数
2 2

【目的】特定保健指導を受診し,減量に成功した男性勤労者を対象に,減量のために取り組んだ食行動を質的に検討した。【方法】対象者は,栃木県,埼玉県,和歌山県,及び大阪府にある5つの職域健康保険組合が委託した機関において,特定保健指導を受診し,4%以上減量した者に研究協力を依頼した。同意が得られた27名を対象に,インタビューガイドを用いた約30分間の個別半構造化面接を実施した。分析は6ヶ月評価時に実際に4%以上の体重減少があった26名を対象とした。逐語録を作成しグラウンデッド・セオリー・アプローチを参考に分析を行い,本研究では,概念的枠組みの大分類【取り組み方】に分類された食生活に関する内容を食行動と行動技法の観点から,カテゴリ化した。【結果】逐語録から,食行動の観点では,31のサブカテゴリと7つのカテゴリ,行動技法の観点からは,17のサブカテゴリと9つのカテゴリが抽出された。減量成功者の取り組んだ食行動は多様であり,多くの対象者が行動技法を用いて,支援時に立てた目標に取り組んでいた。【結論】減量に成功した男性勤労者は,食行動の実践において行動技法を用いており,その内容は具体的で実行しやすく,勤労者特有のものであった。
著者
長澤 郁子 岩崎 多恵 増田 陸雄 五島 衣子 岡 秀一郎 吉村 節
出版者
昭和大学・昭和歯学会
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.142-145, 2005-06-30 (Released:2012-08-27)
参考文献数
11

静脈内鎮静法の施行時に, フルマゼニルの投与直後に血圧上昇, 頻脈および不穏状態をきたした症例を経験した.患者は59歳女性, 体重60kg.2種類の降圧薬を服用している.静脈内鎮静法下で, 下顎デンタルインプラント埋入手術を施行した.手術終了まで良好な鎮静状態で経過した.手術終了後, 鎮静状態からの回復が不十分だったため, フルマゼニルを0.1mgずつ総投与量0.2mgを静脈内投与した.その直後からめまい, 胸部不快症状を訴え, 血圧と脈拍の急激な上昇と一過性の不穏状態をきたした.約30分後には, 不快症状は緩解し, 発症から1時間後には帰宅可能となった.後日, 既往歴の再確認を行った結果, 精神安定薬の服用中であることが判明し, 今回の不快症状はフルマゼニル投与後の一過性の離脱症状と推測された
著者
若月 温美 中山 節子 冨田 道子 藤田 昌子 中野 葉子 松岡 依里子 坪内 恭子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.53, pp.17, 2010

[目的]<BR>本研究は、社会環境の激変の中で進行する格差社会において、どのように生活経営を考え、暮らしをつくりかえていけばよいのか生活経営領域を中心としたカリキュラムを検討することを目的とするものである。本報告では、セーフティネットをどう構築していけばよいのかを探求する授業実践分析を中心に報告を行う。最後に、授業実践分析結果を踏まえながら、本研究の授業設計やカリキュラムの構築の課題を明かにする。<BR>[方法]<BR>対象校は、千葉県の私立高校(B校)と東京都の私立高校(C校)の2校である。対象学年は、B校1年生、C校2年生である。授業実践時期は、2010年1月~2月である。両校ともに4時間の授業計画で、導入で『ホームレス中学生』<SUP>1</SUP>を教材として用い、そこから住まいに住むために必要なこと(B校)や生きていくために必要なこと(C校)を考察させた。次に、派遣社員やネットカフェ難民の実態をVTRで視聴させ、格差や貧困の問題を身近な課題であることを理解させた。B校の対象者は格差や貧困の問題が自分の生活課題として捉えることが難しいことが予想されたため、VTR視聴後に自分自身の生活設計を考えさせた。両校ともに、最後に社会的排除を生み出す社会構造について解説し、ホームレスやネットカフェ難民、派遣社員などの厳しい生活実態から抜け出すためには何が生活資源として必要なのか、また資源を得るためには何が課題となるのかを考察させた。これらを踏まえて、自分自身の生活資源について考えさせ授業のまとめとした。<BR>[結果]<BR>導入の『ホームレス中学生』を取り上げた授業後の記述内容から、「住むこと」や「生きること」に必要なこととして、B校では、基本的な最低限度の生活を維持するのに必要な「物的資源」に関する内容やお金や仕事など「経済的資源」に関する内容が最も多く記述された。次に人や関係性に関する「人的資源」の内容が多く、具体的な記述としては「家族」よりも「近所の人」や「友達」などの記述が多くみられた。また、「個人の努力や能力、運、夢」など個人の資源や能力の問題として捉える記述も見受けられた。C校では信頼関係、頼れる人、家族、友人、つながりなど「人的資源」が最も多く記述され、続いて知恵、知識、資格などの「能力的資源」、「経済的資源」が続いている。その他、生きる希望、プラス思考などの「精神的資源」など、より多くの種類の資源があげられた。派遣社員やネットカフェ難民の実態については、両校ともに「初めて知った」や「大変だと思った」など驚きの反応が観察され、授業後の感想からは、これらの実態から漠然とした不安を抱きながらも自分の将来についてや仕事を得ることの重要性を客観的に見つめようとする様子が伺えた。社会的排除を生み出す社会構造の把握については、生徒の発達段階やこれまでの記述内容などを考慮し、それぞれ独自に工夫した教材を用いたことが効果的であった。自分自身の生活資源を考えることは、労働や福祉の諸課題、転落しやすい社会をどう変えていけばよいのかなど幅広い議論に発展することが明らかとなった。雇用労働環境が厳しさを増し、高校生の就職や進路も益々深刻な問題となっている中、自分がどうすればよいのかわからず悲観的あるいは消極的な状況に留まり続ける生徒の支援が今後の課題である。<BR>[課題]<BR>カリキュラム全体の課題としては、時間数の確保である。これまでカリキュラムの内容を厳選し、6~8時間計画のカリキュラム試案を提示した。<SUP>2</SUP> 試案を部分的に複数の学校で実施したが、時間数に関わる具体的な課題が見え、カリキュラムのコアを定めることがさらなる課題として明らかになった。<BR><BR>1 田村裕(2007)『ホームレス中学生』ワニブックス、田村 裕(2008)『コミックホームレス中学生』ワニブックス<BR>2 日本家庭科教育学会2009年度例会 分科会5配布資料
著者
藤田 昌子 松岡 依里子 若月 温美 中山 節子 中野 葉子 冨田 道子 坪内 恭子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.63, pp.4, 2011

【目的】構造改革による貧困と格差の拡大、2008年の金融破綻による経済危機は、高校生の修学・進学・就職にも深刻な影響を与えている。近年、若年者の労働や生活の実態は徐々に明らかにされているが、高校生に焦点をあてた調査は少なく、彼らの自立支援のための基礎資料は十分でない。本研究では、労働(アルバイト)、生活時間、生活不安に着目し、高校生の生活と労働の実態を明らかにすることを目的とする。<BR>【方法】山形・東京・千葉・神奈川・兵庫の公立・私立高等学校5校1~3年生622名を対象に、生活と労働に関する質問紙調査を実施した。調査時期は2010年7~10月である。<BR>【結果】4割の高校生がアルバイトを行い(アルバイト禁止校を除く)、その理由は「小遣い」「貯金」「家計補助」「学費」等であった。就労状況は、平日は週3~4日、4時間以上が最も多く、深夜時間帯や休日の8時間以上の就労といった労働基準法に抵触しているケースも少なくなかった。厳しい家庭の経済状況のもと、生活費や学費を稼ぐために長時間働かざるを得ない実態や高校生の雇用環境が明らかになった。こうした実態は、睡眠時間・学校以外での勉強時間に影響を及ぼし、「ストレス」「体調不良」「勉強時間がとれない」といった心身と学業面の問題を引き起こしていた。また、高校生は将来の生活に対して、進学や就職、就職後の経済生活、結婚や子育て、介護に至るまで不安を感じていた。このように貧困・格差は、学費や家計費を補うためにアルバイトを余儀なくされている高校生を生み出し、ワーク・ライフ・バランスに問題を生じさせるだけでなく、彼らの進学・就職、その後の将来に対する不安も助長していた。