著者
瓜生 侑 遠藤 敏夫
雑誌
研究報告ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC) (ISSN:21888841)
巻号頁・発行日
vol.2022-HPC-185, no.28, pp.1-7, 2022-07-20

C++17 における実行ポリシーを用いたコードと kokkos を用いたコードはラムダ式を用いて記述され,高い移植性を持つことを特徴とし,CPU・GPU どちらでも並列実行が可能である.今回は,これらのコードを既存の並列プログラミングと性能の比較を行った.実験環境は本学のスーパーコンピューター TSUBAME3.0 である.また,それぞれのプログラムにブロッキングを施し,その性能とプログラミングコストについても比較を行った.
著者
遠藤 匡俊
出版者
社団法人 東京地学協会
雑誌
地學雜誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.113, no.3, pp.421-424, 2004-01-01

蝦夷地は2度にわたり幕府の直轄地となり,アイヌの風俗・習慣を和人風に変えるという同化政策が実施された。この同化政策によって,アイヌの個人名がアイヌ名(アイヌ語の名)から和名(日本語の名)に改名される和名化が生じた。これまで和名化は,幕府の同化政策によってアイヌ文化が変容する事例として注目されてきた。また,アイヌ社会には「近所に生きている人と同じ名をつけない」という個人名の命名規則が存在していた。個人名の命名にあたって,文字をもたなかったアイヌは,周囲の人々の名を思い浮かべて,同じ名とはならないように配慮したものと考えられる。しかし,従来の研究では,和名化の展開過程は明確ではなく,和名化と命名規則の関係についても必ずしも明確ではなかった。本研究の目的は,アイヌ社会における和名化の展開過程を示した上で,和名化と命名規則の関係について検討することである。
著者
遠藤 匡俊
出版者
社団法人日本地理学会
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.74, no.11, pp.601-620, 2001-01-01

文字を持たないアイヌ社会において,近所に生きている人やすでに死亡した人と同じ名を付けないという個人名の命名規則が,どの程度の空間的範囲に生活する人々に適用されていたのかは,これまで不明であった.アイヌ名の命名には,出生後初めての命名と改名による新たな命名があり,いずれもアイヌ固有の文化であったと考えられる.アイヌ名の改名は根室場所,紋別場所,静内場所,三石場所,高島場所,樺太(サハリン)南西部,鵜城で確認された.中でもアイヌ名の改名が最も多く生じていたのは,根室場所であった.根室場所におけるアイヌ名の改名は,結婚や死と関わって生じた事例が多かった.改名による新たな命名が多く生じていたにもかかわらず,同じ名を付けないという個人名の命名規則は,1848-1858(嘉永1-安政5)年の根室場所においては,集落単位のみならず根室場所全域ではぼ遵守されていた.根室場所は,アイヌの風俗の改変率が高いことから和人文化への文化変容が進んだ地域とみなされるが,アイヌ名の命名規則に関する限り,アイヌ文化は受け継がれていたと考えられる.
著者
遠藤 みなみ 佐藤 和紀 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.2, pp.27-31, 2022-06-27 (Released:2022-06-27)

本研究では,クラウド上のスプレッドシートを利用して振り返りを入力する実践の初期段階における児童の意識調査を行った.その結果,児童は,スプレッドシートでの振り返りの効果については【今後の学習に役立つ】,【タイピングが速くなる】と回答した.効率については【修正がしやすい】,【速く書くことができる】と回答した.一方で,負担については【ファイルを開く手間】,【タイピングが大変】と回答した.不満については,【ネットの接続に時間がかかる】と回答した.
著者
町田 貴胤 町田 知美 佐藤 康弘 田村 太作 庄司 知隆 遠藤 由香 福土 審
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.1134-1139, 2016 (Released:2016-11-01)
参考文献数
9

副腎皮質機能低下症は食欲不振, 悪心・嘔吐, 易疲労感など非特異的症状を呈することが多く, うつ病との鑑別が難しい. うつ病を疑われ心療内科に紹介され, 下垂体性副腎皮質機能低下症と判明した3例を報告する. 症例1 : 59歳男性 : 特に誘因なく悪心嘔吐が出現し体重が6カ月で18kg減少, 抑うつ気分や倦怠感がみられた. 一般血液検査, 内視鏡検査, 腹部CTにて異常なしとして紹介された. 低血糖・低ナトリウム血症のほか, cortisol 1.03μg/dl, ACTH<5.0pg/mlと低値, ACTH単独欠損症と判明した. 症例2 : 77歳男性 : 愛犬の死後に抑うつ気分や腰下肢痛が出現, 一般血液検査や腰部X線で異常なく紹介された. cortisol 4.21μg/dl, ACTH 5.7pg/mlと低値, 脳MRIでRathke囊胞を認め, 続発性副腎皮質機能低下症と診断した. 症例3 : 47歳男性 : 東日本大震災で被害を受け悪心嘔吐や倦怠感が出現, 抑うつ気分がみられ一般血液検査で異常なしとして紹介された. cortisol<0.8μg/dl, ACTH<2.0pg/mlと低値, 部分的下垂体機能低下症と甲状腺機能亢進症の合併と判明した. 心療内科において非特異的な身体症状や抑うつ気分を呈する患者には, 一般検査で異常がなくとも副腎皮質機能低下症とうつ病を早期に鑑別すべく副腎皮質機能検査が推奨される.
著者
斎藤 成也 藤尾 慎一郎 木部 暢子 篠田 謙一 遠藤 光暁 鈴木 仁 長田 直樹
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2018-06-29

リースしているサーバー(すさのを)および国立遺伝学研究所のスーパーコンピュータを用いて、現代人ゲノムの解析環境をととのえた。2018年度に購入したサーバー2台(うみさちとやまさち)を用いて、古代人や公開されている現代人ゲノムや動植物ゲノムデータの格納をおこない、それらデータの解析環境を整えた。季刊誌Yaponesianの2020年はる号、なつ号、あき号、2021年ふゆ号を編集刊行した。新学術領域研究ヤポネシアゲノムのウェブサイトを運営した。特に今年度は英語版を充実させた。2020年6月27-28日に、立川市の国立国語研究所にて総括班会議と全体会議をハイブリッド方式で開催した。2021年2月15-17日に、国立遺伝学研究所と共催で「ゲノム概念誕生百周年記念シンポジウム」をオンラインで開催した。2021年3月2-3日に、 「第2回くにうみミーティング」(若手研究者育成の一環)を開催し、公開講演会もオンラインで実施した。2021年3月19-21日に、佐倉市の国立歴史民俗博物館にて全体会議と総括班会議をハイブリッド方式で開催した。

2 0 0 0 OA 膵炎

著者
真弓 俊彦 新里 到 眞田 彩華 鍋島 貴行 宮里 和明 石川 成人 大石 基 遠藤 武尊 中園 和利 弓指 恵一 山中 芳亮 大坪 広樹 古屋 智規
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.349-356, 2016 (Released:2017-04-12)
参考文献数
24

重症急性膵炎では,多数のRCT やそれらのメタ解析で,発症72 時間以内の早期の経腸栄養が死亡率や合併症を有意に減少させることが示されている. しかし,実臨床では経腸栄養が早期に開始されていることは少なく,特に診断後48 時間以内に開始される例は非常に少ない.膵酵素の高値,腹痛,蠕動音消失,多量の胃液排出は,経口摂取の中止基準にはなっても,経腸栄養の中止基準にはならず,これらが認められていても経腸栄養を開始できる.重症急性膵炎でも早期から経腸栄養を開始することが肝要である. 従来,経空腸的な経腸栄養が施行されてきたが,メタ解析により,経空腸栄養ではなく,経胃栄養も可能かもしれないことが示唆されている.また,免疫調整栄養,プロバイオティクス,シンバイオティクスの有用性はまだ定かではない.
著者
高田 和規 遠藤 卓 立松 宏一 村田 さやか 廣田 誠一 北谷 幸恵 鈴木 大隆 羽山 広文
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
vol.82, no.732, pp.165-173, 2017 (Released:2017-02-28)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

The purpose of this study is to quantitatively evaluate the effectiveness of the components of existing PVC windows in the country in providing thermal insulation, to identify the optimal conditions of the components and the insulation performance of windows with the components in the optimal conditions, and to conduct a performance test on samples under the practical specifications for production. We briefly summarize the results below. 1) For the frame, using a method of quality engineering, we examined the reduction in conductive heat flow across each cross-section for multiple regulatory elements, which would contribute to thermal insulation. We then derived the optimal condition (level) for each regulatory element and showed the reduction rate under the optimal condition (sash frame part 19%-21%, fix frame part 6%-10%, mullion frame part 22%). Furthermore, based on the SN ratio, we found that the reduction rate is highest with the following components: inner-frame insulator in the sash frame part and fix frame part, and physical properties of mullion reinforcement in the mullion frame part. 2) As for the glazing part, we examined the specifications of the Low-E film suspended air space of a insulated glass and observed the effect of a Low-E film, optimized the arrangement, and the optimal thickness of the air space for each gas fill. We also examined the thermal transmittance at the center of glass with xenon gas having 3 films (0.29 [W/(m2·K)]), and those at the center of glass with krypton gas having 2 films (0.39 [W/(m2·K)]). 3) We determined the thermal transmittance of the window (0.56 [W/(m2·K)]) with the combined optimal conditions for the frame and glazing parts. In actual manufacturing, however, there are two problems: a technical problem (of forming a metal film inside the frame cross-section and arranging phenolic foam insulator without leaving any space) and a high manufacturing cost (associated with filling xenon gas inside the insulated glass). We therefore examined the insulation performance of samples having practical specifications for production. As a result, we obtained a measured thermal transmittance of 0.63 [W/(m2·K)] in contrast to the calculated value of 0.65 [W/(m2·K)].
著者
遠藤 佳章 久保 晃 木村 和樹 三浦 寛貴
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.42-46, 2016 (Released:2017-02-20)
参考文献数
24
被引用文献数
1

【目的】超音波画像診断装置を用いて健常若年男性の腰椎各レベルの多裂筋横断面積の腰椎レベル高低での差異と左右差の2 要因を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は過去に腰部の疾病や外傷,腰痛の既往がない上下肢ともに右利きの健常若年男性55 名とした。超音波画像診断装置を用いて,腹臥位で左右の第5・4・3・2・1 腰椎レベルの多裂筋横断面積を計測した。【結果】多裂筋横断面積の左右比較では,第5・4 腰椎レベルで右側が有意に大きく,第3・2・1 腰椎レベルでは有意差は認められなかった。また,左右ともに下位腰椎にいくにつれて多裂筋横断面積は有意に増大した。【結語】腰部多裂筋横断面積は下方にいくにつれて大きくなり,利き側がより発達することが示唆された。
著者
塩田 彩夏 二瓶 泰雄 遠藤 亮之輔
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.I_1699-I_1704, 2013 (Released:2014-03-31)
参考文献数
20

Although previous studies pointed healing effects from waterfront, quantitative evaluations and factor of healing effects were still unknown. To evaluate quantitatively healing effects from river and coast and its associated factors, in this study, we measured simultaneously psychological stress and sound and thermal environments at six sites in which the measuring points were selected near waterfront and urban area in its neighborhood. The measured results indicated that 1) the measured values of salivary amylase activity, one of useful stress markers, in several waterfronts were appreciably lower than those in urban area, and 2) the healing effects in waterfronts were closely related to sound and thermal environments.
著者
遠藤 守人
雑誌
八戸大学紀要
巻号頁・発行日
no.34, pp.123-131, 2007-03
著者
遠藤 正之 仁科 良 呉 瓊
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.97, no.5, pp.986-993, 2008 (Released:2012-08-02)
参考文献数
2

腎生検組織標本は光学顕微鏡,蛍光抗体法,電子顕微鏡の3種類で観察する事が必要であり,なるべく薄く切られた切片で観察する事が重要である.糸球体疾患は病理組織診断にて確定診断が下され,患者の腎機能予後の推定ならびに治療方針の決定がなされる.本稿では,腎生検標本の標準的な染色とその特徴,標本を観察する上で必要な基本的病変の定義,比較的頻度が高い腎疾患の組織像と,典型的病理像を示す疾患について概説した.
著者
王 財源 遠藤 宏 豊田 住江 河内 明 北出 利勝 兵頭 正義
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.319-322, 1992-12-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
5

中国の鍼灸補瀉手技のひとつに「透天涼」と呼ぶ鍼技法がある。古くから伝えられて来た刺入方法で, 涼しいような, 冷たい, あるいは寒いといった寒冷感覚が局所に引き起こされる。今回, 腰痛患者5例を対象として, 局所と遠位の皮膚温度および深部温度を測定した結果, 局所より遠位部において, 温度が下降していくような現象が認められた。また, 患者自身の自覚症状においても「冷たくなるような」,「足が冷えて急にトイレへ行きたくなった」などの感覚が引き起こされた。特に炎症症状のある急性期の腰痛患者では,「大変に気持ちが良い」とのことであった。統計学的にも有意な差が認められた。
著者
玉川 裕夫 齊藤 孝親 江島 堅一郎 佐々木 好幸 鈴木 一郎 多貝 浩行 冨山 雅史 日高 理智 森本 徳明 紀 山枚 岡峯 栄子 遠藤 明
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.183-195, 2014 (Released:2016-04-20)
参考文献数
74

本論文は,歯科・口腔外科領域の標準化に関する経緯と現状を,具体的な例とともに整理した総論である.歯科医療情報の電子的交換が広がりつつあるなか,国際的な状況も含めて読者の理解を得ることを目的とした. 歯科の標準病名マスターは,齊藤らによってとりまとめられ,医科の標準病名集とともに一般財団法人医療情報システム開発センターでメンテナンスされて,保健医療情報分野の厚生労働省標準規格の一つとなっている.歯式は,標準病名とあわせて歯科・口腔外科領域の病院情報システムに欠かせないことから,日本の歯式表記の特徴を述べ,国際的な表記の具体例を挙げて比較した.また,SNOMEDとISO/TR 13668(矯正歯科領域の規約)を例に,診療情報交換の場で歯式がどのように扱われているかを解説した.そして,現在使われているその他の指標について紹介し,最後に,歯科領域の標準化に関する今後の課題を考察した.
著者
遠藤 孝夫 ENDO Takao
出版者
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13472216)
巻号頁・発行日
no.8, pp.1-16, 2009

本稿は、ナチズム崩壊後ドイツ最初の憲法であるヴユルテンベルク・バーデン州憲法 (1946年) を素材として、学校教育を含むドイツ社会の再建に果たす教会とキリスト教倫理の積極的な位置づけという事態の背景とその意味に迫ろうとするものである。この研究意図は以下のような関連する三つの課題意識 (思い) に基づいている。 第一には、ドイツの公教育の基本的特質の理解には、第二次世界大戦後のドイツの憲法が「神」との関係から国家の再建理念を基礎づけ、公教育の必須要素として宗教教育を明確に位置づけているのは何故か、この論点の州憲法段階での論議を含めた歴史的解明が欠かせないとの思いである。周知のように、ドイツ連邦共和国の憲法である基本法 (1949年) は、その前文において、この憲法が「神および人間に対する責任を自覚して」制定されたことを明記し、宗教教育を公立学校における「正規の教科」と位置づけ(第7条)、さらに教会等の宗教団体には「公法上の団体」の資格と租税徴収権も保障されることを規定している (第140条) 。この基本法第7条および第140条は、確かに文言上はワイマール憲法 (1919年) の当該条項を縮減しつつほぼ踏襲したものであったことも関係して、その意味内容に関する学問的関心は我が国はもとよりドイツにおいても高いとは言えない。 だが、ここで注目すべきは、基本法に先だってドイツ各地で制定されたた州憲法である。そこには、「教会は、人間生活の宗教的・道徳的基礎の確保と強化のために認可された組織」、「公立の国民学校はキリスト教的学校である」といった規定に象徴されるように、ワイマール憲法には見られない規定として、ドイツ社会と国民生活の再建において教会やキリスト教倫理を積極的に位置づける考え方が溢れている事実を確認できるからである。つまり、敗戦間もない1946年から順次制定された各州憲法とそこでの論議からは、多数の州憲法の最大公約数として制定せざるを得なかった基本法以上に、それぞれの州内のドイツ住民が憲法の諸規定に託した直接的な理念を知ることができ、また基本法の諸規定の意味内容は、こうした州憲法と関係づけることによって初めて正確に読み解くことができると言えるだろう。 第二には、州憲法とそこでのキリスト教倫理の復権の局面を、戦後ドイツ最大の課題ともいうべき「過去の克服」 (Vergangenheitsbewaltigung)とMaier, 1889-1971、1930年から33年までヴユルテンベルク州経済相) が、文部大臣と次官には、テオドア・ホイス (Theodor Heuss、後の初代大統領)とテオドア・ポイエレがそれぞれ任命された。当初マイア-は、文相にはカルロ・シュミットを推薦していたが、アメリカ軍政府は、後述のようにフランスを占領するドイツ国防軍に勤務していた経歴が反ナチ化指令 (7月7日付) に抵触することを根拠に、シュミットの文相就任に難色を示した。ただ、これは表向きの理由であって、フランスと対立関係にあったアメリカ軍政府としては、母親がフランス人であったことから「フランス的人物」 (MannderFranzosen) と目されたカルロ・シュミットの起用には同意できなかったのである。そこでマイア-首相は、9月19日付で、カルロ・シュミットを「州政府顧問」 (Staatsratim Staatsministerium) に任命した。このことによりシュミットは、ヴユルテンベルク・バーデン州の閣議に出席する資格を与えられ、後述のように、同州の憲法草案の起草にも従事することになる。 なお、カルロ・シュミットは、10月16日付で、フランス軍占領地区に設置されたヴユルテンベルク・ホ-エンツオルレン州の「政務局」(Staatssekretariat, 事実上の州政府) の局長 (Vorsitzender, 事実上の首相)および教育担当と司法担当の部長(Landesdirektor、事実上の文部大臣と司法大臣) にも任命されている。こうして、カルロ・シュミットは、ヴユルテンベルク・バーデン州とヴユルテンベルク・ホーエンツオルレン州という、南西ドイツの2州の戟後の復興過程で大きな役割を果たすことになった。
著者
笠原 千絵 遠藤 惇 中村 絵理
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Eb1278-Eb1278, 2012

【はじめに、目的】 当院回復期リハビリテーション病棟では、診療報酬改定により創設された休日リハビリテーション提供体制加算を、平成22年6月よりPT・OTの日曜出勤を開始した事で取得している。休日リハビリテーションを開始した事による効果を調査し、その必要性を患者および家族に理解してもらうため、リハビリテーションの効果判定の1つのFIM変化を中心に開始前後を比較した研究を行い報告する。【方法】 平成22年4月~平成23年3月の間に、当院回復期リハビリテーション病棟を退院した患者の内、休日リハビリテーション提供体制加算(以下:加算)を取得開始した6月をまたいで入退院のあった患者を除外した114名(開始前群17名、開始後群97名)を研究対象とした。加算取得開始前群(以下:A群)および開始後群(以下:B群)について、性別、年齢、疾患区分、高次脳、退院時HDS-R得点、同居人数、リハ単位数(1ケ月の総単位数/入院人数)、入院期間、退院先、入院時FIM得点、入退院時FIM得点変化、FIM利得(退院時FIM総得点-入院時FIM総得点)、FIM効率(FIM利得/入院日数)について比較した。統計処理として、Welchの二標本t検定、一標本t検定、対応のあるt検定を用い、有意水準5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は、データ収集後個人情報を除去し、個人を特定できないよう処理した上で行った。【結果】 性別は、A群は男性8名、女性9名、B群は男性46名、女性51名であった。平均年齢は、A群は76.8±8.0歳、B群は74.8±13.6歳であり、群間での差は無かった(p値0.4223)。疾患区分は、A群は脳血管疾患23.5%、運動器疾患52.9%、廃用症候群23.5%、B群は脳血管疾患44.3%、運動器疾患37.1%、廃用症候群18.6%であった。高次脳機能障害の有無は群間での差は無かった(p値0.4893)。退院時HDS-R得点は、A群: 29~21点4名・20~11点3名・精査困難10名、B群:30点11名・29~21点30名・20~11点18名・10~0点15名・精査困難23名であり群間での差があった(p値0.02561)。同居人数は、群間での差は無かった(p値0.2622)。リハ単位数は、群間での差が無かった(p値0.1198)平均入院期間は、A群は70±45.6日、B群は81.8±52.8日であり、群間での差は無かった(p値0.3601)。退院先は、A群は自宅52.9%、施設17.6%、病院29.4%、B群は自宅54.6%、施設28.9%、病院14.4%、死亡2.1%であった(特養は施設に分類している)。入院時FIM得点は、排尿コントロールのみ群間での差があった。入退院時FIM得点変化では、A群では排尿コントロール、移乗(トイレ)、移動(階段)、理解、社会的交流に有意差があった。B群では、排尿コントロール以外の全ての運動項目、社会的交流、問題解決、記憶に有意差があった。FIM利得、FIM効率については、有意差は見られなかった。【考察】 入退院時FIM得点変化で、入院時FIM得点に差のあった排尿コントロールを除いた項目で、変化に差のあったものは、A群で4項目、B群で15項目であり、特にB群では運動項目での差が多かった。これは、当院ではPT・OTとも運動項目での介入を行う場合が多く、そのため運動項目での差が出ていたと考えられる。退院時HDS-R得点、疾患別割合に差があった事は結果に影響している可能性がある。リハ介入日数は休日リハ開始により増加しているが、リハ単位数に差は無かった。先行研究において、総運動量が同じならば毎日のリハ提供がADL改善に効果的であるとの報告がある。日曜にリハビリテーションが休みで、臥床傾向にあった患者に対して、PT・OTが介入する事により、離床およびADL練習等に積極的に介入できたためであると考えられる。入院期間に差が無かったのは、当院では入院時に疾患別の入院期間を提示されており、その期限を目安に退院準備をしているためと考えられ、FIM得点向上が入院期間短縮に結び付くためには、早期からの多職種による退院支援が必要と考えられる。今回の研究では、FIM得点向上のみでは入院期間短縮や自宅復帰率向上に結び付かないという結果であった。FIM向上に加えて、何の要因が入院期間短縮や自宅復帰率向上に結び付くのかを、今後の調査で明らかにし、対策をしていく必要があると考えられる。【理学療法学研究としての意義】 休日リハビリテーションによる効果について検証する事は、その必要性を患者および家族に理解してもらうために必要であると考えられる。