著者
三輪 祐仁 夏目 欣昇 若山 滋
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.70, no.593, pp.73-78, 2005
被引用文献数
1 1

This research aims to clarify the expression of architectural space in relation to the daily lifestyle in the Netherlands by studying the themes and elements that appeared in the paintings from the 17th century. It is because the pictures of this time, which can be referred to as having built the foundations genre paintings and be known and described "golden age" the foundations of paintings expression of architectural space, are realistic. We choose four painters (Jan Steen, Pieter de Hooch, Jan Vermeer, Rembrandt van Raijin) and analyze 125 paintings.
著者
井上 正太 若林 尚樹
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.116-116, 2005

本研究では、mp3プレイヤーの曲の検索という操作に着目し、この操作を短期間で習熟することが可能なデザインの提案を目的としている。その手法として、経験・体験で既に行ったことのあるふるまいを利用し操作することのできるユーザーインターフェースを用意し、そこからユーザーが操作方法を推測することにより、新たに操作を覚える必要のない道具を提供する。ここで曲の検索ということから、音に関わるものを探す場面を5つ想定した。CD屋でCDを探す場面/レコード屋でレコードを探す場面/レコード内のひとつの音を探す場面/ギターのチューニングで調律のあった音を探す場面/聴診器で体の中の音を探す場面といったものである。この場面において、音を探している最中に行うナゾル・ズラス・マワスといったふるまいに着目した。それらのふるまいにより実際に操作できるように、タッチパネルなどユーザーの動きに依存した操作を取り入れたモデルを構想し、研究の効果を期待する。モデル実験の結果、本研究の手法は、ユーザーの経験・体験によって斑が生じてしまうため、より多くのユーザーへの対応を考えるためには、新たな工夫が必要だと考えられた。
著者
若尾 良徳
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.47-58, 2004-03-24
被引用文献数
2

本研究の目的は,青年期の自己報告型のアタッチメントスタイルが不安喚起場面での親密な他者との行動に現れるのかを検討することである。自由な相互作用が可能な場面でなく,パートナーの有効性が疑われる分離再会状況において,行動はアタッチメントに関連した組織化がなされ,アタッチメントスタイルとの関連が見られる可能性を検討した。恋愛関係または友人関係にある18組(恋愛関係9組,友人関係9組,男性13名,女性23名)が実験に参加した。参加者の平均年齢は,22.03歳であった。参加者は,不安やストレスを感じた状態で,待合室と称した実験室において,パートナーとの相互交渉および短い分離と再会を経験した.その後,アタッチメントの個人差測定尺度を含むいくつかの質問紙に回答した.彼らの実験室での行動はVTRで撮影され,2名の評定者により評定された.その結果,自由な相互交渉が可能な場面からはアタッチメントに関わる行動の組織化は見られなかった。それに対して,分離再会場面においては,アタッチメントに関連した行動の組織化がなされており,自己報告との関連が見られた。青年のアタッチメントの個人差は,乳幼児と同様に,親密な他者との分離再会における行動に現れることが示された.
著者
弓 貞子 竹内 登美子 若佐 柳子 桑子 嘉美 片桐 美智子
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医療短期大学紀要 (ISSN:09156933)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.35-42, 1993-03-25

この研究は平成3年に行った表記テーマの研究を土台に行ったものである。研究その1の成果に基づき43名の学生に,改良した実習記録用紙を使用させ,学習効果を測定した。又,記述内容の評価には,教員・学生の双方が使用できる同一の評価用紙を作成した。2つの仮説を基に結果を導き出し,次のような結論を得た。1)情報収集部分の学習の良否が,患者の把握や,看護計画の内容の良さを決定するという事が,仮説検定の理論によっても明かになった。2)改良した実習記録用紙の情報部分では,9割の学生が,必要とする内容を記載できていたので,この様式は学習上有効であるといえる。但し,3)に挙げた注意が必要である。3)教員の評価と学生の自己評価の比較では,7割(14項目)に差が無く,3割(6項目)に有意な差が見られた。差のあった項目のうち4項目は情報部分であり,情報が記入されていても,その意味を理解しているとは限らず,指導上注意が必要である。4)合格ラインに達していなかった項目は,「検査及びその結果」・「予測される問題点」の2つであった。今後特に,指導上の工夫が必要である。
著者
若林 敬子
出版者
日本人口学会
雑誌
人口学研究 (ISSN:03868311)
巻号頁・発行日
no.9, pp.59-69, 1986-05-30

中国の人口政策,第1の人口の量をめぐる政策は,晩婚,晩産,少生,稀(出産間隔をあけること)である。今世紀末人口を12億にとどめる目標を目指して,いわゆる"1人っ子政策"が進められ,計画外第2子の出産,多子(第3子以上)率の根絶が当面の課題となっている。1984年春以降,第2子出産の条件が"緩和・拡大"され,1985年9月の第7次5カ年計画および「2000年の中国と就業」研究小組では,2000年の人口を12.5億人前後という"修正"がなされている。第2は,優生をめぐる問題であり,いとこ同士の結婚・ハンセン氏病患者の結婚を禁止している(80年婚姻法)。第3は,農業余剰労働力が今世紀末までは2.5億人以上にもおよぶとされ,"離農不離郷"(離農はしたが離村せず)の新しいタイプの労働者を誕生させつつある。第4は,人口高齢化と年金改革等の問題である。年金・賃金・福祉をトータルに把握し,全国的なあるべき社会保障制度の検討が初められだした。以上のように,本小稿は,中国の最近の人口政策を量,質,移動・分布,高齢化の視点から検討し,かつ各省市の計画出産条例の内容を紹介する。
著者
若倉 正英 岡 泰資 三橋 孝太郎 橋本 孝一 泊瀬川 孚 宮川 孝
出版者
Japan Society of Material Cycles and Waste Management
雑誌
廃棄物学会誌 (ISSN:09170855)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.337-343, 1998-05-30
参考文献数
4
被引用文献数
1

一般廃棄物では収集運搬, 処理過程で少なからぬ事故が発生している。一般廃棄物を取り扱う工程での安全を担保するためには, 危険性の実態を把握することが重要である。廃棄物処理管理技術者協議会では厚生省の協力の下に, 平成4年から8年の間に一般廃棄物処理施設で発生した事故に関するアンケート調査を行い興味のある結果を得た。5年間で400件近くの事故が報告され, その中には32名の死亡者と198名の負傷者が含まれ, 被害額1, 000万円以上の物損事故は30件以上発生した。<BR>カセットボンベなどに起因する火災, 爆発事故が多発し大きな施設破壊と時には人身事故を引き起こしていた。また, 施設の老朽化や処理対象廃棄物の増加, 作業マニュアルの整備の不足は種々な労災事故の原因となっていた。さらに, 新規な処理技術の開発や処理対象物質の多様化が進んで, 混触による中毒や異常反応に伴う爆発など, 事故の形態がこれまで以上に複雑化してくる可能性が示唆された。
著者
小若女 優介 若原 俊彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MoMuC, モバイルマルチメディア通信 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.296, pp.37-42, 2011-11-10

近年のインターネットの普及にともない不正侵入やウイルスなどが社会問題となり,ユーザのセキュリティへの意識が高まり,様々な技術的な対策がとられてきた.しかし,そのような対策を活かすためにはユーザ認証に用いるパスワードに高い強度のものを設定し,運用する必要がある.1人の人間が扱うIDとパスワードの組み合わせはWebサービスの発展と共に増加しており,その全てにこれらの条件を満たすパスワードを設定,運用していくのは非常に難しい.そのためについ強度が低いパスワードを設定しがちである,この問題を解決するため,本論文では携帯電話に内蔵されている非接触ICの"FeliCa"を用いて,ユーザがパスワードを投入しなくても自動的にランダムな認証キーを発生させることで個人認証を行える方式を改良し,その効果を実験的に検討する.具体的な改良点としてはRSA暗号を導入することによる通信内容の保護,電子署名の導入による改竄防止の2点である.これにより改良された認証方式が有効であるか検証するためにプロトタイプを試作し生成される認証キーに偏りがないか,またネットワーク上を流れるパケットを盗聴して悪用できないようになっているか実験により確認を行った.以上の実験結果から本システムの安全性を検証することが出来た.
著者
若山 清香 三宅 正史 若山 照彦
出版者
日本哺乳動物卵子学会
雑誌
Journal of mammalian ova research = 日本哺乳動物卵子学会誌 (ISSN:13417738)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.152-158, 2005-10-01

近年、胚性幹細胞(ES細胞)を用いた再生医療への応用研究が始まっているが、免疫拒絶反応に関する問題は依然として解決していない。そこで免疫拒絶反応の起こりえない、患者自身の体細胞から核移植技術によって作りだされたES細胞の研究に注目が集まってきた。これまでの研究から、核移植で作られた体細胞由来胚性幹細胞(nES細胞)は受精卵由来ES細胞と同様に多能性を持ち、キメラマウスの生殖細胞にも寄与できることが分かっている。また、その樹立効率にはマウスの系統差や性差による違いが認められず、核移植に用いるドナー細胞の由来に依存しないこと、さらにはそのnES細胞の樹立する効率が高いことなども明らかとなっている。しかし、ES細胞とnES細胞がまったく同質なものか吏に検討する必要があると考えられる。本稿ではこれまでに明らかになったnES細胞の特性およびその応用例について紹介する。
著者
尾木 雄貴 大山 航 若林 哲史 木村 文隆
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CNR, クラウドネットワークロボット
巻号頁・発行日
vol.113, no.432, pp.95-96, 2014-02-06

本人確認は,個人情報の保護や不正アクセス防止に重要な問題である.そのため,安全性の高いバイオメトリクスへの期待が高まっている.その中でも署名照合はデータ取得に対する社会的受容性が高いため,数多くの研究が行われている.しかし,それらの多くは単一言語に特化している.本研究では,複数の異なる言語の署名に対して同じ手順を適用し異なる言語の署名に対しても性能が安定した署名照合の手法を提案する.提案手法では,1つのオンライン署名データから2パターンの画像を生成する.各画像から濃度こう配特徴を抽出し,それぞれのマハラノビス距離を求める.得られた2つのマハラノビス距離を新たに2次元特徴ベクトルとし,これをあらかじめ真筆,偽筆の2クラス分類を行うように学習させたSVMで識別する.この手法により,中国語8.87%,オランダ語8.90%の等価エラー率が得られた.
著者
水野 雅之 大宮 喜文 若松 孝旺
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.6, no.10, pp.129-134, 2000
参考文献数
4
被引用文献数
2 2

An interview survey was carried out on the hotel employees concerning the human behavior in a fire at Shirahama. The employees were interviewed about time interval from awaring unusual occurrence to evacuation start. The information obtained by the interview survey was arranged as the figure of the time series. The time axis of the figure refered survey of fire brigade and so on. Further, the figure which indicates the condition of fire, the propagation range of smoke and burnt odor and human behavior in initial fire was developed. As the summarization, it was clear why human evacuation was successful in this hotel fire.
著者
筒井 幸 神林 崇 田中 恵子 朴 秀賢 伊東 若子 徳永 純 森 朱音 菱川 泰夫 清水 徹男 西野 精治
出版者
一般社団法人 日本総合病院精神医学会
雑誌
総合病院精神医学 (ISSN:09155872)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.40-50, 2012-01-15 (Released:2015-08-26)
参考文献数
42

近年,統合失調症の初発を想定させる精神症状やジスキネジア,けいれん発作,自律神経症状や中枢性の呼吸抑制,意識障害などの多彩な症状を呈する抗NMDA(N-メチルD-アスパラギン酸)受容体抗体に関連した脳炎(以下,抗NMDA受容体脳炎と略する)の存在が広く認められるようになってきている。若年女性に多く,卵巣奇形腫を伴う頻度が比較的高いとされている。われわれは合計10例の抗NMDA受容体抗体陽性例を経験し,これを3群に分類した。3例は比較的典型的な抗NMDA受容体脳炎の経過をたどり,免疫治療が奏効した。他の7例のうち3例は,オレキシン欠損型のナルコレプシーに難治性の精神症状を合併しており,抗精神病薬を使用されていた。また,残り4例に関しては,身体症状はほとんど目立たず,ほぼ精神症状のみを呈しており,病像が非定型であったり薬剤抵抗性と判断されm-ECTが施行され,これが奏効した。
著者
若山 清香 岸上 哲士 若山 照彦
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集 第100回日本繁殖生物学会大会
巻号頁・発行日
pp.20106, 2007 (Released:2007-10-17)

私たちは以前に、クローンマウスの体細胞(卵丘細胞)からでもクローンマウスを作出できることを報告した。しかし、クローンマウスの成功率は世代を経るたびに徐々に低下し、たった1匹の6世代目のクローンマウスも食殺され、7世代目以降のクローンマウスを作成することはできなかった。クローン牛の場合は2世代目までと報告されている。しかし、当時のクローンマウスの成功率は1-2%であり、コントロール実験ですら産仔の作出に失敗することがたびたびあり、再クローニングに失敗した原因が、再クローニングには限界があるのか、成功率の低さが原因で失敗しただけなのか結論できなかった。[方法] 近年われわれの研究室ではTrichostatin A(TSA)を培地に加えることによってクローンマウスの成功率を劇的に改善することに成功した。そこでTSAを用いて再クローン実験を再挑戦することにした。最初に1匹のBD129F1(BDF1 x 129/Sv:三元交配)をドナーマウスに選び、2-3ヶ月齢で卵丘細胞を採取して最初の世代(G1)のクローンマウスを作出した。G2以降、同様に繰り返した。[結果] 現在までに7世代目まで生まれており、合計すると100匹以上のクローンマウスが1匹のドナーマウスから生まれたことになる。クローンマウスの成功率は1世代目18.0%、2世代目5.0%、3世代目4.5%、4世代目7.4%、5世代目13.2%、6世代目7.0%、7世代目6.5%であり、世代間でのばらつきは大きいが、世代が進んでも成功率の低下は見られなかった。また、いずれの世代においても体重と胎盤重量、および産直死率は通常のクローンマウスと同程度だった。現在7世代目のマウスは多数生存しており、間もなく8世代目を試みる予定である。[考察] 7世代目までの結果で結論を出すことはできないが、少なくとも現時点では再クローニングによる成功率の低下は見られないことから、クローン作成技術をより向上させることに成功すれば、クローン動物を無限に作り続けることができるようになるのではないだろうか。
著者
若松 茂 関口 修 若松 伸夫 永山 陽一 荒川 新一郎
出版者
放送大学
雑誌
放送教育開発センター研究紀要 (ISSN:09152210)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.151-164, 1995

Experiments on a lifelong learning system were carried out in a rural district in Fukushima prefecture, by an audiovisual learning with video programs of the University of the Air which were followed occationally by the tutoring session at a distance with a 64/128 kbs compressed interactive video via ISDN (INS-Net64). During the course of pedagogical examinations, it was found that the tutoring session at a distance was quite acceptable for students on condition that sound was good, that a statue of teacher as big as lifesize was shown on TV, and that interaction was sought between teacher and students during session. Since the foregoing compressed video via ISDN is cost effective, through this study it appears that practical use of interactive video can effectively be realized in lifelong diatance learning.
著者
若田 忠之 齋藤 美穂
出版者
一般社団法人日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.147-158, 2015-07-01

本研究ではPCCSトーンおよび音楽の調性の変化に伴う高音の変化に着目し,それらの調和関係と印象次元における関係を検討することを目的とした.実験1では音楽刺激として2つの曲を8つの調性に変化させた刺激および色刺激としてPCCSトーンを用いた.被験者は刺激の印象評価を行い,音楽刺激に対する調和色の選択を行った.その結果,音楽の高さと色の明度の間に関連が見られた.そこで,実験2では音楽刺激の音域を拡げた上で再度検討を行った.その結果,色と音楽に共通する印象次元として,力量性因子,活動性因子が見られた.力量性は明度および音の高さと,活動性は彩度と対応することが示された.活動性因子と対応する音楽の属性は本研究からは明らかにすることはできなかった.音楽の印象は主に高音の変化に伴っており,これらは与えられた刺激の中で相対的に評価されていることが示唆された.本研究からは,"cross-modal研究においてPCCSトーンは感覚間のイメージをつなぐ表象として用いることができる可能性が示唆された.
著者
山本美佳 中井寿一 河合由起子 川崎洋 赤木康宏 若宮翔子
雑誌
第76回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, no.1, pp.165-166, 2014-03-11

四輪車より歩道側を走ることが多い二輪車は四輪車と比べ,歩行者との接触等の危険性が高い.そこで本研究では,twitterから歩行者が密集した場所を推測しルート上に提示する,二輪車の安全を考慮したナビゲーションを開発する.具体的には,まずGoogleカレンダーから経由地や目的地を抽出し,これまで我々が開発した通常のルート推薦を行う.次に,GPS情報をtwitterで収集・分析しルート上に提示する.そして,ルート上の交差点付近のツイート同士の畳込み積分値を算出し,交差点上に密集度を大小の円で示す.本提案システムにより,二輪車と歩行者との接触事故等を抑制できるナビゲーションが実現できる.
著者
萩原 早保 早田 典央 久米 愛美 水谷 真康 若山 浩子 多田 智美 中 徹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Ba0963, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 異常筋緊張を伴う脳性まひ児・者(以下CP)は、呼吸機能に問題を抱える場合も多く、呼吸筋や胸郭の運動性を保障するための姿勢選択が必要となる。これまで重症児では伏臥位が推奨されているが、呼吸運動の側面からの研究は少ない。そこで我々は主要な呼吸筋である横隔膜に着目し、先に健常成人の測定結果を第45回日本理学療法学術大会で報告した。今回はそれを発展させ、CPの横隔膜の動きについて姿勢や重症度、運動能力との関連性を明らかにする目的で調査を行った。【方法】 対象は30人のCPで、身長143.0±16.3cm、体重33.0±15.5kg、年齢17.6±4.52歳、男:女=23:7名、痙直型:アテトーゼ型=19:11名、四肢麻痺:両麻痺=22:8名、Gross Motor Function Classification System(以下GMFCS)1: 2: 3: 4: 5=5:3:1:7:14名であった。仰臥位、左下側臥位、伏臥位、右下側臥位、座位で安静呼吸時の右横隔膜移動距離(以下DD)を、超音波診断装置(Medison社製Pico)にて、4.5MHz Convex型Probeによる肋弓下走査法にて横隔膜を同定してMモードでDDを三回測定し、平均値を基礎データとした。運動能力指標としてPediatric Evaluation of Disability Inventory(以下、PEDI)・Gross Motor Function Measure(以下GMFM)を、形態的指標として胸郭変形・側弯・股関節脱臼・Wind-Swept Deformityの有無を調査した。統計処理はMan-Whitney検定、Friedman検定と Scheffe多重比較、Spearman順位相関を用いて行い、有意水準5%で検討した。【倫理的配慮、説明と同意】 倫理審査委員会の承認の下、対象者と保護者には十分な説明を行い、文書による同意を得た。【結果】 対象者全員では姿勢によるDDの差は無かったが、GMFCS1~3(9名)および4~5(21名)ごとに姿勢によるDDの差を比較すると、GMFCS1~3では差が無かったがGMFCS4~5のDDは右下側臥位が左下側臥に比べて大きかった(p<0.05)。また、姿勢別のDD (mm)をGMFCS1~3・4~5の順で示すと、仰臥位12.9±4.2・14.1±5.0、左下側臥位13.3±4.6・12.4±5.0、伏臥位10.5±3.8・16.3±4.5、右下側臥位12.5±4.8・15.2±4.7、座位12.2±4.5・14.6±3.3であり、伏臥位にて1~3より4~5でDDが大きかった(p<0.01)。Wind Swept Deformity、股関節脱臼の有無でDDに差はなかったが、側弯と胸郭扁平では伏臥位にて変形が無い方でDDが大きかった(順にp<0.05, p<0.01)。DDとの間にGMFCSが伏臥位で正の相関r=0.66を(p<0.01)、GMFM・PEDI (セルフケア・移動・社会的機能)が伏臥位で全て負の相関を認めた(順にr=-0.66・-0.67・-0.60・-0.60,全てp<0.01)。【考察】 GMFCS 4~5の重症児のDDにおいて右下側臥位が左下側臥位よりも大きかったが、右下側臥位は他の姿勢と差が無いため、左下側臥位でのDDが他の姿勢に比して小さい傾向にあると考えられる。重症児では体幹筋の支持性が不十分であり、左下側臥位では重力により左方向に流れるように偏倚した肝臓に引かれて右横隔膜の位置が低位化することが考えられる。加えて、重症児故の胸郭可動性の低さや呼吸筋力の弱さも相まって、結果としてDDが少なくなると考えられる。また、GMFCS4~5の児では伏臥位のDDがGMFCS1~3より大きかったが、過去に測定した健常成人男性の安静呼吸時のDDでは姿勢による差が殆ど無く15~20mmであり、GMFCS4~5の伏臥位のDDの平均値16mmはCP全対象者の中では最大である点から、重症児での伏臥位は努力性の呼吸となっている可能性が推察できる。しかし、文献が示す推奨から伏臥位が横隔膜の動きを引き出す姿勢であることも否定できない。側弯や胸郭変形があると伏臥位のDDが小さくなることは、伏臥位で胸郭前面が床に設置する、脊柱のアライメントが床に対して凹面となることから通常でも生じる胸郭・腹部の運動制限が脊柱や胸郭の変形により助長された結果であると考えられる。【理学療法学研究としての意義】 重症CPの呼吸管理には姿勢や胸郭・脊柱可動性への配慮が必要であるが、伏臥位は横隔膜運動を引きだすと同時に努力性呼吸を誘発する可能性も考えられ、より慎重な姿勢選択やその検討が今後必要であることを示唆した点で意義深い。