著者
鈴木 明子 赤崎 真弓 西野 祥子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.46, pp.2, 2003

【目的】 子どもたちひとりひとりが家庭生活における意思決定をどのような基準で何を考えてどのように行っているのか、その実態を明らかにし、傾向を把握することは、児童・生徒の日常行動をふまえた家庭科カリキュラムの構築と授業設計のために必要不可欠である。本研究では「食事を主体的に準備して食べる」という状況における意思決定の背景を探ることを目的とした。【方法】 日本家庭科教育学会が2001年に実施した『家庭生活についての全国調査』の意思決定場面「休日にあなたが自分で昼ごはんを用意しなければならないとしたら、どんなことを気にかけますか」を用い、11項目について重視する順序を問うとともに、その判断基準や考え方を尋ねる自由記述形式の9つの下位質問項目を設定し、無記名自記式集合調査を行った。併せて休日の昼食などの実態について質問した。 調査時期は2002年9~11月、調査対象は九州地区の小学校4年生93名、小学校6年生105名、中学校2年生93名および高等学校2年生81名、計372名であった。男女の割合は各学年ともほぼ同数であった。 意思決定項目への順位づけの結果を分析し、特徴的な集団の自由記述から、意思決定の背景およびその問題を探った。【結果】 意思決定において重視する項目の順序には、4つの学年各々で有意差がみられた(フリードマンの検定、4学年とも〆0.01)。食事を主体的に準備して食べるという状況下での意思決定の際の基準やプロセスは多様であることが確認できた。このことをふまえてカリキュラムの構築および援業設計を行う必要がある。 しかしながら、夜業を行う際には学習者の意思決定の集団的特徴を知ることも必要である。何らかの傾向を探るために、中学生以下で1番重視すると答えた人数が最も多かった(高校生では2位)「自分で料理ができること」について、その該当者の自由記述を分析した。その結果、同じ項目を意思決定の順位づけの際上位にあげなかった(10および11番目に選択)者と同様に、手間をかけて食事を用意することを特に肯定する記述はみられなかった。該当者は2番目には「おなかいっぱいになること」や「後かたづけが簡単なこと」を気にすると回答した者が多く、このことを裏付けていると思われる。一方、野菜を食べることの大切さや添加物の問題を気にしている者もいたが、調理技能との関連について記述している者はほとんどみられなかった。児童・生徒たちの行動は、健康や環境を意識し、よりよい食生活を営むための必要性から発生しているというよりも、食べるということに対する欲求が大きい誘因となって起こっている場合が多いと推察する。 また、「野菜がたくさん食べられること」と「肉がたくさん食べられること」をそれぞれ1番目および2番目で重視すると答えた者の特徴を比較した。前者は女子に多くみられ、"野菜はいろいろな性質をもっている"、"野菜の栄養素は他で補えるものが少ない"、"身体にいいものが入っていないと不安"など栄養バランスに言及した記述も多く、「自分で料理ができること」も順位づけの上位であった。しかしながらその該当者の中にも、「添加物が少ないこと」を"気にしない"と記述した者が半数近くおり、意思決定の多様な傾向がみられた。また、後者の該当者は男子に多くみられ、「おなかいっぱいになること」を意思決定の順位づけの上位にあげた者が比較的多かった。 家庭科教師は、児童・生徒には多様な意思決定プロセスがあることをふまえ、軽業において、より質の高い健康な食生活を目指して何をしなければならないのかを考えさせる場面を設定することが必要である。
著者
小泉 武夫 村井 総一郎 小泉 幸道 鈴木 明治
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.137-139, 1975

1) 前報では麹菌のメパロン酸非生産株を人工変異法で造成したので, その3株を用いて清酒醸造に応用するための2, 3の基礎試験を行なった。<BR>2) 先ず種麹を試作したところ, 親株に比べて変異株はいずれも繁殖力, 胞子着生が弱かった。<BR>3) 次にその種麹の胞子粉末を使って機械製麹を行ない, その麹について糖化試験'酵素力価測定, メバロン酸生産性, DF (deferriferrichrom) 生成について検討したところ, 酵素力は変異株が弱い反面, メバロン酸'DFは全く生産しなかった。
著者
小泉 武夫 角田 潔和 原 高教 鈴木 明治
出版者
日本生物工学会
雑誌
醗酵工学会誌 (ISSN:03856151)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.p745-751, 1978-11
被引用文献数
1

In the previous paper (Hakkokogaku 55 : 167-174,1977), we trapped koji-aroma components on coconut-shell sctivated carbon attached to the air exhaust of an automatic koji-making machine. By this method, chemically neutral components, 9 alcohols, 23 esters and 9 carbonyl compounds, were detected. This paper deals with the volatile organic acids and amines in koji-aroma adsorbed on activated carbon. These components were extracted with a mixture of ether and n-pentane from the carbon and esparated with ion exchange resins.The fraction of volatile organic acids was analyzed by gas chromatography and carboxylic acid analyzer and five volatile organic acids, acetic, propionic, butyric, caleric and caproic acids were found, of which acetic acid was predominant. The volatile amine fraction was analyzed by thin layer chromatography and gas chromatography. Three volatile amines, ethlamine, i-butylamine and i-amylamine were identified in koji-aroma absorbed on carbon.In addition, tetramethylenediamine, ethanolamine, pentamethylenediamine and β-phenyl-ethylamine were detected in rice koji by extraction with ethanol.
著者
佐藤 信 大場 俊輝 高橋 康次郎 高木 光良 難波 康之祐 小泉 武夫 鈴木 明治
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.8, pp.643-647, 1978
被引用文献数
1

長期貯蔵清酒の一般成分ならびに熟成に関与する成分の分析を行ない, 次の結果を得た。<BR>1) 熟成に関与する成分の貯蔵年数による変化のパターンはこれまでに報告した結果とほぼ同様であった。<BR>2) DFCYが貯蔵年数11年以上の試料には全く検出されなかった。<BR>3) 貯蔵につれて<I>iso</I>-AmOHが増加し, <I>iso</I>-AmOAcが減少した。<BR>4) 96年長期貯蔵清酒は, 通常の清酒に比べて, アミノ酸, 有機酸組成が大きく異なり, 長期貯蔵により成分が変化したものと推定された。また, Feが極めて多く, Cuが少なかった。さらに, アセトンが多量に検出された。筆者らが設定した清酒の甘辛と濃淡の等高線図上に96年長期貯蔵清酒をプロットしたところ, 濃醇辛口の清酒であった。
著者
鈴木 明哲
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.26_2, 2017 (Released:2018-02-15)

現代におけるオリンピックやスポーツの教育的価値、そして体育やスポーツによる人格形成は揺るぎない価値として広く世界に流布されており、もはやそこに懐疑を挟むことはタブーである。 しかし、私たちはこれらの不変的な価値にあまりにも縛られすぎていないか。これらの不変的な価値によって、果たして多くの人々が幸福を感じ、そしてまたスポーツそのものが豊かに発展しているのであろうか。そもそもこれらの不変的な価値はどのようにして誕生し、世界に広まっていったのか。歴史的に検証し、現代との「ずれ」を指摘することは、スポーツに「託せないこと」を見出す手立てとなり得る。 本報告では、近代スポーツの功罪を、スポーツ教育と近代オリンピックという二つの事例から考えてみたい。近代以降、スポーツの教育的価値が形成され、しかも公教育システムとオリンピックムーブメントという二つの巨大な力を得て全世界に広まっていった。この教育的価値がいかに現代との「ずれ」を生じているのかを「罪」とし、逆に何が「功」として拾い上げられ、捉え直されるべきであるのか、体育・スポーツ史の立場から提案してみたい。
著者
小泉 武夫 角田 潔和 山本 多代子 鈴木 明治
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.173-178, 1979-03-15 (Released:2011-11-29)
参考文献数
37
被引用文献数
3 3

β-フェニルエチルァルコールとβ-フェニルニチルアセテートはバラの香気に似たもので, 多くのアルコール性飲料の香気付与のために重要な化合物である。特にβ-フェニルエチルァルコールは種々のアルコール性飲料の中にかなりの量で存在している。例えば筆者らが分析した種々のアルコール性飲料中の存在量は次の様であった。清酒40~60ppm, ウイスキー10~15ppm, ビール15~20ppm, ブランデー5~6ppm, しょうちゅう30~40ppm。本報告ではこのβ-フェニルエチルアルコールとβ-フェニルエチルアセテートの酵母による生成について検討した。その結果は次のとうりである。1.フェニルアラニンからβ-フェニルエチルアルコールの生成量には, 供試酵母間に差異があり, 清酒酵母はビール酵母, ワイン酵母よりその生成は強い。2.清酒酵母の2, 3, 5-トリフェニルテトラゾリウムクロライド還元能とβ-フェニルエチルァルコールおよびβ-フェニルエチルアセテート生成能との関連は供試酵母間に大きな差異がある。その順位は赤色コロニータイプ>赤桃色コロ論一タイプ>桃色コロニータイプ>白桃色コロニータイプであった。3.β-フェニルェチルァルコールは, フエニルァラニンが酵母による脱炭酸, 脱アミノ反応にょって生じる。また我々の実験結果ではチロシンが酵母によって分解されるときも少量生じることを知った。

1 0 0 0 OA 編集後記

著者
鈴木 明子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.553, 1977-07-15

今回は,訪問指導や通園施設での理学療法士と作業療法士の体験を特集にした.病院からの延長線としてアフターケアをしている場合や親しくチームを組んで実際に在宅患者へサービスする場合も,また通園施設で働らくのもみんな「地域での医療サービス」という形に入れられる.数知れぬ受療対象者が,こちらの活動開始を待っている時代ともいえる. 高田氏は,体制づくりの重要さを指摘し,石井氏は,新しい姿をもたなければならない事態に対面し,率直に模索する気持を表わしている.大峯氏・他による家屋改造の写真もよいヒントとなったし,大村氏も新しい形の接し方を記している.宮崎氏・他は,実験的とも呼べる方法で活動する中から,協力体制づくりで幅広く,着実な仕事をし,報告してある.

1 0 0 0 OA 編集後記

著者
鈴木 明子
出版者
医学書院
雑誌
理学療法と作業療法 (ISSN:03869849)
巻号頁・発行日
vol.10, no.11, pp.892, 1976-11-15

わが国のPT・OTの歴史について特集号を組んだ.これ迄にいろいろな立場の方が,この2職種の誕生について「外来の血が混っている」とか「純枠に日本製である」とか主張されていた.前者の場合には明治20年代の軍医の橋本乗晃によって医療マッサージが,明治34年呉秀三がドイツ留学から帰国して手や足革を取り除いて裁縫などをさせることで移入したのが始まりのようである.そのまま大正を過ぎ第二次大戦終戦後,昭和24年に小池文英先生,また水野祥太郎先生が海外に出られて欧米の身体障害音のリハビリテーションを視察され,より広義の治療理念と技術を日本で発達させる努力をなさった.昭和38年に清瀬の地に養成校を建て厚生省は外人講師で教育を始めた. 後者の場合には11世紀に京都岩倉村の大雲寺へ皇女の奇行を治すために送り,観世音に祈ることで病気を治すことができ,以来時の権力者(皇族,武士,富裕な町人など)の親族が岩倉村にいき,住民の家の離れに分散して住みながら大雲寺で祈ったり,水ごおりをとったという. (鈴木明子)
著者
尾形 隆 今井 大 市毛 明彦 山川 光徳 山田 和彦 大類 広 柘植 通 新野 恵司 鈴木 明彦 角田 卓哉 湯田 文朗
出版者
日本リンパ網内系学会
雑誌
日本網内系学会会誌 (ISSN:03869725)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.319-331, 1995

The expression of adhesion molecules on human tonsillar follicular dendritic cells (FDCs) <i>in vivo</i> on cryostat sections and <i>in vitro</i> on isolated FDCs on cytospin preparations was studied. Isolation of FDCs was performed using a magnetic cell sorter (MACS). Immunochemically, FDCs were positive for Mac-1 (CD11b), sialyl-Le<sup>x</sup> (CD15s), CD22, integrin &beta;1 (CD29), CD40, VLA-&alpha;3 (CD49c), VLA-&alpha;5 (CD49e), VLA-&alpha;6 (CD49f), ICAM-3 (CD50), ICAM-1 (CD54), B7 (CD80), and VCAM-1 (CD106). These adhesion molecules, except ICAM-3 (CD50) which was weakly positive only in the light zone (LZ), were positive with a lacy pattern in all zones of secondary lymphoid follicle, especially strong in the LZ. ICAM-3 (CD50) was positive on more than half of isolated FDCs, but other molecules were positive on almost all isolated FDCs. Concerning the ligands on B cells for these adhesion molecules, the Mac-1 (CD11b)-ICAM-1 (CD54), the ICAM-3 (CD50)-LFA-1 (CD11a/18), and the VCAM-1 (CD106)-VLA-4 (CD29/49d) interactions in the LZ, the sialy-Le<sup>x</sup> (CD15s)-L-selectin (CD62L) and the VCAM-1 (CD106)-VLA-4 (CD29/49d) interactions in the mantle zone, and the ICAM-1 (CD54)-LFA-1 (CD11a/18) interaction in the entire lymphoid follicle may participate in FDC-B cell adhesion. Furthermore, above mentioned immunohistochemical evidence that FDCs were positive for fibronectin-receptor (CD29/CD49e) and laminin-receptor (CD29/CD49f), was confirmed with a frozen-section binding assay, using isolated FDCs and cryostat sections of tonsils. The numbers of FDCs binding to germinal centers (GCs) were reduced remarkably by pretreatment with monoclonal antibodies for CD29 (32.8&plusmn;4.1% of the control), CD49e (29.7&plusmn;2.5%), and CD49f (18.8&plusmn;0.8%). These data clearly indicated that FDCs bind to the reticulin or laminin fiber in GCs via either receptor.
著者
一色 玲子 鈴木 明子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.50, pp.26, 2007

<B><BR>【目的】</B></BR> 家庭科の調理実習は一般的にグループ活動として展開されており,その学習環境が多様な学びを構成している。実習台を取り巻く場の共有は,調理実習固有の「相互作用のある対話(transactive discussion:TD,以下TDと略記)」を誘発する。TDとは,「自分自身の考えをより明確にしたり,相手の考え方や推論のしかたにはたらきかけ相手の思考を深めたりするような相互作用のある対話(Berkowits&Gibbs,1983)」である。調理実習では調理の分担等,異なるモノや他者との関係性にもとづいた対話がみられる。本報告では中学校の調理実習を対象に,抽出班の授業過程におけるTDに着目し,対話の実態を探ることを目的とした。<B><BR>【方法】</B></BR> 授業分析の対象はF中学校の2年生2学級であった。対象授業は平成18年5月11日(1組),同16日(2組)に2時間構成の授業として実施された。実習題材は炊き込みご飯,だし巻き卵,すまし汁であった。<BR> 実習授業のVTR記録にもとづき,各学級抽出班5名のプロトコルおよび行動分析をおこなった。高垣ら(2004)の「TDの質的分析カテゴリー」にもとづき,他者の考えを引き出したり表象したりする表象的トランザクション(representational transaction)と互いの考えを変形させたり認知的に操作したりする操作的トランザクション(operational transaction)を検討した。さらに,個人意識および実習自己評価を質問紙により調査し,分析の資料とした。個人意識調査は,平石(1990)の自己肯定意識尺度をもとに対自己領域17項目(因子:自己受容,自己実現的態度,充実感)と対他者領域20項目(因子:自己閉鎖性・人間不信,自己表明・対人的積極性,被評価意識・対人緊張)計37項目を設定し,5段階評価で回答を得た。</BR><B>【結果および考察】</B><B><BR> 1.対話の量的分析および質的分析</B></BR> 抽出班一人当たりの対話平均回数は1組131.4回(対班員117.2回,89.2%),2組197.2回(対班員169.8回,86.1%)であった。そのうちTDを含む場面は1組10回,2組11回であった。両抽出班とも一人ずつだし巻き卵を焼く場面にTDが含まれていた。また,失敗や完成する場面では象徴的な表象的トランザクションが発現していた。さらに,他者の見守る中で作業する場面や他者を補助する場面等では,学習者相互に場の共有を認識したTDがみられた。<B><BR> 2.個人特性と対話との関連性</B></BR> 個人特性と調理実習の対話の質に関連がみられた。対人的積極性が高い生徒は他者評価が多く,自己受容が高い生徒は指示や指摘を与えることが多いこと,被評価意識が高い生徒は作業の確認が多く,自己閉鎖性が低い生徒は指示を受けることが多い傾向がみられた。<B><BR> 3.調理実習に対する評価と対話との関連性</B></BR> 実習後の自己評価アンケートより,「班員との協力」,実習の調理体験や他者のサポートにもとづく「役立ち感」,料理のできばえや他者からの称賛による「満足感」,先生や班員等「他者とのかかわり」から調理実習を肯定的に評価していた。これらは他者との対話に内在しており,両トランザクションによる認知的葛藤が知識・技能の習得にそれぞれ関与していることが推察できた。 具体的な調理操作を伴う調理実習において,対話におけるTDが活動や思考の方向性に影響を与えるだけでなく,学習者の認知的葛藤を引き起こすことが示唆された。中でも操作的トランザクションを含む他者間葛藤は学習者の情緒面と連動し,個々の学習評価に有用な役割をもつと考える。
著者
大下 市子 鈴木 明子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, 2014

【目的】<br>&nbsp; 小学校,中学校および高等学校の家庭科学習によって,自立した生活主体としての生活実践力を身に付けさせることが必要である。布を用いた製作の経験が,生活実践力にどのように影響を及ぼしているのか,大学生の家庭科における製作体験と生活実践力との関係を検討することによって明らかにしておくことは,今後の教員養成の指導のあり方を考える上で重要なことと考えられる。 現在の大学生は,中学校での製作は選択内容であり必ず学んでいるとは言えない。また, 高校では「家庭基礎」履修の場合,被服の製作は行わないという教育課程で学んでいる集団である。日常生活でも裁縫経験が乏しい現状を勘案すると,製作体験の精査を行うことは不可欠である。<br>&nbsp; &nbsp;そこで,まず,小学校,中学校および高等学校家庭科でどのような教材を製作し,どのような意識をもって学んできたかという実態を把握した上で,生活実践力との関係を検討することを本報告の目的とした。<br>【方法】 <br>&nbsp; &nbsp;調査時期:2012年1月,2013年1,7月 <br>&nbsp; &nbsp;調査対象者:広島市私立総合大学女子大学生1年生142名,2年生53名,3年生10名,4年生6名,合計211名。広島県内出身者 約85%。 <br>&nbsp; &nbsp; 調査内容:小学校,中学校および高等学校家庭科において製作した布を用いた教材と製作への興味・関心・意欲,製作物の使用実態についての質問紙調査を行った。同時に生活を実践する力10項目について問い,製作体験や意識との関係を分析した。<br>【結果】 <br>&nbsp; &nbsp;家庭科での製作体験有りは,小学校96.7%,中学校75.4%,高等学校50.2%であった。小中高を通しての製作教材数は,3種類が最も多く28.0%,ついで4種類20.9%,2種類19.4%であった。小学校での主な製作物は,袋類(ナップサック・リュックサック・巾着など)であった。体験有りの76.0%が袋類,60.3%がエプロン類を製作していた。中学校では,小物類(クッション・ティッシュケース・刺繍など)がもっとも多く,体験有りの55.3%が製作していた。ついでズボン類(ズボン・ハーフパンツ・短パンなど)で23.9%,エプロン類17.0%であった。高等学校では,袋類(トートバック・手提げ・巾着など)が32.1%,衣服類(ジャケット・シャツ・ワンピースなど)が25.5%,エプロン類が23.6%であった。 これら製作物への興味・関心,製作への意欲は高く,いずれの校種も肯定的な回答が8割みられた。しかし,「製作物をよく使用した」は高等学校34.1%,小学校32.0%,中学校27.8%であった。その後の製作経験を問うたところ,小学校68.2%,中学校64.7%,高等学校67.4%が作っていなかった。<br> 小学校,中学校および高等学校で重複して小物類,エプロン類,袋類を作成している実態が明らかになった。それぞれの校種における教材の種類,布の種類及び製作方法などの検討を行う必要があると考えられる。小学校と中学校において,興味・関心,製作意欲が高いのは小物類であった。中学校のパンツ類製作への興味・関心,製作への意欲は他の製作教材に比べて低く,使用頻度も低い傾向にあった。高等学校では,衣服類製作への興味・関心,製作の意欲は高いものの,使用頻度は低い傾向がみられた。<br> また,小学校,中学校および高等学校を通じての製作教材数と生活を実践する力の「成果」の項目の関係をみたところ,製作数が少なくても成果がみられ,製作数が増えるに従い成果が上がっていることが明らかになった。<br>&nbsp;&nbsp;
著者
鈴木 明彦 志賀 健司
出版者
日本貝類学会
雑誌
ちりぼたん (ISSN:05779316)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.116-121, 2007-11-08
参考文献数
28

トリガイFulvia muticaは,ザルガイ科に属する大型の二枚貝類である。九州・朝鮮半島・中国沿岸から陸奥湾に分布し,水深10-30mの砂泥底に生息するとされている(波部,1977;松隈,2000)。また,トリガイの軟体部は美味であるため,各地で食材としても利用されている。トリガイは,主に暖水域に分布しており,その北限は日本海側では陸奥湾付近,太平洋側では東京湾付近とされている(肥後・後藤,1993;松隈,2000)。しかし,北海道においても西南部でまれに記録されており(石川,1953;伊藤,1961;波部・伊藤,1965),2005年12月には函館湾で大量漂着が認められた(山崎・他,2007)。今回,2006年10-11月,2007年3月に石狩湾沿岸で多数の打ち上げられたトリガイを確認した。これは最北の記録になるため,石狩湾からのトリガイの産出を報告する。また,北海道の第四系から産出するトリガイ化石の再検討を行い,その古環境学的意義を考察した。
著者
成田 紀子 鈴木 明子 菊池 裕 一戸 正勝 池渕 秀治 田中 東一 沢田 純一
出版者
Japanese Society of Mycotoxicology
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.1992, no.36, pp.39-44, 1992-12-31 (Released:2009-08-04)
参考文献数
8
被引用文献数
2

Seeds of Job's tears (Coix lachryrna jobi var. ma-yuen) are commonly used as herbal drug and health food in Japan, but mycotoxin contamination such as aflatoxin and zearalenone (ZEN) on Job's tears products is often problematic. Thus, a mycological examination on 35 samples of raw seed materials and commercial products of Job's tears was carried out. Aspergillus flavus, Curvularia spp., Bipolaris coicis, Fusarium pallidoroseum (=F. semitecturn), F. equiseti and F. moniliforme were detected as predominant fungi in the samples. Of the Fusarium species isolated, F. pallidoroseurn was most dominant. ZEN producing ability of these Fusariunn isolates on seeds of Job's tears in cultures was measured by HPLC analysis. The isolates of F. pallidoroseum, F. equiseti and F. moniliforme produced ZEN, with maximum yields of 55, 244 ng/g, 137 ng/g and 54 ng/g, respectively. Among tested 12 samples of the commercial Job's tears products, ZEN contamination was found in 3 hulled seeds (21; 25; and 44 ng/g), 2 crucked products (6; 29 ng/g) and 3 powdery products (23; 46 and 116 ng/g).
著者
川村 伸悟 鈴木 明文 吉岡 喜美雄 西村 弘美 奈良 正子 安井 信之
出版者
医学書院
雑誌
Brain and Nerve 脳と神経 (ISSN:00068969)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.475-480, 1986-05-01

抄録 体性感覚誘発電位(somatosensory evoked potentials:SEP),早期陰性成分N1振幅値(P1-N1 peakto peak amplitude)の再現性と,SEP記録方法の内,特に加算回数と体性感覚刺激強度の妥当性につき検討した。対象は,正常人15例,平均年齢29歳である。体性感覚刺激は,2本の針電極を手関節部正中神経上皮膚に刺入し,持続時閥1msecの低電圧矩形波刺激により行った。SEPの記録は,体性感覚刺激と反対側頭頂部頭皮より記録した脳波を平均加算して行った。N1振幅値の再現性を検討した結果,(1)加算回数は多いほど再現性は高くなった。しかし,臨床応用の場で刺激間隔1秒の時には,250回が限界と考えた。(2)刺激強度は,thumb twitchが生じる刺激電圧よりわずかに大きな電圧とする限り,N1振幅値の再現性への影響はなかった。(3) SEPの成分は刺激後500msec以降には認めず,刺激間隔を1秒とすることは妥当であった。但し,刺激間隔を一定にすると,規則的な背景脳波をaverage outできない場合がある。(4)加算回数250回,刺激強度thumb twitch threshold,刺激間隔1秒の条件下ではSEP反復記録におけるN1振幅値比の変化し得る範囲(95%信頼区間)は,0.440以上1.62以下と考えられた。
著者
杉山 健治 上田 泰久 鈴木 泰之 逸見 旬 浅見 優 木暮 一哉 田村 岳久 齋藤 智幸 鈴木 明恵 平塚 尚哉
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.CbPI1250, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】 上位頚椎と下位頚椎は解剖学的構造や機能に異なった特徴を持っており,さらに頚椎と肩関節複合体との解剖学的連結も強いことが数多く報告されている。臨床においても肩関節可動域制限を有している症例に対して頭頚部からの介入により肩関節可動域が変化することを経験する。しかし,頭頚部のアライメントと肩関節可動域の関係性を示した報告は少ない。そこで,本研究では,頭頚部のアライメント変化と肩関節の可動域との関係を検討することを目的とした。【方法】 対象は肩関節・頚部・顎関節に整形外科疾患の既往のない健常成人男性12名(年齢24.8±2.8歳)とした。被験者の利き手はすべて右利きとした。測定肢位は,頚部を正中位にした背臥位(以下,頚部正中位)・頭部を右側屈位にした背臥位(以下,頭部右側屈)・頭部を左側屈位にした背臥位(以下,頭部左側屈)・頚部を右側屈位にした背臥位(以下,頚部右側屈)・頚部を左側屈位にした背臥位(以下,頚部左側屈)の5肢位とした。頭部の左右側屈位は,下顎下端中央と剣状突起・左右ASISの中点の3点を結ぶ線(基本軸)と左右外眼角の中点と下顎下端中央を結ぶ線(移動軸)のなす角度が10度になる肢位とした。頚部の左右側屈位は,頚切痕と剣状突起・左右のASISの中点の3点を結ぶ線(基本軸)と左右外眼角の中点と頚切痕を結ぶ線(移動軸)のなす角度が10度になる肢位とした。測定内容は,肩関節の水平内転・2nd positionでの内旋・2nd positionでの外旋の自動運動時の関節可動域とした。関節可動域は,日本整形外科学会と日本リハビリテーション医学会が制定する「関節可動域表示ならびに測定法」に準じて被検者の右上肢で測定した。なお,頭頚部の左右側屈位のアライメント設定および関節可動域の測定は同一検者が行い,代償動作の確認を他検者と2名で行った。測定肢位と測定運動はランダムに実施し,頭頚部の5肢位における肩関節可動域の変化を調べた。統計処理はSPSSを用い,一元配置分散分析後に多重比較(Bonferroni)を行い,有意水準は5%未満とした。【説明と同意】 本研究の内容を書面と口頭にて十分説明し,同意書に署名を得た上で行った。【結果】 水平内転では,頚部正中位53.8±7.7度,頭部右側屈60.4±7.2度,頭部左側屈48.0±6.6度,頚部右側屈52.1±6.9度,頚部左側屈52.1±8.9度であった。頭部右側屈は他4肢位と比較して有意に可動域が増大した(p<0.05)。また,頭部左側屈は頚部正中位より有意に可動域が減少した(p<0.05)。 2nd positionでの内旋では,頚部正中位102.5±9.7度,頭部右側屈107.9±10.5度,頭部左側屈93.3±10.1度,頚部右側屈98.8±13.3度,頚部左側屈100.8±11.6度であった。頭部右側屈は頭部左側屈・頚部右側屈・頚部左側屈の3肢位と比較して有意に可動域が増大した(p<0.05)。 2nd positionでの外旋では,頚部正中位101.7±10.1度,頭部右側屈106.3±9.6度,頭部左側屈95.4±11.8度,頚部右側屈97.9±10.3度,頚部左側屈94.6±11.0度であった。頭部右側屈は頭部左側屈・頚部右側屈・頚部左側屈の3肢位と比較して有意に可動域が増大した(p<0.05)。 頚部左側屈と頚部右側屈では,各測定運動において可動域に有意差は認められなかった。【考察】 頭部側屈位は,頚部側屈位と比較して肩関節可動域に大きく関与していることが示唆された。頭部側屈位は環椎後頭関節や環軸椎関節の上位頚椎の運動が主であり,頚部側屈位は下位頚椎の運動が主である。頚椎の側屈には回旋が伴なう複合運動(coupling motion)があることが報告されており,頚椎の複合運動により上位頚椎および下位頚椎に付着する筋の作用が異なるものと考えられる。上位頚椎および下位頚椎に付着する筋には僧帽筋上部線維や肩甲挙筋などがあり,これらは肩甲帯へ付着する。そのため,側屈の運動様式が変わることが肩関節複合体に影響を与えたものと考えられる。以上より,上位頚椎の機能障害や位置異常が肩関節機能を最大限に発揮することを制限する一因になると考える。今後,筋硬度等も含めて引き続き検証をしていこうと考えている。【理学療法学研究としての意義】 上位頚椎および下位頚椎の動きが肩関節に関係していることが認められた。肩関節に可動域制限を有する症例に対して,頚部の評価・治療を考慮した理学療法展開が必要であると考えられる。
著者
横山 伸也 小木 知子 小口 勝也 村上 雅教 鈴木 明
出版者
公益社団法人 石油学会
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.262-266, 1986
被引用文献数
12

前報では, コナラ木粉およびアルカリ水溶液を高圧反応容器に入れて, 適当な反応条件下で加圧, 加熱することにより, 約50%の収率で液状生成物が得られることを報告した。本報では, この水相における液化法が, コナラ以外の他の樹種, 樹皮, あるいはバガスなどに対しても, 適用でき得るか否かを調べるために11種の木材, 3種の樹皮およびバガスの液化を行い, 液状油の収率と性質を検討した。すなわち, 広葉樹としてコナラ, ドロノキ, ブナ, 針葉樹として杉, ツガ, スプルース, カラ松, 赤松, 南洋材としてレッドラワン, カプール, カメレレを, 樹皮としてカラ松, 赤松, トド松を用いた。この他に比較のため, 砂糖きびの絞りかすであるバガスも用いた。これらの分析値を <b>Table 1</b>に示した。液化は, 前報で最適と考えられた条件, 温度300°C, 初圧2.0MPa, 滞留時間 (設定温度における保持時間) 0分, 木粉/触媒/水比が5/0.1/30で行った。<br>アセトン可溶分として定義した液状油の収率とCHR (CとHの回収率) は, それぞれ以下の式から求めた。<br>収率(%)=(生成油の重量/原料の重量)×100<br>CHR(%)=(生成油中のCとHの重量/原料中のCとHの重量)×100<br>この結果をまとめて<b>Table 2</b>に示した。表から明らかなように, 木材に関しては, 収率は約50%程度であり, カラ松と赤松がやや低い値を示したが, 総体的には樹種による顕著な相違は認められなかった。バガスはほとんど木材と同じ収率であったが, 樹皮の場合は20-27%と低収率であった。収率と原料の組成との関係について, <b>Fig. 1</b>に示すように原料中のリグニンと収率とをプロットすると, 木材のグループと樹皮のグループに大別されたが, それぞれのグループ内では特に一定の傾向は見られなかった。また, 収率と他の成分との間にも特に傾向は見られなかった。<br>樹皮が木材に比べて低収率なのは, 反応性が低いためではなく一度生成した液状油が repolymerization して固体の residue になるからである。<b>Fig. 2</b>に, 原料中のリグニンと発生するガスおよび固体 residue の量との関係を示した。リグニンが増加すると, 固体 residue も増加するがガス量はほとんど一定である。前報では, 反応時間が長くなるにつれて液状油収率が減少してくる現象が観察されたが, これも同じようにrepolymerizationによると考えられる。事実, Boocock ら (文献12) は, リグニンを多く含む樹皮をフラッシュ的に熱分解し急冷した場合, 通常の数10分の加熱による液化に比べてはるかに収率がまさっており, これは primary oil の repolymerization が阻害されるためであると報告している。
著者
高寺 政行 大谷 毅 森川 英明 乾 滋 南澤 孝太 佐藤 哲也 鋤柄 佐千子 大塚 美智子 金 キョンオク 宮武 恵子 松村 嘉之 鈴木 明 韓 載香 柳田 佳子 古川 貴雄 石川 智治 西松 豊典 矢野 海児 松本 陽一 徃住 彰文 濱田 州博 上條 正義 金井 博幸 坂口 明男 森川 陽 池田 和子 鈴木 美和子 北折 貴子 鄭 永娥 藤本 隆宏 正田 康博 山村 貴敬 高橋 正人 中嶋 正之 太田 健一 堀場 洋輔
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2012-05-31

我が国ファッション事業の国際化に寄与する研究を目指し,国際ファッション市場に対応する繊維工学的課題の解決,国際ファッション市場に通用するTPS/テキスタイル提案システムの構築を行った.国際市場に実績ある事業者を対象とし,現場の調査,衣服製作実験,商品の評価を行い我が国との比較を行った.欧州・中国と日本における衣服・テキスタイル設計,評価および事業の違いを明らかにし,事業と技術の課題を明らかにした.デザイナーのテキスタイル選択要件を調査し,テキスタイルの分類法,感性評価値を組み込みTPSを構築した.日欧で評価実験を行い有効性を確認した.また,衣服・テキスタイル設計評価支援の技術的知見を得た.
著者
日置 佳之 百瀬 浩 水谷 義昭 松林 健一 鈴木 明子 太田 望洋
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.759-764, 2000-03-30
被引用文献数
7 6

鳥類の生息環境保全の観点を取り入れた湿地植生計画の立案手法を開発する目的で,国営みちのく杜の湖畔公園のダム湖畔湿地(面積約38ha)において鳥類の潜在的生息地の図化とそれに基づくシナリオ分析を行った。まず,鳥類の分布と現存植生の関係をGISによって分析し,類似の植生を選好する鳥類のグループ(ギルド)を,サンプルエリア内の植生の面積を説明変数とするクラスター分析で抽出した。次に,植生の面積を用いた正準判別分析により,各ギルドが選好する植生の組合せを求め,ギルドの分布予測モデルを構築した。3番目にこれを適用して調査地全域における鳥類の生息地タイプ図を作成した。最後に,人為的に植生を変化させる2種類のシナリオによって,潜在的生息地がどう変化するか予測し,これを基に植生計画を検討した。
著者
古田 幸子 鈴木 明子 木岡 悦子 森 由紀 高森 壽 菊藤 法 谷山 和美
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.49-58, 1998-01-15
被引用文献数
2

歩き始めの子どもの靴の着用実態を調査し, 着用靴にどのような特徴があるのかを, 足部形状の成長変異の結果をふまえて, サイズ, はかせやすさ等の面から, 検証することを試みた. 主な結果は以下のとおりである. (1) 調査当日の着用靴について, 保育者は「サイズ」「はかせやすさ」を主な購入動機としており, 足への適合性と同程度に, はかせる側の着脱の簡便性が重視されていた. 一方, 半年から1年の間同サイズの靴をはかせている例もみられた. また, ほとんどの者がはかせやすさについては評価の高い靴を着用しているものの, とめ具の様式によってはかせやすさの評価が有意に異なることなどが明らかになった. (2) 乳幼児靴全般を対象にしたサイズ適合に関する実態は, 約3割強が, 大きめのサイズを購入しており, 全体の約半数の者が, 足長を基準に選んだ際, 他の部位が合わない場合があるとの回答であった. 特に足先から甲を覆う部分に関して, 市販靴のゆとり量に問題がある場合が多かった. (3) 足部計測値と着用靴サイズ間の関係を分析した結果, 足高の計測値と靴サイズとの相関が低く, 靴設計において考慮する必要があることが確認された. 本調査を行うに当たり, ご協力いただいた保育園ならびに保護者の皆様に感謝いたします. 本研究の一部は日本家政学会第45回大会において発表した.