著者
近藤 好和
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.277-285, 2012-09

室町時代には将軍が朝廷儀礼に参加するようになったために、公家と武家との身分に対する意識や儀礼体系の相違に基づく矛盾が表面化し、武家側の圧力で武家側の論理が優先されて、公家の先例・故実が改変されることがあった。本報告では、そのことを端的に示す事例として、『建内記』応永二十四年八月十五日条を取り上げた。その日は石清水八幡宮寺最大の祭礼で、公祭として朝廷儀礼に準じられる放生会当日であり、その放生会に、室町幕府四代将軍足利義持が朝廷儀礼の責任者である上卿として、『建内記』記主である万里小路時房が上卿の補佐役である参議として参加した。そのために、武家側の論理が優先されて、時房は不本意ながらもいくつかの先例・故実の改変を余儀なくされた。それが時房の心情とともに上記『建内記に具体的に記されており、その各事例を紹介・分析することで、公家と武家との儀礼に対する意識の相違やその背景を探った。同時に今回の先例・故実の改変は、のちにはそれが先例として踏襲されており、かかる先例・故実に対する態度の柔軟性も公家の儀礼の特徴である点を指摘した。
著者
久保田 壮一 荒川 紀子 和田 光俊 近藤 裕治 小久保 浩 山崎 匠
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.69-76, 2006 (Released:2006-05-01)
参考文献数
9
被引用文献数
5 5

JSTが運営する電子ジャーナルサイトJ-STAGEのリンク機能を担うJSTリンクセンターが関係する新機能を2つ紹介する。1つはJ-STAGE上の論文本文を検索エンジンGoogleやGoogle Scholarで検索できるようにクロールさせる機能,もう1つは論文間の被引用関係表示を行う機能である。これまでJ-STAGE記事内同士の被引用関係は実現されていたが,2005年5月からCrossRefのForward Linking機能を利用して,J-STAGE外の記事からの引用関係を取得し,これを被引用リンクとして表示することができるようになった。
著者
田原 淳子 真田 久 嵯峨 寿 近藤 良享 建石 真公子 舛本 直文 師岡 文男 來田 享子
出版者
国士舘大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

オリンピック競技大会を招致する上で、国際オリンピック委員会(IOC)から求められる諸条件と評価される点について最近の動向を明らかにした。さらに、日本における過去のオリンピックの招致活動をその後の状況を含めて検証し、問題点と評価される点を明らかにした。将来のオリンピック競技大会を招致、開催するにあたり、重視すべき観点は、環境・人権・教育の3 点に集約された。
著者
近藤 博之
出版者
Japanese Association For Mathematical Sociology
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.161-177, 2011

本稿では,ブルデューが『ディスタンクシオン』において行った社会空間分析を日本のデータに対して適用し,とくに社会空間の「交差配列」構造と日常的活動および意識空間との「相同性」に焦点を当てて,ブルデューのモデルの妥当性を吟味した.多重対応分析(MCA)による検討の結果,社会空間の構造についても,日常的活動および意識空間との相同性についても,「資本総量」の分化軸は明瞭なものの,「資本構成」のタイプによる差異はそれほど明瞭でないことが明らかとなった.これらの分析を通して,日本の社会空間の特徴とともに階層研究における社会空間アプローチの有効性が示された.
著者
山本 眞一 近藤 誠 横田 利久
出版者
筑波大学大学研究センター
雑誌
大学研究 (ISSN:09160264)
巻号頁・発行日
no.25, pp.59-159, 2003-03

皆さん、こんばんは。それからこの衛星回線を通じてご覧になっておられます広島大学、それから愛知教育大学、山形大学、そしてまた、筑波大学のつくば地区の皆さん、こんばんは。今日はそういうことで、ここに今多数の方がいらしていますが ...
著者
神林 崇 今西 彩 富永 杜絵 石戸 秀明 入鹿山 容子 韓 庫銀 木村 昌由美 近藤 英明
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.503-507, 2021 (Released:2022-04-28)
参考文献数
7

Even though we are currently in the midst of pandemic from coronavirus infection, the new influenza (H1N1) epidemic in 2009–2010 was unforgettable. Concurrently with the H1N1, narcolepsy surged in post–affected children in China. In Northern Europe, narcolepsy surged in children after H1N1 vaccination. Although there were many cases of H1N1 in Japan, there was no change in the incidence of narcolepsy because anti–influenza drugs prevented the disease from becoming more severe and the vaccine did not contain an adjuvant. It has recently become clear that the Spanish flu that prevailed about 100 years ago was also H1N1. Economo's encephalitis lethargica, which was prevalent at the same time, is thought to be autoimmune encephalitis rather than H1N1–induced influenza encephalitis. It has been reported that Economo's encephalitis caused damage to the hypothalamus, including the orexin system, resulting in lethargic symptoms.Since the 2010s, the number of patients with neurodevelopmental disorders (ADHD, ASD) has been increasing among the patients who complain of hypersomnolence. Consideration of the course of symptoms revealed that the patient was originally below the threshold of the diagnostic criteria for neurodevelopmental disease, that hypersomnolence occurred from around adolescence, and that the case also met the criteria for neurodevelopmental disease. Although hypersomnolence was not noticeable in early childhood and inattention was the main symptom, the diagnostic criteria were not met. Hypersomnolence, on the other hand, increased from around adolescence, was added, and attention deficit was exacerbated. Therefore, it is considered that there are many cases that satisfy both the diagnosis of ADHD and central hypersomnia. ADHD characteristics such as attention deficit, hyperactivity, and poor impulsivity may be observed in children who have recovered from Economo's encephalitis and are called post–encephalitis behavioral disorders. The pathophysiology of Economo's encephalitis is presumed to be a disorder of the hypothalamus, including the orexin system, but it is possible that the disorder remained even after recovery.We believe that impaired attention, and restlessness caused by the hypersomnolence in neurodevelopmental disorders can be explained by dysfunctions of the orexin system and its arousal system. H1N1 morbidity may trigger neurodevelopmental disorders accompanied by hypersomnolence.
著者
山内 敏正 神谷 英紀 宇都宮 一典 綿田 裕孝 川浪 大治 佐藤 淳子 北田 宗弘 古家 大祐 原田 範雄 幣 憲一郎 城尾 恵里奈 鈴木 亮 坊内 良太郎 太田 康晴 近藤 龍也 日本糖尿病学会コンセンサスステートメント策定に関する委員会
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.91-109, 2020-03-30 (Released:2020-03-30)
参考文献数
158
被引用文献数
1

「糖尿病診療ガイドライン」は,エビデンスに基づく糖尿病診療の推進と糖尿病診療の均てん化を目的とし,3年ごとに改訂され刊行されている.「糖尿病診療ガイドライン」の策定は然るべきプロセスを踏まえる必要があり,糖尿病診療に必要なアップデート事項を毎年ガイドラインとして刊行することは困難である.そこで,日本糖尿病学会として,今後はアップデート事項を適宜コンセンサスステートメントとして刊行していくことを決定した.そのため,日本糖尿病学会理事会の下に,事務局長,事務局長代行並びに幹事からなる「コンセンサスステートメント策定に関する委員会」を設置し,本委員会が中心となって,アップデートの必要なテーマの選択とその執筆者を選び,理事会の承認を得た後に執筆を行った.本コンセンサスステートメントについては,全理事が査読者を務めた.また,他学会ガイドラインとの整合性の観点から,関連学会に外部評価もお願いした.本コンセンサスステートメントは,我が国における糖尿病診療に関する考え方について,テーマごとにできうる限り新しいエビデンスを含め,我が国の専門家間でのコンセンサスが得られた見解を取り纏めたものとご理解いただき,最善の糖尿病診療を行う上で活用していただきたい.糖尿病患者数は世界のどこよりも急速にアジア地域で増加しており,世界の糖尿病人口の3分の1はこの地域に集中していることから,我が国からコンセンサスステートメントをタイムリーに示していくことは,極めて重要な意義を有することと考えられる.今後,英語版の刊行も予定している.今回は,その第1報として,「糖尿病患者の栄養食事指導」をテーマにコンセンサスステートメントを作成した.我が国における糖尿病患者に対する栄養食事指導の考え方やその指導について,アップデートが必要なフォーカスすべき4つの内容(目標体重および総エネルギー摂取量の設定,炭水化物の摂取量,タンパク質の摂取量,管理栄養士による栄養食事指導)で構成している.主に糖尿病の管理を目的としたものであるが,タンパク質の摂取量においては,糖尿病性腎症やサルコペニア,高齢者の場合に関しても言及している.コンセンサスステートメントは,今後も糖尿病診療について適宜アップデートが必要なテーマを選び,できうる限り最新のエビデンスを盛り込みながら定期的に刊行していく.コンセンサスステートメントが,我が国での糖尿病診療の向上に貢献することを期待するとともに,新しいエビデンスを加えながら,より良いものに進化し続けていくことを願っている.
著者
近藤 一博
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.828-833, 2014-09-01 (Released:2017-08-01)

現代はストレス時代といわれ,ストレスの蓄積状態である「疲労」による,うつ病や自殺が増加している.このような状況を打開するためには,疲労のメカニズムの解明や,疲労を客観的に測定して予防することが必要となる.われわれはこの目的のために,人の意思では変化しない疲労のバイオマーカーを検索し,唾液中に放出されるヒトヘルペスウイルス(HHV-)6による疲労測定法を開発した.HHV-6は突発性発疹の原因ウイルスで,ほとんどの人の体内でマクロファージと脳内アストロサイトに潜伏感染している.マクロファージで潜伏感染しているHHV-6は,1週間程度の疲労の蓄積に反応して再活性化し,唾液中に放出される.このため,唾液中のHHV-6の量を測定することによって中長期の疲労の蓄積を知ることができた.脳の前頭葉や側頭葉のアストロサイトに潜伏感染しているHHV-6も,ストレス・疲労によって再活性化が誘導されると考えられる.われわれは,脳での再活性化時に特異的に産生される,HHV-6潜伏感染遺伝子タンパクSITH-1を見い出した.SITH-1発現は,血液中の抗体産生に反映され,血中抗SITH-1抗体を測定することによって,脳へのストレスと疾患との関係を検討することが可能であった.抗SITH-1抗体陽性者は,主としてうつ病患者に特異的にみられ,抗SITH-1抗体がうつ病のバイオマーカーとなることが示唆された.ヘルペスウイルスの再活性化の指標となる抗体のavidity indexを指標にヘルペスウイルス再活性化と精神疾患との関係を検討した.この結果,ストレスによって誘導されると考えられる単純ヘルペスウイルス1型の再活性化の亢進は,アルツハイマー病の前段階である健忘型軽度認知機能障害と関係することがわかった.これらの現象は,心身相関にはヒトそのものの因子の他に,体内に潜伏するヘルペスウイルスも関連し,社会的ストレスとともに複雑な因果関係を形成していることを示すものと考えられた.
著者
大井 裕子 小穴 正博 林 裕家 相河 明憲 山崎 章郎 石巻 静代 鈴木 道明 近藤 百合子 山本 美和
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.346-350, 2009 (Released:2009-12-30)
参考文献数
12
被引用文献数
13 5

緩和ケア領域で経験する頭頸部がんや各種がんの皮膚転移, 非切除乳がんなどの体表部悪性腫瘍の出血に対しては, 有用な方法がなく止血に難渋していた. 今回われわれは, 中咽頭がん再発病巣から出血を繰り返し, 1日に5回前後の包交を必要としていた患者に対して, Mohsペーストを使用することにより著明な止血効果と滲出液やにおいの軽減が認められた症例を経験したので報告する. Mohsペーストは, 安価な材料を用いて院内調製が可能であり, その作用機序は主成分の塩化亜鉛が潰瘍面の水分によりイオン化し, 亜鉛イオンのタンパク凝集作用によって腫瘍細胞や腫瘍血管, および二次感染した細菌の細胞膜が硬化することによる. 本症例においてMohsペーストは, 予後の限られた患者が出血や滲出液, においに悩まされることなくQOLを維持するために効果的であった. 今後, 製剤の安定性や使用方法が確立され, 本法が普及することが期待される. Palliat Care Res 2009; 4(2): 346-350
著者
近藤 正一 早瀬 幸彦 麓 和善 若山 滋
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.61, no.488, pp.203-210, 1996-10-30 (Released:2017-02-02)
参考文献数
11

We surveyed "Shinsenju", "Shinsansui", "Ginpa", and the other remained buildings of Nakamura Yukaku, in order to analyze the characteristics of city planning and modern architecture in the age of Taisho to Early Showa which germinate modern urban thought. The urban planning is modernistic although follow basic urban structure of historic Yukaku, in consideration of anti-disaster, hygiene, etc. The floor plan of almost all buildings is typed 3 patterns according to functional matters on urban planning. "Shinsenju" and "Shinsansui" which are Japanese style have adopted western style everywhere, while "Ginpa" which is western style have been sukiya style at the interior.
著者
近藤 稔 川村 淳也 寺内 伸雄
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌D(産業応用部門誌) (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.126, no.2, pp.168-173, 2006 (Released:2006-05-01)
参考文献数
10
被引用文献数
3 10

Performance tests are carried out to demonstrate the superiority of a permanent magnet synchronous motor to an induction motor as a traction motor for high-speed train. A prototype motor was manufactured by replacing the rotor of a conventional induction motor. The test results show that the permanent magnet motor is lighter, efficient and more silent than the induction motor because of the different rotor structure.
著者
荒井 一樹 松浦 大輔 杉田 翔 大須 理英子 近藤 国嗣 大高 洋平
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11245, (Released:2017-07-19)
参考文献数
17

【目的】延髄外側梗塞患者において自覚的視性垂直位(以下,SVV)と静止立位バランス,歩行非対称性の関係を検討する。【方法】Body lateropulsion(BL)を呈する延髄外側梗塞患者9 名において,SVV 値と立位重心動揺計の総軌跡長,矩形面積,足圧中心左右偏位および加速度計より算出した歩行非対称性との関係をSpearman の相関係数を用いて検討した。【結果】SVV 値は平均7.4(SD:9.5)度であった。SVV 値と開眼足圧中心偏位とは相関しなかったが,閉眼足圧中心偏位と相関を認めた(r = 0.75, P < 0.05)。また,SVV 値の絶対値は歩行非対称性と有意な相関を認めた(r = –0.78, P < 0.05)。【結語】BL を呈する延髄外側梗塞患者において,SVV 偏位は閉眼の静止立位バランスと歩行非対称性と関連した。その因果関係については今後の検証が必要である。
著者
市田 行信 吉川 郷主 平井 寛 近藤 克則 小林 愼太郎
出版者
農村計画学会
雑誌
農村計画学会誌 (ISSN:09129731)
巻号頁・発行日
vol.24, no.Special_Issue, pp.S277-S282, 2005 (Released:2007-03-01)
参考文献数
15
被引用文献数
1 2

This paper investigates linkage between social capital and individual health using multilevel analysis. Data for the analysis is based on 9,248 people over 65 years old living in 28 school districts in Chita peninsula. Results show that school-district-level contextual effects are found for average income and social capital. Importantly, it is argued that without adopting a multilevel approach, the debate on linkage between individual health and social capital cannot be adequately addressed.
著者
熊澤 大輔 田村 元樹 井手 一茂 中込 敦士 近藤 克則
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.22-128, (Released:2023-06-28)
参考文献数
33

目的 千葉県睦沢町では,2019年に「健康支援型」道の駅を拡張移転した。仮説として,道の駅を利用した高齢者では,利用しなかった高齢者に比べ,主観的健康感不良者が減少したと考えられる。そこで,道の駅利用が主観的健康感不良の減少と関連するのか検証することを目的とした。方法 2019年9月の道の駅拡張移転前後の3時点パネルデータを用いて道の駅開設後の利用群と非利用群を比較評価した縦断研究である。道の駅拡張移転前の2018年7月(2018年度調査)と2019年の拡張移転後の2020年11月(2020年度調査)と2022年1月(2021年度調査)の3回,自記式調査票の郵送調査を行い,個票レベルで結合した3時点パネルデータを作成した。目的変数は2021年度調査の主観的健康感不良,説明変数は2020年度調査時点の道の駅利用とした。調整変数は2018年度調査の基本属性と2018,2020年度の外出,社会参加,社会的ネットワークとした。多変量解析は多重代入法で欠損値を補完し,道の駅利用のみを投入したCrudeモデルと,2018年度調査の基本属性(モデル1),2018年度調査の外出,社会参加,社会的ネットワーク(モデル2),2020年度調査の外出,社会参加,社会的ネットワーク(モデル3)を投入した各モデルについて分析を行い,修正ポアソン回帰分析を用い,累積発生率比(Cumulative Incidence Rate Ratio, CIRR),95%信頼区間,P値を算出した。結果 対象者576人のうち,道の駅利用者は344人(59.8%)であった。基本属性を調整した多変量解析の結果,道の駅非利用群に対して利用群では,主観的健康感不良者のCIRR : 0.67(95%信頼区間 : 0.45-0.99,P=0.043)であり,有意に少なかったが,道の駅開設後の2020年度調査の外出,社会参加,社会的ネットワークを調整したモデルではCIRR : 0.71(95%信頼区間 : 0.48-1.06,P=0.096)と点推定値が1に近づいた。結論 本研究では,3時点パネルデータにより,道の駅拡張移転前の交絡因子を調整した上で,利用群で主観的健康感不良者が減少,つまり不良から改善していた。外出のきっかけとなり,人と出会う機会となる道の駅などの商業施設が「自然に健康になれる環境」になりうることが明らかとなった。
著者
笛木 賢治 大久保 力廣 谷田部 優 荒川 一郎 有田 正博 井野 智 金森 敏和 河相 安彦 川良 美佐雄 小見山 道 鈴木 哲也 永田 和裕 細木 真紀 鱒見 進一 山内 六男 會田 英紀 小野 高裕 近藤 尚知 玉置 勝司 松香 芳三 塚崎 弘明 藤澤 政紀 馬場 一美 古谷野 潔
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.387-408, 2013 (Released:2013-11-14)
参考文献数
66
被引用文献数
4 6

本ポジションペーパーは,義歯床用の熱可塑性樹脂を用いた部分床義歯の呼称と定義を提案し,臨床適用への指針を示すことを目的とした.(公社)日本補綴歯科学会会員から,熱可塑性樹脂を用いた部分床義歯の臨床経験を有するエキスパートパネル14名を選出した.パネル会議で検討した結果,「義歯の維持部を義歯床用の樹脂を用いて製作したパーシャルデンチャーの総称」をノンメタルクラスプデンチャー(non-metal clasp denture)と呼称することとした.ノンメタルクラスプデンチャーは,樹脂と人工歯のみで構成される剛性のない義歯と,金属構造を有する剛性のある義歯とに区分される.剛性のないノンメタルクラスプデンチャーは,金属アレルギー症例などの特別な症例を除き,現在の補綴臨床の原則に照らし合わせ最終義歯として推奨できない.剛性のあるノンメタルクラスプデンチャーは,審美領域にメタルクラスプが走行することを患者が受け入れられない場合に推奨できる.ノンメタルクラスプデンチャーの設計は,原則的にメタルクラスプを用いた部分床義歯の設計に則したものでなければならない.熱可塑性樹脂の物性は材料によって大きく異なるため,各材料の特性を考慮して臨床適用する必要がある.全般的な特徴としては,アクリルレジンよりも変色,面荒れしやすく,材料によっては破折しやすい.現時点では,樹脂の理工学的性質と義歯の治療効果と術後経過に関する研究が不十分であり,今後これらの知見が集積され本ポジションペーパーの改訂とガイドラインの策定が望まれる.