著者
坂井 裕紀 藤本 徹 池尻 良平
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S43048, (Released:2019-10-31)
参考文献数
13

本研究では,世界の持続可能性を追求する地域人材育成をテーマとし,ゲーム要素を付与したプロジェクト学習が生徒の学習意欲とキャリアビジョンに及ぼす影響を検討した.高校1年男女256名を対象に授業実施前後において質問紙調査を行った結果,本授業を実施した群においては,授業実施前後で生徒の「学習意欲」および「キャリアビジョン」が有意に高いことが示された.これらのことから本授業のようなテーマにゲーム要素を付与したプロジェクト学習は生徒の学習意欲およびキャリアビジョンを高める可能性が示唆された.
著者
金井 洋輔 藤本 貴之
雑誌
研究報告知能システム(ICS) (ISSN:2188885X)
巻号頁・発行日
vol.2016-ICS-185, no.3, pp.1-6, 2016-12-06

この近年,人工知能 (AI) への関心が高まっており,様々な分野でのシステム開発や運用が進められ,様々な商品やサービスに AI 的なメカニズムが組み込まれるようになっている.しかしながら,今日,商品化されている AI を標榜した商品やサービスの多くは本来のコンセプトである 「人間らしさ」 が反映できているとは言い難く,実際に利用をすると 「人工知能」 という言葉によって我々がイメージする 「人間らしさ」 の表現とは程遠い.プログラムやシステムとしては,人間らしい学習機構や意思決定機構を有しているのかもしれないが,実際の利用者感覚としては,それらを 「人気らしい」 と感じることは難しい.本研究では,コンピュータによる 「人間らしさ」 の表現を,いわゆる学習能力をもった自律的な人工知能アルゴリズムによって体現することは困難であると考える.そこで,ある特定の人格を設定し,その人格を自律的な学習能力などを与えることなく,ハンドメイドで 「人工人格 (Artificial Personarity : AP) 」 で構築することで,AI よりもよりも 「人間らしい」 表現をするソフトウェアを提案する.
著者
卜部 厚志 藤本 裕介 片岡 香子
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.117, no.9, pp.483-494, 2011-09-15 (Released:2012-01-26)
参考文献数
24
被引用文献数
3 2

越後平野は,日本海に面した沖積低地で複数の砂丘列が発達している.平野部の阿賀野川流域の沖積層において,複数のボーリング試料の堆積相や構成鉱物の特徴から,約5000年前の沼沢湖噴火によるラハール堆積物の堆積過程を検討した.ラハールによる堆積物は,当時の海岸部では層厚5~8 m程度の軽石質なデルタを形成した.また,決壊洪水イベントによる膨大な量の火砕物は,デルタシステムを急速に前進させ海岸地形を変化させた.このような大規模な火砕物の再堆積作用の解明は,平野の形成過程における影響だけでなく,下流域での火山土砂災害としての予測につながる課題となるものである.
著者
藤本真樹
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.291-299, 2014-10-15

IaaSという単語の普及が示す通り,インターネットサービスを支えるインフラストラクチャは,従来のラック,物理サーバを提供する形から,仮想化されたインスタンスをサービスとして提供されることが一般的になりつつある.一方で,2014年現在,IaaSにも課題はある状況であり,かつ,既存のオンプレミスなインスタンスを多数運用している環境では,単純にIaaSを利用すればよいわけではなく,それぞれの利点,課題を把握した上で,既存のインフラストラクチャを変化させていく必要がある.本論文では,GREEという実際に稼働しているサービスにおける,オンプレミスな環境をどのようにサービスとしてのインフラストラクチャへと変化させていくか,という事例を紹介する.
著者
大谷 清孝 松本 典子 藤本 まゆ 稲垣 瞳 横関 祐一郎 橘田 一輝 開田 美保 狐﨑 雅子 中村 信也 横田 行史
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.798-807, 2016-01-30 (Released:2016-03-16)
参考文献数
18

本邦では同時接種の有害事象および安全性に関する報告が散見されるが, 乳児期のみの検討は不十分である。そこで, 乳児に対する不活化ワクチンの同時接種の有害事象を解明するために検討した。2012年7月から2013年6月の期間において, 不活化ワクチンの皮下接種を施行した生後2か月以上の乳児を対象とした。その対象の保護者に対して, 調査票を配布し, 接種後1週間の有害事象の有無を調査した。対象を接種本数から単独接種群と同時接種群に群分けした。主要検討項目として, 入院を要する重篤な有害事象の有無とし, その他の検討項目として接種児背景, 全身症状と局所症状の有害事象の有無を比較検討した。対象は合計66名, のべ162回であった。調査票の有効回答率は91% (88/97) であり, うち単独接種群は46名で, 同時接種群は42名であった。同時接種の内訳はインフルエンザ菌b型ワクチン (Hib) +7価肺炎球菌結合型ワクチン (PCV7) が14名 (32%) で最も多く, 次いでHib+PCV7+三種混合ワクチンが12名 (27%) であった。全例で入院を要する重篤な全身症状の有害事象は認めなかった。熱型推移では, 単独接種群と比較して同時接種群の方が接種後2日目の体温が有意に高かった (p=0.049)。その他の全身症状および局所症状では, 両群間において有意な差を認めなかった。乳児への不活化ワクチンの同時接種において, 接種2日目に発熱を認めることが有意に多いが, 入院を要する重篤な全身症状の有害事象を認めなかった。
著者
藤本 修平 今 法子
出版者
日本公衆衛生理学療法研究会
雑誌
日本公衆衛生理学療法雑誌 (ISSN:21895899)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.1-13, 2016 (Released:2018-03-16)
参考文献数
20

根拠に基づく医療の実践(Evidence based practice)は、手に入る最良のエビデンス(1本の論文ではなく、エビデンスの総体)に加え、患者の価値観、資源、専門家の経験も考慮し行うものである。最良のエビデンスを系統的に探索し、患者の価値観、益と害のバランスなどから推奨度を決定する診療ガイドラインは、まさにこのエビデンス総体に該当するはずのものである。一方、このエビデンス情報(と専門家の経験)、その情報に対する患者の理解や期待、患者の価値観/希望などをシステム的に共有し、治療の意思決定に反映するShared decision makingは、一方向的な説明に対し同意を得るというInformed consentと対比され、近年世界中で注目されている。しかしながら、理学療法士において診療ガイドラインやShared decision makingの基本的な知識を学ぶ機会は多くなく、臨床現場には反映されていない現状がある。今回は、診療ガイドラインとShared decision makingについて説明し、その可能性について考察する。
著者
藍場 元弘 川東 美菜 河野 友晴 戎谷 有希 藤本 侑希 橋田 誠一
出版者
徳島文理大学
雑誌
徳島文理大学研究紀要 (ISSN:02869829)
巻号頁・発行日
vol.96, pp.45-56, 2018-09-09 (Released:2019-02-20)
参考文献数
18

【目的】食後高血糖は放置すると糖尿病を発症しやすく,心血管疾患のリスクとなるため,早期に改善しなくてはならない。食後血糖値の上昇は食品の食する順番によって抑制できることから,簡便な指導法として広く導入されてきた。そのため本論文では,より効果的な食べる順番について検討を行った。【方法】 健康な学生を対象とし,ご飯,タンパク質,野菜を用い摂取内容を変え実施した。摂食後,血糖値と尿中インスリンを測定し,食べる順番の効果を評価した。 【結果】野菜やタンパク質をご飯より前に摂取することにより血糖上昇の抑制がみられた。また,尿中インスリン量はタンパク質の摂取により増加し,野菜の摂取も尿中インスリン量が増加傾向となった。 【結論】タンパク質を多く含む食品や野菜をご飯の食べる前に摂取することにより,食後高血糖が抑制されることが示された。また,炭水化物以外の摂取でもインスリンの分泌が増加する可能性が示唆された。
著者
小山 耕平 熊原 康博 藤本 理志
出版者
地理科学学会
雑誌
地理科学 (ISSN:02864886)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.1-18, 2017-04-28 (Released:2018-08-19)
参考文献数
29

We examine characteristics of the stone monuments related to flood or debris flow disasters in Hiroshima prefecture based on official records of the past disasters, results of a field survey, and interviews with inhabitants living near the monuments.As a result, there are at least 40 monuments in Hiroshima prefecture in memory of 14 major disaster events dating from AD1831. Most of the monuments are distributed in and around the damaged area. There are located in local community centers, temples, and shrines, where the local people visit frequently.The contents of the inscriptions built during and before World War II, have had plentiful information related to the process of building the foundations of the monuments, and the details of disaster damage and restoration work. The contents inscribed on those monuments built after the war, have mainly implied sentiments about rest for the souls of disaster victims or memorial of restoration work.In conclusion, these monuments have the potential to inform local people about the exact area affected and the situation of past disasters for a long time. There are few cases where local people use the monuments for disaster prevention activities. Although there are currently few cases where local people use the monuments for disaster prevention activities, doing so would definitely prove to be advantageous.
著者
米谷 雄介 後藤田 中 小野 滋己 青木 有香 宮﨑 凌大 八重樫 理人 藤本 憲市 林 敏浩 今井 慈郎 最所 圭三
出版者
国立大学法人 情報系センター協議会
雑誌
学術情報処理研究 (ISSN:13432915)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.54-63, 2018-09-19 (Released:2018-09-10)
参考文献数
20

日本年金機構に対する標的型攻撃(2015年6月)では多数の個人情報が流出し,香川大学(以下:本学)の医学部附属病院でも,同様の攻撃によって端末1台がウイルスに感染するインシデントが発生した.本学では,こうした事例に基づき,2016年度に,情報セキュリティ対策の強化の一環として,構成員(特に教職員)による標的型攻撃メール対応訓練を導入した.これに続き,香川大学情報セキュリティインシデント対策チーム“KADAI CSIRT”(以下:本CSIRT)を発足させ,訓練・教育・注意喚起・報告受付の各業務を組織化し,攻撃に対する本学の潜在的課題やCSIRT活動の課題を探るべく調査を実施してきた.本論文では,標的型攻撃メール訓練に対する構成員から得られた主観的評価等のデータに基づきCSIRT構築過程を詳述する.
著者
鳥本 一匡 國安 弘基 藤本 清秀 三宅 牧人
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

【実験Ⅰ】目標は「膀胱における尿再吸収を制御する生理的条件の検討」であった。①「尿組成の影響」:生理的浸透圧を大きく超える塩化ナトリウム溶液やブドウ糖液は、再吸収を促進しなかった、②膀胱壁伸展の影響:機能的容量以上で再吸収が始まり、約200%までは容量依存的に吸収量が増加した、③体水分の影響:検討できなかった。結果は予想通りであり、Na+イオン吸収量に依存して膀胱腔内の液量は減少した。【実験Ⅱ】目標は「膀胱に発現するclaudinサブタイプの確認」であった。生理食塩液による膀胱伸展により、claudin-3, -6, -11の発現が増加することを確認した。また、追加実験において同様の刺激により、aquaporin-2の発現が増加することを確認した。さらに、RNA干渉によりaquaporin-2の発現を抑制することで、膀胱での再吸収が抑制されることを突き止めた。【Neurourology and Urodynamics受理済み論文の詳細】ラット膀胱を生理食塩液 1.0mLで3時間伸展すると、aquaporin-2の発現が大きく促進されてNaイオンとともに水が膀胱壁より吸収される。aquaporin-2の発現を抑制すると、水およびNaイオンの吸収量が大きく減少する。aquaporin-2は主に尿路上皮に発現しており、組織学的にも再吸収に関与していると考えて矛盾しない。わずか3時間の過程で再吸収に関わる遺伝子および蛋白の発現変化は予想していなかったことであり、再吸収機構を検証する上で非常に興味深い知見である。
著者
森勢 将雅 藤本 健 小岩井 ことり
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.1523-1531, 2022-09-15

本論文では,統計的歌声合成に向けた日本語の歌唱データベース(以下ではデータベースをDBと呼称する)を構築した結果について報告する.歌唱DBは歌声のジャンルを統一して構築することが望ましく,著作権上の問題を勘案し,従来は著作権の切れた童謡が用いられてきた.一方,2019年に改訂された著作権法第三十条の四に基づき,利用条件に制約があるものの,既存の楽曲を用いた歌唱DBを研究者向けに公開する動きもある.本研究は,さらに利用条件を緩めるため,従来の歌唱DBと同程度の規模ですべてオリジナルの楽曲で構成される新たな歌唱DBを構築する.構築する歌唱DBでは,音高,音高遷移,音符の長さや,日本語で出現するモーラを幅広くカバーすることで,様々な楽曲の合成に対応できることを目指す.既存の歌唱DBと比較してカバーするモーラの種類が多いことを確認し,エントロピーによる評価では,全項目で最高値ではないものの,良好な結果を達成した歌唱DBであることが示された.
著者
外村 香子 藤本 雷 奥田 英右 井庭 憲人 坂本 幸子 小杉 笑 岸田 寛子 松尾 裕彰 片岡 葉子
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.48-53, 2019 (Released:2019-02-20)
参考文献数
21

症例は16歳男性,高校生.昼食後の体育の授業中に突然,全身に膨疹,掻痒感,呼吸困難が出現した.昼食の食材について皮膚テスト,血清検査,誘発テストの順に原因検索をおこなった.プリックプリックテストではブラックタイガー(生及び加熱),バナメイエビ(加熱)に陽性,抗原特異的IgE(ImmunoCAP®)はすべて正常範囲であった.アスピリン内服下エビ(ブラックタイガー,加熱)摂取後運動負荷試験により強いアナフィラキシー症状を呈し,エビの食物依存性運動誘発性アナフィラキシー(food-dependent exercise-induced anaphylaxis:以下,FDEIA)と診断した.さらに抗原解析により,本症例は40kDaタンパク質が原因抗原と考えられ,それをfructose1,6-bisphosphate aldolase(以下,FBA)と同定した.エビのFDEIAの診断において,現時点では病歴の確認と生・加熱双方を用いたプリックプリックテストが有用であり,抗原特異的IgEの精度は低い.今後原因抗原を明らかにし,コンポーネントアレルゲンを用いた抗原特異的IgE検査の開発が望まれる.
著者
藤本 徹 荒 優 山内 祐平
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.43027, (Released:2019-09-10)
参考文献数
35

近年の大規模公開オンライン講座(MOOC)の進展により,世界規模で受講者を集めるグローバルなオンライン教育プラットフォームが普及した.その一方で,学習意欲の向上や継続的な学習支援の仕組みの不足が指摘されている.本稿では,MOOCの学習支援の手法としてゲーミフィケーションに着目し,MOOCのコースデザインにゲーミフィケーションを取り入れた先行研究をレビュー調査した結果をもとに,ゲーミフィケーションの構成要素やそのコースへの導入のための基本的なモデルや理論的枠組みの研究動向を検討した.MOOCのコースデザイン上の課題に対し,ゲーミフィケーションを試行的に取り入れた研究が見られ,デザインフレームワークを体系化する取り組みも見られるが,ポイントやバッジなどの実装しやすい要素の導入が多いことが確認された.
著者
石田 慎也 藤本 淳也 松岡 宏高
出版者
大阪体育大学
雑誌
大阪体育大学紀要 (ISSN:02891190)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.52-60, 2007-03

本研究の目的は、スカイマークスタジアムと大阪ドーム間のオリックスバファローズの試合観戦者比較によって、プロ野球球団のエリアマーケティングを行うための基礎資料を明らかにすることであった。調査は、2005年8月13日にスカイマークスタジアムで行われたプロ野球球団のオリックスバファローズの試合と、2005年8月20日に大阪ドームで行われたオリックスバファローズの試合で行った。スカイマークスタジアムと大阪ドーム間で比較分析が行われた。有効回答はそれぞれ505部(93.7%)と486部(99.0%)であった。今回の結果から、それぞれの地域における観戦者の異なる特性が見られた。エリアマーケティングの応用と、スポーツマーケターのそれぞれの地域における観戦者の異なる特性の理解を高めるための示唆が討論されている。
著者
平井 啓之 本多 清志 藤本 一郎 島田 育廣
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.296-304, 1994-04-01 (Released:2017-06-02)
参考文献数
12
被引用文献数
2

音声の基本周波数(F_0)の変化に伴う喉頭軟骨の位置変化を観測して、F_0調節の生理機構を考察した。F_0上昇の生理機構は主に輪状甲状筋の活動によって行われることがよく知られているが、F_0の下降については輪状軟骨の弛緩だけでは説明できない問題があり、現在でも明らかにされていない。本研究では、F_0下降の生理機構の理解を目標として、磁気共鳴装置(MRI)を用いて約1〜1.5オクターブのF_0範囲で持続発声を行ったときの喉頭の正中矢状断面の撮像を行った。複数の被験者の断層像より喉頭周囲構造の輪郭を抽出した。結果、F_0の昇降におおむね従う喉頭の上下動などの形態変化が観測された。F_0下降においては喉頭の下降に伴い輪状軟骨が回転する現象が観測された。これは声帯を短縮させる方向への回転であり、輪状軟骨の後板が頚椎の自然湾曲に沿って移動する結果生ずるものである。F_0下降に伴う喉頭下降の現象や外喉頭筋の活動の理由はこの生理機構により説明できると考えられる。