著者
中塚 武 阿部 理
出版者
総合地球環境学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

年輪に含まれるセルロースの酸素同位体比が、樹種の違いに依らず、降水同位体比と相対湿度と言う2つの気象因子のみに支配されて変化することに着目し、日本全国の多様な樹種からなる考古木質遺物の年輪年代決定に利用できる普遍的な年輪セルロース酸素同位体比の標準変動曲線を、過去数千年間に亘って日本各地で作成した。そのために、全国から得られた縄文時代以来のさまざまな年代の長樹齢の年輪試料(自然埋没木、考古木質遺物、古建築物、現生木などのさまざまな檜や杉の木材)の年輪セルロース酸素同位体比を測定すると共に、その成果を縄文時代以降の東海、北陸、近畿などのさまざまな地域の考古遺跡の年代決定に利用することに成功した。
著者
阿部 教恩 星野 仁 壹岐 伸彦
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.64, no.7, pp.493-499, 2015-07-05 (Released:2015-08-05)
参考文献数
25
被引用文献数
2

チアカリックス[4]アレーン-p-テトラスルホン酸(TCAS)は,pH 6.5付近の水溶液中でTb(III)とほとんど錯形成しないが,TCASの架橋硫黄と親和性の高いCd(II)を加えると,自発的にCd2Tb2(TCAS)2錯体を形成しエネルギー移動発光を示す.そこで本錯体の形成を用いCd(II)の発光定量法を開発した.Cd(II)の検出限界(S/N=3)は2.08 nM(0.23 ppb)という良好な値であった.さらに,本法を米試料中Cd定量へ適用した.酸分解後の米試料に含まれるリン酸イオンはキレートディスクによって除去,また,Cu(II)はイミノ二酢酸によってマスキングし,妨害を除去した.前処理,定量操作を行ったときのCd検出限界は,1 gの米試料を分解して本操作を施したとすると米中12.2 ppbのCdに相当する.これは国内基準値0.4 ppmと比べ十分に低い値である.実際に,認証値(Cd: 0.548 ppm)付きの米標準試料を測定したところ0.564 ppmという良好な結果が得られた.
著者
梅津 亮冴 阿部 純子 上田 夏実 加藤 大和 中山 蓉子 紀ノ定 保臣 中村 光浩
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.135, no.8, pp.991-1000, 2015 (Released:2015-08-01)
参考文献数
19
被引用文献数
3 7

Over-the-counter (OTC) drugs play an important role in self-medication. To ensure patient safety, pharmacists should ask patients to pay attention to possible adverse events (AE) associated with OTC drugs and educate patients about the symptoms related to those AEs. The aims of the present study were as follows: (1) to assess the tendency of AEs to occur with OTC drug use in Japan; (2) to detect a safety signal for OTC drugs using the reporting odds ratio (ROR); and (3) to evaluate clustery features, which include suspected drugs and therapeutic classifications, and safety signal indices (number of reports and the ROR), using cluster analysis. The number of reports of AEs following use of combination cold remedy, antipyretic and analgesic remedy, and herbal medicine was 1007, 566, and 221, respectively. We set the cluster number at five; clustery features obtained were as follows: (1) high reporting rate for skin and subcutaneous tissue disorder AEs was the largest group related to combination cold remedy; (2) high reporting rate for nervous system disorder AEs including dizziness was the second largest group. The same medicinal ingredient may demonstrate similar tendencies of the occurrence of AEs and similar clustery features in the Japanese Adverse Drug Event Report database. Our analysis of AEs associated with OTC drugs may be useful for pharmacists and patients alike. Further studies are required to draw better-informed conclusions.
著者
三浦岱栄 池見 酉次郎 阿部 正 石川 中
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
精神医 (ISSN:05593182)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.151-163, 1972
被引用文献数
1

精神身体医学会も発足してから, すでに10年を越し, 会員数も1000人を越している。学会発足当時ないし発足前の日本における精神身体医学の実状について熟知していない若い会員も多くなった。このあたりで, 日本における精神身体医学の歴史を小括しておいたらという案が編集委員会で持ち上り, 綜説の形式で, 三浦岱栄先生に御執筆をお願いすることに決まった。しかし先生は現職の杏林大学のお仕事がお忙しいとのことで, その代わりとして, 池見, 阿部両先生を混じえ, 座談会形式ならよいとの御返事があり, このような企画となった次第である。もとより限りある時間内で, 限りあるメンバーで行なった回顧であるから, 足りない点も多いと思うので, 今後, なんらかのかたちで足りなかった部分を補ってゆき, 最終的には日本精神身体医学の小史としてまとめたいと考えている。
著者
阿部 清彦
出版者
関東学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

近年、重度肢体不自由者のコミュニケーションを支援するために、視線によりコンピュータを操作したり、文字などを入力する視線入力システムについての研究が行なわれている。視線入力システムを使用するには、画面に表示されたアイコンを視線で選択するだけでなく入力を決定する必要がある。本研究課題では、ユーザの視線と意識的な瞬目(随意性瞬目)を自動検出することにより、視線と瞬目のみで一般的なパソコンを操作するシステムを開発した。このシステムは、市販のビデオカメラとパソコンから構成されており、汎用性が高く安価である。
著者
阿部 智 有明 幹子 品田 佳世子 川口 陽子
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.121-129, 2003-04-30
被引用文献数
6

フッ化物配合歯磨剤の利用状況を把握し,フッ化物配合歯磨剤の普及を図るための基礎資料を得るために本研究を実施した.2000年に東京都内の幼稚園児161名,小学生1,388名,中学生636名,およびその保護者2,144名,計4,329名を対象に質問票調査を行った.その結果,全対象者の96%以上は1日1回以上歯磨きを行っており,平均の歯磨き回数は2回であった.幼稚園児と小学生の約15%は歯磨きするときに歯磨剤を全く使用していなかった.フッ化物配合歯磨剤の利用状況は,常時使用者が幼稚園児48.1%,小学生48.8%,中学生63.7%,保護者65.5%,ときどき使用の者も含めると幼稚園児83.5%,小学生76.0%,中学生76.2%,保護者77.0%,全体では76.9%であった.歯磨剤を使用する主な理由はう蝕予防と歯周疾患の予防であった.歯磨剤を使用しない主な理由は子供では「味が悪い」,「泡立ちがよすぎてよく磨けない」であり,成人では「摩耗すると思う」,「害があると思う」,「歯科医師にいわれて」であった.本調査によって,フッ化物配合歯磨剤の使用者は8年前より増加していること,歯磨剤の使用を勧めない歯科医師がいることが判明した.今後さらにフッ化物配合歯磨剤を普及させていくためには,その効果などに関する情報提供を行い,また歯科専門家に対してもフッ化物配合歯磨剤の使用を勧めるよう働きかけていくことが必要であると考察された.
著者
今川 貴博 桑原 文夫 田中 実 阿部 秋男 小栗 健 廣瀬 陽一
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学研究発表会 発表講演集
巻号頁・発行日
vol.38, pp.1387-1388, 2003

杭の急速載荷試験として重錘落下方式におけるクッション材に粘性ダンパーを用いた模型実験を行った。模型砂地盤に設置した直径41mmの模型鋼管杭の頭部に取り付けた6つのダンパーに63.5kgの重錘を落下させ、杭頭における軸ひずみ、鉛直変位および加速度を測定した。その結果、粘性ダンパーはコイルばねを用いた場合に比べて2倍以上の載荷時間を実現できた。また、静的載荷試験(押込み試験)の第2限界荷重までの荷重~変位量曲線を再現できた。
著者
青木 政勝 瀬古 俊一 西野 正彬 山田 智広 武藤伸洋 阿部 匡伸
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告デジタルドキュメント(DD) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.70, pp.7-12, 2008-07-17

近年,GPS など位置計測が身近なものになり,個人の位置情報を記録することが容易になった.ユーザが移動した軌跡となる位置情報のログデータはライブログにおいて,最も基本的なデータであり,購買履歴や視聴履歴,写真などの様々なデータと位置情報を組み合わせて蓄積し,ライフログとして活用するサービスが検討されている.一方,ユーザの位置情報に基づく様々な情報の提供が実用化されてきている.現状は現在位置だけであるが,その背後にあるユーザの過去の情報,すなわちライフログと結びつけることで,ユーザの行動特性やライフスタイルを反映した情報の提供が行えるようになる.本研究では基本的なデータである位置情報をライフログとして蓄積することにより,ユーザ状況やプロファイルを推定することを目的としている.ユーザがおかれた状況として,まず位置履歴から移動中と滞在中といった行動モードを切り分ける手法を検討する.In recent years, it has become familiar a positional measurement such as GPS, and users can easily record there location information. The location data which include moving tracks is the most basic data in life-log. The location data can be combined with various data, purchase histories, attention histories, photographs, and so on. Those data attempt to use for life-log service. While current services only use user's location, more variable services can be provided using user's behavioral trait and lifestyle which can be estimate by user's life-log. Our research aims to estimate user's situation and their profile from accumulated location data, hi this paper, we examine the method of extracting activity modes, that is moving or staying, from positional histories.
著者
高木 修 田中 優 小城 英子 TANAKA Masashi 小城 英子 KOSHIRO Eiko 太田 仁 OHTA Zin 阿部 晋吾 ABE Singo 牛田 好美 USHIDA Yoshimi
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.131-153, 2011-02

The purpose of this paper is to categorize the themes of the graduation theses which were written by the students of a "social psychology on interpersonal relationships and behaviors" seminar, and to identify the history of research in interpersonal social psychology from the viewpoint of undergraduate's interests. This arrangement and analysis seems to be useful as a reference when undergraduates interested in interpersonal social psychology decide their themes of the graduation theses, and as a clue to know"fashion" of themes of interpersonal social psychology. 本稿は、「対人関係、対人行動の社会心理学的研究」ゼミナールの卒業論文のテーマを分類し、学部学生の研究関心の視点から、対人社会心理学研究の変遷を跡づけることを目的としている。このような論文テーマの整理と分析は、対人社会心理学に興味を持つ学部学生が卒業研究のテーマを決定する際の参考資料としても、また、対人社会心理学の研究テーマの「流行」を知る手掛かりとしても活用できると考える。
著者
高木 修 田中 優 小城 英子 太田 仁 阿部 晋吾 牛田 好美
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.131-153, 2011-02

The purpose of this paper is to categorize the themes of the graduation theses which were written by the students of a "social psychology on interpersonal relationships and behaviors" seminar, and to identify the history of research in interpersonal social psychology from the viewpoint of undergraduate's interests. This arrangement and analysis seems to be useful as a reference when undergraduates interested in interpersonal social psychology decide their themes of the graduation theses, and as a clue to know"fashion" of themes of interpersonal social psychology. 本稿は、「対人関係、対人行動の社会心理学的研究」ゼミナールの卒業論文のテーマを分類し、学部学生の研究関心の視点から、対人社会心理学研究の変遷を跡づけることを目的としている。このような論文テーマの整理と分析は、対人社会心理学に興味を持つ学部学生が卒業研究のテーマを決定する際の参考資料としても、また、対人社会心理学の研究テーマの「流行」を知る手掛かりとしても活用できると考える。
著者
森谷 茂樹 岩波 宏 古藤田 信博 髙橋 佐栄 山本 俊哉 阿部 和幸
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.279-287, 2009-07-01
被引用文献数
1 29

カラムナータイプリンゴの育種を進展させるため,ゲノム上の <i>Co</i> 周辺領域について連鎖地図を構築し,実際の育種においてカラムナータイプの実生を正確かつ効果的に選抜できる DNA マーカーを同定した.3つのマッピング集団においてリンゴ第10連鎖群の連鎖地図を構築し,2つの集団,'ふじ' × 8H-9-45 と'ふじ' × 5-12786 において <i>Co</i> がマッピングされた.<i>Co</i> 近傍にマップされた DNA マーカーである SCAR<sub>682</sub>,SCAR<sub>216</sub>,CH03d11,Hi01a03 について,カラムナータイプの33品種・系統と,カラムナータイプではない日本のリンゴ育種における7つの祖先品種のマーカー遺伝子型を決定した.Hi01a03 の 174 bp の増幅断片は全てのカラムナータイプ品種・系統および'旭'で検出されたが,その他の祖先品種では検出されなかった.SCAR<sub>682</sub> の 682 bp,CH03d11 の 177 bp の増幅断片は1系統を除く全てのカラムナータイプ品種・系統および'旭'において検出されたが,その他の祖先品種群では検出されなかった.また,18 交雑組合せから得られたカラムナータイプ個体全 170 個体において,<i>Co</i> 近傍にマップされたマーカーを検出した結果,SSR マーカー CH03d11 の 177 bp のアリルが全ての個体で検出されたことから,CH03d11 が <i>Co</i> と最も近接するマーカーと考えられた.これらの結果より,CH03d11 がマーカー選抜においてカラムナータイプとカラムナータイプでない個体を区別する最も信頼できるマーカーであると考えられた.5-12786 などの,果樹研究所における現在最も改良の進んだ 2 つのカラムナータイプ選抜系統は,いずれもカラムナー性の起源品種'Wijcik'に由来する CH03d11 の 177 bp と Hi01a03 の 174 bp(<i>Co</i> 連鎖アリル)を保持していることから,育種プログラムにおいてこれらの系統をカラムナータイプの交雑親として用いる際は,CH03d11 と Hi01a03 によってカラムナータイプ個体を効率的に選抜することが可能となる.<br>