著者
久保 知義 中川 成男 近藤 健次郎
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学農学部研究報告 (ISSN:04522370)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.140-150, 1971

さきに, 皮革の製造工程における皮組織を偏光顕微鏡によっても十分に観察し得ることがわかった。それ故に, 本実験では, 未鞣製皮, ならびにクロム革, ジルコニウム革, 植物タンニン革および植物タンニン再鞣クロム革の線維構造の観察を行ない, また, これらの皮革を比較的高温熱処理を行なった場合のコラーゲンの結晶構造の変化を複屈折性について観察した。1. 皮および種々の鞣製革を偏光顕微鏡で観察すると, 未鞣製皮のコラーゲン線維束の直径は比較的小さく, クロム革あるいはジルコニウム革の鞣剤低含量革のそれは未鞣製皮とほぼ同じであった。しかし, 鞣剤含量がより増加すると, コラーゲン線維束の直径は大となり, 鞣剤を結合することによって線維密度は大きくなり, 多孔性が失われる傾向があった。2. 種々の皮革を比較的高温で処理することによって, 網様層のコラーゲン線維束の直径は減少する傾向が認められ, 熱変化がさらに進むと, 未鞣製皮ならびに鞣製革の鞣剤含量の少ない場合, コラーゲン線維は複屈折性が全面的に, あるいは部分的に失われた。この現象は, 未鞣製皮ならびに植物タンニン革とジルコニウム革において同じ様な傾向で認められ, 水分約30%, 熱処理温度, 130℃以上において認められた。しかし, クロム革はこれらよりきわめて安定であった。3. コラーゲンの結晶構造の熱処理による変化, すなわち複屈折性の変化は, 鞣剤の種類, その量および水分の量によって影響を受けることから, コラーゲンの非結晶部分への鞣剤の結合様式が, コラーゲンの結晶構造にもある程度影響を与えるものであることを示唆している。
著者
小木曽 智信 小椋 秀樹 田中 牧郎 近藤 明日子 伝 康晴
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.4, pp.1-8, 2010-01-30

現在開発を行っている「中古和文UniDic」を紹介する.これは平安時代の仮名文学作品を典型とする和文系の資料を対象とする形態素解析辞書であり,すでに公開中の「近代文語UniDic」同様,日本語の歴史的資料の形態素解析を可能にするものである.In this paper, we present "Chuko-Wabun UniDic", which is an electrical dictionary for morphological analysis of classical Japanese. The dictionary is especially designed for the analysis of literary texts in the Heian period, and is an effective means for examining historical texts, like "Kindai-Bungo UniDic" for modern Japanese.
著者
近藤 直樹 羅 敏 渡辺 陽介 横田 治夫
雑誌
研究報告 データベースシステム(DBS)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.15, pp.1-8, 2011-07-26

データが爆発的に増加し、データを複数の計算機で管理するようになってきている。分散されたデータへのアクセスを効率化するためにインデックスを用いるが、インデックスを集中管理すると負荷が増大する。そこで分散インデックスという手法が提案されている。また、データアクセスにおいては属性値の範囲内に入るデータを検索する範囲問合せというデータアクセスがよく行われ、複数の計算機にデータが分散されても効率よく検索できることが要求されている。そのような範囲問合せ可能な分散インデックスが新たに提案されている。しかし、それらの分散インデックスはまだ十分には比較はされていない。本研究では、同じ環境で範囲問合せ可能な分散インデックス手法を比較することを目的とする。本稿では、範囲問合せ可能な分散インデックスである Fat-Btree、P-tree と SkipGraph を比較する。Due to explosive increasing of data, data is managed with multiple machines. Index is used to access to distributed data efficiently. But, centralized index often becomes a bottle neck in distributed systems. Whereat distributed indexing is widely used. And, we also need efficient range query processing on distributed data in multiple machines. There are some proposals, which can process range query efficiently. But, there is no enough comparison between these proposals. In this paper, we compare to the methods, which can do range query, on same environment. This paper covers Fat-Btree, P-tree and SkipGraph.
著者
飯塚 正人 黒木 英充 近藤 信彰 中田 考 山岸 智子
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

1998年2月に「ユダヤ人と十字軍に対するジハードのための国際イスラーム戦線」が結成されて以来、いわゆる「イスラム原理主義過激派」のジハード(聖戦)は新たな段階に入った。そこでは、これまでイスラーム諸国の政府を最大の敵と見て、これに対する武装闘争を展開してきたこれら過激派が、反政府武装闘争を否定するウサーマ・ビンラーディンのもとに結集し、彼の指揮するアルカーイダとともに、反イスラエル・反米武装闘争を優先する組織へと移行する現象が見られたのである。本研究の主な目的は、結果として「9,11」米国同時多発テロを引き起こすことになるこうした変化がなぜ起こったのか、また対外武装闘争を実践しようとする諸組織の実態はいかなるものか、を地域横断的に分析することにあった。このため、各年度の重点地域を中央アジア、中東、東南アジア、南アジアに設定し、それぞれの地域におけるジハード理論の変容と実践を現地調査するとともに、必要に応じて毎年各地で継続的な定点観測も行っている。その結果、当初設定した課題には、(1)諸国政府による苛酷な弾圧の結果、「イスラム原理主義過激派」にとって反政府武装闘争の継続が著しく困難になったこと、(2)パレスチナやイラクに代表されるムスリム同胞へのイスラエルや米国の攻撃・殺戮が看過できないレベルに達したと判断されたこと、という回答が得られた。またこの調査では、特に「9.11」以降欧米や中東のムスリムの間で論じられ、強く意識もされてきた"ISLAMOPHOBIA"(地球規模でのムスリムに対する差別・迫害)現象がアフガニスタン戦争、イラク戦争を経て東南アジアや南アジアのムスリムにもまた深刻な問題として意識されるようになっており、こうした差別・迫害に対する抵抗手段として、ウサーマ・ビンラーディン型のジハードを支持、参入する傾向がますます強くなりつつある事実も明らかになっている。
著者
北澤 毅 近藤 弘 佐々木 一也 有本 真紀
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本共同研究におけるテーマは、感情をめぐって、(1)発達・社会化、(2)文化的規範、(3)人間関係(解釈学の視点から)、(4)情操教育(音楽教育の歴史と現状)の観点に大別される。これらの観点から3年間研究を重ね、上記(1)〜(4)までの観点を、主に(a)理論的検討、(b)相互行為における子どもの泣き、(c)記憶と涙、(d)ジェンダーと涙という研究課題へと展開させた。その成果として研究協力者の協力を得つつ、下記構成のもとで報告書を執筆した。以下の成果が本研究のまとめとなる。第1部 問題設定と理論枠組第1章 本研究のねらい-「文化」概念に着目して-第2章 感情概念の捉え方の変遷-その社会性に着目して-第2部 相互行為における子どもの泣き第3章 発達という文化-保育実践における泣きの記述に着目して-第4章 園児間トラブルにおける保育士のワーク-<泣き>への対応に着目して-第5章 児童のく泣き>を巡るトラブルの構成-遊び場のフィールドワークから-第6章 「涙」をめぐる定義活動及び修復活動の開始と園児の「泣き」-「泣き始めること」と「泣き続けること」の相互行為分析-第3部 制度化された涙3-1.記憶と涙第7章 卒業式の唱歌-共同記憶のための聖なる歌-第8章 制度化された場面の感情喚起力-テレビドラマの分析を通して-3-2.ジェンダーと涙第9章 表象としての涙とジェンダー-絵本の表現技法の分析を通して-第10章 涙・泣きに関するジェンダー言説の分析補論関係性としての涙-哲学的考察-
著者
青山 秀紀 谷口 充展 近藤 一晃 中村 裕一 秋田 純一 戸田 真志 櫻沢 繁
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MI, 医用画像 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.28, pp.121-126, 2010-05-06

本稿では,画像認識と筋電インタフェースを利用した情報提供システムを提案する.このシステムは,頭部に装着したカメラの画像情報から手が触れている物体を,筋電インタフェースによって手指の動作を認識し,その動作の違いによって,その物体の名称や使用方法などの情報の種類を選択して提供する.また,このシステムでは,動作認識の対象を,学習済の全ての動作ではなく,手の付近に存在する物体に行い得る動作に限定することで,認識率の向上を図っている.本稿では,限定された認識対象動作数と認識率の関係について報告する.
著者
高村 仁知 近藤 聡子 岡野 悦子 荻野 麻理 松澤 一幸 山中 信介 的場 輝佳
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.377-387, 1999-04-15
被引用文献数
6

The mineral contents of commercially prepared box lunches (bentou) and daily dishes (souzai) were surveyed and compared with those of home-prepared meals in order to evaluate the nutritional values of commercially prepared meals. More than 50 commercially prepared box lunches (including sushi and university cafeteria meals) and 40 daily dishes were collected from the Kinki area. Calcium, phosphorus, iron, sodium, potassium, magnesium, zinc, and copper were each determined by the inductively coupled plasma (ICP) method. The commercially prepared box lunches contained lower amounts of minerals, except for sodium, than home-prepared meals. This result suggests that daily eating of commercially prepared box lunches cannot satisfy the required intake of calcium, iron, potassium, manganese, and zinc. In addition, the commercially prepared box lunches and daily dishes contained more sodium than the home-prepared equivalents. Attention therefore is needed to avoid calcium deficiency and sodium excess with commercially prepared box lunches and daily dishes.
著者
久保田 壮一 荒川 紀子 和田 光俊 近藤 裕治 小久保 浩 山崎 匠
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.69-76, 2006
被引用文献数
2 5

JSTが運営する電子ジャーナルサイトJ-STAGEのリンク機能を担うJSTリンクセンターが関係する新機能を2つ紹介する。1つはJ-STAGE上の論文本文を検索エンジンGoogleやGoogle Scholarで検索できるようにクロールさせる機能,もう1つは論文間の被引用関係表示を行う機能である。これまでJ-STAGE記事内同士の被引用関係は実現されていたが,2005年5月からCrossRefのForward Linking機能を利用して,J-STAGE外の記事からの引用関係を取得し,これを被引用リンクとして表示することができるようになった。<br>
著者
須磨崎 亮 酒井 愛子 虫明 聡太郎 近藤 宏樹 乾 あやの 川田 潤一
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.1-11, 2024-01-01 (Released:2024-01-10)
参考文献数
45

2022年に欧米で原因不明の小児急性肝炎が急増した.当初は流行中のアデノウイルス(AdV)陽性例が多いと注目されたが,メタゲノム解析により英米の流行期肝炎患者の80%以上で大量のアデノ随伴ウイルス2型(AAV2)が検出された.ヘルパーウイルスとなるAdVやHHV6の同時感染が多いこと,特定のHLA型が多いことも報告され,遺伝素因にAAV2感染が重なり発症する可能性がある.AAV9ベクターを用いる遺伝子治療により免疫介在性の急性肝障害を発症した例が多く,類似の病態と考えられる.また原因不明肝炎の一部にはSARS-CoV-2関連症例も含まれる.日本では1年弱で本症が162例届け出されたが,パンデミック以前と比べると減少傾向である.AAV2検出例も10%程度と少ないことから,欧米の流行とは異なる.従来から小児急性肝不全の約40%が原因不明であり,その一部にAAV2が関与していることが推測される.
著者
近藤 厚生 師田 信人 岡井 いくよ 山本 憲朗 近藤 厚哉 渡邉 智之
出版者
公益社団法人 日本ビタミン学会
雑誌
ビタミン (ISSN:0006386X)
巻号頁・発行日
vol.92, no.1, pp.1-17, 2018 (Released:2019-01-31)

The Medical Research Council vitamin study has unequivocally demonstrated in 1991 that 72 percent of recurrence of neural tube defects (meningomyelocele and anencephaly) were successfully prevented by taking 4 mg of folic acid periconceptionally. Of 87 countries whose major staples were forti¿ed with folic acid, micronutrients, or minerals, 81 have implemented food forti¿cation with folic acid and observed a significant decline of neural tube defect prevalence following the fortification program. The Ministry of Health and Welfare in Japan recommended in 2000 that women planning to conceive should take folic acid supplements of 400 μg daily. During the past 16 years, however, prevalence of meningomyelocele has not decreased but remains rather stable, from 5 to 6 per 10,000 births (live births and stillbirths). A total of 542 newborns, i.e., 502 with meningomyelocele and 40 with anencephaly, were estimated to be born in the year of 2015. Furthermore, if fetuses terminated during pregnancy were counted, the real number of them would probably climb up to 2169 and would be 4 times as many as the number of¿cially reported. Since longstanding recommendations alone have not worked properly, we would like to urge the government to implement mandatory food forti¿cation with folic acid, which will certainly decrease the number of afÀicted patients and lead to economic bene¿ts and signi¿cant reduction in the cost burden on the healthcare system and healthcare payers.
著者
近藤 高史
出版者
独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
アジア経済 (ISSN:00022942)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.2-31, 2023-12-15 (Released:2023-12-27)
参考文献数
47

パキスタンの水資源確保のためにインダス川に建設が計画されているのがカーラーバーグ・ダムである。小論の目的は同ダムが1960年代に着工が予定されていたにもかかわらず,いまだ計画段階のままとどまっている背景を明らかにすることにある。小論では同ダム建設計画の展開と建設反対派の動向を概観した後,現計画を形作った2000年代のムシャッラフ政権の取り組みと建設反対派への対応,政党の同計画への姿勢,計画をめぐるパキスタン国内の言説も検討した。そのなかで,計画停滞の背景にスィンド・パンジャーブ両州間の水配分争いを中心とした連邦・州,州間の不信感と相互の信頼醸成努力の欠如があり,これらの克服は容易でない点を指摘した。また,政治への介入を繰り返してきたパキスタン軍は水利計画にも利害関係を有しているために同ダム計画を後押ししてきたが,近年同ダム以外の水利計画の選択肢が増えたために優先順位が下がったことも背景として指摘した。
著者
近藤 宗平
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.118-126, 1974-05-25 (Released:2009-05-25)
参考文献数
45
被引用文献数
1 1

Recent knowledge of DNA repair is reviewed in perspective with emphasis on Escherichia coli. Enzymatic phtoreactivation is the simplest and the most general among the three major DNA repair systems. Excision repair is also common from microorganisms to human and yet its molecular mechanism is not universal. Tolerance repair, i.e., post-replication repair, is effective for the widest variety of DNA damage and rather different between lower and higher forms. From these characteristics, it is proposed that DNA repair mechanisms evolved in the order of photoreactivation, excision repair and tolerance repair after the primary living systems were created by solar ultraviolet.
著者
近藤 滋
出版者
日本香粧品学会
雑誌
日本香粧品学会誌 (ISSN:18802532)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.157-161, 2018-09-30 (Released:2019-09-30)

It is known that the pattern present on the animal’s skin is a kind of wave (Turing pattern) created by the interaction between pigment cells. Basically, the patterns of all species are made on the same principle, the difference of patterns by species depends on subtle differences in interaction. So, if you find a molecule responsible for its interaction and artificially change its function, it should be possible to change the pattern. Our research group has revealed the interaction between pigment cells through molecular genetic experiments using zebrafish over the last two decades. Molecules responsible for interaction are already evident. By manipulating these genes, we are able to freely convert zebrafish patterns. Because the principle of pattern formation is probably the same for mammals, now, it is not impossible to change the skin of giraffe to the pattern of zebra horse.
著者
近藤 知子
出版者
日本作業科学研究会
雑誌
作業科学研究 (ISSN:18824234)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.33-43, 2021-12-25 (Released:2022-01-08)
参考文献数
28

「作業」は,作業療法の軸となる概念の一つであり,これを教えることは,作業療法教育において不可欠である.本論文は,作業科学を基盤に,「作業」および「作業的存在」の概念を教えるプログラムを紹介することを目的とする.プログラムは,これから作業療法を学んでいく学生が専門職としてのアイデンティティ を育んでいくための土壌を作ることを念頭に,対象を 1 年生とした.内容は, 1 )作業療法の歴史の価値と変遷, 2 )作業と作業的存在の理解, 3 )作業の見方, 4 )意味のある作業, 5 )作業の文脈, 6 )意味のある作業と作業的存在の理解, 7 )作業的公正, 8 )作業療法と作業のトピックから構成され,各90分,合 計 8 回の授業を行うことを想定した.本論には,授業前課題,授業内講義・演習,グループワーク,グループプレゼンテーションなど具体的にどのような教育方法を用いているかを記すと共に,授業に対し学生が抱いた感想も含めた.
著者
山本 泰大 渡邊 紘章 櫻井 愛菜 近藤 綾子 浅井 泰行 木原 里香 小田切 拓也
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.55-58, 2020 (Released:2021-02-16)
参考文献数
11

【緒言】終末期がん患者に対して,痙攣発作の治療を目的とした抗痙攣薬の使用は臨床現場において稀でなく,経口および静脈投与不可能な症例への治療選択が求められることは少なくない.われわれは終末期がん患者で末梢血管の確保ができない症例に対してレベチラセタム(LEV)注を皮下注射した症例を3例経験したため報告する.【症例】3症例の年齢は83,75,82歳で,LEV皮下注射の投与時期は予後1カ月程度であった.3例ともLEVを点滴静脈から皮下へ投与経路変更した事例である.LEV皮下注射の実施後,痙攣の増悪や注射部位反応,その他の有害事象は確認できなかった.【考察】末梢血管確保の不可能な終末期がん患者においてLEVの皮下注射は痙攣発作の治療の選択肢の一つとなり得ると考える.
著者
最上 晴太 近藤 英治 千草 義継
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

前期破水は早産の主要な原因である。早産は時に出生児に合併症・後遺症を残し、医学的・社会的に大きな問題である。本研究では、①ヒト羊膜において破水前に微細な損傷→修復という細胞外マトリックスのリモデリングが行われ、恒常性の維持機構があるか、②胎仔マクロファージ欠損マウスを用いて、自然免疫による羊膜の修復機構をin vivoで解析、③細胞外マトリックスによる前期破水の治療法の探索を行う。このように前期破水を「卵膜の恒常性の破綻」という新たな観点からとらえて、早産の予防・治療法の開発を目指す。
著者
近藤 博之 古田 和久
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.682-698, 2009-03-31 (Released:2010-04-01)
参考文献数
29
被引用文献数
13 6

教育の階層差に関する近年の一般的な見方は,教育拡大にもかかわらず不平等が長期にわたり継続しているとするものである.本稿では,戦後の日本社会の教育格差の趨勢とそこに働いているメカニズムを,順序ロジット・モデル(とくに部分的比例オッズ・モデル)を用いて分析した.2005年SSM調査データから,父職・親学歴・財所有の3つの説明変数を構成して吟味した結果,(1)高度経済成長期以降の進学となる中年コーホートで明らかに格差縮小が進んだこと,(2)1980年代後半以降の進学者からなる若年コーホートで親学歴に局所的な格差拡大の動きが生じているものの,財所有の効果は一貫して低下しており,父職の効果もコーホートを通してそれほど変化していないことが明らかとなった.これより,大局的および長期的に格差縮小が進んできたことが確認された.さらに,代表的な格差生成メカニズムとして相対的リスク回避(relative risk aversion: RRA)説を取り上げ,その解釈が日本のデータにあてはまるかどうかを,仮説が成立するための必要条件を定式化して検証した.その結果,(3)親学歴ついてはRRA仮説の予想と一致する効果パターンが得られるものの,父職の効果についてはRRA仮説の予想と一致しないことが明らかとなった.このことから,日本の場合は世代間職業移動を前提にした相対的リスク回避説が妥当しないと結論づけられた.