著者
野村 正實
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.70-81, 2016 (Released:2018-06-11)
参考文献数
35

日本の高度経済成長期(1955〜73年)に対する研究が盛んになっている。しかしそれらの研究にもかかわらず,きわめて重要な論点が欠落している。それは,高度成長期において日本は歴史上初めて自営業が多数を占める経済社会から雇用者が多数を占める雇用社会に移行したという事実である。自営業の世界と雇用の世界とでは経済社会原理が基本的に異なっている。本稿は,自営業が果たしてきた役割,雇用社会に移行したことの意義を検討する。
著者
明崎 禎輝 山﨑 裕司 野村 卓生 吉本 好延 吉村 晋 濱岡 克伺 中田 裕士
出版者
学校法人高知学園 高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.27-31, 2007-03-31 (Released:2018-09-05)
参考文献数
12

脳血管障害片麻痺患者79名を対象に,歩行自立のために必要な麻痺側下肢荷重率について検討した.下肢荷重率の測定には市販用体重計を用い,5秒間安定した保持が可能であった荷重量を体重で除し,その値を下肢荷重率とした.単変量解析では,年齢,麻痺側下肢筋力,下肢Brunnstrom stage,麻痺側下肢荷重率,深部感覚障害の有無において自立群と介助群間で有意差を認めた.ロジスティック解析の結果,麻痺側下肢荷重率のみが自立群に関係する有意な要因であった.Receiver Operating Characteristic曲線による曲線下面積を求めた結果,麻痺側下肢荷重率は自立群を有意に判別可能な評価方法であった.麻痺側下肢荷重率71.0%をカットオフ値とした場合,感度,正診率,陽性適中率のいずれも高い精度で自立群を判別可能であった.脳血管障害片麻痺患者における麻痺側下肢荷重率は,歩行自立度を予測する上で有用な指標と考えられた.
著者
神野 真帆 渡辺 和広 中野 裕紀 高階 光梨 伊藤 弘人 大平 哲也 野村 恭子 堤 明純
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.23-024, (Released:2023-06-08)
参考文献数
20

情報通信技術(Information and Communication Technology: ICT)を活用したメンタルヘルスケアサービスが注目されている。予防効果が評価されているアプリケーションがある一方,エビデンスが不確かなものも乱立している。エビデンスの構築とともに,必要な対象に,適切なツールを届ける社会実装が求められている。 ICTを用いたヘルスケアサービスについて,非薬物的な介入手法におけるエビデンス構築のための研究デザイン構築やサービス利用者による適切な選択のための基盤整備のための研究支援が始まっている。エビデンス構築および社会実装の側面からは,想定利用者の実生活での情報をモニタリングして不安・抑うつを予防するアプリケーションを,深層学習モデルを用いて開発している試みや,原子力発電所事故の被災地で,ニーズ調査,セキュリティの検討,ニーズに合わせたアプリケーションの設計,そのアプリケーションの試験運用といった形で,住民の安心・安全向上を目指したアプリケーションを開発している事例がある。諸外国では,ICTを利用したメンタルヘルスケアサービスの実装を進めるために,サービス提供者が適切なアプリケーションを紹介する際やサービス利用者が選択する際に指針となるアプリケーションを包括的に評価するモデルが提案されている。わが国では,そのようなモデルを実用化した評価項目を使って,利用者のニーズに合わせた適切なアプリケーションを紹介する試みが行われようとしている。 ICTを利用したメンタルヘルスケアサービスのエビデンスの構築にあたっては,利用者のニーズや実際のデータに基づく開発とその評価が行われようとしている。一方で,非薬物的な介入手法におけるエビデンス構築のための研究デザイン(とくに評価手法や指標など)が十分に確立していないことは課題となっている。ICTを利用したメンタルヘルスケアサービスの社会実装を進めるためには,構築されたエビデンスを含め,ヘルスケアサービスの評価と選択ができる仕組みづくりの必要がある。
著者
野村 光江 布井 雅人 吉川 左紀子
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.441-452, 2011 (Released:2012-03-09)
参考文献数
35

The ability to recognize emotional states of others is a fundamental social skill. In this study, we investigated the extent to which complex emotions can be inferred from facial or vocal cues in speech. Several sentences were prepared that intended to appreciate, blame, apologize, or congratulate others. Japanese university students uttered these sentences with congruent or incongruent emotional states, and they were recorded with a video camera. The speakers' friends and strangers were shown these videos in a single modality (face or voice only) and they were asked to rate the perceived emotional states of the speakers. The results showed that the raters discriminated congruent message conditions from incongruent message conditions, and that this discrimination largely depended on voice cues, rather than face cues. The results also showed that the effects of familiarity of target person modulated the way of inferring emotional states. These results suggest that we could detect subtle emotional nuances of others in spoken interaction, and that we use facial and vocal information in some different ways.
著者
日道 俊之 小山内 秀和 後藤 崇志 藤田 弥世 河村 悠太 Davis Mark H. 野村 理朗
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.88.15218, (Released:2017-01-14)
参考文献数
57
被引用文献数
54

Empathy is a multi-dimensional concept with emotional and cognitive components. The Interpersonal Reactivity Index (IRI) is a multi-dimensional scale of empathic traits. Although some researchers have attempted to translate the IRI into Japanese, these translated scales had limitations with content and construct validity, and measurement invariance. We therefore attempt to overcome these limitations by developing a new Japanese version of the IRI (IRI-J). We used three approaches to assess the validity and measurement invariance of the IRI-J. In Study 1, content validity was tested using back-translation, and construct validity was confirmed through a comprehensive investigation of a web-based survey using six other scales. Results indicate that the factor structure of the IRI-J was equivalent to that of the original version, and that the IRI-J had adequate reliability and construct validity. In Study 2, measurement invariance by gender was confirmed using data from four web-based surveys. These results suggest that the factor model of IRI-J for each gender is equivalent. The present study thus provides an improved measure of empathic traits for the Japanese population.
著者
野村 浩也
出版者
広島修道大学
雑誌
広島修大論集. 人文編 (ISSN:03875873)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.211-233, 2001-09-28

This paper discusses the danger involved in the declaration by Okinawans themselves that "Okinawans are also aggressors". The question of whether Okinawans are aggressors or not is first and foremost completely irrelevant. The reality lies in the fact that the problem surrounding Japanese aggression is difficult one to budge. Nonetheless, many Japanese have read this declaration as an opportunity to lighten their own sense of responsibility. This is the first danger that I would like to point out. The second danger is that many Japanese read this declaration as one which does not question their own responsibility as aggressors. The logic behind this is, "not only are Japanese aggressors, but so are Okinawans". The reason for this is that the word victim is completely missing, and the fact that Japanese should take responsibility is not even questioned. This is the politics involved in the making of an accomplice. In other words, the allegation that "Okinawans are also aggressors" holds the danger of evoking a political effect which blurs and ignores Japanese responsibility. In this paper, I will analyze the text of one Japanese sociologist to examine this problem.
著者
梶村 昇吾 野村 理朗
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.79-88, 2016 (Released:2016-04-25)
参考文献数
29
被引用文献数
15 25

This study developed and examined the validity of Japanese versions of the Daydream Frequency Scale (DDFS) and the Mind Wandering Questionnaire (MWQ), which measures propensity for spontaneous thoughts and mind wandering, respectively. In Study 1, we translated the items of the DDFS and the MWQ into Japanese and verified their validity. In Study 2, we confirmed the correlation of both scales with mind wandering, as measured by thought sampling during an attention-demanding task. These two studies revealed a dissociation between the properties of the scales; while DDFS reflects propensity for spontaneous thoughts, MWQ specifically reflects propensity for mind wandering. We discuss the usefulness of the DDFS and the MWQ for studying the psychological functions of spontaneous thoughts and mind wandering.
著者
大久保 澄子 田中 克浩 野村 長久 山本 裕 池田 雅彦 山本 滋 紅林 淳一 園尾 博司
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.2358-2361, 2002-10-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
15
被引用文献数
1

当科で経験した小児・若年者甲状腺癌14例について検討した.男女比1:2.5, 年齢6~19歳だった.主訴は頸部腫瘤が13例と最も多く,術前診断は血中サイログロブリン値測定と穿刺吸引細胞診が比較的診断率が高かった.手術方法は全摘6例,亜全摘7例,葉切除1例で,リンパ節郭清は12例に行った.全例乳頭癌でリンパ節転移陽性は10例(71%)だった.肺転移は3例(21%)に認めたが現在全例生存中である.小児・若年者は早期からリンパ節転移や肺転移をきたしやすいため,正確な術前評価,手術方法の決定,厳重な術後経過観察が必要だと考えた.
著者
小室 一成 内藤 篤彦 野村 征太郎 野村 征太郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

我々は、未分化幹細胞が心筋細胞へと分化する過程、心筋細胞の機能が破綻する心不全発症の過程の両者におけるエピゲノム制御機構を解析した。まず分化に伴って活性化するWntシグナルの転写制御因子β-cateninが複数のエピゲノム制御因子と複合体を形成して中胚葉エンハンサーを活性化し下流の遺伝子プログラムを誘導することを明らかにした。さらに1細胞トランスクリプトーム解析とエピゲノム解析を統合することで、心臓への圧負荷によって活性化する転写因子群が心不全遺伝子プログラムを制御するエンハンサーを活性化することを見出した。本研究によりエピゲノムが心筋細胞の分化と破綻の両者を制御していることを明らかにした。
著者
野村 亮太 関根 和生
雑誌
第84回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2022, no.1, pp.33-34, 2022-02-17

フリースタイルラップバトルは争覇的な協調場面であり、その歌詞には複雑な引用関係が観察される。本研究では、日本語の頭韻および脚韻がそれぞれ子音および母音の共通性により実現されていることに着目し、編集距離から歌詞の韻を同定した。まず、ラップバトルの歌詞テキストの句読点を削除したうえで形態素分析を行い、自立語と付属語の組み合わせとして句を作った。その後、読み仮名をローマ字に変換し、句のペアごとに標準化Levenstein距離を求めた。その結果、トップレベルのラップバトルにおいては、個人内だけではなく個人間で韻を踏むことで引用関係が生じていることが可視化された。韻の統計量は、観客の盛り上がりとの相関分析にも応用できる。
著者
野村 一夫
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.506-523, 2008-03-31 (Released:2010-04-01)
参考文献数
39

私は1990年代から社会学のテキストとウェブの制作に携わってきた.その経験に基づいて,2つの問題について論じたい.第1に,社会学テキストにおいてディシプリンとしての社会学をどのように提示するべきか.第2に,社会学ウェブのどこまでが社会学教育なのか.そして,それぞれの問題点は何か.テキスト制作上のジレンマや英語圏で盛んなテキストサポートウェブなどを手がかりに考えると,意外に理念的問題が重要であることに気づく.社会学教育には2つの局面があり,それに対応して,2つの社会学教育的情報環境が存在する.社会学ディシプリン的知識空間と社会学的公共圏である.テキストとウェブという社会学教育メディアも,この2つの局面に対応させて展開しなければならないのではないか.そう考えると,現在の日本社会学において「社会学を伝えるメディア」の現実的課題も見えてくる.
著者
土井 眞里亜 浦辺 幸夫 山中 悠紀 野村 真嗣 神谷 奈津美
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.785-789, 2010 (Released:2010-11-25)
参考文献数
14
被引用文献数
4 1

〔目的〕本研究の目的は,静的ストレッチング(static stretching;SS)と動的ストレッチング(dynamic stretching;DS)後の関節可動域や筋出力に関して経時的変化を比較し,よりスポーツ活動前に適したストレッチング方法を明らかにすることとした。〔対象〕健康な成人女性18名とした。〔方法〕下腿三頭筋に対しSSおよびDSを行い,ストレッチング直前,直後,5分後,10分後に足関節背屈可動域と底屈筋力を測定した。〔結果〕関節可動域については,SSでは直後に上昇し10分間維持したのに対し,DS後は徐々に上昇し10分後にSS後と同程度に達した。筋力については,直後から10分後までSSよりもDSのほうが有意に高い値を示した。〔結語〕最大筋力を必要とするスポーツ活動の10分前にDSを行うことでより高いパフォーマンスを行うことができる可能性が示唆された。
著者
和田 誠 古賀 聖治 野村 大樹 小達 恒夫 福地 光男 Makoto Wada Seizi Koga Daiki Nomura Tsuneo Odate Mitsuo Fukuchi
雑誌
南極資料 = Antarctic Record (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.271-278, 2011-11-30

2009年に就航した新「しらせ」には,改造した20 ftコンテナを船上実験室として搭載するスペースが確保された.第51次日本南極地域観測隊では,このコンテナ実験室の内部に大気中の硫化ジメチル濃度を測定するためのプロトン移動反応質量分析計を収納し,観測を実施した.本稿では,コンテナ実験室の概要と今後改良すべき点等について報告する.
著者
中谷 辰爾 野村 俊貴 引地 悠太 田中 信太郎 崔 敏鎬 今村 宰 津江 光洋 富岡 定毅
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会論文集 (ISSN:13446460)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.151-158, 2013 (Released:2014-06-27)
参考文献数
38

Experiments on the effects of thermally cracked components of n-dodecane on the ignition and the combustion performance of a scram jet model combustor at Mach 2 were performed. Gaseous components of the thermally cracked n-dodecane at various temperature and 1MPa were measured by a gas chromatograph. Surrogate mixtures including hydrogen, methane, ethane and ethylene were injected into the supersonic air stream in the model combustor, and ignition and combustion behaviors were investigated at total temperatures of 1800 to 2400K. Pressure measurements on the combustor wall and optical observations of combustion using a high speed video camera were conducted. Results indicated that three combustion modes of intensive, transient and weak combustions were observed. Ignition was observed in the boundary layer positioned at the downstream of the cavity, and the flame propagated upward to the cavity. The ignition performance of ethylene was superior to methane and ethane, and their performances were elucidated from the reactivities predicted by a 0-dimensional calculation of chemical reactions for stoichiometric mixtures. An increase in the methane concentration reduced the ignition performance, and an increase in ethylene enhanced the ignition and combustion.
著者
野村 亮太 丸野 俊一
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.494-508, 2007 (Released:2009-04-24)
参考文献数
29
被引用文献数
1

Illustrative researches suggest that a coordinated relational system between a performer and audience affects on humor elicitation process in vaudeville settings. The present study investigated how the system was formed and developed along with a flow of a story. 7 participants including 4 targets sat down face to face with a performer and watched Rakugo (a Japanese traditional performing art) performance. With using coordination of motion as a quantitative indicator, not only duration of coordination between a performer and each target but also its phase difference were examined. The results demonstrated that the humor scores measured by facial expression were higher for audience who were more strongly coordinated with the performer, compared to audience weakly coordinated. For the highest humor scored audience, in contrast to the lowest scored audience, larger coordinated areas emerged and audience-preceding coordination were established at early stage of the story. Even the lowest humor scored audience, the humor score increased in latter part of the story, following the audience-preceding coordination rising. These results suggest that it is important for humor elicitation to occur audience-preceding coordination based on a performer-audience system, where audience actively anticipate next story line, while a performer acts reflecting audience′s response to construct vaudeville settings each other.