著者
神沼 克伊 高橋 正義
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.75-83, 1975-12

1973年9月,第14次越冬隊により,上下動1成分の地震計を用いた地震観測がみずほ観測拠点で行われた.観測条件の悪い南極の内陸基地での地震観測の試みは南極点基地以外には例が無いと思われる.基地内の人工的雑音などのため十分な観測ができなかったが合計210時間の間の記録をとることに成功し多くの氷震を観測した.その結果,この地域では気温が-35℃以下で,その変化の割合が1時間に-2.5℃以下,または-1℃/hourが数時間続く時には例外なく氷震が発生している.
著者
高橋 正樹
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社会科学研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.59-74, 2003
被引用文献数
2

人の意識や行動様式を規定するのは,属性や置かれた環境だけではなく,個々人の出来事の経験とその積み重ねとしての人生経験である.しかし,量的な調査において,ライフヒストリーに代表される質的調査が主導してきたこうした視点を欠きがちであった.本論文では,量的な手法を活かしつつ,この人生経験をとらえる手法としてライフイベント研究をとりあげた.個々の出来事経験はモノのように記憶の中で出し入れされたりするような固定されたものではなく,記憶化される中で変容していく動的な特徴をもつ.自伝的記憶のこうした特徴を,その形成過程にまで視野を広げて実際の調査データを基に考察した.分析において,より影響力の強い出来事経験と出来事経験への感度という視点を提起し,自伝的記憶形成モデルとして,職業・仕事を軸としたモデルと(男性に多い),家族の出来事への配慮を軸としたモデル(女性に多い)をとらえた.
著者
高橋 人志 黒野 弘靖
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会北陸支部研究報告集 (ISSN:03859622)
巻号頁・発行日
no.55, pp.393-396, 2012-07-22

新潟県内の民家を高齢者福祉施設に転用した3事例について、2005年から2011年までの建物や運営内容の変化を明らかにした。うちの実家では、高齢者だけでなく幅広い世代の利用ができるよう、運営内容や家具配置を変化させている。かじまちの家では、大規模な改修により、デイサービスの利便性向上と地域利用の促進がはかられている。村上市コミュニティ・デイホームでは、町家の構成や運営内容に変化は見られない。
著者
原田 謙 小林 江里香 深谷 太郎 村山 陽 高橋 知也 藤原 佳典
出版者
日本老年社会科学会
雑誌
老年社会科学 (ISSN:03882446)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.28-37, 2019-04-20 (Released:2020-04-20)
参考文献数
31

高齢者に対するエイジズム研究は,国内外において蓄積されてきた.しかし「もうひとつのエイジズム」とよぶべき,若年者に対する否定的態度に関する研究は乏しい.本研究は,地域と職場における世代間関係に着目して,高齢者の若年者に対する否定的態度に関連する要因を検討することを目的とした.データは,無作為抽出された首都圏の60〜69歳の男女813人から得た.分析の結果,以下の知見が得られた. ①若年者との接触頻度が低い者ほど,若年者を嫌悪・回避する傾向がみられた. ②高齢者の生活満足度は若年者に対する否定的態度と関連していなかった.ただし職場満足度が低い者ほど若年者を嫌悪・回避する傾向がみられた. ③世代性の得点が低い者ほど若年者を嫌悪・回避する傾向がみられた.一方,世代性の得点が高い者ほど若年者を誹謗するという,アンビバレントな態度が示された. ④職場でエイジズムを経験している者ほど,若年者を誹謗していた.
著者
高橋誠 吉澤寛之
雑誌
日本教育心理学会第61回総会
巻号頁・発行日
2019-08-29

文部科学省(2015)では,小規模校の児童・生徒の傾向として,集団の中で自己主張をしたり,他者を尊重する経験を積みにくく,社会性やコミュニケーション能力が身につきにくい,児童生徒の人間関係や相互の評価が固定化しやすい,などの特徴を持つ可能性が指摘されている。Sullivan(1953)によると,児童期には,他者に対して偏見をもつ傾向があり,子どもの集団の中では,頭が良い,社交的,運動神経がよい,等によって,「人気がある」,「ふつう」,「不人気」などと児童自身が判定される「社会的批判」がなされるという。これらより,小規模校では流動的な関係をもつことができる環境とは異なり,一度他者を根拠のない一方的で,主観的な見方で捉えるようになると,その関係を変化させることは難しくなると考えられる。全国的に学校の小規模化が予測されていることからも,人間関係の固定化は喫緊の課題に位置づけられる。 本研究では,人間関係が固定化される小規模校の児童における社会性の課題を明らかにするため,ある県内で調査を実施し,自治体統計を指標とした地域クラスター間で子どもの社会性の比較をする。方 法(1) 調査対象校抽出を目的とした小学校の分類 A県内の369校の小学校を,人間関係の固定化に影響すると考えられる自治体統計(人口密度・転入率・転出率)と当該小学校の学級数を指標として,潜在混合分布モデルによる分析を行った。4から7クラスターまでの分析結果を比較し,適合度やエントロピーに基づき6クラスターを採用した(AIC=-1867.870,BIC=-1660.598,SBIC=-1828.748,Entropy=.961)。Figure 1に示す特徴をもつ,6つのクラスターに分類された。対象校については,各クラスターから各市町村の平均学級数に近い学校を2校ずつ,特定の町(第1著者の勤務地域)は全小学校が抽出された。(2) 測定尺度と調査対象 「人間関係形成」はキャリア意識尺度(徳岡他,2010),「自己制御」は社会的自己制御尺度(原田他,2008),「共感性」は児童用多次元共感性尺度(長谷川他,2009),「偏見」は偏見尺度(向田,1998),「権威主義」は権威主義的態度尺度(吉川・轟,1996)を用いて測定した。抽出された小学校(19校)で2018年12月に調査を実施し,回答に不備のない児童1737名(4年男子83名,女子65名;5年男子381名,女子411名;6年男子384名,女子413名)のデータを分析した。結果と考察 分布の非正規性を考慮し,クラスターを独立変数,各尺度を従属変数とした対応のない平均順位の差の検定(クラスカル-ウォリス検定)を実施した結果,すべての変数で有意となった(χ2(5)=11.373~66.463,ps <.01)。多重比較の結果,人口密度や転入,転出が多い地域(クラスター2)は,他地域よりも人間関係形成,自己主張,感情・欲求抑制,共感的関心,権威主義が有意に高かった。流動的な環境であると,様々な人と触れ合う経験を積むことで,人間関係形成能力が高まるといえる。人口密度が高くても転入や転出が少ない地域(クラスター1)は,人間関係形成や自己主張が有意に低かった。人口密度が高くても,流動的でない環境では,人間関係形成能力が向上しにくいと言える。逆に,人口密度が少なくても,転入・転出が多い地域(クラスター3)は,視点取得が有意に高かった。流動性のある環境では,他者の視点で考える能力が高まると言える。また,人口密度や転入・転出が少ない地域(クラスター4,5)は,共感的関心が有意に低かった。固定化された人間関係で生活することで,その集団内での自分の立場が決まってしまい,他者への思いやりも困難になると考えられる。 今後は,地域クラスター間の差に影響する要因を明らかすると同時に,人間関係が固定化される小規模校の子どもの社会性を育成する実践の開発が求められる。
著者
高橋 伸夫
出版者
一般財団法人 日本国際政治学会
雑誌
国際政治 (ISSN:04542215)
巻号頁・発行日
vol.1990, no.95, pp.63-78,L9, 1990

The purpose of this paper is to review the changing patterns of Chinese communist perception of the world during the 1950s, focusing on the rise and fall of the theory of intermediate zone. The theory was first articulated by chairman Mao Zedong in an interview with an American journalist Anna Louise Strong in August 1946. The intermediate zone means the vast area lying between the United States and the Soviet Union. The theory contended that not the East-West conflict but the conflict between the American imperialism and the oppressed people of the world formed the main contradiction in the present situation. This view was accompanied by a characteristic notion of international security. According to Mao, it was the bold struggle against imperialism that would promote &ldquo;peace&rdquo; among world great powers. Such a notion marked a contrast with the Soviet attitude which saw &ldquo;The Great Alliance&rdquo; as essential in securing world peace.<br>With the increasing pressure from Moscow to unify ideology within the socialist camp, the term &ldquo;intermediate zone&rdquo; vanished from the Chinese documents since late 1948. But the logic of the theory still influenced the perception of the Chinase leaders until 1952.<br>There were remarkable changes in the framework of Chinase world view after 1953. Firstly, the notion of peaceful coexistence was introduced into the Chinese policy papers. Secondly, the evaluation of neutralism was adjusted. Thirdly, the demarkation of the socialist camp was redefined. These changes altogether modified the previous notion of international security underlying the theory of intermediate zone. Namely, the idea that people's bold struggle against imperialism in the intermediate zone would reduce the probability of world war was replaced by the notion that consultation among the great powers was indispensable for promoting world peace. With this notion on international security, Chinese communist theory proceeded to the diplomacy of peaceful coexistence.<br>In 1958 the theory of intermediate zone was revived. While it emphasized the necessity of daring anti-imperialist struggle in the intermediate zone as it did in the late 1940s, it did not discard the idea that the coordinated effort between the communist nations and the Asian nationalist regimes was effective in eradicating the influence of American imperialism from Asia.<br>The revival of the theory of intermediate zone brought about a discrepancy with regard to the notion of peaceful coexistence between the Chinese and Russians. Although such a discrepancy was relative in character, it was destined to deepen by the transformation of the world system in the late 1950s.
著者
山田 弘生 小片 真弓 深田 哲夫 高橋 利〓 代田 稔
出版者
日本蠶絲學會
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.490-500, 1978

1. クロレラと桑葉粉末を各々50%配合した人工飼料を調製し, 蚕の全齢飼育を試みて在来の大豆配合人工飼料に劣らない成績を得た。<br>2. 本クロレラ配合飼料をミルクカゼイン配合人工飼料と比較することにより, クロレラには蛋白質及び炭水化物以外に蚕の生育に有効な因子のある事が推定された。<br>3. 蚕の飼育経過, 繭質及び収繭率に於いて, 良好な成績を与えるクロレラの配合率は40~70%である事が判った。<br>4. クロレラ配合人工飼料で蚕を飼育する場合, 飼育温度は28~30℃が最適である事が判った。<br>5. 壮蚕期には本飼料中の桑葉粉末を25%にまで減量し, その分をミルクカゼイン・スターチ・セルロース混合物または脱脂大豆で補っても良い事が判った。<br>6. 50%クロレラ配合人工飼料で1,100頭の蚕を全齢飼育してみたところ, 生糸量歩合14.61%の3等格に相当する繭が対掃立89%得られた。また14,000頭の全齢育でもほぼ同様の成績であった。<br>7. 春蚕期に20,000頭の蚕を1~3齢クロレラ配合人工飼料育し, その後農家で4~5齢桑葉育を行ったところ, 全齢桑葉育に近い成績を得た。
著者
大重 育美 衛藤 泰秀 小川 紀子 苑田 裕樹 山本 孝治 西村 和美 姫野 稔子 高橋 清美 田村 やよひ
出版者
日本赤十字九州国際看護大学
雑誌
日本赤十字九州国際看護大学紀要 = Bulletin of the Japanese Red Cross Kyushu International College of Nursing = 日本赤十字九州国際看護大学紀要 = Bulletin of the Japanese Red Cross Kyushu International College of Nursing (ISSN:21868042)
巻号頁・発行日
no.18, pp.23-30, 2020-03-31

われわれは平成28年度の学長指定研究開始後より、福祉避難所としての仕組みを整えるための活動を行ってきた。平成29 年度には、熊本地震の際に福祉避難所としての運営を行った施設責任者を対象に聞き取り調査を行い、公共施設での福祉避難所の課題を明らかにした。今年度は、日本赤十字九州国際看護大学(以下、本学とする)が福祉避難所として機能するためにどの場所が適切なのか、実際に収容できるのかの実証的な調査が必要であった。そこで、本研究は災害を想定した福祉避難所としての運営に向けた課題を環境の変化と人体への影響という視点から明らかにすることを目的とした。方法は、福祉避難所として想定している本学敷地内のオーヴァルホール、体育館、実習室の外気温、室内温、湿度の経時的な変化を計測し、20歳代から70歳代までの各年代の参加者の自覚的疲労度を主観的評価と体温、血圧、脈拍を経時的に測定した。その結果、室内温は、時間の推移に伴い徐々に下降傾向で、オーヴァルホールと実習室は温度の推移がほぼ同じで2時以降やや下降気味であった。外気温は、オーヴァルホールと体育館は同じ推移であったが、実習室の外気温は棟内であり、気温の低下の影響は少なかった。主観的な評価項目では、「ねむけ感」が時間の推移に伴い高まり、「ぼやけ感」は22時をピークに下降気味となった。したがって、室内温、外気温の変化がほぼ同じだったことから、収容場所は要配慮者の状況によっては、オーヴァルホール、体育館、実習室の利用が可能であることが示唆された。課題は、睡眠環境の整備として寝具の工夫が必要であることが明らかとなった。報告 = report
著者
高橋 ヒロ子
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.292-297, 1995-04-20
参考文献数
17
被引用文献数
3 1

脳性麻痺の発話能力を64年脳性麻痺群73名 (出生年月1964年3月~1969年4月) と86年脳性麻痺群52名 (同, 1986年4月~1991年3月) で比較した結果, 発話可能な運動性構音障害は64年群31名 (42.47%) から86年群10名 (19.23%) に減少し, 発話不可能なものは64年群15名 (20.55%) から86年群26名 (50.00%) に増加していた.脳性麻痺における言語障害の重度化に基づいて, 従来の運動性構音障害の改善に重点を置いた言語治療を発展させ, 広範なコミュニケーション機能の拡大を前言語期から導入する言語治療のプログラムを提起した.
著者
李 威儀 鈴木 毅 高橋 鷹志
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.60, no.468, pp.133-141, 1995-02-28 (Released:2017-01-27)
参考文献数
9
被引用文献数
3 3

By analysing the uses of Lonsan-temple's precinct in Taipei, this research attempts to discover the factors involved in generating an affordable urban public place for being. Through observation of the temple and survey of the users, we believe that the signifigance of this temple as an sffordable place for being is supported by the fact that there are many kinds of activity-types occurring throughout each day. Furthermore, the temple is serving as an important place for communication and assimilation of public information related to politics, markets and other related contents occuring in city-life. These features (proximity, flexibility and locus of information) are the basic reasons of which this open space serves as an affordable place for being to users. By means of the sequential uses of the other places located in Lonsantemple's district, it is still impressed us that Lonsan-temple serves as a referent head-quarter of the located district.
著者
高橋 景一 真行寺 千佳子
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.145-150, 1987-07-25 (Released:2009-05-25)
参考文献数
16

The sea urchin sperm flagella normally beat in a plane. The flagellar beat plane, however, rotates rapidly and reversibly when an appropriate external force is applied by imposing sinusoidal vibration of varying directions on the sperm head. The rotation may involve rotation of the central tubule complex within the flagellum.