著者
高松 漂太
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

昨年度、炎症誘導物質をモニター可能なレポーター細胞を用いて、種々の自己免疫疾患患者由来血清中に含まれる炎症誘導活性を測定し、SLE血清においてtype I IFN (IFN-I)活性ならびにIFN-I誘導活性が高いことを見出した。また、様々な核酸受容体欠損レポーター細胞を作成し、SLE血清によるIFN-I誘導がSTING依存的に惹起されることを見出した。本年度は、STINGを介してIFN-Iを誘導する因子について検討を行い、SLE血清中にはdsDNAが多く含まれており、それらはDNase Iに対する分解から保護されていたから、血清中の細胞外膜小胞に着目し、血清を、210,000gにて単離されるexosome分画、exosomeよりもやや大きい16,000gにて単離されるapoptosis-derived membrane vesicle (AdMVs)分画とそれ以外の分画に分け、IFN-I誘導活性を有する分画について検討したところ、SLE血清ではAdMVs分画にIFN-I誘導活性が多く含まれていることを見出した。SLEでは何らかの原因によるapoptosisの亢進、それにより生じたapoptosis関連物質の分解障害が病態に関与することが知られており、我々の結果も加味すると、SLE血清中には、apoptosis由来物質特にDNA断片が、AdMVsに内包されて存在し、それらが食作用により細胞質内に取り込まれ、dsDNA受容体のcGASで2’3’-cGAMPに変換されてSTINGを活性化し、その結果IFN-I産生が亢進する、という一連のカスケードがSLEの病態に重要であることが明らかとなった。この成果をリウマチ性疾患関連雑誌の最高峰であるAnnals of Rheumatic Disease誌に投稿し、現在under revision中である。
著者
中根 俊成 樋口 理 高松 孝太郎 松尾 秀徳 安東 由喜雄
出版者
一般社団法人 日本臨床神経生理学会
雑誌
臨床神経生理学 (ISSN:13457101)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.95-100, 2018-04-01 (Released:2018-04-17)
参考文献数
35

2011年, 低密度リポ蛋白質受容体関連蛋白質4 (LRP4) の細胞外領域に対する自己抗体が一部のMG患者血清中に存在することが確認された。しかしその頻度については研究によってばらつきがあり, 国際的な枠組みでの疫学調査, 抗体測定方法間のvalidationを解決法として考慮すべきであろう。LRP4はアセチルコリン受容体, MuSK同様, 神経筋接合部形成に必須である。そして「アグリン仮説」を担い, 筋膜上でアグリン, MuSKと複合体を形成している。抗LRP4抗体の作用機序としては神経筋伝達機能を保持するためのシグナルの機能的阻害が推測される。病態の推測と受動・能動免疫による動物モデルが作製可能である点から病原性のある自己抗体として捉えられている。抗LRP4抗体については重要な問題が提起されている。それは筋萎縮性側索硬化症を筆頭とする他の神経筋疾患におけるLRP4抗体の陽性症例である。われわれが測定しているLRP4抗体とはいったい何か。最新の知見を交えて概説したい。
著者
古久保 さくら 丸山 里美 高松 里江 須藤 八千代 山口 薫 茶園 敏美 小川 裕子
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、1947~1997年に大阪府内に存在した婦人保護施設「生野学園」の50年間の記録・資料を主資料として研究を進めることにより、戦後日本の女性の貧困・困窮の実態について明らかにした。婦人保護施設は売春防止法により規定された施設であるが、その施設開設初期段階から家族のなかに居場所を失った多様な困難を抱える女性たちを受け入れ支援する場として存在したことが明らかになった。また、同時に「売春」と言われてきた行為について、性暴力・恋愛との連続性、言い換えれば客体化された被害者としての側面と主体化された行為者としての側面から概念を再検討する必要性も見えてきた。
著者
高松 礼奈 Takamatsu Reina タカマツ レイナ
出版者
大阪大学大学院 人間科学研究科 対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 = Japanese journal of interpersonal and social psychology (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.18, pp.53-59, 2018-03

原著本研究は、人身的ジレンマを判断課題に使用し、多くの人びとを救うことを目的とした特定の他者への危害の肯定に影響を与える要因として共感を検討した。そこで、犠牲となる特定の他者に対する共感を操作し、危害の肯定率に変化が生じるか質問紙実験を行った。結果、犠牲者に共感しにくい社会的属性をフレーミングしたところ(低共感条件)、直接的危害を与える功利主義判断をする傾向が高くなった。また、犠牲者に共感するよう教示してから判断課題を行なったところ(高共感条件)、危害を与える功利主義判断をする傾向が低くなった。このことから、ジレンマ状況において、共感を操作するフレーミングは功利主義判断に影響を及ぼすことが示された。The present study examined the effect of empathy on utilitarian judgment in sacrificial dilemmas by manipulating empathy with a victim. Results showed that participants who read a modified version of Footbridge dilemma in which the victim is described as a released convict were more willing to sacrifice him to save more people. In the empathy-inducing condition, participants performed a perspective-taking task to increase empathic concern for the victim and were less likely to make utilitarian judgment. These suggest that utilitarian judgment in high-conflict dilemmas is not only based on a calculation of greater good, but is also susceptible to interpersonal cues, such as empathy with the victim.
著者
高松
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
機械學會誌
巻号頁・発行日
vol.38, no.214, 1935-02-01
著者
図子 浩二 高松 薫
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.147-154, 1995-02-01
参考文献数
22
被引用文献数
4 9

本研究では, 跳躍選手や球技選手が必要とするバリスティックな伸張―短縮サイクル運動の遂行能力を高めることに対して, 筋力および瞬発力を高めることが, どのような意味を持つのかについて, 健康な男子体育専攻学生99名を用いて検討した.<BR>バリスティックな伸張一短縮サイクル運動の遂行能力を評価するための指標として, RDJ<SUB>index</SUB>を測定した.また, 筋力を評価するための指標として, スクワット姿勢による最大脚伸展力 (Smax/BW) , 瞬発力を評価する指標として, 垂直跳の跳躍高 (CMJh) をそれぞれ測定した.なお, RDJ<SUB>index</SUB>は, 台高0.3mからのリバウンドドロップジャンプにおける滞空時間 (RDJt<SUB>a</SUB>) から求めた跳躍高を踏切時間 (RDJt<SUB>c</SUB>) で除したものであり, できるだけ短い踏切時間によって高い跳躍高を獲得するための能力を評価するものである.<BR>本研究の結果は次の通りである.<BR>(1) RDJ<SUB>index</SUB>, Smax/BW, CMJhの相互間には, いずれも有意な相関関係が認められたが, 相関係数はあまり高い値ではなかった.このことは, 三つの指標は, いずれも脚の筋力およびパワー発揮に関する特性を表すものであるが, 相互の類似性は必ずしも高くないことを示唆するものである.<BR>(2) RDJ<SUB>index</SUB>を構成する要因であるRDJt<SUB>c</SUB>とRDJt<SUB>a</SUB>との間には, 有意な相関関係は認められなかった.このことは, バリスティックな伸張一短縮サイクル運動の遂行能力が, 運動遂行時間の短縮能力と高い跳躍高の獲得能力の二つの独立した異なる能力によって決定されることを示唆するものである.<BR>(3) RDJt<SUB>a</SUB>とSmax/BW, RDJt<SUB>a</SUB>とCMJhとの間には, いずれも有意な相関関係が認められた.しかし, RDJt<SUB>c</SUB>とSmax/BW, RDJt<SUB>c</SUB>とCMJhとの間には, いずれも有意な相関関係は認められなかった.これらのことは, 筋力や瞬発力は, 高い跳躍高の獲得能力には関係するが, 運動遂行時間の短縮能力には必ずしも関係しないことを示唆するものである.<BR>(4) RDJ<SUB>index</SUB>が同じ値であっても, RDJt<SUB>c</SUB>とRDJt<SUB>a</SUB>には大きな個人差のあることが認められた.このことは, トレーニングの主なねらいが, 高い跳躍高の獲得能力にある者もいれば, 運動遂行時間の短縮能力にある者もいることを示唆するものである.<BR>本研究で明らかにしたバリスティックな伸張―短縮サイクル運動の遂行能力と, 筋力および瞬発力との関係は, 跳躍選手や球技選手などの筋力・パワートレーニング法に関する一つの有用な知見になるものと考えられる.
著者
図子 浩二 高松 薫
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.29-39, 1995
被引用文献数
1 6

Rebound drop jump index [RDJ_&ltindex&gt=(1/8・g・RDJt_a^2)/RDJt_c] was developed to evaluate the ability to perform the ballistic stretch. shortening cycle (SSC) movement. The RDJ_&ltindex&gt consists of ability to jump higher (RDJt_a) and that to shorten the contact time (RDJt_c) in rebound drop jump (RDJ), a typical SSC movement. The former is affected by leg strength and counter movement jump ability but the factors affecting the latter case have not yet been well established. This study examined the factors to shorten the contact time with special reference to two important views, i.e. work done by the lower limb joints and anticipation of the landing. 1. Relationships between work done by the lower limb joints and RDJ_&ltindex&gt, RDJt_c, and RDJt_a in RDJ from height of 0.3m were examined in ten college male athletes. There was a significant correlation between the ratio of negative work at the ankle to total work done by the lower limb joints and RDJ_&ltindex&gt (r=0.726, p&lt0.05), and RDJt_c (r=-0.823, p&lt0.01) but not RDJt_a (r=0.226,ns). Furthermore, there was no significant correlation between the ratio of negative work at the ankle and maximum plantar flexion strength (r=-0.329,ns). These results suggested that the rate of energy absorption at the ankle joint in former contact phase was one important factor to shorten the contact time in RDJ but not affected by plantar flexion strength. 2. RDJ_&ltindex&gt, RDJt_c and RDJt_a in two RDJs with or without visual information to inhibit temporal and spatial anticipation of landing were compared in six college male athletes. As compared without and with visual information, RDJt_c was longer, RDJt_a was shorter and RDJ_&ltindex&gt was lower, significantly. These changes were greater in subjects showing the higher RDJ_&ltindex&gt than those showing the lower RDJ_&ltindex&gt. Furthermore, changes of RDJ_&ltindex&gt, RDJt_c and RDJt_a in series of nine RDJs without visual information at thirty seconds of rest intervals were compared between subject A showing high RDJ_&ltindex&gt and subject B showing low RDJ_&ltindex&gt. RDJt_c decreased and RDJt_a increased slightly, and RDJ_&ltindex&gt increased by repeated trials even without visual information in subject A but not in subject B. These results suggested that temporal and spatial anticipation of the landing were another important factors to shorten the contact time in RDJ. These finding seemed to be beneficial for establishing strength and power training methods for jumper and ballgame players who are required ballistic stretch-shortening cycle movement.
著者
高松 里江
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
no.11, pp.54-65, 2012-05-26

これまで、アメリカを中心とする多くの研究は、性別職域分離は賃金格差の要因になることを示してきた。また、いくつかの研究は、技能とその指標となる制度をコントロールすることで、性別職域分離がどのようなメカニズムで賃金に影響するのかを明らかにしてきた。一方、日本ではいくつかの研究が性別職域分離は賃金格差の要因であることを示唆してきたが、対象となる職種が少なく、また、技能について十分に考慮されていないという課題があった。そこで本稿は、日本において、性別職域分離が日本型雇用制度と専門職制度のなかの技能とどのように結びつき、賃金に影響するのかについて分析を行った。分析には2006年および2008年に日本全国を対象に実施したJGSS調査を用い、対数変換後の時給を従属変数とする重回帰分析を行った。職種の女性比率から、男性職、混合職、女性職の3つに職種に分けて分析を行ったところ、(1)混合職と比べると女性職では賃金が高いこと、(2)女性職は混合職と比べて対物技能が高いために賃金が高いこと、(3)女性職の多くは専門職として対人技能が高いために賃金が高いことが示された。従来の研究では、性別職域分離は女性の地位を低める効果があるとされてきたが、本稿の結果からは、性別職域分離が対物技能や専門職制度を通じて女性の賃金を高めることが明らかになった。
著者
山村 涼子 山下 浩子 眞谷 智美 高松 幸子
出版者
久留米信愛女学院短期大学
雑誌
久留米信愛女学院短期大学研究紀要 (ISSN:13487310)
巻号頁・発行日
no.34, pp.59-67, 2011-09
被引用文献数
1

A 2009-2011 questionnaire survey on"Regionality of Culinary Culture and Cookery Science Foods for Special Events and Rites" was conducted by the Japan Society of Cookery Science. We report on awareness and experience of foods for annual events and rites of passage among 315 respondents (227 students and 88 non-students),revealing generational differences.The most widely recognized and experienced annual events were New Year's Day,Christ-mas,New Year's Eve,and Setsubun (Bean-Throwing Festival). High percentages of respondents had experienced eating New Year's foods such as zoni and osechi ryori, Christmas cake,and toshikoshi soba.The rites of passage familiar to and experienced by many students and non-students were birthdays,the Seven-Five-Three festival,funerals,and the Buddhist, memorial service. In particular,many had eaten cake on birthdays. Although students were very aware of all of these ceremonies,they had not necessarily experienced them firsthand.The mother's influence on foods for special events is very strong,and twice that of the father for students and 11 times that of the father for non-students. Transmission from mother to child is indicated,and we recognize the significance of promoting awareness offoods for special events among female students - the mothers of the future.
著者
高木 啓之 岡本 晃〓 高松 幹夫 佐藤 元美 高木 登志子
出版者
一般社団法人 日本人工臓器学会
雑誌
人工臓器 (ISSN:03000818)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.1041-1044, 1988-06-15 (Released:2011-10-07)
参考文献数
4

Single chamberの空気駆動のポンプの圧排、膨満をセンサーの電位レベルできめ、電磁弁と連動させると、パンビングは自走する。その際のsystole, diastoleを計測してS/Dを求め、あらかじめプログラムに与えたS/Dの目標値に近づく様に空気圧を調整するという方式の全自動制御システムを開発した。このシステム下のパンピングは、preload(流入量)とafterloadに自動的に対応し、流入量が同一ならばafterloadが変化してもoutputは同じで、逆に流入量が変化すればafterloadが同一でも、システムがきめる空気圧は異り、outputは異った。このS/Dの目標値は各deviceで異るから、あらかじめ模式回路で計測してきめる必要がある。
著者
尾崎 恵美 高尾 純子 鶴川 まどか 西 美由紀 前田 智奈 中野 正博 高松 三穂子
出版者
バイオメディカル・ファジィ・システム学会
雑誌
バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 (ISSN:13451537)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.41-52, 2009-10-02

妊娠・出産を控えた若い女性が持っている分娩体位の知識と分娩台に対するイメージとの関連を明らかにする目的で、看護学生2年生77名、看護学生3年生75名、助産学生165名を対象にアンケート調査を行った。その結果、1)各分娩体位の認知度は看護学生と助産学生の間に大きな差が見られる(p値=0.000)。2)看護学生と比較して知識点の高い助産学生ほど明るいイメージ・主体性に関わるイメージは低く、逆に暗いイメージは高くなっていた。3)"普通だ""当たり前である"(ともにp値=0.000)、"一般的だ"(p値=0.012)の項目で看護学生と助産学生の間に有意差が見られ、知識点が低いほど分娩台で産むことを当然であるという意識があると考えられることが明らかとなった。
著者
高松 亮太
出版者
明治書院
雑誌
国語と国文学 (ISSN:03873110)
巻号頁・発行日
vol.92, no.7, pp.34-50, 2015-07
著者
高松 耕太 嶋津 恵子
雑誌
研究報告 人文科学とコンピュータ(CH)
巻号頁・発行日
vol.2011-CH-89, no.6, pp.1-4, 2011-01-15

我々は,人物を対象とした日本の文化財がデフォルメ手法を利用していることに注目した.デフォルメの程度や傾向をはかることで,それぞれの特徴を工学的に特定することが可能になると考えた.今回我々は,代表的な画像処理技術のひとつであるラベリング処理を応用したデフォルメ度計測手法を提案する.さらにこの方法を利用して,実際にキャラクターのデフォルメ度を計測した実験結果を報告する.